46 / 66
La Madrugada 29 ー制裁その後 1ー # R18
しおりを挟む
ーー仕置きされた日より数日後の深夜。
弟のもとを訪った兄に、弟は希た。
「鞭で叩いてください、ってお願いしたら駄目? 兄さま」
遠い昔に『ご本を読んでください、駄目? 兄さま』と聞いてきた時と同じ口調、同じ表情で、同じ様に小首を傾げて兄にねだる弟に、兄は苦笑する。
「ーー欲しいのは、痛みか? それとも印か?」
核心を突いてくる兄の肩に額を擦り付けて、弟は低く声を落として答えた。
「ーー両方」
コツ……
兄は、弟の頭に手を置くと、額を合わせて言い聞かせる。
「リシェ……痛みを望むと際限がなくなる。戯れで、尻を叩いてやるのは構わない。だが、兄さまは鞭は使わないよ」
しゅん……として俯く弟に、兄は優しく告げた。
「リシェ……二度と身体を損なうような痛みを望まないと、兄さまに約束できるなら、兄さまの名を……尻に焼き印を入れてあげよう」
弟は、眼をパチパチと見開いて兄を見て、確かめるように聞く。
「本当? 約束したら、本当に焼き印を……兄さまのお名前を僕のお尻に焼いてくれますか?」
兄は、仕方がないな……と言って笑う。
「兄さまと約束しなさい、リシェ。繰り返せ。ーー“リシェは二度と身体を痛め付けることを望まないことを、兄さまに誓約します。だから、兄さまの所有物である印を尻に焼いてください”」
「僕は、二度と身体を痛め付けるようなことを望まないことを、兄さまに誓約します。だから、兄さまの所有物である印を僕のお尻に焼いてください……ありがとう、兄さま」
嬉しそうに言って、兄の唇にちゅ……と口づけてくる弟に、兄は更に苦笑するしかなかったが、利き手と逆の小指から、シグネットリングを抜いて、日陰に渡す。
「日陰、準備」
「承知」
§
弟は寝台の上で、兄と共に、日陰がする準備が整うのを待った。
日陰は、陶器の容器に炭を織こし、そして、兄に渡されたシグネットリングを焼きごて用の器具に装着する。
「火が十分に織きたら、こてを温めます。リングに火が入るまで時間はかかりません。お支度を」
そして、日陰が、織火にこてを沈めると共に、兄は弟に命じる。
「リシェ、四つ這い。ああ、頭は下げていい。尻を突き出しなさい」
そして、日陰に手渡された手巾を、弟に噛ませる。
「兄さまがしてやりたいが、日陰の方が綺麗に焼いてくれる」
そう言って頬に添えられた兄の手に、弟は頷きを返した。
「直ぐに済む」
兄が日陰に視線をやると、日陰は頷いて、熾火に沈めたリングの状態を確め、引き上げた。
「ーーーー~~~っっ!!」
一時肉を|焦がす匂いが立ち込め、それをハーブの匂いがかき消していく。
突っ伏した弟の尻に、冷たい軟膏が落とされ、白のティゼの甘い香りが漂う。
「ティゼの香を聞きなさい。痛みが和らぐ」
そして兄は、ティゼ酒で指を濡らし、手巾を外した弟の唇をなぞった。
「舐めなさい」
ちゅ……ちゅぱ……
何度かそれを繰り返し、ティゼ酒を……兄の指をしゃぶっている内に、焼き跡に油紙と綿紗が乗せられ、包帯が巻かれていった。
「落ち着いたか? リシェ、このまま眠ってしまえ」
「やだ……兄さまの精、飲むの……そうしたら、僕、寝る……」
くすり、と日陰が笑い、兄は呆れたように言う。
「リシェ…………寝ろ」
「やだっ! 兄さまの精、僕に飲ませてっ!」
兄は日陰へ振り向き、問う。
「ティゼ酒に何か入れたのか?」
「はい。ティゼ酒にも、軟膏にも少々調合しました」
兄はため息を吐いて、
「リシェに焼き印を入れておいて、勃たせられるか!」
日陰は、くすくす笑ったまま、弟を促した。
「リシェ様……お兄さまは、勃たせるのが難しいそうです。頑張ってご奉仕しなければいけませんよ」
「はい、日陰」
「日陰っ! お前っ!!」
「どうぞ、主。……主には気休めですが」
日陰がティゼ酒の杯を兄に差し出し、兄はそれを受け取るとひと息に飲み干した。
「覚えていろよ……日陰」
「ーーご命令ならば」
「覚えていろ」
「承知」
くすり、と再び笑んで日陰は応じた。
弟のもとを訪った兄に、弟は希た。
「鞭で叩いてください、ってお願いしたら駄目? 兄さま」
遠い昔に『ご本を読んでください、駄目? 兄さま』と聞いてきた時と同じ口調、同じ表情で、同じ様に小首を傾げて兄にねだる弟に、兄は苦笑する。
「ーー欲しいのは、痛みか? それとも印か?」
核心を突いてくる兄の肩に額を擦り付けて、弟は低く声を落として答えた。
「ーー両方」
コツ……
兄は、弟の頭に手を置くと、額を合わせて言い聞かせる。
「リシェ……痛みを望むと際限がなくなる。戯れで、尻を叩いてやるのは構わない。だが、兄さまは鞭は使わないよ」
しゅん……として俯く弟に、兄は優しく告げた。
「リシェ……二度と身体を損なうような痛みを望まないと、兄さまに約束できるなら、兄さまの名を……尻に焼き印を入れてあげよう」
弟は、眼をパチパチと見開いて兄を見て、確かめるように聞く。
「本当? 約束したら、本当に焼き印を……兄さまのお名前を僕のお尻に焼いてくれますか?」
兄は、仕方がないな……と言って笑う。
「兄さまと約束しなさい、リシェ。繰り返せ。ーー“リシェは二度と身体を痛め付けることを望まないことを、兄さまに誓約します。だから、兄さまの所有物である印を尻に焼いてください”」
「僕は、二度と身体を痛め付けるようなことを望まないことを、兄さまに誓約します。だから、兄さまの所有物である印を僕のお尻に焼いてください……ありがとう、兄さま」
嬉しそうに言って、兄の唇にちゅ……と口づけてくる弟に、兄は更に苦笑するしかなかったが、利き手と逆の小指から、シグネットリングを抜いて、日陰に渡す。
「日陰、準備」
「承知」
§
弟は寝台の上で、兄と共に、日陰がする準備が整うのを待った。
日陰は、陶器の容器に炭を織こし、そして、兄に渡されたシグネットリングを焼きごて用の器具に装着する。
「火が十分に織きたら、こてを温めます。リングに火が入るまで時間はかかりません。お支度を」
そして、日陰が、織火にこてを沈めると共に、兄は弟に命じる。
「リシェ、四つ這い。ああ、頭は下げていい。尻を突き出しなさい」
そして、日陰に手渡された手巾を、弟に噛ませる。
「兄さまがしてやりたいが、日陰の方が綺麗に焼いてくれる」
そう言って頬に添えられた兄の手に、弟は頷きを返した。
「直ぐに済む」
兄が日陰に視線をやると、日陰は頷いて、熾火に沈めたリングの状態を確め、引き上げた。
「ーーーー~~~っっ!!」
一時肉を|焦がす匂いが立ち込め、それをハーブの匂いがかき消していく。
突っ伏した弟の尻に、冷たい軟膏が落とされ、白のティゼの甘い香りが漂う。
「ティゼの香を聞きなさい。痛みが和らぐ」
そして兄は、ティゼ酒で指を濡らし、手巾を外した弟の唇をなぞった。
「舐めなさい」
ちゅ……ちゅぱ……
何度かそれを繰り返し、ティゼ酒を……兄の指をしゃぶっている内に、焼き跡に油紙と綿紗が乗せられ、包帯が巻かれていった。
「落ち着いたか? リシェ、このまま眠ってしまえ」
「やだ……兄さまの精、飲むの……そうしたら、僕、寝る……」
くすり、と日陰が笑い、兄は呆れたように言う。
「リシェ…………寝ろ」
「やだっ! 兄さまの精、僕に飲ませてっ!」
兄は日陰へ振り向き、問う。
「ティゼ酒に何か入れたのか?」
「はい。ティゼ酒にも、軟膏にも少々調合しました」
兄はため息を吐いて、
「リシェに焼き印を入れておいて、勃たせられるか!」
日陰は、くすくす笑ったまま、弟を促した。
「リシェ様……お兄さまは、勃たせるのが難しいそうです。頑張ってご奉仕しなければいけませんよ」
「はい、日陰」
「日陰っ! お前っ!!」
「どうぞ、主。……主には気休めですが」
日陰がティゼ酒の杯を兄に差し出し、兄はそれを受け取るとひと息に飲み干した。
「覚えていろよ……日陰」
「ーーご命令ならば」
「覚えていろ」
「承知」
くすり、と再び笑んで日陰は応じた。
11
お気に入りに追加
71
あなたにおすすめの小説
愛しの妻は黒の魔王!?
ごいち
BL
「グレウスよ、我が弟を妻として娶るがいい」
――ある日、平民出身の近衛騎士グレウスは皇帝に呼び出されて、皇弟オルガを妻とするよう命じられる。
皇弟オルガはゾッとするような美貌の持ち主で、貴族の間では『黒の魔王』と怖れられている人物だ。
身分違いの政略結婚に絶望したグレウスだが、いざ結婚してみるとオルガは見事なデレ寄りのツンデレで、しかもその正体は…。
魔法の国アスファロスで、熊のようなマッチョ騎士とツンデレな『魔王』がイチャイチャしたり無双したりするお話です。
表紙は豚子さん(https://twitter.com/M_buibui)に描いていただきました。ありがとうございます!
