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エピソード2 師の隠された力
しおりを挟む『ああ、といってやりたいところだけど、
まずはこっちのお願いをきいてくれなくちゃね』
キリンはサイ耳もとへいきおいよく首を降りおろすと声をひそめた。
サイがキリンと別れてから西はずれの崖っぷちにたどり着いたのは、
夜も更けたころだった。
サイは、じめんに腰をおろすと、
うとうととそのままねむりこんだ。
どのくらいたったのだろう。
サイは、うなり声を聞いて、目をさました。
まだ太陽が東の空から、はんぶん、
顔をだしたばかりだった。
サイは、いま見ていたばかりの、
でんぐり返しを10回転した夢を、
自分の角でつきさすほど、びっくりした。
ライオンの顔が5つすぐ目の前にあったのだから。
5つの顔は、たとえるなら、
まる、さんかく、しかく、ながまる、ひしがたの形をしていた。
まる、ながまる、しかく、がオスのライオンだった。
『おい、みたことのないサイだぜ。よそものか?』
まるい顔のライオンがそう言うと、うなり声をあげた。
『それなら、ちょうどいい。はやくたべちまおうぜ』
ながまる顔のライオンは、口からだえきを、
ほそく、ながく、たらしている。
『はらはオレがくうぜ』
しかくいかおのライオンは、
たてがみが飛びっきりながくて、モジャモジャだった。
どうやら、このライオンたちが、
ウワサに聞いた西はずれの崖の上に暮らしているという、
暴れて手のつけられないライオン5頭(ごーとう)団だな。
キリンさんからやっつけてくれとたのまれて、
来てはみたものの、むりな話しさ。
サイは、ゆっくりと立ち上がると、
すきをみて逃げようと、ライオンたちの様子をうかがった。
ライオンたちは、そんなサイの様子を見ると、
四方から取り囲んだ。
『よし、いっせいに飛びかかるぞ!』
まる顔のライオンがしっぽをピシャリと降りおろした。
サイが、もうダメだとあきらめかけたその時、
サイの耳の中からちっちゃな何かがもぞもぞと動きだした。
それは、サイの顔を滑り台にして転がると、
ライオンのまるい顔に飛び移った。
見ると、だんご虫の先生だった。
先生は、そのまま、まるい顔をたどって、
ライオンの口の中にはいっていった。
その時、号令がかかった。
『やっちまえ! うひゃひゃひゃひゃ』
とつぜん、まるい顔のライオンが笑いだした。
〈続く〉
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