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フレンチでリッチな夜でした
その18
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それからおよそ二十分後、アレグラは一人、修道院の回廊から中庭を眺めていた。
周囲には回廊を時折通り過ぎる修道士以外の人影は無く、角の方で佇む彼女の周囲には誰の姿も無かった。
往診を終えた後、リウドルフは書庫に興味を示してそちらへと案内され、ナタナエルはそれと入れ替わるようにしてオーギュストと会話を始めたのだった。彼らに伴って修道院を訪れた護衛達も銘々に院内を散策して回っており、回廊の隅に立つアレグラは誰に妨げられる事も無くぼんやりと中庭を眺めていたのであった。
庭木に留まった小鳥が羽を毛繕いしている。
院内は内部に水を湛えたかのように静かであり、鳥の微かな囀りさえもはっきりと耳に届いた。
中庭を挟んで対岸の回廊を歩く修道士が、ちらとこちらを一瞥する。
途端、アレグラは何とも言えない渋い面持ちを浮かべたのであった。
どうした所で、何処へ身を置いた所で、異端と言う立場から自分は逃れられないらしい。
『人ではない』身として。
そして同時に『女』としてであろうか。
絶対に老いぬ身と言うのも切っても切り離せぬ影法師と同じで、いつまでも纏わり付いて来ると次第に煩わしく思えて来る。主のように、たとえ表向きのものに過ぎなくとも軽薄そうな態度を取り続ければ少しは何かが変わって来るのだろうか。
「それでも私は……」
アレグラはいつしか小さく呟いていた。
それでも私は『あの人』に付き従わなければならない。
全ての人にとっての『安息』を護る為に。
それが我が『使命』なら。
そうして彼女は密かに溜息をついたのだった。
その時、回廊の隅に佇むアレグラの後ろへ足音が近付いて来た。
少し遅れて、中庭を見つめるその背におずおずとした声が投げ掛けられる。
「失礼。その……」
「何か?」
胸の奥に降り積もらせていた鬱憤を一時に吐き出した不機嫌極まる声を、アレグラは上げていた。物言いと相違せぬ怪訝そうな顔を声が遣された方向へと肩越しに向けた直後、彼女は目元を悟られぬ程度に強張らせた。
後ろに『彼』が立っていた。
ベルナール・ド・カミュが。
他の修道士と同じ装いに身を包み、こちらの棘のある反応を受けての事であろうか、気を呑まれた顔を覗かせながらも、かつて不良学生の頭目であった青年は赤毛の女の後ろに立っていたのだった。
中庭に植えられた木の頂きで、小鳥が軽やかな囀りを下方へと放った。
些か以上気まずい空気を漂わせつつも、アレグラは口調を改めて問い掛ける。
「……何か御用でしょうか?」
「いえ……」
問われたベルナールも態度を切り替えて、しかし所在無さそうに視線を泳がせた。
それでも、ー彼は直に明瞭な意志の光を双眸に上らせて、目の前に立つ赤毛の女へと話し掛ける。
「ええと、先程そちらの話を伺っておりました。アレグラ・ゼストさん、でしたか?」
「はい。左様ですが」
飽くまで事務的に頷いたアレグラへと、ベルナールは相手の顔を覗き込むようにして言葉を続ける。
「私、この修道院に勤めておりますベルナールと申します」
アレグラは眉毛を僅かに震わせた。
やはり他人の空似ではなかったのだな。
相手が直接その名を口に出した刹那、彼女は表情こそ変えなかったものの、微かな吃驚と共に安堵に似た感情が胸中に湧くのを覚えたのだった。
当の彼女自身が密かに意外に思う程に。
その間にも、アレグラの前でベルナールは穏やかな口調で言葉を紡いで行く。
「以前にもクールベの街でお見掛けしたんですが……ああ、そちらは憶えていないかも知れないんですが……」
「いいえ、確かにお見掛けしましたね」
アレグラが淡白の極みと言った風情で答えると、ベルナールは対照的に喜色を僅かに立ち昇らせた。
「ええ。あの時は、街の教会へ礼拝と交流に伺っていたのですが……」
打ち解けた様子を幾分覗かせて、青年はすらすらと言葉を並べて行く。
終始穏やかに至って普通の調子で言葉を連ねる彼の様子を、アレグラは少々意外そうに眺めていた。
人間、取り巻く環境次第で随分と変わるものである。ほんの数年前までは路上で決闘を挑んで来る程に粗暴であった相手の現在の姿を間近で見直して、赤毛の女は単純な驚きを覚えたのだった。
