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本編
No,23 【シルヴィオ陛下SIDE Ⅰ】
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―――貴石のような美しい瞳をした娘だ。
後から思えばそれは一目惚れであり、私の初恋だった。
※ ※ ※
私は神聖ブリュール皇国の第一王子であり、生まれながらにして皇太子の地位にいた。
母は伯爵家の出だが何代か前に皇女が降嫁した由緒ある家系であり、何よりも。
私の持つ魔力が非常に強かったのだ。
この世界の神話は事実であり、厳然たる史実である。
創造神・キュヴィリエが宇宙を治め、天地を創り、人間を創ったのだ。
『最初に都ありき』なのは有名な話だが、“王”となる人物は魔力が強い人間が必然的に選出された。
なぜならば。
魔力とは、“神の力”の事なのだから。
だからこそ、人々は王を尊び敬った。
特に我が国は、最高神・レヴィが最初に娶った妹神・ベルナルディーノの名前を冠する都を許された国だ。最初の妻神の加護が国全体に行き届いている。それゆえに尊重され、大陸一の繁栄を迎える事となる。
そうして、もう一つの理由。
それが、異世界からの【神子】の存在。
“最高神の愛し子”とも呼ばれる存在だ。
ヴェナンティーノの嫉妬深さから妻となる妹神を守る為に、異世界から召喚される女性。
その女性は【レヴィ大神殿】の大神官が受ける“御神託”によって決定されるのだが、なぜかは知らないが太古の昔から我が国は【神子】を迎える確率が非常に高かったのだ。
神子が召喚されれば、皇帝の皇妃となる。
これは必然であり、厳粛な掟とも言えた。
何十代か前では、正妃を娶っていたにも拘らずに“御神託”を受けて【神子】を召喚する事となり。その神子と結婚する為にその正妃は、側室へと降格されてしまうと云う出来事が起こっていた。
我が国の皇室は一夫一妻制であり、原則的に離婚は認められていないからだ。
(まあ、何事にも例外は存在するが。)
この神子の恩寵は侮れない。
事実、我が国だけではなく、どこの国に神子が“降臨”しても、どこの国も一つの例外なく国は豊穣の時代を迎えたと古の記録は語る。
だが、しかし。
私に【神子】は必要ない。
異世界からの神子といえども、人間であり女性である事に変わりはない。
私は幼少の頃から、人間の考えがよめた。
他人の思考が流れ込んでくるのだから、始末に悪い。
特に、“女”と云う生き物は酷かった。
どんなに化粧で顔を化けさせ着飾っても、思考と言動が一致しないのだ。
私にすり寄ってくるのは、下心のある人間ばかりだった。
私の顔も一因だった。
美しい伯爵令嬢だった母に似たこの顔は、幼い頃から女を惹きつけてしまった。
“女の子”と云う年齢の幼女でさえ、そうなのだ。
年頃になったらと思うと……ゾッとする。
次代の皇帝として、いつかは結婚して子供をもうけるのは決して欠かせない義務だが。ギリギリの年齢まであがいても、許されるだろう。
そのまま成長していたら、私は発狂してしまっていただろうが。
幸いな事に、私には精霊の加護があった。
風火水土の四大元素を司る精霊の王、【精霊王】。その精霊王が私の“守護精霊”となり、魔力のコントロール方法を教えてくれたのだ。お陰で私は、人間の思考を遮断する術を覚え、煩わしい思いをする事は一切なくなった。
それだけではない。
次々と色んな“術”も教えてくれた。
それらをマスターするのは楽しかった。
けれども。
それよりも楽しかったのは、大神官に貰った水晶球を“視る”事だった。
魔力を操り水晶球を見ていると、色んな物が映し出されるのだ。
年を経て慣れてくると、色々な異世界の様子を“覗き見”出来るようになった。
この世が並行世界であるとは知識として知ってはいたが、その様々な世界の様子を垣間見る事が出来るのは鮮烈な刺激でありかなりの興奮だった。アッと云う間に、私はその水晶球の中の世界に夢中になっていった。
獣人だけの世界もあった。
人間と獣人が仲良く共存している世界もあった。
魔法がまったく存在しない世界もあった。
魔法の代わりに違った技術が発達している世界もあった。
キラキラと輝き千変万化する万華鏡のようだった。
どこの世界でも、“人”の営みは変わらない。
“今日”と云う日を必死で一生懸命に生きているのだ。
様々な世界の色んな人々を視てきたが、存在それぞれが興味深かった。
その中で。
“科学技術”と云う手段がかなり発達していて、私の世界よりも遥かに進んでいる文明の世界の一つが酷く私の興味を引いた。その世界の人間のアンバランスさに酷く心惹かれた。
私には“視える”のだ。
人間の精神の表と裏が。
その人間を取り巻く目には見えない“存在”と、その人間のオーラの色や光、輝きの全てが。
オーラの光は、人間の瞳に一番表れて視える。
様々な瞳をした人間達が存在したが、私はとある一人の少女に興味を持った。
