Where In The World

天野斜己

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【番外編】

皇帝陛下夫妻の夏休み(バカンス) ※R18

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あたしは目の前に広がる海を眺めて、心地良い潮風を感じていた。



※ ※ ※



八月は【豊漁祭】が行われる、バルニエール国にやって来た。
海の女神フィオレンティーノの名前を冠された首都がある国だ。
 首都フィオレンティーノの神殿で、この国の守護神である海の女神に祈りを捧げるのだ。
 今年の海の恵みに感謝し、来年の豊かな漁の収穫を祈願するのだ。
あたしは今まで義務的な国家行事としか捉えていなかったが、この異世界の神話が事実であり史実だとすれば。荒れ狂う海を平定した【海の女神フィオレンティーノ】も実際に存在するのだろうかと考えてしまう。

……だって【美の女神ベルナルディーノ】を、あたしは実際にこの眼で確かに見たのだから……

今や、神聖ブリュール皇国で起こった【ベルナルディーノの奇跡】は大陸中に広まっていて。
このバルニエールでも、あたしは大歓迎されてしまった。
“奇跡の神子”として。
 本人としては正直に言えば『冗談じゃない!』と憤り、そんな呼び方は即刻止めて欲しいのだが。
ヴィオには『無理だな。』と苦笑いと共に言われ。周りの皆からも『無理です!』『諦めて下さい!』と言われてしまっているのだ(涙)。 諦めたくないのが本音だが、謹んでその呼び名を甘受する程あたしは厚顔無恥ではない。
 身の程はわきまえているのだが、お祭りの間は我慢しましたよ。
涙を飲んで。
その甲斐もあってか、素ン晴らしい女性ひとに出会えた!
フレドの婚約者であるフローラ姫だ♪
栗色の巻き毛と新緑の瞳が魅力的だ。
 公の場に出る事はなかったが、フレドがあたしに会わせたいと連れて来て下さったのだ!
 侯爵家のご令嬢だが、田舎暮らしが身に付いてらして、とても素敵な女性かたなのだ!
ああ、憧れの田舎暮らしスローライフ!!
 高位貴族独特の高飛車らしさなど微塵もなく、のんびりした気性のおしとやかな。
けれども領地経営などにも精通してらっしゃる才女でもいらっしゃるのだ!!
 営業事務職だったあたしと話があって、たちまち大の仲良しになってしまって。
結婚式にばれたのは勿論、今年の【収穫祭】には再会を約束したのだった。





 「フローラ姫って、素敵な女性かたですね! 彼女を選んだフレドは眼が高いです!」
 【豊漁祭】が終了した晩、あたしは国賓の客室ですっかり興奮していた。

そんなあたしにヴィオは、フレドとフローラ姫の馴れ初めや数々の恋バナを教えてくれた。 を輝かせてその話に聞き入ったあたしは、今から再会が楽しみになってしまった。ヴィオと街中を散策する予定の【収穫祭】も楽しみだけどね♡♡♡
そんなあたしに、ヴィオは明日の予定を確認してくる。


そうなのだ。
いつもはすぐに帰国していたのだが、今回は二日滞在を延長して海水浴をする予定なのだ。【海の女神フィオレンティーノ】の加護のある青い海で。
……それだけではない。何とヴィオは魔法を使って地球の通販を利用して、日本の水着を取り寄せていたのだ! この世界にも海水浴の習慣はあるが、水着は高価なので王侯貴族の娯楽だ。水着それもあくまでワンピースタイプか、ツーピースだ。しかしながらヴィオがお取り寄せしたのは、何と大胆な黒のビキニだったのだ!! 勿論、猛反撃しましたよ! そんなの似合う筈ないって!! そしたら『心配要らぬ。』と言って、胸元から隠れるタイプのパレオも用意していたのだ。
それに。
 『王族専用のプライベート・ビーチを貸切った。
 大丈夫だ、そなたの姿と素肌は誰にも見せぬ。
  …そなたのいろっぽい姿は、私一人のものだ…』
と、甘く囁いたのだ。
 耳元で、あの魅惑の低音バリトンで。
しかも。
 悔しまぎれに『魔力の無駄遣いです!』と逆切れしたあたしに。
 『ニホンには「お盆」と言う習慣があるのだろう?
  それに合わせて“転移”して、一緒に祖父君と祖母君の「墓参り」をしよう。』
と、言ってくれたのだ。
 嬉しさのあまり、あたしがあっさり陥落したのは言うまでもない。