11/28番外編2本と、終話『なべて世は事もなし』に挿絵をいただいております! ありがとうございます!

飼われる側って案外良いらしい。
なつ
BL
20XX年。人間と人外は共存することとなった。そう、僕は朝のニュースで見て知った。
なんでも、向こうが地球の平和と引き換えに、僕達の中から選んで1匹につき1人、人間を飼うとかいう巫山戯た法を提案したようだけれど。
「まあ何も変わらない、はず…」
ちょっと視界に映る生き物の種類が増えるだけ。そう思ってた。
ほんとに。ほんとうに。
紫ヶ崎 那津(しがさき なつ)(22)
ブラック企業で働く最下層の男。悪くない顔立ちをしているが、不摂生で見る影もない。
変化を嫌い、現状維持を好む。
タルア=ミース(347)
職業不詳の人外、Swis(スウィズ)。お金持ち。
最初は可愛いペットとしか見ていなかったものの…?
イケメン社長と私が結婚!?初めての『気持ちイイ』を体に教え込まれる!?
すずなり。
恋愛
ある日、彼氏が自分の住んでるアパートを引き払い、勝手に『同棲』を求めてきた。
「お前が働いてるんだから俺は家にいる。」
家事をするわけでもなく、食費をくれるわけでもなく・・・デートもしない。
「私は母親じゃない・・・!」
そう言って家を飛び出した。
夜遅く、何も持たず、靴も履かず・・・一人で泣きながら歩いてるとこを保護してくれた一人の人。
「何があった?送ってく。」
それはいつも仕事場のカフェに来てくれる常連さんだった。
「俺と・・・結婚してほしい。」
「!?」
突然の結婚の申し込み。彼のことは何も知らなかったけど・・・惹かれるのに時間はかからない。
かっこよくて・・優しくて・・・紳士な彼は私を心から愛してくれる。
そんな彼に、私は想いを返したい。
「俺に・・・全てを見せて。」
苦手意識の強かった『営み』。
彼の手によって私の感じ方が変わっていく・・・。
「いあぁぁぁっ・・!!」
「感じやすいんだな・・・。」
※お話は全て想像の世界のものです。現実世界とはなんら関係ありません。
※お話の中に出てくる病気、治療法などは想像のものとしてご覧ください。
※誤字脱字、表現不足は重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけると嬉しいです。
※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。
それではお楽しみください。すずなり。


神官、触手育成の神託を受ける
彩月野生
BL
神官ルネリクスはある時、神託を受け、密かに触手と交わり快楽を貪るようになるが、傭兵上がりの屈強な将軍アロルフに見つかり、弱味を握られてしまい、彼と肉体関係を持つようになり、苦悩と悦楽の日々を過ごすようになる。
(誤字脱字報告不要)
病気になって芸能界から消えたアイドル。退院し、復学先の高校には昔の仕事仲間が居たけれど、彼女は俺だと気付かない
月島日向
ライト文芸
俺、日生遼、本名、竹中祐は2年前に病に倒れた。
人気絶頂だった『Cherry’s』のリーダーをやめた。
2年間の闘病生活に一区切りし、久しぶりに高校に通うことになった。けど、誰も俺の事を元アイドルだとは思わない。薬で細くなった手足。そんな細身の体にアンバランスなムーンフェイス(薬の副作用で顔だけが大きくなる事)
。
誰も俺に気付いてはくれない。そう。
2年間、連絡をくれ続け、俺が無視してきた彼女さえも。
もう、全部どうでもよく感じた。

兄弟カフェ 〜僕達の関係は誰にも邪魔できない〜
紅夜チャンプル
BL
ある街にイケメン兄弟が経営するお洒落なカフェ「セプタンブル」がある。真面目で優しい兄の碧人(あおと)、明るく爽やかな弟の健人(けんと)。2人は今日も多くの女性客に素敵なひとときを提供する。
ただし‥‥家に帰った2人の本当の姿はお互いを愛し、甘い時間を過ごす兄弟であった。お店では「兄貴」「健人」と呼び合うのに対し、家では「あお兄」「ケン」と呼んでぎゅっと抱き合って眠りにつく。
そんな2人の前に現れたのは、大学生の幸成(ゆきなり)。純粋そうな彼との出会いにより兄弟の関係は‥‥?

薬屋の受難【完】
おはぎ
BL
薬屋を営むノルン。いつもいつも、責めるように言い募ってくる魔術師団長のルーベルトに泣かされてばかり。そんな中、騎士団長のグランに身体を受け止められたところを見られて…。
魔術師団長ルーベルト×薬屋ノルン
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる