2 / 3
招集
危険な夜道
しおりを挟む
夜の妖しい光が点々と光る中、俺とターゲットは足を進めていた。
「此処の近くに行き付けのBARがあるんだ。
良ければ僕と一緒に来てくれないかな?」
「本当ですかぁ?…その後エルク様のお家にもお邪魔したいですぅ」
「ふふっ、もちろん。僕のお姫様」
思ってもいない甘ったるい言葉がコロコロと面白い程に出ていく。
それは自分を麻痺させる毒で。
──敵をジンワリと締めていく首輪だった。
「この路地を曲がるとあるんだ。狭いから後ろ、着いてきてね」
コツコツと歩む後ろの足音が止む。
俺は気になって後ろを振り返る。
─そして胴元を切りつけられる筈だった。
「なっ!?!?」
腰に帯剣していたレイピアの鞘を傾け、その斬撃を最小で抑える。
その目は爛々と獲物を定めていた。
「わかりやすいね。本当にわかりやすい。
俺にそんなくっっっさい臭いが分からないとでも?呑気だねぇ…」
軽い軽蔑を含んだ声が、言葉が、路地裏に木霊する。
「まず、王都の地形くらいは覚えとけよ。
基本だろ?こんな治安の悪いとこに構えるBARなんてねぇっての」
大人の肉欲に塗れた街を抜けた先は軽犯罪者の彷徨く警戒地域だ。
BARなんて開けばたちまちに金と酒を強奪され、店を根城にされる。
それにより、王国では警戒地域での酒場は違法とされている。
そんな当たり前過ぎて聞くことの無い法律も知らない女は怪しさしさ無い。
だからこそ、好都合だった。
「さあ、泥棒猫ちゃんは寝る時間だ。次起きるとしたら独房だね」
首筋に手刀を静かに落とした。
「そこに居んだろ、ラドン」
「気づいてたか、坊ちゃん?んで、こいつは回収していいんだろ?アイツらも喜ぶぜェ」
「壊すなよ。終わったら魔法術士団の拷問に回す」
声と共に出てきた大柄な男の名前はラドン。
大陸に轟く“皮剥ぎ”の異名を持つ元S級犯罪者だ。
そんな男はなんの躊躇いも無く騎士であるエルクと世間話のように会話を交わせていた。
「それにしても容赦ねェな、相変わらず。色男が泣くぜ?」
「そんなことはどうでも良いからさっさと去れ、ラドン。そろそろ第三部隊がこの警戒地域を廻る時間だ」
現役の役職持ちの俺とS級犯罪者のラドンが話しているところを見られては黙ったものでは無い。
だからこそ、この状況は頂けない。
「わァ~ってるよ。ご主人様?」
不敬とも取られかねない言葉とは別に、ラドンの目はエルクを尊敬と畏怖を含めた目で見つめていた。
さながら主人に忠実な犬のように。
「此処の近くに行き付けのBARがあるんだ。
良ければ僕と一緒に来てくれないかな?」
「本当ですかぁ?…その後エルク様のお家にもお邪魔したいですぅ」
「ふふっ、もちろん。僕のお姫様」
思ってもいない甘ったるい言葉がコロコロと面白い程に出ていく。
それは自分を麻痺させる毒で。
──敵をジンワリと締めていく首輪だった。
「この路地を曲がるとあるんだ。狭いから後ろ、着いてきてね」
コツコツと歩む後ろの足音が止む。
俺は気になって後ろを振り返る。
─そして胴元を切りつけられる筈だった。
「なっ!?!?」
腰に帯剣していたレイピアの鞘を傾け、その斬撃を最小で抑える。
その目は爛々と獲物を定めていた。
「わかりやすいね。本当にわかりやすい。
俺にそんなくっっっさい臭いが分からないとでも?呑気だねぇ…」
軽い軽蔑を含んだ声が、言葉が、路地裏に木霊する。
「まず、王都の地形くらいは覚えとけよ。
基本だろ?こんな治安の悪いとこに構えるBARなんてねぇっての」
大人の肉欲に塗れた街を抜けた先は軽犯罪者の彷徨く警戒地域だ。
BARなんて開けばたちまちに金と酒を強奪され、店を根城にされる。
それにより、王国では警戒地域での酒場は違法とされている。
そんな当たり前過ぎて聞くことの無い法律も知らない女は怪しさしさ無い。
だからこそ、好都合だった。
「さあ、泥棒猫ちゃんは寝る時間だ。次起きるとしたら独房だね」
首筋に手刀を静かに落とした。
「そこに居んだろ、ラドン」
「気づいてたか、坊ちゃん?んで、こいつは回収していいんだろ?アイツらも喜ぶぜェ」
「壊すなよ。終わったら魔法術士団の拷問に回す」
声と共に出てきた大柄な男の名前はラドン。
大陸に轟く“皮剥ぎ”の異名を持つ元S級犯罪者だ。
そんな男はなんの躊躇いも無く騎士であるエルクと世間話のように会話を交わせていた。
「それにしても容赦ねェな、相変わらず。色男が泣くぜ?」
「そんなことはどうでも良いからさっさと去れ、ラドン。そろそろ第三部隊がこの警戒地域を廻る時間だ」
現役の役職持ちの俺とS級犯罪者のラドンが話しているところを見られては黙ったものでは無い。
だからこそ、この状況は頂けない。
「わァ~ってるよ。ご主人様?」
不敬とも取られかねない言葉とは別に、ラドンの目はエルクを尊敬と畏怖を含めた目で見つめていた。
さながら主人に忠実な犬のように。
0
お気に入りに追加
5
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
セクスカリバーをヌキました!
桂
ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。
国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。
ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……


特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった
なるとし
ファンタジー
鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。
特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。
武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。
だけど、その母と娘二人は、
とおおおおんでもないヤンデレだった……
第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。

転生したら、6人の最強旦那様に溺愛されてます!?~6人の愛が重すぎて困ってます!~
月
恋愛
ある日、女子高生だった白川凛(しらかわりん)
は学校の帰り道、バイトに遅刻しそうになったのでスピードを上げすぎ、そのまま階段から落ちて死亡した。
しかし、目が覚めるとそこは異世界だった!?
(もしかして、私、転生してる!!?)
そして、なんと凛が転生した世界は女性が少なく、一妻多夫制だった!!!
そんな世界に転生した凛と、将来の旦那様は一体誰!?

異世界でネットショッピングをして商いをしました。
ss
ファンタジー
異世界に飛ばされた主人公、アキラが使えたスキルは「ネットショッピング」だった。
それは、地球の物を買えるというスキルだった。アキラはこれを駆使して異世界で荒稼ぎする。
これはそんなアキラの爽快で時には苦難ありの異世界生活の一端である。(ハーレムはないよ)
よければお気に入り、感想よろしくお願いしますm(_ _)m
hotランキング23位(18日11時時点)
本当にありがとうございます
誤字指摘などありがとうございます!スキルの「作者の権限」で直していこうと思いますが、発動条件がたくさんあるので直すのに時間がかかりますので気長にお待ちください。

異世界召喚でクラスの勇者達よりも強い俺は無能として追放処刑されたので自由に旅をします
Dakurai
ファンタジー
クラスで授業していた不動無限は突如と教室が光に包み込まれ気がつくと異世界に召喚されてしまった。神による儀式でとある神によってのスキルを得たがスキルが強すぎてスキル無しと勘違いされ更にはクラスメイトと王女による思惑で追放処刑に会ってしまうしかし最強スキルと聖獣のカワウソによって難を逃れと思ったらクラスの女子中野蒼花がついてきた。
相棒のカワウソとクラスの中野蒼花そして異世界の仲間と共にこの世界を自由に旅をします。
現在、第三章フェレスト王国エルフ編

もう死んでしまった私へ
ツカノ
恋愛
私には前世の記憶がある。
幼い頃に母と死別すれば最愛の妻が短命になった原因だとして父から厭われ、婚約者には初対面から冷遇された挙げ句に彼の最愛の聖女を虐げたと断罪されて塵のように捨てられてしまった彼女の悲しい記憶。それなのに、今世の世界で聖女も元婚約者も存在が煙のように消えているのは、何故なのでしょうか?
今世で幸せに暮らしているのに、聖女のそっくりさんや謎の婚約者候補が現れて大変です!!
ゆるゆる設定です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる