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本編
No,147 緋龍院のお祖父さまとのご対面
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「…明けまして、おめでとうございますっ!!
…この度は、お招き頂きまして、ありがとうございます!
…貴志さんと結婚させて頂きました、上井真唯と申します!
…不束者ですが、どうぞよろしくお願い致しますっ!!!」
真唯は、文字通り土下座していた。
……緋龍院家の実質上の支配者。
緋龍院京司老の前で。
※ ※ ※
事の起こりは、お正月の二日のお昼。
……朝ではない。
……昼だ。
何故なら、夫に朝まで寝かせてもらえなくて……それは激しい【姫初め】をされてしまった真唯が、やっと起き上がる事が出来るようになったのがもう昼過ぎだったのである。
……慣れてしまった自分が哀しい……
真唯が自分を憐れんでいる間にも、貴志さんは、昨日、真唯が作っておいた御雑煮のおつゆを温め。昨年と同じく五つのお餅を焼いてくれた。……真唯が二つ。自分の分が三つ。
ダイニングテーブルの椅子に真唯を座らせたまま、チョコマカと動く貴志さんは楽しそうだ。
……そんなにお料理、好きなのかしらン……アタシをこんな目に合わせておいて…っ!
恨みがましいジト眼で睨んでしまうが……去年の事を思い出し、その意地も溶けてしまった。
……去年は、アノお兄さんから電話が掛かって来たのだ……そして、一条家の……緋龍院家の一端を垣間見て……アタシも、実家の……牧野の家の話をしたっけ……お互い三が日は、両親や兄弟の声を聞きたくなかったと言って……
……でももう、今年は……
母親に結婚と分籍の報告をした時、父が死んだなんて聞かなかったから、さすがにまだ生きているだろう事は理解っていたけれど。あの父親もあのお水を素直に飲み始め、しかも続けているらしいと云う事を貴志さんはわざわざ教えてくれた。……牧野の家も、緋龍院の家さえも、2人を脅かす事はもうない……
場所をおコタに移動して。
真唯は晴々とした気持ちで、貴志さんが用意してくれた御雑煮を、有り難く頂いたのだった。
※ ※ ※
「…は…? …す、すみません…もう一度、おっしゃって頂けますか…?」
「…ですから…明日の三日、緋龍院の祖父に会って頂きたいんです。」
「…っ!! …ど、どうしてですか!? もう、緋龍院家とは、関わりがないんじゃ…っ!!」
「…申し訳ありませんが…祖父は別格なんです。…分籍したと言っても、このお祖父さまとは縁が切れたとは言えないんですよ。…緋龍院の家で、唯一、私を可愛いがり、私と云う人間を認めて下さった方で…あの方には、昔から逆らえないんですよ…もう大分、お年ですし…私の妻を見るまでは、死んでも死にきれないと言って…。…ああ、安心なさって下さい。祖父は、貴女のブログを読んでいて、貴女のファンでもあるんですから。…紹介しろと矢の催促で…正月は良い機会だから是非とも会ってみたいと…申し訳ありませんが、お付き合い頂けますか…?」
「…でも、アタシ…緋龍院の家の方とお会いするなんて…」
「…あの兄の印象が最悪でしたでしょうから、怖気づくお気持ちも、私の元・家族と会いたくないと云うお気持ちも理解ります。…ですが…、…推測で失礼ですが…真唯さんは、私をご両親とは会わせたくはなかったでしょうが、あの御雑煮のレシピを教えて下さったお祖母さまにでしたら、私を紹介したいと思われたのではないですか…?」
「…っ!!」
……図星だった。
……あの両親に顔を見せる必要は感じないけれど……お祖母ちゃんが生きていたら、紹介して自慢したかった……『こんなに素敵な男性と結婚出来たのよ』って……
……貴志さんにとって、その“お祖父さま”は、とても懐かしい……慕わしい存在なのだろう。
……真唯を紹介したくなるほどに……
「…もっと早くお話しをお伺いしたかったです…心の準備をするためにも…」
大きな大きなため息と共にそんな台詞を零す事で、アタシは了承の返事にかえた。
「…申し訳ありません。…ですがもっと早く知っていたら、緊張してしまって大晦日の忘年会も、昨日の元旦も楽しむ事は出来なかったでしょう…?」
などと言われれば、グゥの音も出なかった。
そして急遽(と思うのはアタシだけで、貴志さんにすれば予定の内だったようだが)、アタシたちは優里ちゃんのお店に出掛ける事になってしまった。
緋龍院家の最長老と云われる方の元にお邪魔するのである。それなりの服装ではなくてはヤバイだろう。そこで、お正月には着物……とはいかないまでも、着物にも見えるドレスを着て行く事にしたのである。
優里ちゃんは、初売りの日から元気一杯だった。アタシたちの姿を見ると嬉しそうな表情をしてくれたが、事情を話すと新年の挨拶もそこそこに「私に任せて下さいっ!!」と請け負ってくれて。貴志さんと2人で、人を着せ替え人形にしてくれて……結局、最終的に選んでくれたのは、加賀友禅の留袖風・ドレスワンピースだった。
銀朱の生地に、艶やかな牡丹の花が咲いている。
帯風リボンは、黄金色だ。
「良くお似合いです…っ!!」
……優里ちゃんがただのお世辞で、こんなセールストークするなんて思わないけど……
「…うん。…すごく良い…」
……貴志さん…こう云う豪華なお着物風ドレスワンピは、もっと美人のオネーサマがたのもので……
一人、本人だけが、『馬子にも衣装になっててくれれば良いケド』と思ってる横で、貴志さんが優里ちゃんに、リボンの結び方を習っていた。背中でも、金色の艶やかな牡丹が咲くように。
「…貴志さん…明日、おうかがいする前に、ここで着付けをお願いしたらどうでしょうかね? …ついでに、フルメイクもお願いして…」
と云うアタシの案は、簡単に却下されてしまった。
曰く―――『お祖父さまには、素顔の真唯さんを見て頂きたいから。』
その台詞を帰宅後聞いたアタシは、震え上がってしまった。
いくらアタシでも、そんな偉い人の前にスッピン晒す勇気ないよ…!