まるで、【レヴィ大神殿】の御神体の貴石のようにも見える、奇跡の存在。
―――それが。
彼女との出会いだったのだ。
後から思えばそれは一目惚れであり、私の初恋だった。
※ ※ ※
私は神聖ブリュール皇国の第一王子であり、生まれながらにして皇太子の地位にいた。
母は伯爵家の出だが何代か前に皇女が降嫁した由緒ある家系であり、何よりも。
私の持つ魔力が非常に強かったのだ。
この世界の神話は事実であり、厳然たる史実である。
創造神・キュヴィリエが宇宙を治め、天地を創り、人間を創ったのだ。
『最初に都ありき』なのは有名な話だが、“王”となる人物は魔力が強い人間が必然的に選出された。
なぜならば。
魔力とは、“神の力”の事なのだから。
だからこそ、人々は王を尊び敬った。
特に我が国は、最高神・レヴィが最初に娶った妹神・ベルナルディーノの名前を冠する都を許された国だ。最初の妻神の加護が国全体に行き届いている。それゆえに尊重され、大陸一の繁栄を迎える事となる。
そうして、もう一つの理由。
それが、異世界からの【神子】の存在。
“最高神の愛し子”とも呼ばれる存在だ。
ヴェナンティーノの嫉妬深さから妻となる妹神を守る為に、異世界から召喚される女性。
その女性は【レヴィ大神殿】の大神官が受ける“御神託”によって決定されるのだが、なぜかは知らないが太古の昔から我が国は【神子】を迎える確率が非常に高かったのだ。
神子が召喚されれば、皇帝の皇妃となる。
これは必然であり、厳粛な掟とも言えた。
何十代か前では、正妃を娶っていたにも拘らずに“御神託”を受けて【神子】を召喚する事となり。その神子と結婚する為にその正妃は、側室へと降格されてしまうと云う出来事が起こっていた。
我が国の皇室は一夫一妻制であり、原則的に離婚は認められていないからだ。
(まあ、何事にも例外は存在するが。)
この神子の恩寵は侮れない。
事実、我が国だけではなく、どこの国に神子が“降臨”しても、どこの国も一つの例外なく国は豊穣の時代を迎えたと古の記録は語る。
だが、しかし。
私に【神子】は必要ない。
異世界からの神子といえども、人間であり女性である事に変わりはない。
私は幼少の頃から、人間の考えがよめた。
他人の思考が流れ込んでくるのだから、始末に悪い。
特に、“女”と云う生き物は酷かった。
どんなに化粧で顔を化けさせ着飾っても、思考と言動が一致しないのだ。
私にすり寄ってくるのは、下心のある人間ばかりだった。
私の顔も一因だった。
美しい伯爵令嬢だった母に似たこの顔は、幼い頃から女を惹きつけてしまった。
“女の子”と云う年齢の幼女でさえ、そうなのだ。
年頃になったらと思うと……ゾッとする。
次代の皇帝として、いつかは結婚して子供をもうけるのは決して欠かせない義務だが。ギリギリの年齢まであがいても、許されるだろう。
そのまま成長していたら、私は発狂してしまっていただろうが。
幸いな事に、私には精霊の加護があった。
風火水土の四大元素を司る精霊の王、【精霊王】。その精霊王が私の“守護精霊”となり、魔力のコントロール方法を教えてくれたのだ。お陰で私は、人間の思考を遮断する術を覚え、煩わしい思いをする事は一切なくなった。
それだけではない。
次々と色んな“術”も教えてくれた。
それらをマスターするのは楽しかった。
けれども。
それよりも楽しかったのは、大神官に貰った水晶球を“視る”事だった。
魔力を操り水晶球を見ていると、色んな物が映し出されるのだ。
年を経て慣れてくると、色々な異世界の様子を“覗き見”出来るようになった。
この世が並行世界であるとは知識として知ってはいたが、その様々な世界の様子を垣間見る事が出来るのは鮮烈な刺激でありかなりの興奮だった。アッと云う間に、私はその水晶球の中の世界に夢中になっていった。
獣人だけの世界もあった。
人間と獣人が仲良く共存している世界もあった。
魔法がまったく存在しない世界もあった。
魔法の代わりに違った技術が発達している世界もあった。
キラキラと輝き千変万化する万華鏡のようだった。
どこの世界でも、“人”の営みは変わらない。
“今日”と云う日を必死で一生懸命に生きているのだ。
様々な世界の色んな人々を視てきたが、存在それぞれが興味深かった。
その中で。
“科学技術”と云う手段がかなり発達していて、私の世界よりも遥かに進んでいる文明の世界の一つが酷く私の興味を引いた。その世界の人間のアンバランスさに酷く心惹かれた。
私には“視える”のだ。
人間の精神の表と裏が。
その人間を取り巻く目には見えない“存在”と、その人間のオーラの色や光、輝きの全てが。
オーラの光は、人間の瞳に一番表れて視える。
様々な瞳をした人間達が存在したが、私はとある一人の少女に興味を持った。
まるで、【レヴィ大神殿】の御神体の貴石のようにも見える、奇跡の存在。
―――それが。
彼女との出会いだったのだ。
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