黒の瞳の覚醒者

一条光

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番外編~フィオ・ソリチュード~

神龍の気持ち

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「ワタル……」
「ワタル様……」
 やっぱりというか、当然というか……クーニャを連れて帰るとリオもシロナも呆れ顔になった。
「ふむ、主は相当女を囲っておるな――まぁ、よいよい、儂を倒すほどの雄であれば当然だ」
「ワタル? その娘を押し倒したんですか?」
「ち、違うって! クーニャは神龍って種族でドラゴンになれるの! というか倒したらこのちっこい姿になったんだって!」
「それで何故その神龍さんが裸でワタル様の部屋に?」
 シロナが軽蔑の視線を向けてる。

「いやこいつ元々何も着てなくて……とりあえず上着を羽織らせてたんだけど、慣れてないから鬱陶しいらしくて」
 クーニャは裸でベッドに上がってワタルが日本から持ち込んだ食料を漁ってる。
 完全に居着く気だ……。
 ティナ達は難民の事で話があるって王様のとこに行ってるけど、もう反対しないのかな……。

「うむ、服など着ずとも問題ない――」
「無いはずないでしょう!? クーニャちゃんは女の子なんですよ!? 男の人の前で肌を晒してるなんておかしいと思わないんですか?」
「思わぬ、主は儂の番に相応しい、故に主が発情するのは望むところだ」
 あぁ……リオが怖くなっていく……。

「ワタル?」
「あ~いや、えっと番の話は冗談だと思う……たぶん、こいつを祀ってた人間たちが会いに来なくなって寂しくてずっと眠ってたとか言うからさぁ……うちは賑やかだし寂しくないかなぁ、なんて……起きたのにあの大陸にはもう意思疎通の出来る相手も居なくて一人ぼっちになるしさぁ……みんな無事に帰ってきたのもクーニャのおかげだし、な? ……ごめんなさい」
 言い訳をしてみてもリオの表情が変わらなくて焦ったのか床に頭をつけて謝ってる。
「こら主! 儂は寂しいなどと一度も言ってはおらぬぞ! ただちょっと、する事もなく退屈な時間ばかりを過ごさねばならぬからそれを忘れる為にだな――」
「まったくもう、そういう言い方はズルいですよ? ほらクーニャちゃん、人の中で暮らすなら服は着ないと駄目です。ちゃんとしたものはあとで用意しますからとりあえずこれを着ててください」
「要らぬ!」
 リオが羽織ってた上着を手渡すとしかめっ面で突き返して布団に潜り込んで抵抗してる。
 これ、ティナ達より年上、だよね?

「クーニャ服は着てくれ、とりあえず俺のシャツなら大きいし体に密着しないからそんなに煩わしくないだろ?」
「ぬぅ~……? まぁよかろ」
 ワタルがシャツを渡すと最初は嫌そうな顔をしたのに匂いを嗅ぐと簡単に受け取った。
 なんかシロナみたい。

「うむ、主の服は悪くない。これは儂が貰ってやろう」
 さっきまで抵抗してたくせに今は袖の匂いを嗅いだり頬擦りしてニヤけ顔……そしてなんだかシロナは嬉しそう? 匂い好き仲間?
「はぁ……じゃあもうとりあえずそれでいいです。シロナさん服を作るの手伝ってもらえますか?」
「はい、勿論です。このままうろちょろされてはワタル様の評判も落ちてしまいますしキチンとしたものを仕立てましょう!」
「や、こ、こらやめぬか――わ、ちょ、そこはくすぐったい、ひぅ!? そのような場所撫でるでないわ」
 リオが素早く抱き上げてシロナが手早くクーニャの体を測っていく……結局もうみんな受け入れる気になってる。
 もやもやしてるの私だけ?

「あーっ!? お前どんだけさきいか食ってんだよ……あーあ、殆ど全滅じゃん」
「美味かったぞ、毎食それを所望する」
「いやクーニャ……たぶんそろそろ、来るぞ」
「何がだ――う? うぬぅ……なんだこれは……腹が、主毒を盛ったのか?」
「違うわ! さきいかは食い過ぎると消化不良起こして腹痛くなるんだよ、全滅させりゃ当然――まぁ神龍もなるとは思わなかったけどな」
「ぬぉおおお……そんな事よりこの痛みなんとかせぬか」
「リオ、トイレの場所と使い方教えてやってくれる?」
「まったく本当に仕方ないですね……もう子育てが始まってるような気分です」
「ごめんな、お母さん」
「いいですよ、お父さん」
 嬉しそうにやり取りをするとリオはクーニャを連れて出ていった。
 残ったシロナとクロエはさっきのやり取りを羨ましそうにしながら呆けてる。

「さ、流石リオさんです。阿吽の呼吸というものでしょうか、過ごした時間自体は私たちとそう変わりはしないはずですのに」
「これが夫婦の呼吸というものなのですね! 勉強になります」
「違うと思うが……はぁ……」
 感心してる二人に視線をやってため息を吐きながら立ち上がってふらふらと扉の方に向かい始めた。
「どこ行くの?」
「なんか作ってこようと思って」
「クーニャの?」
 なんかクーニャばっかり構ってる……ようやく帰ってきてゆっくり出来るようになったのにリオ達にも面倒な事頼むし、家族でのんびりしたいのに。

「うん、まぁな、何しろ人間が味付けしたものなんて超久しぶりだったんだろうし、なんか消化のいいもの用意しておこうかと」
わたくしもお手伝いします」
「いいのか? クロも怒ってたんじゃ?」
わたくしは怒ってなどいませんよ? ワタル様がどうしてお連れになったのか分かりましたし、私はむしろ賛成です」
 クロエが敵になった……シロナもちょっと意外そう。

「まぁ、そうですね、私たちの家族と大勢の方を救ったお方です、あまり邪険にしてはいけませんね、そうとなれば相応しい物を仕立ててきます」
 シロナは腕捲くりをするとさっき採寸したのを書いたメモにクーニャ用の服の図案を書き始めた。
「その割に俺にジト目を向けてるじゃん」
「迎え入れる気持ちはありますが女性への防御力皆無のワタル様には呆れていますから」
「クロー、シロがいじめるー!」
 わざとらしく泣く振りをしながらクロエに縋るワタルを彼女は楽しそうに見てる。

「人聞きの悪い事言わないでください!」
「大丈夫ですよワタル様、シロナはあまり構ってもらえないから拗ねているだけなのです。今夜一緒に寝てくだされば機嫌も直りますよ」
「クロエ様!? ちょ、なんてこと言ってるんですか!?」
「あら、じゃあシロナは一人で寝るの?」
「いやあの、えっと、その…………一緒がいいですけど……私もワタル様のシャツを所望します」
 クロエがワタルにしなだれるとシロナは簡単に折れた。
 今日はみんなでぎゅうぎゅう?
「洗濯後? 洗濯前?」
「そそそ、それはその……前で……」
 シロナの変な習性……。

 ワタル達が出ていくと入れ替わりでクーニャが戻ってきた。
「うぅ……ぬ? 主はどうした?」
「……ご飯作りに行った」
 クーニャの為にとは教えてあげない。
「ほほぅ? 主自ら用意してくれるのか、囲っておる側女が準備するものと――なんのつもりだ小娘?」
「みんなを愚弄したあなたが悪い」
 クーニャがみんなを側女と揶揄した瞬間私は足を振り下ろしてた。
 紙一重で躱したみたいだけど体勢は崩れてる、今追い打ちをかければ人の姿の神龍なんて容易く潰せる。

「側女、ではないのか?」
「違うッ! みんなワタルの事が大切で、ワタルが大切にしてる家族! 私はこういうのの我慢上手くない、これ以上言うならどうなっても知らない」
「ふむ……儂が言葉を誤ったか、謝罪しよう。主が大切にしているものを貶めるつもりはなかった」
「次はない」
「うむ、肝に銘じよう――ところで小娘、お前も主の女なのか?」
「ワタルは自分の全部をくれるって言った」
 だからもうクーニャにあげるものなんて無い、私と家族で分け合う。

「ほほぅ……やはり主は体の小さき女子おなごも好みなのだな、うむうむ儂も主の好みの範疇というわけだ。良い事を聞いた」
「クーニャにわける分は無い!」
「フッフッフッ、小娘よ、お前は気付かぬか? 主の儂を見る目、とても輝いているのだぞ?」
 たしかに、家族の誰に対しても向けないような眼差しをしてる時があったけど……。
「……あげない」
「構わぬ、それは主の決めることだ――ところで主はどのような物を作っておるのだ?」
「……知らない」
「ふむ、助けてやったというのに嫌われたものだな。まぁよいよい、来るまで楽しみに待つとしよう」
 そう言って再びワタルのベッドで寛ぎ始める物体に私はため息を吐いた。

「ここは……?」
 ワタルの部屋のソファーでふてくされてうつらうつらしてたはずなのに私が居るのはただただ真っ白な空間……夢?
「まったく、クルシェーニャにも困ったものだ……やはり意図的に知識を欠落させたのは失敗じゃないのかな?」
「誰?」
 真っ白な空間に浮かぶテレビみたいなのに囲まれた場所に真っ白な女が居る。
 真っ白で全体の輪郭しか分からないけど、そこに居る。

「おや、君に会うのはこれで何回目かな、あの子が居ない時でも入り込んでしまうようになってるね――いや、今回のはクルシェーニャの側に居たせいかな?」
「クーニャ?」
「やれやれ……一応大切に名付けたのだけどね、本人も存外愛称の方を気に入ってるようで困ったものだよ……幼さ故か、あの子の気性か、軽々に他者と関わりすぎている」
 名付けた? 幼い……?
 女の言う事が理解出来ない。
 伝承通りならクーニャは既に三百年以上生きてるはず、それが幼い?
 それに名付けたって……この女はクーニャよりも昔から存在してるの?

「不思議そうだね、何か質問があるのかい?」
 疑問はあるけど上手く言葉に出来ない。
「……あなたは何?」
「ふむ、仕方ないとはいえこのやり取りはいささか飽きてきたね……私は傍観者、と言ったところかな」
「なんでクーニャを知ってるの?」
「そりゃあの子を生み出した一人だからね」
「お母さん?」
「ふむ……難しいね、生み出した者を親と呼称するならそうなるのかな? しかし生殖によって産んだかと言えば違う」
「産まずにどうやって生むの?」
「あの子はだからね――っとと、やれやれ、君との会話に慣れてしまったせいか口が軽くなって困るな……君はそろそろ帰った方がいいんじゃないかな? 食事の準備が整ったようだよ」
 女が指差す画面にはワタル達が料理を並べている様子が映ってる。
 ここは何……? 監視されてる?

「あぁいや、うん、別にずっと覗いているわけではないよ? むしろ全く見ていない――今はクルシェーニャが傍に居るせいだとも」
 私が訝しんでるのに気付いて女はそう答えた。
「なんで見てるの?」
「言っただろう? 私はあの子を生み出した一人だからね、成長が気になるのさ、さぁさぁ、そろそろ帰りたまえ、本来ここは君の居ていい場所ではないんだ」
 女が手を叩くと白が黒に変わって意識は溶けていった。

「お、起きたか? 丁度並べたところだからフィオも食べるか?」
 何か、夢を見てた気がするけど……靄が掛かって思い出せない、凄くもやもやする。
「寝起きだから要らないか?」
「……食べる」
「主! これはなんなのだ!? すごく美味いぞ!」
「グラタンだ。熱いんだからゆっくり食えよ」
「儂は熱いのは平気だ、ぐらたん……美味い!」
「あ~、火ぃ吹くんだもんな……俺リオ達呼んでくるわ」
「主が手ずから作った食事、美味い、美味いぞ……」
「クーニャ様……」
 ワタルが出ていったのを見計らったようにクーニャの頬に雫が伝った。

「あ、主には言うでないぞ! これは、久々に美味い物を食べたから……少し気が緩んだだけだ」
「今まではどうされていたのですか?」
「起きてからは獲った獣を適当に焼いて食べておった」
 クロエの問いに素っ気なく答えると顔が見えないように下を向いて黙々とグラタンを食べ始めた。
 ずっと一人……はぁ、もうあんまり反対出来ないかもしれない。

「ふむ……主はこんなに大勢に囲まれておらぬと眠れぬのか?」
「いや……今日は特殊なんじゃないかなぁ…………」
「もぅ、なんでベッドで寝ないのよ?」
「いや狭いし」
「密着すればいいだろう?」
「だだ、旦那様と密着なのじゃ!?」
「そんな状態じゃ寝れないっての、みんなを近くに感じるだけでいいって」
 あの大陸から脱出する前にしてた添い寝の話、それを実行しようとティナ達が押しかけてきて、昼の約束を守らせようとクロエ達も押しかけてきた。
 そして流石にそれはってリオとミシャも集まった。
 結果、みんなで寝る事になったけどワタルだけソファーに移動した……むぅ、移動しようとするとナハトが牽制してくる。

 仮にワタルの所に行ってもリオとミシャ以外は付いてきて結局ワタルは移動しそう……みんなが寝るまで大人しくしてよ。
「それにしてもリオとミシャまで来たのは意外ねぇ」
「ええそれはもう、先走って暴走しそうな方が二人ほど居ますので」
「ナハト怒られてるわよ?」
「お前の事だろう?」
 リオの笑顔が怖い……やっぱり今日は大人しく諦めようかな、みんなと一緒も嬉しいし。

「おい、あの女子おなご強そうには見えぬのに怖いぞ?」
 リオを警戒してクーニャが小声で話しかけてきた。
「あんまり独り占めとかくっ付き過ぎると怒る」
「ふむ、嫉妬というやつだな、しかし……やはり主の周りは楽しそうだ」
 クーニャは羨ましそうにみんなの方へ視線を向けた。
 ワタルの傍に居ると楽しい、嬉しい事も沢山ある。
 でもそれはみんながワタルの事を好きだから、出会ったばかりのクーニャがどうしてこんなにワタルに拘るの?

「なんでワタルに拘るの?」
「つまらぬ質問をするな、主は面白さの塊のようなものだぞ? 儂を初めて見たというのに堂々と要求を述べ、あまつさえ儂を打ち倒した。その上異世界人だという、儂は主への興味が尽きぬ、この焦がれるような気持ちに抑えなどきかぬよ、お前はどうなのだ?」
 興味……クーニャも私がワタルに初めて会った時に抱いたのと同じ気持ちを感じてるのかもしれない……だとしたら行き着く気持ちも同じになるかも……?
 ワタルは、たぶん断らない……ドラゴンも家族……ワタルの周りは変なことばっかり。
 でも、楽しくて嬉しい!
 でもどうか――もうロリは増えないで!

「フィオ、もう一発、次で最後にするからもう一発だけやらせてくれ。俺頑張るから」
 動きが鈍り荒い息をしながらもワタルはもう一度と食い下がってくる。
「ワタルの、激しいから疲れる」
「嘘つけ。けろっとしてるじゃないか。それにさっきまでノリノリだっただろ。フィオじゃないと駄目なんだ!」
 まだ余裕はあるけどクーニャとの戦闘もあったせいかワタルの黒雷の精度は更に上がってるから気を抜けないのは事実、まぁたしかにワタルの相手は私じゃないと駄目だと思うけど……。

「如月、あんた朝からなにセクハラ発言連発してるのよ。そんなことしてないで難民収用区画の工事でも手伝いに行ったらどうなのよ」
 修練場に現れた紅月は会って早々ワタルにゴミを見るような目を向けてる。
 この前は信じてくれたのに相変わらずな態度……紅月って本当にワタルを嫌いなのかな? なんかわざとやってるみたい。
 それはともかくせくはらって何? また日本人だけの言葉、また変な意味?

「セクハラってなんだよ。俺はただ――」
「もう一発、俺頑張るから、フィオじゃないと駄目なんだ!」 
 恋が面白いものを見つけたと言わんばかりの顔で現れた。
「や、違うから! そういう意味じゃないから! 電撃の精度を上げる訓練をしてて全弾弾かれたから悔しくてリベンジを申し込んでただけだから!」
 どういう意味?
「なるほど、戦いでは敵わないからベッドの中でのリベンジに賭けたと」
 ベッドの、中……!? 流石にそこまで言われたらどういう意味か察しはついた。
 そういう欲もあるって言ってたし、訓練で負けてるから、そういう事で反撃……?
 ワタルが、私を、押し倒す……?

 変な想像をしたせいで頭が沸騰した……我慢するって言ってたのに、やっぱり我慢出来なくなった?
「どした?」
「……する、の?」
 確認しないと……そういうのは、いきなりは頭が停止しそうで……ちょっと怖い。
「え~っと…………」
 言葉を濁すワタルは視線を彷徨わせて――。

「主ーっ! 助けよ。この娘たちが嫌がる儂を縛り付け無理矢理――」
 私たちの会話を割ってクーニャが何も身に着けてない状態で駆け込んできた。
「人聞きの悪い事言わないでください。人の中で生活するなら服をちゃんと着てくださいって言っているんです。シロナさんと一緒にクーニャちゃんに似合う物を仕立てたんですから」
 貴族の娘が着そうな服を持ってリオ達がクーニャを追って駆け込んでくる。
 あの状態で城中を駆け回った……?
 同じ事に思い至ったのかワタルは目元をヒクつかせてる。

「クーニャ、服は着なきゃダメだって言っただろ。色々恥ずかしいぞ」
 ワタルは自分の上着を羽織らせて目線を合わせて諭すとリオ達の前に押しやった。
 でも当の本人は納得した様子もなく不服そう……。
「ふん、主の服を着ておったわ」
「わざわざ俺のだぼだぼのを着なくてもリオ達が用意してくれたのを着ればいいじゃないか。せっかく用意してくれたんだから、サイズの合わない俺のを着る意味はないだろ」
「嫌だな。その娘らの用意した物は身体を締め付ける様な布切れまであるのだぞ。儂はだぼだぼ楽々な主の匂いのする服の方が良い」
 ちゃんとした服がよほど嫌なのか羽織った上着の前を寄せて返さないって主張してる。
 リオ達がクーニャの為に一生懸命作った服の何が嫌なの? 締め付けるような作りなんて……もしかしてパンツの事を言ってる?
 長いスカートだし最悪穿かなくても……リオ達の厚意を無駄にするのは許さない。

「いいから着ろ。主命令だ」
「ぬ……なんと強引な主か。嫌がる儂に無理矢理着せるのか」
「人の姿で居る時は服を着るのが普通だ。主と呼ぶなら従ってくれ。ほれ」
 変な噂が立つのを嫌ってか、ワタルが強く言うと流石に諦めたのかリオ達から服を受け取って睨みつけ始めた。
「仕方ない。人の中で暮らすならその決まりも守る必要もあるか」
 納得はしてないけど理解はしたのか渋々新しい服に着替え始めた。
 やっと袖を通したからリオ達も安心したように笑ってる。

 そしてそれとは別にクーニャに見惚れてるのが約一名……だらしない顔になってる、ロリなら何でもいいの!?
「ん? どうした?」
「続き」
 ワタルの袖を引っ張って修練場の真ん中まで連れて行くと問答無用で訓練を再開した。

「も、もう勘弁してください。というかもう意識が朦朧としてるんだが」
 あれから丸一日、私は持てる全てでワタルを叩きのめした。
 結果としてワタルはボロボロだけど着実に成長してるし能力を使った戦い方も進歩してた。
 そんなワタルの壁であるのはちょっと大変だけど……でも、まだまだ油断をしてほしくないし上を見ていて欲しいから私もまだまだ先を目指す。
 もっと速く、もっと強く――。
「ワタルがやるって言ったのに」
 この訓練はワタルが望んだ結果って事にしておく、すると――。
「疲れた……訓練ありがとな。今日はもう寝たい」
「ん」
 何もかも諦めた表情になってふらつきながら部屋に帰っていくワタルの後ろをついて行く。

 帰り着くと着替えもせずにベッドへ倒れ込んだ。 
 いつもならお風呂に入ったりするのに……ちょっとやり過ぎたかな……?
 隣に私も倒れ込んだのに気が付くと少し驚いたみたいだけど、追い返す気力もないのかぎゅってしてくれて眠り始めた。
 ワタルの匂い……今日はよく眠れそう。
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