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【生きる意味 】
しおりを挟む何のために?
何のために生まれてきて、何のために生きていくのだろう?
20代初めの頃、優吾は、こんな考えに取りつかれた時期があった。
それは熱病のように優吾を襲い、今まで優吾の身内に潜んでいた自尊心をズタズタに引き裂いて行った。
いくら探しても見つからない。
見つからない答えを、きっとあるはずだと探しているうちに、何度も気が遠くなっていく。
俺には、結局、生きる意味などないのだ。
そんな無目的の状態のまま、中途半端な思考を繰り返しながらフリーターをして過ごした20代の数年間は、あっという間に過ぎた。
今でこそ気にならなくなったが、その時は、仕事そのものに、あるいは日常の1コマ1コマに、そして自分という存在に、また1分1秒に、意味が与えられないで過ごすことが耐えがたかった。
無駄なことに時間を費やすのが嫌だったのだ。
生きている意味が欲しかった。
最近になりようやく、自分自身の生きる意味に気がついている人間など、ごく稀(まれ)にしかいないことに気がついた。
それに気がついたら、だいぶ楽になった。
そして、もう大上段に構えるのは、やめた。
極度の寒気のためか、途方もなく長いトンネルを歩いているような気がした。
何度も過去の記憶や、空想や、幻覚のようなものが優吾の頭を埋めた。
だが、頭をめぐるそれらの現象は、かえって優吾を、トンネルの先に導いていく役割を果たした。
気がついたら、行き止まりだった。
優吾は過去の記憶の断片から、一瞬にして、この世界に呼び戻された。
その瞬間、もしも優吾の胸の中を覗いたなら、ようやく長い旅を終え、人生を閉じようとする老人の心の中に芽生える一種の刹那の感情が蠢いているのが見えるだろう。
〈続く〉
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