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エピソード15 深く、モグラのように
しおりを挟む君は、ワニのジョルディールが、
シッポを振ってリズムをとる姿を、想像できますか?
なかなか想像できないかも知れませんね。
何しろジョルディールにとっても、これが初めての経験でした。
おやおや、ちょっと耳を澄ませてみて下さい。
ジョルディールのシッポを打ち鳴らす音が、だんだんと大きく響いてきましたよ。
だいぶ様になってきたようです。
氷クジラの先生もシッポに大粒の汗を流しながら、大声を張り上げます。
『どん ダ!
ダダン どん ゴン!
バン ババン !
どん ダダ だだン!』
いいぞ、ジョルディール! お前のシッポが火を噴いてきた。
その調子だ。波に乗れ、地を揺るがすリズムを刻め!
はじめは無我夢中でシッポを振っていたジョルディールでしたが、
今は、肩の力が抜けて、シッポを振るのが楽しくて仕方がありません。
不思議なことに、ジョルディールの頭の上では、
流れ星が絶え間なく、流れはじめました。
星屑が散りばめられて白く明るい夜空に、
シッポ振るジョルディールのリズムが響く瞬間(とき)、
まるで、空という弦を奏でるように流れ星が飛び交います。
「ウムッ、空が共鳴している。
よし、お前のリズムは、空高く昇り切って、空をつかんだぞ。
今度は、地に潜れ。深く深く。
モグラのように深く。もぐっていけ! 」
氷クジラ先生が、口から氷のツバを飛ばします。
ジョルディールは、休みなく、シッポを振り続けました。
深くもぐっていくために。
実際にもぐっていくのは、本人ではなく、『たましい』なんだそうです。
それに、地の底までもぐっていくためには、
地響きするほど大きく地面を揺すらなければいけないそうです。
そう氷クジラの先生が教えてくれました。
ジョルディールは、シッポに、ありったけの力を込めました。
風を切り、ムチのようにしなるシッポ。
ズシン、という音が、辺りに響きます。
もう一回。
更に、一回。
地を這うような、地響きが、だんだんと大きくなっていきます。
『いいぞ、ジョル。今度は、シッポに【タマシイ】をこめて打て。
そして、打った瞬間に、シッポからお前の【タマシイ】を解き放つんだ。
深く、深く、もぐらせろ! 』
氷クジラ先生は、興奮して、頭の氷を溶かしながら、叫びます。
<続く>
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