実際の所、上手い具合に角が取れて来たように認められる。木から剥ぎ取ったばかりの棘だらけの木片が、鉋を掛ける度に艷やかさと肌理の細かさを露わにして行くのと同じく、目前の青年もまた荒々しさの下から別の側面を現し始めているのかも知れない。
いや、あの時既にその『兆候』は垣間見せていたのだろう。
あの夏の日の夕暮れ、こちらが大学を去る間際の『あの時』に。
並び立つ家々の屋根の上に太陽が今にも触れようとしている。
となると、時刻は午後九時を回った辺りであろうか。
シテ島よりセーヌ川を跨いで遠望する街並みはこの日も変わらず、西日が地平へと近付く中で全体に翳りを纏わせて行くかのようであった。
ノートルダム大聖堂、その正面に築かれた鐘楼の屋上に立って、アレグラは暮れ行く日と、首を垂れて粛々とそれを待ち侘びるかのようなパリの街並みを望んでいたのであった。西日に照らし出された彼女は赤毛を短く刈り揃え、白いシャツと臙脂のキュロットの出で立ちで最早人気も無い夜の大聖堂の屋上の端に佇んでいた。
セーヌを遡上して来た風が、鐘楼を駆け上がって『彼女』の周囲を吹き抜けた。茜色に染まり始めた夕日より紅い髪を乱されても尚、アレグラは動こうともしない。屋上の手摺に寄り掛かり、暮れ泥む夕日に照らされる街並みをひたぶるに俯瞰し続ける。屋上の角に置かれた魔獣の像が、何処か憂鬱そうな不動の面持ちを共に同じ方向へと据えていた。
それは、頭上に明星がぽつりと顔を覗かせた時の事であったろうか。
後ろで足音が鳴った。
些か物憂げに、或いは気怠げに、肩越しに振り返った『彼女』の見つめる先にベルナールが立っていた。
空が大きく開けた場所では、特有の魁偉な様相も幾分か萎んで見える。或いは、辺りが徐々に光を失いつつある影響も作用しているのだろうか。
とまれ、大聖堂の屋上に一人立つアレグラより幾らか距離を隔てた場所で、ベルナールは相手を見ていた。いつもと変わらぬシャツとズボンの雑な服装であったが、その面持ちには真摯な色合いが浮かんでいた。
川上から降りて来た風が鐘楼の上を駆け抜けて、宵闇の滲み始めた東の地平へと吸い込まれて行く。
数秒の沈黙を経た後、アレグラは徐に口を開いた。
「……どうした? わざわざこんな所にまで足を運んで?」
問われて、ベルナールは所在無さそうに目を逸らした。
「……何、あんたが大聖堂の方へ歩いてったと聞いたんでね……」
何処か他人事のように答えた相手へ、アレグラは少し意地の悪い笑みを浮かべて見せた。
「御礼参りの良い機会だと思った訳か?」
「ああ、そんな事を言って来た奴もいたな」
やはり目を逸らしたまま、ベルナールは気乗りしない口調で肯定した。
あっさりと白状したからには、そうした趣向は持ち合わせていないらしい。
アレグラは今も距離を詰めずに佇むベルナールを、暫しじっと見つめたのだった。
例の街頭での決闘騒ぎ以来、彼は表立って事を荒げる回数がめっきりと減っていたのであった。無論、素行不良の学生の頭目には依然として収まっていたものの、彼が率先して市井を搔き乱すような事件はあの一件以降すっかり起こらなくなっていた。
端的に言えば、鼻っ柱を潰されたとでも評した所であろうか。
それによって不良学生達の間でベルナールの立場が危うくなった時期もあったのだろうが、結局の所、喧嘩を売った相手が悪過ぎたと言うだけの話である。単純な腕っ節で彼に敵う者が取り巻きの中にいないのは周知の事実であり、頂点に君臨出来るだけの覇気を備えた者が他から台頭する事態も起こらなかった。
結果としてその事が、一人の男装の麗人と不良学生の集団との間に奇妙な牽制関係を生じさせる運びとなった。
アレグラは自身に取り入ろうと近付いて来る輩も含め、相変わらず周囲の一切に無頓着な様子を見せ続けたが、素行不良の学生達もそれに対して噛み付くような素振りを最早覗かせなかった。彼らとて明確な主義主張を掲げている訳でもなく、我が身を痛め付けられ、醜態を晒してまで何事かを為そうとする気概を持ち合わせている訳でもなく、ただその時々の気紛れと安っぽい面子が全てに優先されるだけなのである。赤毛の伊達男が明確な敵意を以って行動に打って出ない以上、彼らもまた明らかに格の違う相手へわざわざ絡む理由も存在しないのだった。
相当に目障りな相手として忌み嫌っていたか、はたまた得体の知れない不気味な手合いとして恐れ戦いていたのか。いずれにせよ、少なくとも当のアレグラの前では、彼らは随分と自重自戒の行き届いた態度を見せるようになっていたのであった。
或いは無暗矢鱈と肩肘を張った所で無意味であると判れば、人とはそうした態度を取るものなのかも知れない。