TPOってモンが、あるんだから…っ!!
しかし、貴志さんは、アタシの言い分を聞いてはくれなかった。
「いつものルージュだけで、充分ですよ。お祖父さまには、“素”の真唯を見て頂きたいんです。…私が選んだ女性の素晴らしさを…」
夜中、ベッドの中。
穏やかに一回だけ愛し合った後のピロートーク。
……アタシは貴志さんに確かめずにはいられなかった。
「…もし…もしもですよ。…万が一、その緋龍院のお祖父さまから、『こんな嫁、認めん!!』って怒られても…アタシを選んで下さいますか…?」
「…真唯さん…万が一でも、そんな事はないと断言できますが…もしもの時は、席を途中で投げ出す事も辞さないですよ。」
「…貴志さん…っ!」
「…でも、賭けても良い。そんな事は、絶対、あり得ない。祖父は、貴女のブログを読んで『気に入った』と言っているのですから…」
「…文章と本人のギャップに、余計ガッカリされてしまうかも…っ!」
「…やっぱり、何か賭けましょう。ご褒美が待っていると思うと、明日を乗り切れるかも知れませんよ。真唯さんは、欲しい物はありませんか? お祖父さまに実際にお会いになって、気に入って頂ける事にそれを賭けますよ。」
「…はらた○らさんに、三千点…」
「…真唯さん…貴女、本当に緊張してるんですか?」
「…こんなしょーもないギャグかましてないと、落ち着かないんですってばっ!!」
『では、落ち着く事をしましょう』と言って、二回戦に縺れ込まれたのは大いなる誤算だったけれど。
酷く緩やかな穏やかな愛撫は、確かにアタシを安堵させてくれて。お陰で夢をみる事もなく、グッスリ眠る事が出来たのだった。そして、その二回に留めてくれたお陰で、身体も楽で……ブランチの御雑煮とお節の残りをつつく頃には、アタシはすっかり元気になっていた。
そして夕方、優里ちゃんの処で購入してもらった着物ドレスワンピを着る頃には、完全に開き直ってしまっていた。
……俎板の上の鯉。
……後は野となれ山となれ。
恨むなら、女の趣味の悪い自分の孫息子を恨んでくれ…っ!
それでも。
何を言われても、絶対、別れてなんかあげないんだから…っ!!
※ ※ ※
そうしてSPさんたちの車でやって来た料亭は、どこの豪邸なのっ!? と思ってしまうような日本建築の立派な“御屋敷”のようなお店で。
看板らしきものがないところが、コワイ。
女将さんだと云う方に直々に案内されたのは、離れの一室。
それは、あの山梨で泊まった“甲府の迎賓館”を思わせる処だった。
……渡り廊下から見えた庭園は、それは見事だった。
……チラッと見えた池には、きっとン百万もする錦鯉なんかが悠然と泳いでいるに違いない。
……寒中水泳するから、アタシとかわってくれないかなァ~~
そんな現実逃避をしていた頭は、「御前。おみえになりました。」との女将さんの声で真っ白になってしまったのだった。
中から聞こえた「入って頂け」との声に、サラリと障子が開かれ。
中に入ると、その場に正座し平伏した貴志さんの姿に、アタシも慌てて習った。
「お祖父さま。明けまして、おめでとうございます。
昨年は結婚を認めて頂き、ありがとうございました。
本日はお招きにあずかりまして。
…こちらが、私の伴侶の上井真唯です。
…真唯…ご挨拶を。」
貴志さんの紹介にゴクリと喉が鳴り。
彼の促す声に応えて、大声で挨拶した。
「…明けまして、おめでとうございますっ!!