※ ※ ※



そんな訳で、あたしは現在いま、海水浴に来ていた。
 本来ならば皇室にも夏休みバカンスがあるのだが、新婚旅行に一ヶ月も行ってきたばかりなのだ。執務があるから二日間の休みしか取れなかった事を謝られてしまったが、あたしは気にしてない。
そもそも冷戦状態にあったあたしと陛下ヴィオはバカンスに一緒に来るのは初めてなのだから。まあ本当は、ヴィオは『クリュヴェイエの呪いの解呪』について色々と調べていてそれどころではなかったというのが真相だと言うのだから、あたしに怒りなんてこれっぽっちもない。却って二日間も休めてありがたいくらいだ。これも生来の貧乏性のお陰だ(笑)。

人っ子一人いないエメラルドグリーンの海。
これがコバルトブルーなどの海でなくて良かった。
それでなくとも『海の水アクアマリン』色は落ち着かないのだから(照)。
ヴィオが購入したと言うビキニは着たが、パレオも胸からしっかり巻いている。
実はあたしは海水浴は、本当に生まれて初めてだったりする。
子供の頃は祖父や祖母に市民プールに連れて行ってもらったのが精々だ。
成人してからは自分で稼いだお金で行く事も出来たが、結局行かなかった。
だって日本の蒸し暑い夏の電車での行き帰りの事を思うとうんざりだったし。
 何よりも、自分の水着姿に自信がなかったからだ。
わざわざ好んで自ら恥をかく、ドMな趣味はない。
その点。
 今現在は侍女も護衛の騎士にも遠慮してもらってる。
ヴィオの強固な魔法結界があるから大丈夫バッチリ…らしい。
 (“影”のみんなダリオとダミアーノの事は、もう半ば諦めてる/苦笑。)
このみっともないビキニ姿を人目に晒す事がなくて安心しきってる。

……それよりも。
ヴィオの水着姿の方が、あたしをドギマギさせている(照)。
 同じく通販で購入したと言う海パン姿は、凄く芸術的だ。
それに。
 上半身が裸のその姿は、“夜”の事を連想させて心臓に悪いのだ!!
 真っ赤にならないよう必死に我慢しながら、何とか眼の前の海に集中しようと頑張っているのだが……成功しているのか、どうにも怪しく自信がない。
そんなあたしはヴィオに誘われ、海に入った。
長い髪の毛は、ヴィオに貰ったあの組紐で纏めてある。
 穏やかな海で、とても気持ちが良い♪
 波間でヴィオと戯れ、海に浮かぶ心地良さを味わった。
 魔法で人魚やイルカのように泳ぎ、海中遊泳を楽しむ事も出来るらしい。
が、ヴィオの誘いを笑顔で断った。
ヴィオに余計な魔力を使ってもらいたくなかったのだ。
 折角のお休みバカンスなのだから、ゆっくり身体を休めて欲しい。それでなくとも日々の激務に加えて【豊漁祭】の公務で疲れ、今この瞬間だって結界維持に魔力を消費している筈なのだから。
 手を繋いで波間に浮かんでいるだけでも充分に楽しい。
 水遊びをしたら岸に上がって甲羅干しだ。
 紫外線に悩まされる現代の地球と違うから、安心して日光浴が出来る。
 浜辺に横たわり眼を閉じると……いつの間にか眠ってしまったのだった。



※ ※ ※



私の眼の前では、愛しい妻がその美しい肢体を晒している。
人気ひとけのないプライベート・ビーチで、すっかり開放感に浸っているようだ。

……やはり、黒のビキニは正解だった。

 異世界のネットの世界に干渉して、水着の通販サイトに飛んだのは良いが、どれを選ぼうか散々悩んだ。科学技術が進んだ世界は衣類業界も異常な程に進んでいて、女性のファッションセンスにあった物は勿論、男の欲望を煽るような物が無数に存在するのだ。ハイレグタイプのワンピースも良かったのだが、少し大胆なビキニはナツキの美しさを引き立て魅力的に見せている。誰がこんなナツキの肢体を他人ひとの眼に晒すものか。
ナツキは自分の魅力を自覚していない。
 同性の侍女にさえビキニ姿を見せるのを嫌がり、私の熱心な賛辞さえ『世辞』としか捉えていない。苦笑いで誤魔化すだけだ。『惚れた欲目』だとでも思っているのだろう。


―――こんなに私の欲望を煽ってやまないと言うのに……


地球の男のようにサンオイルをその背中に塗れないのが残念だが。
眠ってしまったナツキを起こさぬよう慎重に手をなめらかな背中にすべらせる。
アップにしていた豊かな黒髪は、組紐を解き背に流し優しく優しく撫でる。
……私が他人ひとの考えが読めると云う事はナツキには伏せている。
 勿論、幼少期と違って現在は魔力で制御可能なのだが、ナツキと二人っきりの時はオープンにしている。ナツキの思考は余す事なく、独り占めしたいのだ。だから、彼女が私の申し出を遠慮しているのも理解っている。まあ、思考を読むまでもなく、素直なナツキの表情に全て表れているのだが(苦笑)。

……いつの日にか、一切の遠慮なく……いや、小さなかわいい我儘さえ言ってもらえるような、そんな仲になりたい……

そんな想いを胸に秘めて、豊かな黒い滝の流れや吸い付くような肌を撫でていると……離せなくなってしまう。
ニホンには『もち肌』と言う言葉があるが、ナツキの肌は正にそれだ。柔らかくしっとりとしていて滑らかな白い肌。太陽がジリジリと肌を焼いているから、小麦色になってもその魅力が失われるような事はないだろう。
その柔肌に誘われるように唇を近付けてゆく。
 海水に濡れた肌は充分に潤い、拭いた後も光り輝いている。
 惚れた欲目では決してない。純然たる事実だ。
 真夏のを浴びて光る、金剛石ダイヤモンドのようだ。
だが接吻キスを落とすと、月光つきあかりに映える月長石ムーンストーンのようにも見えてくるから不思議だ。

……こんな魅惑的な肌、どこにも存在しない……
 ……私一人のものだ……
どこの誰にも渡すものか…っ!

突如として湧き上がった強烈な欲望のままに、ナツキの背中に覆い被さり。
 首筋に舌を這わせて潮の味を感じながら、砂に押しつぶされている豊かな膨らみを弄る。濡れているのも構わずビキニの上から弄れば、たちまち頂きがツンと尖るのを感じる。可愛いらしく立ち上がりつつある真っ赤に熟れているであろう朱い実を思い浮かべれば、自然と口の中に唾液がたまってゆく。
 「んっ…ふ…あっ」
ナツキつまの可愛いらしい嬌声こえが聴こえてきた。
もっともっと聴きたくて、乳首への攻めを強くすれば。
 「…んァ…っ、…やァ…ッ」
 小さく首を振り、無意識でも抗うのが許せなくて。
ナツキが秘かに気に入っている事が理解っている、とっておきの低音で囁いてやる。耳たぶを甘噛みし、耳の中を舐めまわしながら。

 「…七都姫…愛している…」
と。



※ ※ ※



……夢をみているのだと思ってた。

あたしはヴィオと初めての海水浴に来てる筈で。
あたしにバカンスを楽しませようとしている純粋なヴィオの好意なのに。
 夜の情事の事を思い出してしまって意識してしまってる、あたしの邪な思いが見せてる夢だと。
それなのに。



 「や…っ、…何してる、ンです…っ…か…っ!」
あたしの大好きなバリトンで愛の言葉を甘く囁かれ、ハッキリと眼が覚めた。

慌てて仰向けになり抵抗すれば、いきなり口付けキスが襲ってきた。
 正に『襲う』と言った感じの激しいキスに驚くが、ヴィオに求められるのは嫌じゃないし……正直、嬉しい。
歯列を割って口内に入り込んできた舌にうっとりと応えそうになってしまって、今の状況を正しく認識して慌てて抗うがヴィオは相手にしてくれない。あたしの舌に無理矢理舌を絡ませて、唾液を流し込んでくる。反射的に嚥下してしまうが、どうしても素直にキスに応える事が出来ない。正常な羞恥が邪魔をして。
 「やっ…ヴィオ…ッ、…嫌です…っ!」
 当然の筈の拒絶に、質問が返ってくる。
 「…なぜだ…?」
 信じられない…っ!
 「…だ、だって…こんな真っ昼間から…っ」
こんな眩しい太陽の下でなんて、絶対、嫌っ!
なのに、陛下ヴィオは。
 「…眩い陽の光を浴びた、そなたも美しい…」
なんて、うっとりしたをして、あたしを見つめる。
その瞳の中に確かな欲情の光を見つけてしまえば、あたしはその妖しい瞳に囚われてしまいそうになってしまう……
 ……せめてもの抵抗で「…だって…ダリオ達が見てるし…」と言えば、激しいキスに再び襲われ。呼吸いきがあがってしまっているところに「…私以外の男の名を呼ぶ事は許さぬ…」などと言われてしまう始末だ。最後の悪足搔きに言ってみた。

 「…やっぱりダメ…だって、フィオレンティーノ様がご覧になってらっしゃる…」
と。

が、しかし。

 「…では、見せつけてやろう…この海を守護する女神に…
 …私の自慢の…私だけの女神の美しさを…
 …神々の母神クリュヴェイエの呪いを解いた我らの愛を…」

との、魅惑の言葉甘いバリトンに陥落してしまったのだった。





 「んァ…ッ、…あァ…やァ…ッ!」
ヴィオがビキニをずらしてあたしの胸を弄りながら、乳首を舐めまわして吸う。
 音を立てて。

 気持ちが、悦い。

でも、恥ずかしい。
 恥ずかしくてたまらない。

……でも、気持ち、悦い……

あたしが思わずヴィオの頭をかきいだいてしまうと、かれの舌の動きは激しさを増す。
その動きに、あたしの声は益々高く激しくなってしまって。
それがまた益々ヴィオを昂らせると云う悪循環に陥ってしまう。
ヴィオの身体は少しずつ下に下がってくる。
おそらくは、キスマークを残しながら。
そうして遂には、あたしの秘められた部分に辿り着く。
 海水とは明らかに違うもので濡れてしまっている事が、すごく恥ずかしい。

……しかも…いつもよりも、感じて濡れてしまっているし……

そんな淫らな自分を知られたくなくて、今更のように抗うが。
ヴィオはあたしのそんな些細な抵抗を容易く封じてしまう。
 何と水着の上から、あたしの恥部を舐め始めたのだ。
勿論必死で抗うが、ヴィオはあたしの両足を大きく広げさせ舌の動きを続行させる。あたしは背をそらして、ひたすらに嬌声こえを上げてただ喘ぐしか術がない。あたしはヴィオの頭を両手で抑えるが。押しのけたいのか、押し付けたいのか……。ヴィオの銀の髪を、ただかきむしるだけだ。
ヴィオの唇と舌は、あたしを何度も絶頂へと押し上げ。
遂にビキニのパンツを下ろし、両膝を抱え上げ、いつの間に脱いだのか。
自分のいきり立つ楔を蜜口に押し当て、ゆっくりと挿入ってくる。

……あたしの内部なかが悦んでしまってるのが、理解る……

あたしの内部なかは、ヴィオ・・・の形と大きさを覚えてしまっていて。
 悦んで迎え入れ、うねるような絞り上げるような動きをするが、無意識なので制御のしようがない。
ただ。
ヴィオの悦ぶ表情かおが見られるなら、それで良い。
 額に浮かぶ汗も、揺れる銀色の髪も光り輝いて眩いばかりだ。
 快い潮騒のリズムも今は遠く。
 卑猥な水音と肉体からだがぶつかる音と、ヴィオの艶っぽい掠れたバリトンしか聞こえない。