そして時の流れは一切を包み込んで留まる事を知らず、『彼女』と『彼ら』の日々もまた終わりに近付こうとしていた。
「……そっちも大学を出るんだってな」
「ああ」
背後からベルナールが遣した言葉にアレグラは頷いた。
「天文の博士号も取って初期の目的は達した。法学にも興味はあるが、あまり長居し過ぎるのも考え物だ」
それに、『あれ』の放浪の虫がいい加減騒ぎ出す頃だからな。
前方に何処までも広がるパリの街並みを見渡しながらアレグラは鼻息をつく。
恐らく五日と経たない内に自分はこの街から姿を消す事になるだろう。だからこそ、これまで身を置いて来た街の様子をこの目に今一度収めて置きたいと思ったのである。
遠くの家の煙突から細い煙が立ち上って行く。
目から鱗が落ちるとまでは行かぬものの、それなりに収穫のあった数年間だった。
やはり客体と主体とでは、過程も異なれば得られるものの『質』も変わって来る。与えられた知識をただなぞるのではなく、自らの意志を以って知識を脳裏に刻み込む作業とは中々に楽しいものであった。詰まる所、何の彼の愚痴を零しつつも主がこちらの進学を拒絶しなかったのは、その辺りの事情も考慮しての事だったのかも知れない。
そこまでを思い返した所で、アレグラは今一度肩越しに後ろを顧みた。
大聖堂の鐘楼の屋上、幾らか距離を隔てた所にベルナールが今も佇んでいた。
ここ数年で学生仲間からそれとなく聞いた話では、大学内の今や古参に彼は当て嵌まるらしい。
元々は神学を収める為に、この男、ベルナール・ド・カミュが大学の門を潜ったのが十四歳の頃であったと言う。『医学』、『神学』、『法学』の上級三学部、取り分け『神学』を収める為には多くの時間を必要とする。相手の日頃の態度を見る限りに於いて学業自体は然程得意でない様子だが、それでも彼もまた漸くにして学位を取得し、大学を近々去る事となっているのだとアレグラは小耳に挟んでいたのであった。
数年後には何処かの教会で司祭の座にでも就いているのだろうか。
少々想像に難い所ではあるが、何事に於いてもやってやれない事は無いだろう。少なくとも人並み以上の度胸は据わっている筈である。これまで取り巻き連中を上手く取り纏めて来た面倒見の良さを前向きに生かせば、案外と人々の良い相談役になれるかも知れぬ。
そのベルナールは僻むとも拗ねるとも付かぬしかつめらしい顔を、こちらへとただじっと据えていた。パリの街並みへいよいよ触れようとする西日は赤味を増し、大聖堂の屋上に立つ二人の影を細く長く引き伸ばした。
ぽつりと声が上がる。
「……結局、借りは返せないままか……」
悔しげに、と言うよりは単純に不貞腐れた様子で呟いた相手へと、アレグラは微笑を返した後に顔を前へ戻した。
「その気があるならいつでも返しに来れば良い。尤も聖職者は剣を持てないから、次は鈍器での殴り合いになるのか?」
「別になりたかねえよ、坊主になんか」
ベルナールは今度はすっかり拗ねたような口振りで、至って軽い口調で遣された指摘に対して反発した。
背中越しにアレグラが指摘する。
「しかし、その為に大学の門を潜ったのだろう? 堅忍不抜の末に得た特権階級への道筋じゃなかったのか?」
皮肉じみた売り文句になってしまった、とアレグラも咄嗟に内心で反省したが、後ろのベルナールはすぐに声を荒げるでもなく愚痴を漏らし続ける。
「それでも気の進まねえものは進まねえさ」
珍しく、湿っぽく食い下がって来る。
「だがよ、世の中って奴は気の進まねえ事でも率先してやって見せねえと渡って行けねえんだ。渡らせちゃくれねえんだよ。『慣習』だの『常識』だのの上に乗っかって顔も見せようとしねえ嫌味な連中が、下っ端の勝手なんか絶対許さねえように仕向けてやがるんだ。もうずっと昔から」
言葉尻に今度は悔しさが滲んでいた。
丁度彼方の西の空と同じく色合いを刻々と微妙に変化させながら、ベルナールはこれまで腹の底に仕舞って来たらしい事柄を吐き出して行ったのだった。
「あんたはどうすんだ、こっから先?」
問われて、アレグラは肩を竦めて見せた。
「暫くは師に付き従って各地を渡り歩く。ここで得た知識の幾らかも道中何処かで役立つ事もあるかも知れない」
「そうか……あちこち巡って生活出来んなら、まだ何か気晴らしになるかも知れねえな」
アレグラも初めて耳にする溜息交じりの声をベルナールは漏らした。
一方、アレグラは前方のパリ市街を見据えながら、首の角度を僅かに変えた。
おかしな男だ。
何故、妙な所で感傷的になるのだろう?
日頃周りに大勢の取り巻き共を侍らせているのだから、彼らを相手に幾らでも文句を垂らせば良かろうに。
何故この期に及んで、わざわざこちらへ愚痴など遣すのだ?
こちらと異なり、独りぼっちの身の上でもあるまいに。
彼女はそこで小さく頭を振った。
「そうでもない。土台人の暮らす所は何処も同じだ。そこで生まれ出る喜びにも苦しみにも、何処であれ大した違いは無い」
最後には決まって『それ』を思い知らされるからこそ、『あの人』は一つ所に留まる事を嫌うのだろうか。
アレグラは細めた目を遠方へと向けた。
「結局は向き不向きの問題だろうな。私はこの先も方々を巡り続ける。この街に戻って来る事も恐らくもう無い」
「そうか……」
随分と気勢の削げた声が彼女の後方から上がった。
これまで、遠くからでも近くからでもまるで聞いた憶えの無い、か細い声であった。
彼女が単純に不思議に思ったその時、背後から再び言葉が寄せられる。
「……寂しく、なるな……」
何処か遠い波の音を連想させるような、重みは無くとも意識の裾をそれとなく引く声であった。
紺色に染まり始めた東の空より、夜気を孕んだ冷ややかな風が聖堂の屋上を吹き抜けた。
「……何?」
その刹那、アレグラの胸中を一つの情念が隈無く覆い尽くしたのだった。
たった一つの、それは『当惑』と呼ばれる情緒である。
そして、理由も確と定められぬまま戸惑う彼女には察する余裕も無い事であったが、この時もう一方の男もまた全く同じ感情を抱いていたのであった。
アレグラの後ろに立ったベルナールも、少し遅れて困惑した面持ちを浮かべたのである。
但し、こちらは戸惑いと言うよりもむしろ或る種の驚嘆に近かったであろうか。
さり気無い呟きを発した青年はその直後、己の目の前に広がる光景に俄かに息を呑んだのであった。
西の空は今や茜色に染まり、遠い家並みの向こうに沈み行こうとする太陽は赤味を帯び始めていた。そこから放たれる朱色の輝きに照らし出されて『彼』である筈の、『彼』と呼ぶべき相手がこちらを静かに見据えている。
元々赤かった髪が斜陽の光に煌めいて炎のように鮮やかに浮かび上がり、その双眸もまた同じ輝きを発している。今は半身を自分の方へと向けて、混じり気の無い驚きの表情を浮かべた男装の麗人の光り輝く姿を、貴族の青年は半ば呆けたように見つめていた。
それ程までにその一瞬は鮮烈で、そして美しかったのである。
このまま時が止まってしまうのではないかと疑う程に。
何処までも広い空の下で燦然と輝く日輪を向こうに回しても尚、『その者』の姿は天地に埋没する事無く、むしろその狭間に微細な穴を穿つかのように確然と存在している。中性的な面立ちは斜陽の光を受けて艷やかに煌めき、陰の無い艷やかさを表に立ち昇らせていた。紅い光に照らし出される細身の体躯は華奢さよりもしなやかさを強調して、一匹の野性美溢れる獣を前にしているかのような錯覚すら相対する青年に抱かせたのであった。
いつしか辺りは随分と涼しさを増していた。
セーヌを駆け抜けた風が言葉も無く佇む両者の間を通り抜けた。
時刻がいよいよ夜半に差し掛かろうとする最中での、それは刹那に訪れた出来事であった。
周囲には回廊を時折通り過ぎる修道士以外の人影は無く、角の方で佇む彼女の周囲には誰の姿も無かった。
往診を終えた後、リウドルフは書庫に興味を示してそちらへと案内され、ナタナエルはそれと入れ替わるようにしてオーギュストと会話を始めたのだった。彼らに伴って修道院を訪れた護衛達も銘々に院内を散策して回っており、回廊の隅に立つアレグラは誰に妨げられる事も無くぼんやりと中庭を眺めていたのであった。
庭木に留まった小鳥が羽を毛繕いしている。
院内は内部に水を湛えたかのように静かであり、鳥の微かな囀りさえもはっきりと耳に届いた。
中庭を挟んで対岸の回廊を歩く修道士が、ちらとこちらを一瞥する。
途端、アレグラは何とも言えない渋い面持ちを浮かべたのであった。
どうした所で、何処へ身を置いた所で、異端と言う立場から自分は逃れられないらしい。
『人ではない』身として。
そして同時に『女』としてであろうか。
絶対に老いぬ身と言うのも切っても切り離せぬ影法師と同じで、いつまでも纏わり付いて来ると次第に煩わしく思えて来る。主のように、たとえ表向きのものに過ぎなくとも軽薄そうな態度を取り続ければ少しは何かが変わって来るのだろうか。
「それでも私は……」
アレグラはいつしか小さく呟いていた。
それでも私は『あの人』に付き従わなければならない。
全ての人にとっての『安息』を護る為に。
それが我が『使命』なら。
そうして彼女は密かに溜息をついたのだった。
その時、回廊の隅に佇むアレグラの後ろへ足音が近付いて来た。
少し遅れて、中庭を見つめるその背におずおずとした声が投げ掛けられる。
「失礼。その……」
「何か?」
胸の奥に降り積もらせていた鬱憤を一時に吐き出した不機嫌極まる声を、アレグラは上げていた。物言いと相違せぬ怪訝そうな顔を声が遣された方向へと肩越しに向けた直後、彼女は目元を悟られぬ程度に強張らせた。
後ろに『彼』が立っていた。
ベルナール・ド・カミュが。
他の修道士と同じ装いに身を包み、こちらの棘のある反応を受けての事であろうか、気を呑まれた顔を覗かせながらも、かつて不良学生の頭目であった青年は赤毛の女の後ろに立っていたのだった。
中庭に植えられた木の頂きで、小鳥が軽やかな囀りを下方へと放った。
些か以上気まずい空気を漂わせつつも、アレグラは口調を改めて問い掛ける。
「……何か御用でしょうか?」
「いえ……」
問われたベルナールも態度を切り替えて、しかし所在無さそうに視線を泳がせた。
それでも、ー彼は直に明瞭な意志の光を双眸に上らせて、目の前に立つ赤毛の女へと話し掛ける。
「ええと、先程そちらの話を伺っておりました。アレグラ・ゼストさん、でしたか?」
「はい。左様ですが」
飽くまで事務的に頷いたアレグラへと、ベルナールは相手の顔を覗き込むようにして言葉を続ける。
「私、この修道院に勤めておりますベルナールと申します」
アレグラは眉毛を僅かに震わせた。
やはり他人の空似ではなかったのだな。
相手が直接その名を口に出した刹那、彼女は表情こそ変えなかったものの、微かな吃驚と共に安堵に似た感情が胸中に湧くのを覚えたのだった。
当の彼女自身が密かに意外に思う程に。
その間にも、アレグラの前でベルナールは穏やかな口調で言葉を紡いで行く。
「以前にもクールベの街でお見掛けしたんですが……ああ、そちらは憶えていないかも知れないんですが……」
「いいえ、確かにお見掛けしましたね」
アレグラが淡白の極みと言った風情で答えると、ベルナールは対照的に喜色を僅かに立ち昇らせた。
「ええ。あの時は、街の教会へ礼拝と交流に伺っていたのですが……」
打ち解けた様子を幾分覗かせて、青年はすらすらと言葉を並べて行く。
終始穏やかに至って普通の調子で言葉を連ねる彼の様子を、アレグラは少々意外そうに眺めていた。
人間、取り巻く環境次第で随分と変わるものである。ほんの数年前までは路上で決闘を挑んで来る程に粗暴であった相手の現在の姿を間近で見直して、赤毛の女は単純な驚きを覚えたのだった。
実際の所、上手い具合に角が取れて来たように認められる。木から剥ぎ取ったばかりの棘だらけの木片が、鉋を掛ける度に艷やかさと肌理の細かさを露わにして行くのと同じく、目前の青年もまた荒々しさの下から別の側面を現し始めているのかも知れない。
いや、あの時既にその『兆候』は垣間見せていたのだろう。
あの夏の日の夕暮れ、こちらが大学を去る間際の『あの時』に。
並び立つ家々の屋根の上に太陽が今にも触れようとしている。
となると、時刻は午後九時を回った辺りであろうか。
シテ島よりセーヌ川を跨いで遠望する街並みはこの日も変わらず、西日が地平へと近付く中で全体に翳りを纏わせて行くかのようであった。
ノートルダム大聖堂、その正面に築かれた鐘楼の屋上に立って、アレグラは暮れ行く日と、首を垂れて粛々とそれを待ち侘びるかのようなパリの街並みを望んでいたのであった。西日に照らし出された彼女は赤毛を短く刈り揃え、白いシャツと臙脂のキュロットの出で立ちで最早人気も無い夜の大聖堂の屋上の端に佇んでいた。