…この度は、お招き頂きまして、ありがとうございます!
…貴志さんと結婚させて頂きました、上井真唯と申します!
…不束者ですが、どうぞよろしくお願い致しますっ!!!」
……緊張したなんて、もんじゃない。
……その昔経験した、就活の面接の方が余程リラックスしていただろう。
……いつ顔を上げれは良いんだろう。
そんな事を思っていた時。
「…うん、うん。…可愛いお嬢さんだ…貴志が夢中になる訳だ。」
間近から降って来た声に、おそるおそる顔を上げれば、そこには好々爺然としたお爺さんの顔があった。
……え…?
……この優しそうなお爺さんが、緋龍院家の…貴志さんのお祖父さんなの…?
……それより、足音しなかったよ、今っ!?
ポカンとした表情で驚愕していると、そのお爺さんはアタシの手を握り、手を引いて「そんなに畏まらんで。こっちへお座り。」と広いお座敷の、立派なお座布団に案内してくれた。下座の貴志さんが座るべきであろう座に案内されてギョッとする。
「…あ、あの…! …わ、私はこっちで…!!」
「…うん? …気にせんでも良いのに…貴志も真唯ちゃんには、こっちに座ってもらいたいだろう?」
「…ええ。…ですが、真唯が落ち着きません。…御心遣いは、有り難いのですが…」
「ウォッホッホッ! …堂々と惚気おる…まあ、いい。二人とも好きにお座り。」
「「…失礼致します…」」
アタシと貴志さんの声が重なったのが、また面白かったらしいお爺さんは尚も笑った。
「…美味しいです…!」
勧められて飲んでみた杯は、とてもフルーティーだった。
「そうだろう、そうだろう。一度、真唯ちゃんに飲んでもらいたかったんだ。」
ニコニコと女将さんのお酌で杯を重ねる“お祖父さま”は、とても嬉しそうだ。
……“御前”とお呼びしたら、怒られてしまったのだ。
……折角出来た“孫娘”には、“お祖父さま”と呼ばれたいと。
「可愛い気のない孫ばっかりでのう…儂は真唯ちゃんみたいな、愛らしい孫娘が欲しかったんだ。」
【雅山流 如月】と云う名のお酒を飲んで、お祖父さまはニコニコの恵比寿顔だ。
……愛らしいって言ったよ!?
……もしかして、趣味の悪さは遺伝!?
……ああ…でも、このお二人は血の繋がりはないんだっけ……
……でも、アタシや貴志さんを見つめてくれる瞳が、とても温かい……
食前酒に、お屠蘇を頂いて。
先付に、お目出度い鶴の器に入っていた縁起物のちょろぎを頂きながら、ようやく自分が歓迎されている実感が湧いて来て…以前、吉兆さんで頂いた物より歯ごたえが良い物を味わう余裕が出て来た。
お椀のお吸い物にカラスミが入っていたり、鶴が羽を広げた綺麗なお皿にふぐがうすく盛り付けてあるお造りを、ご飯にフカヒレの餡かけを頂いたり…あァー、お正月から贅沢しっ放しだなァ~~
……でも、何よりのご馳走は、お二人の遣り取りだ。
……貴志さんが、“別格”と言っていた意味が良く理解る……
「…まったく、勿体つけおって…嫁にしたばかりで可愛いのは理解るが、もっと早く紹介せんか。」
「…申し訳ありません…腕の中に囲って、外には出したくなかったもので…」
「…言いおる、言いおる…お前の口から女の惚気が出て来るとは…本当に、長生きはするもんだな。」
「…ええ。…これからも、妻の…真唯の惚気を言い続けますから、お祖父さまも、どうか長生きなさって下さい。」
すっかり和んで、水菓子のフルーツを頂いていたアタシに、お祖父さまは水を向けて下さった。
「真唯ちゃん、貴志は良くしてくれるかな…?」
「はい! 勿体ないほど良くして頂いてます!!」
「そーか、そーか…ところで真唯ちゃん。」
「はい、何でしょうか?」
「結婚祝いを贈りたいんだが…何か欲しい物はないかな?」
「…ハ…?」
「貴志から、君が物欲が少ないと聞いてはおるが…何か一つくらいないか?」
「…え、えーとォ~~…」
「君に免許があったら車でも良かったんだが…別荘でも島でも、好きなものを贈らせてもらおう。」
「…………」
「なんだったら、おねだりでも良いんだぞ? …そう、例えば、君を苦しめた京一郎を罰して下さい、とか、な。」
「……っ!」
「何かして欲しい事の一つくらい、あるだろ…ん?」
「…真唯…折角の有り難いお申し出だ。受けると良い。緋龍院のお祖父さまに、不可能な事はない。…元・兄の…緋龍院建設社長の解雇だとて叶えて下さるだろう。」
夫は真唯の味方をしてくれるどころか、ギョッとするような事を言い出して……その後も物騒な会話が続く。
「なんだ。京一郎の首が欲しいか? …ん?」
「緋龍院建設から追い出して…路頭に迷わせたら面白いでしょうね。…そのくらいで、私の真唯を侮辱した罪は消えはしませんが…」
「…ちょ、ちょっと待って下さいってば!!」
慌てて口を挟めば、『何だ』と言いたげな四つの瞳がこっちを向いてくれる。
「…アタシは、そんな事は望んでませんっ!! …第一、もう、緋龍院社長には謝罪して頂いたし…アタシもそれを受けたんですから…」
「…やれやれ、欲のない事よな…」
「…甘いですね、真唯も…」
そんな二人の声を聞いていて……唐突に閃いた。
「…お祖父さま…して欲しい事とは反対に、“して欲しくない事”をお約束頂く事は…可能ですか?」
「無論だ」
「…では、夫に…貴志さんに帝都ホテルの【ロイヤル・パークスイートルーム】を、もう二度とアタシのためにリザーヴしない事を約束させて下さい。」
「ま、真唯さんっ!?」
お祖父さまの手前、『真唯』と呼び捨てていた夫の声が裏返る。
一方、頼まれたお祖父さまの表情は、楽し気だ。
……これは、事情を知られているかも知れないと思いつつも、一応の説明をする事にした。
「…これはお恥ずかしい話なのですが、貴志さんは…私の夫は私のために、国賓の方やVIPの方のみが宿泊する事を許される、帝都ホテルの【ロイヤル・パークスイートルーム】をリザーヴしてしまうのです。…私は、それが身の丈にあわずイヤだったのですが…お祖父さまの御力で、もう二度と貴志さんが私のためにあの豪華過ぎる部屋をリザーヴしないよう、約束させて下さい!!」
「了解った。約束しよう。」
「お祖父さま!!」
「お祖父さま!?」
アタシの歓喜の叫びと、貴志さんの驚愕の叫びが綺麗にハモった。
「何を慌てておる。儂は、可愛い孫娘の頼み事を聞いてやると約束したのだ。
…良いな? もう二度と、この娘のためにあの部屋を使う事は許さんぞ。」
「…そんな…っ!! …お祖父さま…真唯さん…」
貴志さんの萎れた姿は哀れを誘うが……ここで絆されてはいけない!
あの心臓に悪い部屋を、二度と見ないで済むチャンスなのだっ!!
「…何でも頼みを聞いてやると言って、あの部屋を使用させない許可を求めてくるとはな…
…身の丈か…欲の皮の突っ張った一族の者どもに聞かせてやりたい台詞だな。
…良い嫁をもらったな、貴志。…大事にせんと、罰が当たるぞ。」
「勿論です。私の生涯を掛けて、大切に守っていきますよ。」
「うむ。 …しかし、あまりいき過ぎるのも、どうかと思うぞ。」
「…っ! お祖父さま…っ!!」
貴志さんの焦ったような声と、ワハハハッ!!と楽しげなお祖父さまの笑い声が重なって。
……何だか理解らないけど、アタシまで楽しい気分になってしまって。
その後、お祖父さまは、本当にアタシのブログを読んで下さっているらしく、色んな話題を出してアタシを楽しませて下さった。そのお話の中には、例の「イルヤンカ・コーポレーション」の話もあって。ヒッタイトの古代文明にも造詣が深いらしく、とても楽しく興味深く拝聴させて頂いた。
その内に、ホントにリラックスしてきてしまったアタシの“上井真唯センサー”のスイッチが入ってしまい、お部屋の中の調度品の素晴らしさにそれぞれの由緒を教えて頂いたり、上座から見えるライトアップされたお庭をわざわざ外に出て拝見させて頂いたりしてしまって。
……随分昔に亡くしてしまった祖父との時間を取り戻す事が叶って、その懐かしい“お祖父ちゃん”に可愛いがってもらっているような……そんな幸せな錯覚を起こしてしまったのだった。
その時、アタシは知らなかった。
【CLUB NPOE】の総支配人・澤木さんに続いて、“緋龍院の影の支配者”と恐れられる人間を後ろ盾に得た事を。
お正月の三が日を無事に、楽しく過ごす事が出来て。
本当の“お祖父さま”を手に入れたように呑気に喜んでいたアタシは、何にも理解ってはいなかったのだ。
……緋龍院の次期総帥の座を、貴志さんに継がせたいと密かに考えていた京司老の真意が、いずこからともなく漏れ。
ストーカーどころか、貴志さんの命を狙って、緋龍院一族内部から放たれた刺客がいた事を。そして、その刺客の手がアタシに伸ばされようとしている事を察知した貴志さんが、アタシに京司老の後ろ盾を得るべく画策した事を…京司老も孫の思惑を理解していながらそれに乗った事も…二人でアタシを守ってくれようとしていた事を…呑気なアタシは、知る由もなかったのだ。
…この度は、お招き頂きまして、ありがとうございます!