 「…ナツ、キッ…ナツ…キッ…愛して…るっ
 …そな、た…だけ…だ…っ!」
と。



―――そうして、あたしは。


 白く輝く眩い世界へと、放り出されたのだった―――



 ※ ※ ※



ちなみに。
 正気に戻った時のあたしの羞恥は半端じゃなくて。
まったくヴィオと口を利かなくなり、ヴィオを心底反省させる事が出来たのは重畳だった。

ただ。
帰国してしばらくして少し胸がムカムカすると思い、日本の胃腸薬が恋しくなったが軽い症状だったので放っておいた。のだが、あんなに好きだった珈琲を受付ける事が出来なくなるに至り、デーボラさんとアデラ達に言われて仕方なく宮廷の医師にかかったら妊娠が発覚して、あたしも周囲もパニックに陥った。
 一番酷い状態に陥ったのが、夫であり父親になる陛下ヴィオであった。
懐妊を告げた瞬間ときの呆けたヴィオの表情かおと彼の優れた頭脳が妊娠それを理解するまでにかなりのタイムラグが生じた事は、後々までブリュール皇国の王宮の語り草になったのであった。
それからが大変だった。
 直ちにあたし専属の医師団が結成され。
“皇帝の御子”が無事に産まれるまで、彼らは見事な結束力チームワークを発揮した。
そうしてこの目出度いニュースは、皇国くに中は愚か大陸中を駆け回り。
 人々は歓喜の渦に包まれたのだった。



まだ平らなあたしのお腹を撫でて、ヴィオは早速“親バカ振り”を発揮し出した。
現代医学あたしの世界の妊娠に対する正しい知識を仕入れていて、運動は身体に良いと知っている筈なのに真綿で包むような扱いの過保護っ振りには苦笑いさせられた。

……あたしと子供の事を大事に思ってくれるのは、あたしだって嬉しいから。

お祖父ちゃんとお祖母ちゃんのお墓参りは、当然諦めた。
 八道家のご先祖様達にも勘弁していただけるであろう。
 【収穫祭】のデートは安定期に入る計算になる筈だが微妙だ。
フレドとフローラ姫の結婚式は無理だろう。
 残念だけれど、仕方がない。
なんて思ってたら、マタニティーブルーになってしまった。
 悪阻が殆ど無くて、ヴィオや周りのみんながあんまり大事にしてくれるから、すっかり安心して油断してた。
 自分の精神こころの中のネガティブな部分を甘く見てたのだ。
 『あたしみたいな孤児みなしごに、子供をまともに育てる事が出来るはずがない。』
 『あたしみたいな“親の愛”を知らない人間に、親になる資格なんかない。』
 思考がネガティブに、ネガティブに落ちていくのだ。
 異世界の実の両親の事情は理解っているはずなのに。

……どうやら“親に二度も捨てられた”と云う事実コンプレックスは、想像以上にあたしの精神こころを蝕んでいたようだ。

皇帝としての執務で疲れている陛下ヴィオに八つ当たりしてしまった時は我ながら落ち込んだが。そんなあたしに、ヴィオは寛容だった。広い心で温かく見守り、優しく包んでくれたのだ。あたしの愚痴や理不尽な怒りに付き合い、根気良く癒してくれたのだ。感謝しても感謝しても足りない気がする。
後年、ヴィオは告白してくれた。
あたしにはない筈の魔力を感じて、妊娠を疑う事もあったそうだが。
その度に、『そんな筈はない。』と否定していたそうな。
あたしとの子供を欲しいと思うあまりの錯覚だと。
 自分の願望をあたしに押し付けてはいけないと。
 『あの時に気付いていれば。』と、ヴィオは一人で後悔していたのだ。


そんな後悔があたしへの溺愛を加速させ、過干渉ともとれる過保護に繋がり。
 立派な正真正銘の“親バカ”へと変貌を遂げるのは、また別のお話である。





 FIN
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