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本編
No,10
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あたしはレヴィ神殿に付随する【神子の間】のカーテンの陰でニンマリと笑った。
目の前では飛ぶように【レヴィの神子の、クリスマスリース】が売れている。その横で負けず劣らず売れているのが、今回のもう一つの目玉である【ホットワイン】である。
※ ※ ※
こちらの世界では、“葡萄酒を温める”と云う概念がない。
そのまま飲むのが一般的で果実水とのカクテルなどはあるが、温めるなど思いもよらないのだろう。
だから、あたしは考えた。
元の世界のヨーロッパのクリスマスマーケットには欠かせない飲み物であった『グリューワイン』を作ろうと。あたしはワインを一本開けると料理に使ったり、色々とアレンジして簡単オリジナル・カクテルにして飲んだりしたものである。その経験を生かそうと思ったのだ。試しに作って飲んでみてもらったフェデーリ孤児院のバルバラ院長やアマーリア先生には大好評で、大いに気を良くしたものである。
赤葡萄酒をお鍋に入れて火にかける。シナモンやグローブ、ブラックペッパーもどきの香辛料やお砂糖を適量混ぜて味を調える。レモンの輪切りを添えたら出来上がりだ。この世界にはカセットコンロなどと云う便利な代物はないが、大きな七輪の変形のような物がある。それで会場でも熱々のホットワインを売って配る事が出来るのだ。寒い季節に温かな飲み物は何よりのご馳走だ。最初は戸惑ってた人々も、初めての飲み物におっかなびっくり挑戦して。その美味しさに驚嘆して、大喜びして下さった。息を吹きかけ冷ましながら飲む、温かな葡萄酒は大好評を博し。お買い上げ下さった方々が満面の笑顔で楽しんで下されば、それが何よりである。ホットワインは画期的だったみたいで、アッと云う間に完売御礼となってしまったのは嬉しい誤算であった。
クリスマスリースの他にも、クリスマスの星をモチーフにした髪飾りや異世界の天使のぬいぐるみの売れ行きも好調で。孤児院の先生達や子供達に言わせれば、“レヴィの神子人気”のあらわれなのだそうだ(苦笑)。
なんにせよ、この売上金が孤児院運営の資金になってくれるのだから、万々歳だ。お客様は神様なのだ。張りぼての神子なんかよりも、ずっと偉くありがたい存在なのである。
最初は異世界の異教の祭りに便乗する催しに不承不承だったレヴィ神殿の神官達も『仕方がない。』と云う苦笑い混じりの表情だ。何しろあたしは、神殿で一番“神様”に近い存在なのだから、文句は言わせない。
因みにこのバザー運営費は、“神子予算”と例のチャリティー・オークションの売上金から出されている。で、あのオークションだが、売れた売れた。面白いように売れた。“孤児院の為のチャリティー・オークション”と銘打ってるので、慈善家を気取るお貴族様や金満家の皆様が高値をつけて下さって。あたしも描いた甲斐があったと云うものである。正直なところを言うと、天使や大天使はともかく聖母マリアを描く時には少なくともあたしの胸は痛みを覚えたから(苦笑)。
でも、良かった。
お陰で七つの孤児院の子供達に、クリスマスのプレゼントをする事が出来るから。
買い物はもう済ませてある。それぞれの子供達の一番欲しい物を贈る事は出来ないが、欲しがりそうな物は用意する事が出来た。
喜んでくれれば、良いんだけど……
あたしは目の前の光景を見つめながら、明日のクリスマス本番の子供達の笑顔を思い浮かべたのだった。
※ ※ ※
昨日のクリスマスイブに開催したバザーは大盛況であった。
各孤児院独自のオリジナリティに溢れたクリスマスリースは、どこの孤児院の物も面白いように売れた。『魔除け』の意味は勿論、『新年の幸福祈願』と云う意味合いも予め周知させていたので、来年初頭くらいまでは王都中の各家庭の玄関の扉を飾る事となるであろう。尚、神子の御利益だが、期待外れだったら「ごめんなさい。」と白を切…謝るしかないだろう(苦笑)。『当たるも八卦当たらぬも八卦』なのダ★
しかもこの日販売された【ホットワイン】はセンセーショナルに世間に迎え入れられ。話題が話題を呼び、爆発的に広まってゆくのは、また後日の話である。
そうして本日、クリスマスの翌々日。
フェデーリ孤児院の、少し遅いクリスマスパーティーに招かれた。
院長を始め、先生達には『子供達には内緒にして下さい。』と頼んでおいたのに、結局バレてしまったらしい。クリスマスプレゼントがあたしからだと云う事が。『子供達が是非ともお礼がしたいと申しております。』と言われてしまえば否やがあろう筈がない。即席のパーティーとは思えない持て成し振りであった。ズラリと並べられたご馳走も驚いたけど、何よりも嬉しかったのは―――子供達の晴れやかな笑顔だ。
「ナツキ様、ありがとうございます! とっても嬉しかった!!」
「これすっごく欲しかったんです!」
「すっげぇ嬉しかった!!」
子供達の賛辞の大合唱には面食らったけど、あたしの方こそ嬉しかった。
あたしの自己満足が無駄ではなかったのだと理解ったから。
あたしを子供達が取り囲むが、どの表情も明るく輝いてる。
そうして皆口々に我先にと、いかに嬉しかったかを教えてくれるのだ。
やって良かった。
頑張った甲斐があった。
心の奥底からそう思った。
そしてあたしはテーブルの所謂『お誕生席』に座らされて。
クリスマスのご馳走をみんなでワイワイ騒いで楽しく話しながら頂いた。
話題は勿論、初めてのクリスマスプレゼントとクリスマスバザーの事だ。
バザーではあたしは完全な裏方で、台所でホットワインを作り続けたが。年長の子供達はリースの作り手であると同時にバザーの売子でもあったのだから、興奮は簡単にはおさまらない。年少の子達も懸命にそのお手伝いをしてた。先生達は手分けをして、リースの売子の指導とホットワインの売子をしていたのだから彼らも大忙しであった。本当に皆さん、ご苦労様である。このクリスマスパーティーは、彼らの慰労会でもあり忘年会も兼ねているのだろう。
元の世界で唯一正社員採用をされた会社では、お題目を唱えたただの飲み会だった。お酒を飲む口実さえあれば、何でも良かったのだ。『慰労会』とは名ばかりで、工場の前の駐車場の片隅でアウトドア用品の鉄板でバーベキューをするのだが、ビールや缶チューハイを飲むのは男の作業員と社員だけで。女の事務員は材料を用意して焼くだけで大わらわだった、典型的な男尊女卑の会社だった。『慰労会』が聞いて呆れる(失笑)。
そんなものと比べるのは甚だ失礼な気はするが、異世界の『慰労会』は思い遣りと労りに満ちているような気がする。子供達も先生達もみんなが笑顔で、満足感と充実感を表情が物語っているのだ。
―――嬉しい。
こんなに楽しくて温かなクリスマスは初めてだ―――
あたしはクリスマスパーティーなんて、やった事がない。
パーティーなんて開ける経済的余裕がなかったのが一番の原因だが、友達とプレゼント交換なんてした事もない。クリスマスはいつも仕事かバイトだった。『デートなの~♪』などと言って早く帰る女性達を冷めた眼で見ながらも、精神の奥底では羨ましかったのだと。一人っきりの部屋でラジオから流れてくるクリスマスソングを聞きながらケーキを食べてそれで満足してる心算だったけど、本当は寂しかったのだと。
現在ならば、理解る。
素直に認められる。
幼い頃の事は覚えていないけど、物心ついた頃には祖父母と暮らしてて。
気を使ったお祖母ちゃんがクリスマスプレゼントを用意してくれたけど。
逆にそれが申し訳なかった。
だって、あたしは……孤児だから。
そんな負い目が、どうしても拭い切れなかった。
捨て子のところには、サンタクロースもやっては来ないのだ、と。
しかも二度も、肉親と両親から捨てられてしまう子供のところへなど。
そんなどうしようもない孤独感は容赦なくあたしを苛んだ。祖父母の愛情も、その底なしの汚泥の沼からあたしを引き上げる事は出来なかった。
……ああ……あたしは。
こんなにも、無償の愛情と人間の温もりに飢えていたのだ……
幼子のイエスを抱く聖母マリアの姿に抱いた反発は、熱望し渇望する精神の裏返しであったのだ。
気が付けばあたしは泣いていて。
子供達と先生達を驚かせ心配させてしまったけど。
あたしの心は晴れやかな温かさに満ちていた。
長い間の鬱屈が涙となって流れてゆき、息苦しさから解放された気分だったのだ。
子供達の心配してくれる様子も、あたしの心の慰めになってくれた。
子供達に与えたと思っていた事は逆に、あたしの心の癒しになってくれたのだ。
あたしは慰めてくれる子供達を抱きしめて、その熱いくらいのぬくもりを感じて。
守っている心算が守られている事を実感していたのだった。
※ ※ ※
こうして、あたしの異世界での年の末は暮れてゆき。
新年を迎えた王都の街は【レヴィの神子の、クリスマスリース】の御利益にあずかる事となったのであった。
目の前では飛ぶように【レヴィの神子の、クリスマスリース】が売れている。その横で負けず劣らず売れているのが、今回のもう一つの目玉である【ホットワイン】である。
※ ※ ※
こちらの世界では、“葡萄酒を温める”と云う概念がない。
そのまま飲むのが一般的で果実水とのカクテルなどはあるが、温めるなど思いもよらないのだろう。
だから、あたしは考えた。
元の世界のヨーロッパのクリスマスマーケットには欠かせない飲み物であった『グリューワイン』を作ろうと。あたしはワインを一本開けると料理に使ったり、色々とアレンジして簡単オリジナル・カクテルにして飲んだりしたものである。その経験を生かそうと思ったのだ。試しに作って飲んでみてもらったフェデーリ孤児院のバルバラ院長やアマーリア先生には大好評で、大いに気を良くしたものである。
赤葡萄酒をお鍋に入れて火にかける。シナモンやグローブ、ブラックペッパーもどきの香辛料やお砂糖を適量混ぜて味を調える。レモンの輪切りを添えたら出来上がりだ。この世界にはカセットコンロなどと云う便利な代物はないが、大きな七輪の変形のような物がある。それで会場でも熱々のホットワインを売って配る事が出来るのだ。寒い季節に温かな飲み物は何よりのご馳走だ。最初は戸惑ってた人々も、初めての飲み物におっかなびっくり挑戦して。その美味しさに驚嘆して、大喜びして下さった。息を吹きかけ冷ましながら飲む、温かな葡萄酒は大好評を博し。お買い上げ下さった方々が満面の笑顔で楽しんで下されば、それが何よりである。ホットワインは画期的だったみたいで、アッと云う間に完売御礼となってしまったのは嬉しい誤算であった。
クリスマスリースの他にも、クリスマスの星をモチーフにした髪飾りや異世界の天使のぬいぐるみの売れ行きも好調で。孤児院の先生達や子供達に言わせれば、“レヴィの神子人気”のあらわれなのだそうだ(苦笑)。
なんにせよ、この売上金が孤児院運営の資金になってくれるのだから、万々歳だ。お客様は神様なのだ。張りぼての神子なんかよりも、ずっと偉くありがたい存在なのである。
最初は異世界の異教の祭りに便乗する催しに不承不承だったレヴィ神殿の神官達も『仕方がない。』と云う苦笑い混じりの表情だ。何しろあたしは、神殿で一番“神様”に近い存在なのだから、文句は言わせない。
因みにこのバザー運営費は、“神子予算”と例のチャリティー・オークションの売上金から出されている。で、あのオークションだが、売れた売れた。面白いように売れた。“孤児院の為のチャリティー・オークション”と銘打ってるので、慈善家を気取るお貴族様や金満家の皆様が高値をつけて下さって。あたしも描いた甲斐があったと云うものである。正直なところを言うと、天使や大天使はともかく聖母マリアを描く時には少なくともあたしの胸は痛みを覚えたから(苦笑)。
でも、良かった。
お陰で七つの孤児院の子供達に、クリスマスのプレゼントをする事が出来るから。
買い物はもう済ませてある。それぞれの子供達の一番欲しい物を贈る事は出来ないが、欲しがりそうな物は用意する事が出来た。
喜んでくれれば、良いんだけど……
あたしは目の前の光景を見つめながら、明日のクリスマス本番の子供達の笑顔を思い浮かべたのだった。
※ ※ ※
昨日のクリスマスイブに開催したバザーは大盛況であった。
各孤児院独自のオリジナリティに溢れたクリスマスリースは、どこの孤児院の物も面白いように売れた。『魔除け』の意味は勿論、『新年の幸福祈願』と云う意味合いも予め周知させていたので、来年初頭くらいまでは王都中の各家庭の玄関の扉を飾る事となるであろう。尚、神子の御利益だが、期待外れだったら「ごめんなさい。」と白を切…謝るしかないだろう(苦笑)。『当たるも八卦当たらぬも八卦』なのダ★
しかもこの日販売された【ホットワイン】はセンセーショナルに世間に迎え入れられ。話題が話題を呼び、爆発的に広まってゆくのは、また後日の話である。
そうして本日、クリスマスの翌々日。
フェデーリ孤児院の、少し遅いクリスマスパーティーに招かれた。
院長を始め、先生達には『子供達には内緒にして下さい。』と頼んでおいたのに、結局バレてしまったらしい。クリスマスプレゼントがあたしからだと云う事が。『子供達が是非ともお礼がしたいと申しております。』と言われてしまえば否やがあろう筈がない。即席のパーティーとは思えない持て成し振りであった。ズラリと並べられたご馳走も驚いたけど、何よりも嬉しかったのは―――子供達の晴れやかな笑顔だ。
「ナツキ様、ありがとうございます! とっても嬉しかった!!」
「これすっごく欲しかったんです!」
「すっげぇ嬉しかった!!」
子供達の賛辞の大合唱には面食らったけど、あたしの方こそ嬉しかった。
あたしの自己満足が無駄ではなかったのだと理解ったから。
あたしを子供達が取り囲むが、どの表情も明るく輝いてる。
そうして皆口々に我先にと、いかに嬉しかったかを教えてくれるのだ。
やって良かった。
頑張った甲斐があった。
心の奥底からそう思った。
そしてあたしはテーブルの所謂『お誕生席』に座らされて。
クリスマスのご馳走をみんなでワイワイ騒いで楽しく話しながら頂いた。
話題は勿論、初めてのクリスマスプレゼントとクリスマスバザーの事だ。
バザーではあたしは完全な裏方で、台所でホットワインを作り続けたが。年長の子供達はリースの作り手であると同時にバザーの売子でもあったのだから、興奮は簡単にはおさまらない。年少の子達も懸命にそのお手伝いをしてた。先生達は手分けをして、リースの売子の指導とホットワインの売子をしていたのだから彼らも大忙しであった。本当に皆さん、ご苦労様である。このクリスマスパーティーは、彼らの慰労会でもあり忘年会も兼ねているのだろう。
元の世界で唯一正社員採用をされた会社では、お題目を唱えたただの飲み会だった。お酒を飲む口実さえあれば、何でも良かったのだ。『慰労会』とは名ばかりで、工場の前の駐車場の片隅でアウトドア用品の鉄板でバーベキューをするのだが、ビールや缶チューハイを飲むのは男の作業員と社員だけで。女の事務員は材料を用意して焼くだけで大わらわだった、典型的な男尊女卑の会社だった。『慰労会』が聞いて呆れる(失笑)。
そんなものと比べるのは甚だ失礼な気はするが、異世界の『慰労会』は思い遣りと労りに満ちているような気がする。子供達も先生達もみんなが笑顔で、満足感と充実感を表情が物語っているのだ。
―――嬉しい。
こんなに楽しくて温かなクリスマスは初めてだ―――
あたしはクリスマスパーティーなんて、やった事がない。
パーティーなんて開ける経済的余裕がなかったのが一番の原因だが、友達とプレゼント交換なんてした事もない。クリスマスはいつも仕事かバイトだった。『デートなの~♪』などと言って早く帰る女性達を冷めた眼で見ながらも、精神の奥底では羨ましかったのだと。一人っきりの部屋でラジオから流れてくるクリスマスソングを聞きながらケーキを食べてそれで満足してる心算だったけど、本当は寂しかったのだと。
現在ならば、理解る。
素直に認められる。
幼い頃の事は覚えていないけど、物心ついた頃には祖父母と暮らしてて。
気を使ったお祖母ちゃんがクリスマスプレゼントを用意してくれたけど。
逆にそれが申し訳なかった。
だって、あたしは……孤児だから。
そんな負い目が、どうしても拭い切れなかった。
捨て子のところには、サンタクロースもやっては来ないのだ、と。
しかも二度も、肉親と両親から捨てられてしまう子供のところへなど。
そんなどうしようもない孤独感は容赦なくあたしを苛んだ。祖父母の愛情も、その底なしの汚泥の沼からあたしを引き上げる事は出来なかった。
……ああ……あたしは。
こんなにも、無償の愛情と人間の温もりに飢えていたのだ……
幼子のイエスを抱く聖母マリアの姿に抱いた反発は、熱望し渇望する精神の裏返しであったのだ。
気が付けばあたしは泣いていて。
子供達と先生達を驚かせ心配させてしまったけど。
あたしの心は晴れやかな温かさに満ちていた。
長い間の鬱屈が涙となって流れてゆき、息苦しさから解放された気分だったのだ。
子供達の心配してくれる様子も、あたしの心の慰めになってくれた。
子供達に与えたと思っていた事は逆に、あたしの心の癒しになってくれたのだ。
あたしは慰めてくれる子供達を抱きしめて、その熱いくらいのぬくもりを感じて。
守っている心算が守られている事を実感していたのだった。
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こうして、あたしの異世界での年の末は暮れてゆき。
新年を迎えた王都の街は【レヴィの神子の、クリスマスリース】の御利益にあずかる事となったのであった。
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