セーヌを遡上して来た風が、鐘楼を駆け上がって『彼女』の周囲を吹き抜けた。茜色に染まり始めた夕日より紅い髪を乱されても尚、アレグラは動こうともしない。屋上の手摺に寄り掛かり、暮れ泥む夕日に照らされる街並みをひたぶるに俯瞰し続ける。屋上の角に置かれた魔獣の像が、何処か憂鬱そうな不動の面持ちを共に同じ方向へと据えていた。
それは、頭上に明星がぽつりと顔を覗かせた時の事であったろうか。
後ろで足音が鳴った。
些か物憂げに、或いは気怠げに、肩越しに振り返った『彼女』の見つめる先にベルナールが立っていた。
空が大きく開けた場所では、特有の魁偉な様相も幾分か萎んで見える。或いは、辺りが徐々に光を失いつつある影響も作用しているのだろうか。
とまれ、大聖堂の屋上に一人立つアレグラより幾らか距離を隔てた場所で、ベルナールは相手を見ていた。いつもと変わらぬシャツとズボンの雑な服装であったが、その面持ちには真摯な色合いが浮かんでいた。
川上から降りて来た風が鐘楼の上を駆け抜けて、宵闇の滲み始めた東の地平へと吸い込まれて行く。
数秒の沈黙を経た後、アレグラは徐に口を開いた。
「……どうした? わざわざこんな所にまで足を運んで?」
問われて、ベルナールは所在無さそうに目を逸らした。
「……何、あんたが大聖堂の方へ歩いてったと聞いたんでね……」
何処か他人事のように答えた相手へ、アレグラは少し意地の悪い笑みを浮かべて見せた。
「御礼参りの良い機会だと思った訳か?」
「ああ、そんな事を言って来た奴もいたな」
やはり目を逸らしたまま、ベルナールは気乗りしない口調で肯定した。
あっさりと白状したからには、そうした趣向は持ち合わせていないらしい。
アレグラは今も距離を詰めずに佇むベルナールを、暫しじっと見つめたのだった。
例の街頭での決闘騒ぎ以来、彼は表立って事を荒げる回数がめっきりと減っていたのであった。無論、素行不良の学生の頭目には依然として収まっていたものの、彼が率先して市井を搔き乱すような事件はあの一件以降すっかり起こらなくなっていた。
端的に言えば、鼻っ柱を潰されたとでも評した所であろうか。
それによって不良学生達の間でベルナールの立場が危うくなった時期もあったのだろうが、結局の所、喧嘩を売った相手が悪過ぎたと言うだけの話である。単純な腕っ節で彼に敵う者が取り巻きの中にいないのは周知の事実であり、頂点に君臨出来るだけの覇気を備えた者が他から台頭する事態も起こらなかった。
結果としてその事が、一人の男装の麗人と不良学生の集団との間に奇妙な牽制関係を生じさせる運びとなった。
アレグラは自身に取り入ろうと近付いて来る輩も含め、相変わらず周囲の一切に無頓着な様子を見せ続けたが、素行不良の学生達もそれに対して噛み付くような素振りを最早覗かせなかった。彼らとて明確な主義主張を掲げている訳でもなく、我が身を痛め付けられ、醜態を晒してまで何事かを為そうとする気概を持ち合わせている訳でもなく、ただその時々の気紛れと安っぽい面子が全てに優先されるだけなのである。赤毛の伊達男が明確な敵意を以って行動に打って出ない以上、彼らもまた明らかに格の違う相手へわざわざ絡む理由も存在しないのだった。
相当に目障りな相手として忌み嫌っていたか、はたまた得体の知れない不気味な手合いとして恐れ戦いていたのか。いずれにせよ、少なくとも当のアレグラの前では、彼らは随分と自重自戒の行き届いた態度を見せるようになっていたのであった。
或いは無暗矢鱈と肩肘を張った所で無意味であると判れば、人とはそうした態度を取るものなのかも知れない。
そして時の流れは一切を包み込んで留まる事を知らず、『彼女』と『彼ら』の日々もまた終わりに近付こうとしていた。
「……そっちも大学を出るんだってな」
「ああ」
背後からベルナールが遣した言葉にアレグラは頷いた。
「天文の博士号も取って初期の目的は達した。法学にも興味はあるが、あまり長居し過ぎるのも考え物だ」
それに、『あれ』の放浪の虫がいい加減騒ぎ出す頃だからな。
