金の王家の影は行く。〜有能な影は騎士団にいる〜

するめ烏賊

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危険な夜道

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夜の妖しい光が点々と光る中、とターゲットは足を進めていた。



「此処の近くに行き付けのBARがあるんだ。
良ければ僕と一緒に来てくれないかな?」

「本当ですかぁ?…その後エルク様のお家にもお邪魔したいですぅ」

「ふふっ、もちろん。僕のお姫様」



思ってもいない甘ったるい言葉がコロコロと面白い程に出ていく。


それは自分を麻痺させる毒で。

──敵をジンワリと締めていく首輪だった。



「この路地を曲がるとあるんだ。狭いから後ろ、着いてきてね」



コツコツと歩む後ろの足音が止む。


俺は気になって後ろを振り返る。


─そして胴元を切りつけられる筈だった。



「なっ!?!?」



腰に帯剣していたレイピアの鞘を傾け、その斬撃を最小で抑える。


その目は爛々と獲物を定めていた。



「わかりやすいね。本当にわかりやすい。
俺にそんなくっっっさい臭いが分からないとでも?呑気だねぇ…」



軽い軽蔑を含んだ声が、言葉が、路地裏に木霊する。



「まず、王都の地形くらいは覚えとけよ。
基本だろ?こんな治安の悪いとこに構えるBARなんてねぇっての」



大人の肉欲に塗れた街を抜けた先は軽犯罪者の彷徨く警戒地域だ。


BARなんて開けばたちまちに金と酒を強奪され、店を根城にされる。


それにより、王国では警戒地域での酒場は違法とされている。


そんな当たり前過ぎて聞くことの無い法律も知らない女は怪しさしさ無い。


だからこそ、好都合だった。



「さあ、泥棒猫ちゃんは寝る時間だ。次起きるとしたら独房だね」



首筋に手刀を静かに落とした。









「そこに居んだろ、ラドン」

「気づいてたか、坊ちゃん?んで、こいつは回収していいんだろ?アイツらも喜ぶぜェ」

「壊すなよ。終わったら魔法術士団の拷問に回す」



声と共に出てきた大柄な男の名前はラドン。


大陸に轟く“皮剥ぎ”の異名を持つ元S級犯罪者だ。


そんな男はなんの躊躇いも無く騎士であるエルクと世間話のように会話を交わせていた。



「それにしても容赦ねェな、相変わらず。色男が泣くぜ?」

「そんなことはどうでも良いからさっさと去れ、ラドン。そろそろ第三部隊がこの警戒地域を廻る時間だ」



現役の役職持ちの俺とS級犯罪者のラドンが話しているところを見られては黙ったものでは無い。


だからこそ、この状況は頂けない。



「わァ~ってるよ。ご主人様?」



不敬とも取られかねない言葉とは別に、ラドンの目はエルクを尊敬と畏怖を含めた目で見つめていた。


さながら主人に忠実な犬のように。
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