…貴志さんと結婚させて頂きました、上井真唯と申します!
…不束者ですが、どうぞよろしくお願い致しますっ!!!」
真唯は、文字通り土下座していた。
……緋龍院家の実質上の支配者。
緋龍院京司老の前で。
※ ※ ※
事の起こりは、お正月の二日のお昼。
……朝ではない。
……昼だ。
何故なら、夫に朝まで寝かせてもらえなくて……それは激しい【姫初め】をされてしまった真唯が、やっと起き上がる事が出来るようになったのがもう昼過ぎだったのである。
……慣れてしまった自分が哀しい……
真唯が自分を憐れんでいる間にも、貴志さんは、昨日、真唯が作っておいた御雑煮のおつゆを温め。昨年と同じく五つのお餅を焼いてくれた。……真唯が二つ。自分の分が三つ。
ダイニングテーブルの椅子に真唯を座らせたまま、チョコマカと動く貴志さんは楽しそうだ。
……そんなにお料理、好きなのかしらン……アタシをこんな目に合わせておいて…っ!
恨みがましいジト眼で睨んでしまうが……去年の事を思い出し、その意地も溶けてしまった。
……去年は、アノお兄さんから電話が掛かって来たのだ……そして、一条家の……緋龍院家の一端を垣間見て……アタシも、実家の……牧野の家の話をしたっけ……お互い三が日は、両親や兄弟の声を聞きたくなかったと言って……
……でももう、今年は……
母親に結婚と分籍の報告をした時、父が死んだなんて聞かなかったから、さすがにまだ生きているだろう事は理解っていたけれど。あの父親もあのお水を素直に飲み始め、しかも続けているらしいと云う事を貴志さんはわざわざ教えてくれた。……牧野の家も、緋龍院の家さえも、2人を脅かす事はもうない……
場所をおコタに移動して。
真唯は晴々とした気持ちで、貴志さんが用意してくれた御雑煮を、有り難く頂いたのだった。
※ ※ ※
「…は…? …す、すみません…もう一度、おっしゃって頂けますか…?」
「…ですから…明日の三日、緋龍院の祖父に会って頂きたいんです。」
「…っ!! …ど、どうしてですか!? もう、緋龍院家とは、関わりがないんじゃ…っ!!」
「…申し訳ありませんが…祖父は別格なんです。…分籍したと言っても、このお祖父さまとは縁が切れたとは言えないんですよ。…緋龍院の家で、唯一、私を可愛いがり、私と云う人間を認めて下さった方で…あの方には、昔から逆らえないんですよ…もう大分、お年ですし…私の妻を見るまでは、死んでも死にきれないと言って…。…ああ、安心なさって下さい。祖父は、貴女のブログを読んでいて、貴女のファンでもあるんですから。…紹介しろと矢の催促で…正月は良い機会だから是非とも会ってみたいと…申し訳ありませんが、お付き合い頂けますか…?」
「…でも、アタシ…緋龍院の家の方とお会いするなんて…」
「…あの兄の印象が最悪でしたでしょうから、怖気づくお気持ちも、私の元・家族と会いたくないと云うお気持ちも理解ります。…ですが…、…推測で失礼ですが…真唯さんは、私をご両親とは会わせたくはなかったでしょうが、あの御雑煮のレシピを教えて下さったお祖母さまにでしたら、私を紹介したいと思われたのではないですか…?」
「…っ!!」
……図星だった。
……あの両親に顔を見せる必要は感じないけれど……お祖母ちゃんが生きていたら、紹介して自慢したかった……『こんなに素敵な男性と結婚出来たのよ』って……
……貴志さんにとって、その“お祖父さま”は、とても懐かしい……慕わしい存在なのだろう。
……真唯を紹介したくなるほどに……
「…もっと早くお話しをお伺いしたかったです…心の準備をするためにも…」
大きな大きなため息と共にそんな台詞を零す事で、アタシは了承の返事にかえた。
「…申し訳ありません。…ですがもっと早く知っていたら、緊張してしまって大晦日の忘年会も、昨日の元旦も楽しむ事は出来なかったでしょう…?」
などと言われれば、グゥの音も出なかった。
そして急遽(と思うのはアタシだけで、貴志さんにすれば予定の内だったようだが)、アタシたちは優里ちゃんのお店に出掛ける事になってしまった。
緋龍院家の最長老と云われる方の元にお邪魔するのである。それなりの服装ではなくてはヤバイだろう。そこで、お正月には着物……とはいかないまでも、着物にも見えるドレスを着て行く事にしたのである。
優里ちゃんは、初売りの日から元気一杯だった。アタシたちの姿を見ると嬉しそうな表情をしてくれたが、事情を話すと新年の挨拶もそこそこに「私に任せて下さいっ!!」と請け負ってくれて。貴志さんと2人で、人を着せ替え人形にしてくれて……結局、最終的に選んでくれたのは、加賀友禅の留袖風・ドレスワンピースだった。
銀朱の生地に、艶やかな牡丹の花が咲いている。
帯風リボンは、黄金色だ。
「良くお似合いです…っ!!」
……優里ちゃんがただのお世辞で、こんなセールストークするなんて思わないけど……
「…うん。…すごく良い…」
……貴志さん…こう云う豪華なお着物風ドレスワンピは、もっと美人のオネーサマがたのもので……
一人、本人だけが、『馬子にも衣装になっててくれれば良いケド』と思ってる横で、貴志さんが優里ちゃんに、リボンの結び方を習っていた。背中でも、金色の艶やかな牡丹が咲くように。
「…貴志さん…明日、おうかがいする前に、ここで着付けをお願いしたらどうでしょうかね? …ついでに、フルメイクもお願いして…」
と云うアタシの案は、簡単に却下されてしまった。
曰く―――『お祖父さまには、素顔の真唯さんを見て頂きたいから。』
その台詞を帰宅後聞いたアタシは、震え上がってしまった。
いくらアタシでも、そんな偉い人の前にスッピン晒す勇気ないよ…!
TPOってモンが、あるんだから…っ!!
しかし、貴志さんは、アタシの言い分を聞いてはくれなかった。
「いつものルージュだけで、充分ですよ。お祖父さまには、“素”の真唯を見て頂きたいんです。…私が選んだ女性の素晴らしさを…」
夜中、ベッドの中。
穏やかに一回だけ愛し合った後のピロートーク。
……アタシは貴志さんに確かめずにはいられなかった。
「…もし…もしもですよ。…万が一、その緋龍院のお祖父さまから、『こんな嫁、認めん!!』って怒られても…アタシを選んで下さいますか…?」
「…真唯さん…万が一でも、そんな事はないと断言できますが…もしもの時は、席を途中で投げ出す事も辞さないですよ。」
「…貴志さん…っ!」
「…でも、賭けても良い。そんな事は、絶対、あり得ない。祖父は、貴女のブログを読んで『気に入った』と言っているのですから…」
「…文章と本人のギャップに、余計ガッカリされてしまうかも…っ!」
「…やっぱり、何か賭けましょう。ご褒美が待っていると思うと、明日を乗り切れるかも知れませんよ。真唯さんは、欲しい物はありませんか? お祖父さまに実際にお会いになって、気に入って頂ける事にそれを賭けますよ。」
「…はらた○らさんに、三千点…」
「…真唯さん…貴女、本当に緊張してるんですか?」
「…こんなしょーもないギャグかましてないと、落ち着かないんですってばっ!!」
『では、落ち着く事をしましょう』と言って、二回戦に縺れ込まれたのは大いなる誤算だったけれど。
酷く緩やかな穏やかな愛撫は、確かにアタシを安堵させてくれて。お陰で夢をみる事もなく、グッスリ眠る事が出来たのだった。そして、その二回に留めてくれたお陰で、身体も楽で……ブランチの御雑煮とお節の残りをつつく頃には、アタシはすっかり元気になっていた。
そして夕方、優里ちゃんの処で購入してもらった着物ドレスワンピを着る頃には、完全に開き直ってしまっていた。
……俎板の上の鯉。
……後は野となれ山となれ。
恨むなら、女の趣味の悪い自分の孫息子を恨んでくれ…っ!
それでも。
何を言われても、絶対、別れてなんかあげないんだから…っ!!
※ ※ ※
そうしてSPさんたちの車でやって来た料亭は、どこの豪邸なのっ!? と思ってしまうような日本建築の立派な“御屋敷”のようなお店で。
看板らしきものがないところが、コワイ。
女将さんだと云う方に直々に案内されたのは、離れの一室。
それは、あの山梨で泊まった“甲府の迎賓館”を思わせる処だった。
……渡り廊下から見えた庭園は、それは見事だった。
……チラッと見えた池には、きっとン百万もする錦鯉なんかが悠然と泳いでいるに違いない。
……寒中水泳するから、アタシとかわってくれないかなァ~~
そんな現実逃避をしていた頭は、「御前。おみえになりました。」との女将さんの声で真っ白になってしまったのだった。
中から聞こえた「入って頂け」との声に、サラリと障子が開かれ。
中に入ると、その場に正座し平伏した貴志さんの姿に、アタシも慌てて習った。
「お祖父さま。明けまして、おめでとうございます。
昨年は結婚を認めて頂き、ありがとうございました。
本日はお招きにあずかりまして。
…こちらが、私の伴侶の上井真唯です。
…真唯…ご挨拶を。」
貴志さんの紹介にゴクリと喉が鳴り。
彼の促す声に応えて、大声で挨拶した。
「…明けまして、おめでとうございますっ!!
