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番外編~フィオ・ソリチュード~
邪魔者
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「た、大変なのじゃ!」
「あらどうしたのミシャ?」
「妾トイレに行ってきたのじゃ」
「それは知っているわよ、それより食事の場でそういう話をするのはマナー違反じゃないかしら――」
「一大事なのじゃ! 妾が座ると便器めが急に水を噴きおったのじゃ!」
「ふむ、便器が拒絶を示すほどの尻だったのか」
「ふにゃ!? ナハト失礼なのじゃ! 妾のお尻は綺麗なのじゃ! 旦那様なんて寝ながら顔を突っ込んで……あぅぅ、思い出したらまた恥ずかしくなってきたのじゃ」
宿への帰り道でナハトがお腹が空いたって言い出して入ったふぁみれすっていう料理店、でも日本の物なんて慣れてないみんなはひとつひとつの事に驚いたり過剰な反応をする。
私もトイレがお湯噴くの嫌い……。
「ミシャさんミシャさん、そんな事よりあちらのどりんくばーという機械で色んな飲み物が飲み放題らしいですよ! 私しゃーべっとという冷たくてシャリシャリした飲み物に感動してしまいました――」
「クロエ様見てください、このレバーを引くとクリームが無限に出てきます!」
「ああ!? ちょっ、シロやりすぎ――ってかなんだこの大作……」
慌ててワタルが止めに入ったけどシロナの手にはうねりのたうつ謎のソフトクリームが完成してた。
「まるでう――」
「駄目ですよフィオちゃん、食事の場でそういう事を口走ってはいけません」
リオの笑顔が……過去最高に怖い……もう雲路の話はしない。
「まるでうんこだな」
「ぶはっ!?」
「きゃー!? ワタル様ー!」
ナハトの一言でシロナが吹き出したものはワタルへとぶっかけられた。
……うんこは汚い、食事中はやめてほしい――普段も嫌だけど食べてる時よりはマシ――あぁ……リオはこっちって思ったんだ……私そんな事言わないのに。
「ナハト汚い」
「お前も同じ事を言おうとしたじゃないか」
「私が思ったのは雲路、高い山の山路を流れる雲がさっきのアイスみたいにうねうねなの見たことがある」
「へぇ~、フィオちゃんは山登りをした事があるんですね」
「ん、混ざり物全部を一から鍛えるのは手間がかかるから適当に人の居ない土地に放り出されて生き残ったのが正式に訓練を受けさせられてた」
「ご、ごめんなさい」
リオは何かを謝るけど私はリオに嫌な事をされたり迷惑をかけられた事はない。
「楽しくなかったけど、ワタルを助けてみんなに会える事に繋がってたから良かった」
「フィオちゃん……」
「フィオは良い子なのじゃ、妾も皆と家族になれて良かったのじゃ」
リオ達の作る料理には比べるべくもないけどみんなと過ごしてみんなが楽しそうにしてるのを見られるのは嬉しい。
みんなにつられてワタルも優しい顔をしてくれるから二倍嬉しい。
「日本はすっごく楽しい場所じゃな」
「本当に、食に関しても沢山の物がありますし勉強になります。リオさんは何か気になるレシピはありましたか?」
「私は一通り知りたいのでワタルに色んな方が発表しているレシピをぱそこんで見られるようにしてもらってこれから一つずつ確認してみるつもりです」
「そういえばお二人共、日本にしかない料理道具とかはどうしますか? いくらかワタル様に買ってもらえるでしょうか?」
「ワタルに金を使わせ過ぎではないか? 日本の通貨はわからないがぱそこんで見た時に表示されていた数字はゼロが多かったぞ? 私達はワタルにとんでもなく金を使わせているのではないか?」
「そそ、それは大変なのじゃ! 妾日本が楽しくてげーせんでもふぁみれすでもおねだりしてしまったのじゃ……服なんかちょっと多めに五着も……はっ! そうじゃ、今からでも返して来るのじゃ!」
日本でのワタルの財布事情を知らないみんなは大慌てしてるけど私とティナは落ち着いたままお湯に浸かってる。
「言わないの?」
「いいんじゃないかしら、ワタルは自分の女の我儘くらい叶えてくれるって思える方が安心できるでしょう?」
前にミスリルを売った時凄い金額って大騒ぎしてたし、前回の帰還時にはワタルが困らないようにってティナが何かを持参してたのを知ってるから金銭面の問題が無いのは私も知ってる。
「ティナに貰ったのだとワタルは気にしそう」
「私があげた物じゃないわ、あれはクロイツを平定した事を讃えて父様が贈った物だもの、ワタルの働きに支払われた報酬と同じよ――みんな! せっかくワタルが私たちを楽しませようとしてくれているのよ? お金の話をするのはどうなのかしら」
「でもティナさん、ワタルはこっちで働いていなかったなら私たちの為にかなりの無理をしているって事になりませんか?」
「まったくもう、私たちの旦那様は誰? 魔物の脅威を払うきっかけを作った功労者でしょう? クロイツではたった一人ででも大陸を平定しようと動いていたのよ? 立場のある者たちが報奨を与えていないはずが無いでしょう? それをこっちで換金してみんなの滞在期間を楽しく過ごすくらいの懐の余裕はあるわよ、もう少しワタルを信じてあげなさいな」
前回も同行してるティナの余裕を見てみんな安心したみたいでお金の話は終わって……。
「ぶくぶくぶく……それにしてもリオ達の乳どうなってるのじゃ? なんで浮いてるのじゃ?」
顔半分までお湯に浸かってたミシャ恨めしそうにリオの浮き袋を見てる。
「え? 胸って浮くものじゃないんですか?」
リオのこの言葉で私とミシャとシロナは妙な連帯感を持ってため息をついた。
「あのねリオ、ちっぱいは浮かないのよ?」
「え、あ……」
リオのこの反応が追い打ちになってミシャが反撃に出た。
「このっ、このっ、このっ! 乳なぞ無くても旦那様は妾に夢中なのじゃ、乳なぞ揉み解して萎めてやるのじゃ!」
「ひゃあ!? ちょ、ミシャやめなさ――ひぅ!?」
ミシャがティナの背後を取ってもみもみしてる……むにむにして形が凄い変わってる……。
「ん? フィオちゃんもですか?」
「べつに、私はリオの大きいの好き」
「今日はいつになく甘えん坊ですね」
潜水して近付いた私に気付いて膝に乗せてくれてそのままリオに抱き付く……クッションふわふわ……。
「ちょ、和んでないで誰か止めなさい――んぁ!? ちょ、ミシャいい加減に――」
「あの、ミシャさん……秀麿さんが仰っていたんですが……揉むと大きくなるそうです」
「な、んじゃと……?」
クロエの発言で私とミシャとシロナに激震が走った。
そして動きを止めたミシャの背後に妖しい笑顔を浮かべたティナが……。
「ひゃぁぁぁっ!? にゃにをしゅるのじゃ!? こりゃやめるのじゃ!」
「んふふ~、サイズを気にしてるミシャの為に私が一肌脱いであげるわ」
裸なのに何を脱ぐの……?
「こ、こりゃ――ちょ、ぁぅ」
「フィオちゃんあがりましょうか」
「ん」
悪ノリしたティナと身悶えるミシャを残して私達はお風呂を出た。
お風呂を出るとワタルがまたぱそこんで何か調べてる――ッ! ……宿の周りに何か居る。
嫌な気配、たぶん日本人じゃない、見張りならこんな気配はさせない……ワタルはまだ気付いてない。
「フィオちゃんどこ行くんですか?」
「……トイレ」
「お部屋にあるのにですか?」
「……もさの」
『きゅ?』
流石もさ、察してくれて私によじ登って催促するように鳴いてくれる。
宿の外に出ると一層気配が強くなる。
外に出た私を警戒してるのか、それともティナを誘拐した時みたいに捕らえるつもりか。
どちらにしても邪魔、せっかくみんなで楽しい時間を過ごしてるのに……邪魔は許さない。
「目を潰す、だったか? なるほどな、かなりの遠距離から見られているな」
「気付いたんだ?」
「ふん、見くびるな、私はお前の何倍も生きて戦いに身を置いてきた。人間の下種な気配や敵意には敏感だ」
ナハトは私が気配を感じてる方へ正確に視線を向けてる。
塔で見た望遠鏡、あんなものが作れる世界なら武器にも転用出来る、もしかしたら私達の表情もしっかり見えてるのかもしれない。
私達二人が視線を向けた事で気配が揺らいだ。
「焼くか――」
「あのねぇ、そんな事したら大事になって日本旅行は即中止になっちゃうわよ」
「なんだ、鈍っていると思ったがティナも気付けたのか」
ティナも出てきた事でより一層遠くの気配と周囲の気配が揺らいで慌ただしくなる。
「当たり前でしょう、私をなんだと思ってるのよ……それより手を出すのは駄目よ? こっちの世界も色々とややこしいんだから、日本で外国の軍人が死んだりしたらワタルの国に迷惑がかかるわよ」
「外国……? 敵は日本人じゃないのか?」
「少なくともヴァーンシアに行ける日本がわざわざ私達に敵意を向ける意味はないわ、それにいくつかの他の国がