Where In The World

天野斜己

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Together Forever

No,1

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現在いま、あたしは“銀ブラ”をしている。
そう、日本の銀座の街をウィンドウショッピングしてるのだ。
ヴィオと二人で、腕なんか組んじゃったりして(照)。



※ ※ ※



あたしはずっと、皇帝陛下に嫌われているのだと信じ込んでいた。
 当たり前だ。
 三年半もの間、放っておかれていたのだから。
“初夜”さえすっぽかされた時に思った。
 『親にさえ捨てられた
 こんなアラサーの喪女あたしが、他人ひとに愛されるはずがないのだ。』
と。
 一時は真剣に別れを考えた。

しかし、いざ蓋を開けてみたら。
いつの間にか好きになっていた美貌の皇帝陛下とは、何と両想いで!
しかも知らない内に長い間、片思いされていたと言うのだ!!
 長い間放置されていた理由も凄かった。
 夢物語としか考えてなかった、この異世界の神話が真実の話で。
クリュヴェイエの呪いの解呪について、ずっと長い間努力していてくれたのだ。
それも全て、レヴィの神子あたしの為に。
しかも異世界・・・の、あたしの本当の両親の事も教えてくれたのだ!!

 望みのない片思いだと思っていた相手に愛されていた事実は勿論嬉しかったけど。
 自分が『“要らない子供”ではない』と云う事実は、あたしの精神こころを救ってくれたと言っても過言ではない。



そうして無事にクリュヴェイエの呪いの解呪に成功した後は、陛下ヴィオはあたしを必要以上に傍に置くようになった。執務や公務以外の事では一時も片時も離さないのだ。そしてあたしに愛を囁くのだ(赤面)。まるで今までの想いを開放するように(照)。それ・・は今までの陛下とはまるで別人で、半年経った今でも決して慣れる事が出来ないでいる。
 困惑する事しきりなのだが、そんなあたしを陛下ヴィオは決して責める事はない。
むしろ当然の事のように受け入れて、あたしの気持ちを大切にしてくれる。

 『そなたの気持ちが追いついてくれるのを気長に待つから心配いたすな。』
とのお言葉も頂いている。

そのお言葉を頂戴したのは、陛下ヴィオの腕枕でのピロートークだった事は恥ずかしい余談である(大照)。
……そうなのだ。
あたしは現在いま、毎晩のように陛下ヴィオに抱かれている(照)。
 皇帝陛下ヴィオ皇妃あたしの部屋の中間に存在していた秘密の部屋。
 『皇帝夫婦の寝室』で。
 実は秘密の扉で行き来出来るようになっていて、陛下ヴィオは今まで厳重に鍵をかけていたそうだ。あたしを襲ってしまわないように(照)。ちなみに後宮制度は廃止された。建前上は色々と言っていたけれど、あたしに打ち明けてくれた本音は『そなた以外の女など汚らわしいだけだ。』との事だ(大照)。側室達を抱く振り・・・・をしていたベッドも処分してしまわれて、ついでにあたしの部屋のベッドも撤去してしまわれた。

『これからは我らはこの寝室でやすめば良い。
  もし私の執務が忙しくてそなたが先に寝んでしまっていても、
  せめてそなたを腕に抱いて眠りたい。
  万が一喧嘩などしても、一緒のベッドだと謝りやすい。』
と、おっしゃられて(激照)。

 閑話休題。
そんな訳で陛下ヴィオからはとても大切にされていて、最早王宮中の噂のように“溺愛”の域に達しているかのようなのだけれど。
そんなある日。
 陛下ヴィオはクリスマスを挟んだ三日間、お休みを取られて。
あたしを地球の日本に転移させて下さったのだ。
一日目はあたしを召喚・・した年のお盆の日だった。
 何とネット通販で取り寄せたと言うノースリーブのワンピースを着せられパンプスを履かされて。どこへ行くのかと思ったら、お祖父ちゃんとお祖母ちゃんのお墓参りをさせて下さったのだ。陛下ヴィオは黒いスーツをお召しになっておられて、あたしの祖父母に丁寧に挨拶して下さったのだ。その時の言葉をあたしは一生忘れられないだろう。



『…七都姫の御祖父様。御祖母様。
  血の繋がりのない七都姫を慈しみ育てて下さって、本当に感謝に堪えません。
  …七都姫は実の御両親に本当に愛されていましたが
 止むを得ない事情で孤児になってしまいました。
  そんな御両親に代わって七都姫を育てて下さったのは貴方方です。
  貴方方が愛情を込めて育てて下さったからこそ、
  七都姫はこんなに真っ直ぐで素敵な素晴らしい女性に成長したのです。
  これからはわたくしが貴方方に代わりまして、必ず七都姫を幸せにしてみせます。
  どうか安心して、ゆっくり休んで下さい。』



皇帝陛下と云う身分でありながら墓前に跪きそう言って、長い間瞑目していたのである。あたしはその言葉を聞いた瞬間、涙が溢れて止まらなくなってしまった。お祖父ちゃんやお祖母ちゃんとの懐かしい日々。そして異世界に召喚されてからのヴィオとの日々の事が走馬灯のように頭をよぎり。涙が次から次へと溢れて流れて。ヴィオの胸をかりて、しばらく泣き続けてしまったのだった。
それは決して、悲しみの涙ではなくて。
むしろ逆の、嬉し涙だった。


産まれて来た事。

そうしてこの男性ヴィオに出逢う事が出来た幸運に、心の底から感謝した。


それからお寺の住職さんに永代供養を依頼して。
アパートの解約などの諸々の用事を済ませて戻って・・・来た。
お位牌はお仏壇ごと皇家の霊廟の中に安置させて頂いた。何だか神聖で厳粛な空気が流れているような気がする。ここでならお祖父ちゃんとお祖母ちゃんも静かに安らかに眠る事が出来るに違いない。あたしがずっと気に病んでいた事を知っていたかのようなヴィオの気遣いには、心底感謝して安心させられたのだった。



そうして、クリスマスイブ。
 再び日本に転移した。
 今度はボルドー色のシックなドレスワンピースにそれに似合ったアクセサリーと毛皮のコートを着せられて。そしてクリスマスイルミネーションに彩られた銀座の街をウィンドウショッピングにする羽目に陥ってしまった。


そうしてようやく、冒頭の場面シーンに戻るのである。
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