…この度は、お招き頂きまして、ありがとうございます!
…貴志さんと結婚させて頂きました、上井真唯と申します!
…不束者ですが、どうぞよろしくお願い致しますっ!!!」
……緊張したなんて、もんじゃない。
……その昔経験した、就活の面接の方が余程リラックスしていただろう。
……いつ顔を上げれは良いんだろう。
そんな事を思っていた時。
「…うん、うん。…可愛いお嬢さんだ…貴志が夢中になる訳だ。」
間近から降って来た声に、おそるおそる顔を上げれば、そこには好々爺然としたお爺さんの顔があった。
……え…?
……この優しそうなお爺さんが、緋龍院家の…貴志さんのお祖父さんなの…?
……それより、足音しなかったよ、今っ!?
ポカンとした表情で驚愕していると、そのお爺さんはアタシの手を握り、手を引いて「そんなに畏まらんで。こっちへお座り。」と広いお座敷の、立派なお座布団に案内してくれた。下座の貴志さんが座るべきであろう座に案内されてギョッとする。
「…あ、あの…! …わ、私はこっちで…!!」
「…うん? …気にせんでも良いのに…貴志も真唯ちゃんには、こっちに座ってもらいたいだろう?」
「…ええ。…ですが、真唯が落ち着きません。…御心遣いは、有り難いのですが…」
「ウォッホッホッ! …堂々と惚気おる…まあ、いい。二人とも好きにお座り。」
「「…失礼致します…」」
アタシと貴志さんの声が重なったのが、また面白かったらしいお爺さんは尚も笑った。
「…美味しいです…!」
勧められて飲んでみた杯は、とてもフルーティーだった。
「そうだろう、そうだろう。一度、真唯ちゃんに飲んでもらいたかったんだ。」
ニコニコと女将さんのお酌で杯を重ねる“お祖父さま”は、とても嬉しそうだ。
……“御前”とお呼びしたら、怒られてしまったのだ。
……折角出来た“孫娘”には、“お祖父さま”と呼ばれたいと。
「可愛い気のない孫ばっかりでのう…儂は真唯ちゃんみたいな、愛らしい孫娘が欲しかったんだ。」
【雅山流 如月】と云う名のお酒を飲んで、お祖父さまはニコニコの恵比寿顔だ。
……愛らしいって言ったよ!?
……もしかして、趣味の悪さは遺伝!?
……ああ…でも、このお二人は血の繋がりはないんだっけ……
……でも、アタシや貴志さんを見つめてくれる瞳が、とても温かい……
食前酒に、お屠蘇を頂いて。
先付に、お目出度い鶴の器に入っていた縁起物のちょろぎを頂きながら、ようやく自分が歓迎されている実感が湧いて来て…以前、吉兆さんで頂いた物より歯ごたえが良い物を味わう余裕が出て来た。
お椀のお吸い物にカラスミが入っていたり、鶴が羽を広げた綺麗なお皿にふぐがうすく盛り付けてあるお造りを、ご飯にフカヒレの餡かけを頂いたり…あァー、お正月から贅沢しっ放しだなァ~~
……でも、何よりのご馳走は、お二人の遣り取りだ。
……貴志さんが、“別格”と言っていた意味が良く理解る……
「…まったく、勿体つけおって…嫁にしたばかりで可愛いのは理解るが、もっと早く紹介せんか。」
「…申し訳ありません…腕の中に囲って、外には出したくなかったもので…」
「…言いおる、言いおる…お前の口から女の惚気が出て来るとは…本当に、長生きはするもんだな。」
「…ええ。…これからも、妻の…真唯の惚気を言い続けますから、お祖父さまも、どうか長生きなさって下さい。」
すっかり和んで、水菓子のフルーツを頂いていたアタシに、お祖父さまは水を向けて下さった。
「真唯ちゃん、貴志は良くしてくれるかな…?」
「はい! 勿体ないほど良くして頂いてます!!」
「そーか、そーか…ところで真唯ちゃん。」
「はい、何でしょうか?」
「結婚祝いを贈りたいんだが…何か欲しい物はないかな?」
「…ハ…?」
「貴志から、君が物欲が少ないと聞いてはおるが…何か一つくらいないか?」
「…え、えーとォ~~…」
「君に免許があったら車でも良かったんだが…別荘でも島でも、好きなものを贈らせてもらおう。」
「…………」
「なんだったら、おねだりでも良いんだぞ? …そう、例えば、君を苦しめた京一郎を罰して下さい、とか、な。」
「……っ!」
「何かして欲しい事の一つくらい、あるだろ…ん?」
「…真唯…折角の有り難いお申し出だ。受けると良い。緋龍院のお祖父さまに、不可能な事はない。…元・兄の…緋龍院建設社長の解雇だとて叶えて下さるだろう。」
夫は真唯の味方をしてくれるどころか、ギョッとするような事を言い出して……その後も物騒な会話が続く。
「なんだ。京一郎の首が欲しいか? …ん?」