前方に何処までも広がるパリの街並みを見渡しながらアレグラは鼻息をつく。
恐らく五日と経たない内に自分はこの街から姿を消す事になるだろう。だからこそ、これまで身を置いて来た街の様子をこの目に今一度収めて置きたいと思ったのである。
遠くの家の煙突から細い煙が立ち上って行く。
目から鱗が落ちるとまでは行かぬものの、それなりに収穫のあった数年間だった。
やはり客体と主体とでは、過程も異なれば得られるものの『質』も変わって来る。与えられた知識をただなぞるのではなく、自らの意志を以って知識を脳裏に刻み込む作業とは中々に楽しいものであった。詰まる所、何の彼の愚痴を零しつつも主がこちらの進学を拒絶しなかったのは、その辺りの事情も考慮しての事だったのかも知れない。
そこまでを思い返した所で、アレグラは今一度肩越しに後ろを顧みた。
大聖堂の鐘楼の屋上、幾らか距離を隔てた所にベルナールが今も佇んでいた。
ここ数年で学生仲間からそれとなく聞いた話では、大学内の今や古参に彼は当て嵌まるらしい。
元々は神学を収める為に、この男、ベルナール・ド・カミュが大学の門を潜ったのが十四歳の頃であったと言う。『医学』、『神学』、『法学』の上級三学部、取り分け『神学』を収める為には多くの時間を必要とする。相手の日頃の態度を見る限りに於いて学業自体は然程得意でない様子だが、それでも彼もまた漸くにして学位を取得し、大学を近々去る事となっているのだとアレグラは小耳に挟んでいたのであった。
数年後には何処かの教会で司祭の座にでも就いているのだろうか。
少々想像に難い所ではあるが、何事に於いてもやってやれない事は無いだろう。少なくとも人並み以上の度胸は据わっている筈である。これまで取り巻き連中を上手く取り纏めて来た面倒見の良さを前向きに生かせば、案外と人々の良い相談役になれるかも知れぬ。
そのベルナールは僻むとも拗ねるとも付かぬしかつめらしい顔を、こちらへとただじっと据えていた。パリの街並みへいよいよ触れようとする西日は赤味を増し、大聖堂の屋上に立つ二人の影を細く長く引き伸ばした。
ぽつりと声が上がる。
「……結局、借りは返せないままか……」
悔しげに、と言うよりは単純に不貞腐れた様子で呟いた相手へと、アレグラは微笑を返した後に顔を前へ戻した。
「その気があるならいつでも返しに来れば良い。尤も聖職者は剣を持てないから、次は鈍器での殴り合いになるのか?」
「別になりたかねえよ、坊主になんか」
ベルナールは今度はすっかり拗ねたような口振りで、至って軽い口調で遣された指摘に対して反発した。
背中越しにアレグラが指摘する。
「しかし、その為に大学の門を潜ったのだろう? 堅忍不抜の末に得た特権階級への道筋じゃなかったのか?」
皮肉じみた売り文句になってしまった、とアレグラも咄嗟に内心で反省したが、後ろのベルナールはすぐに声を荒げるでもなく愚痴を漏らし続ける。
「それでも気の進まねえものは進まねえさ」
珍しく、湿っぽく食い下がって来る。
「だがよ、世の中って奴は気の進まねえ事でも率先してやって見せねえと渡って行けねえんだ。渡らせちゃくれねえんだよ。『慣習』だの『常識』だのの上に乗っかって顔も見せようとしねえ嫌味な連中が、下っ端の勝手なんか絶対許さねえように仕向けてやがるんだ。もうずっと昔から」
言葉尻に今度は悔しさが滲んでいた。
丁度彼方の西の空と同じく色合いを刻々と微妙に変化させながら、ベルナールはこれまで腹の底に仕舞って来たらしい事柄を吐き出して行ったのだった。
「あんたはどうすんだ、こっから先?」
問われて、アレグラは肩を竦めて見せた。
「暫くは師に付き従って各地を渡り歩く。ここで得た知識の幾らかも道中何処かで役立つ事もあるかも知れない」
「そうか……あちこち巡って生活出来んなら、まだ何か気晴らしになるかも知れねえな」
アレグラも初めて耳にする溜息交じりの声をベルナールは漏らした。
一方、アレグラは前方のパリ市街を見据えながら、首の角度を僅かに変えた。
おかしな男だ。
何故、妙な所で感傷的になるのだろう?
日頃周りに大勢の取り巻き共を侍らせているのだから、彼らを相手に幾らでも文句を垂らせば良かろうに。
何故この期に及んで、わざわざこちらへ愚痴など遣すのだ?
こちらと異なり、独りぼっちの身の上でもあるまいに。
彼女はそこで小さく頭を振った。
「そうでもない。土台人の暮らす所は何処も同じだ。そこで生まれ出る喜びにも苦しみにも、何処であれ大した違いは無い」
最後には決まって『それ』を思い知らされるからこそ、『あの人』は一つ所に留まる事を嫌うのだろうか。
アレグラは細めた目を遠方へと向けた。
「結局は向き不向きの問題だろうな。私はこの先も方々を巡り続ける。この街に戻って来る事も恐らくもう無い」
「そうか……」
随分と気勢の削げた声が彼女の後方から上がった。
これまで、遠くからでも近くからでもまるで聞いた憶えの無い、か細い声であった。
彼女が単純に不思議に思ったその時、背後から再び言葉が寄せられる。
「……寂しく、なるな……」
何処か遠い波の音を連想させるような、重みは無くとも意識の裾をそれとなく引く声であった。
紺色に染まり始めた東の空より、夜気を孕んだ冷ややかな風が聖堂の屋上を吹き抜けた。
「……何?」
その刹那、アレグラの胸中を一つの情念が隈無く覆い尽くしたのだった。
たった一つの、それは『当惑』と呼ばれる情緒である。
そして、理由も確と定められぬまま戸惑う彼女には察する余裕も無い事であったが、この時もう一方の男もまた全く同じ感情を抱いていたのであった。
アレグラの後ろに立ったベルナールも、少し遅れて困惑した面持ちを浮かべたのである。
但し、こちらは戸惑いと言うよりもむしろ或る種の驚嘆に近かったであろうか。
さり気無い呟きを発した青年はその直後、己の目の前に広がる光景に俄かに息を呑んだのであった。
西の空は今や茜色に染まり、遠い家並みの向こうに沈み行こうとする太陽は赤味を帯び始めていた。そこから放たれる朱色の輝きに照らし出されて『彼』である筈の、『彼』と呼ぶべき相手がこちらを静かに見据えている。
元々赤かった髪が斜陽の光に煌めいて炎のように鮮やかに浮かび上がり、その双眸もまた同じ輝きを発している。今は半身を自分の方へと向けて、混じり気の無い驚きの表情を浮かべた男装の麗人の光り輝く姿を、貴族の青年は半ば呆けたように見つめていた。
それ程までにその一瞬は鮮烈で、そして美しかったのである。
このまま時が止まってしまうのではないかと疑う程に。
何処までも広い空の下で燦然と輝く日輪を向こうに回しても尚、『その者』の姿は天地に埋没する事無く、むしろその狭間に微細な穴を穿つかのように確然と存在している。中性的な面立ちは斜陽の光を受けて艷やかに煌めき、陰の無い艷やかさを表に立ち昇らせていた。紅い光に照らし出される細身の体躯は華奢さよりもしなやかさを強調して、一匹の野性美溢れる獣を前にしているかのような錯覚すら相対する青年に抱かせたのであった。
いつしか辺りは随分と涼しさを増していた。
セーヌを駆け抜けた風が言葉も無く佇む両者の間を通り抜けた。
時刻がいよいよ夜半に差し掛かろうとする最中での、それは刹那に訪れた出来事であった。
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