「緋龍院建設から追い出して…路頭に迷わせたら面白いでしょうね。…そのくらいで、私の真唯を侮辱した罪は消えはしませんが…」
「…ちょ、ちょっと待って下さいってば!!」
慌てて口を挟めば、『何だ』と言いたげな四つの瞳がこっちを向いてくれる。
「…アタシは、そんな事は望んでませんっ!! …第一、もう、緋龍院社長には謝罪して頂いたし…アタシもそれを受けたんですから…」
「…やれやれ、欲のない事よな…」
「…甘いですね、真唯も…」
そんな二人の声を聞いていて……唐突に閃いた。
「…お祖父さま…して欲しい事とは反対に、“して欲しくない事”をお約束頂く事は…可能ですか?」
「無論だ」
「…では、夫に…貴志さんに帝都ホテルの【ロイヤル・パークスイートルーム】を、もう二度とアタシのためにリザーヴしない事を約束させて下さい。」
「ま、真唯さんっ!?」
お祖父さまの手前、『真唯』と呼び捨てていた夫の声が裏返る。
一方、頼まれたお祖父さまの表情は、楽し気だ。
……これは、事情を知られているかも知れないと思いつつも、一応の説明をする事にした。
「…これはお恥ずかしい話なのですが、貴志さんは…私の夫は私のために、国賓の方やVIPの方のみが宿泊する事を許される、帝都ホテルの【ロイヤル・パークスイートルーム】をリザーヴしてしまうのです。…私は、それが身の丈にあわずイヤだったのですが…お祖父さまの御力で、もう二度と貴志さんが私のためにあの豪華過ぎる部屋をリザーヴしないよう、約束させて下さい!!」
「了解った。約束しよう。」
「お祖父さま!!」
「お祖父さま!?」
アタシの歓喜の叫びと、貴志さんの驚愕の叫びが綺麗にハモった。
「何を慌てておる。儂は、可愛い孫娘の頼み事を聞いてやると約束したのだ。
…良いな? もう二度と、この娘のためにあの部屋を使う事は許さんぞ。」
「…そんな…っ!! …お祖父さま…真唯さん…」
貴志さんの萎れた姿は哀れを誘うが……ここで絆されてはいけない!
あの心臓に悪い部屋を、二度と見ないで済むチャンスなのだっ!!
「…何でも頼みを聞いてやると言って、あの部屋を使用させない許可を求めてくるとはな…
…身の丈か…欲の皮の突っ張った一族の者どもに聞かせてやりたい台詞だな。
…良い嫁をもらったな、貴志。…大事にせんと、罰が当たるぞ。」
「勿論です。私の生涯を掛けて、大切に守っていきますよ。」
「うむ。 …しかし、あまりいき過ぎるのも、どうかと思うぞ。」
「…っ! お祖父さま…っ!!」
貴志さんの焦ったような声と、ワハハハッ!!と楽しげなお祖父さまの笑い声が重なって。
……何だか理解らないけど、アタシまで楽しい気分になってしまって。
その後、お祖父さまは、本当にアタシのブログを読んで下さっているらしく、色んな話題を出してアタシを楽しませて下さった。そのお話の中には、例の「イルヤンカ・コーポレーション」の話もあって。ヒッタイトの古代文明にも造詣が深いらしく、とても楽しく興味深く拝聴させて頂いた。
その内に、ホントにリラックスしてきてしまったアタシの“上井真唯センサー”のスイッチが入ってしまい、お部屋の中の調度品の素晴らしさにそれぞれの由緒を教えて頂いたり、上座から見えるライトアップされたお庭をわざわざ外に出て拝見させて頂いたりしてしまって。
……随分昔に亡くしてしまった祖父との時間を取り戻す事が叶って、その懐かしい“お祖父ちゃん”に可愛いがってもらっているような……そんな幸せな錯覚を起こしてしまったのだった。
その時、アタシは知らなかった。
【CLUB NPOE】の総支配人・澤木さんに続いて、“緋龍院の影の支配者”と恐れられる人間を後ろ盾に得た事を。
お正月の三が日を無事に、楽しく過ごす事が出来て。
本当の“お祖父さま”を手に入れたように呑気に喜んでいたアタシは、何にも理解ってはいなかったのだ。
……緋龍院の次期総帥の座を、貴志さんに継がせたいと密かに考えていた京司老の真意が、いずこからともなく漏れ。
ストーカーどころか、貴志さんの命を狙って、緋龍院一族内部から放たれた刺客がいた事を。そして、その刺客の手がアタシに伸ばされようとしている事を察知した貴志さんが、アタシに京司老の後ろ盾を得るべく画策した事を…京司老も孫の思惑を理解していながらそれに乗った事も…二人でアタシを守ってくれようとしていた事を…呑気なアタシは、知る由もなかったのだ。
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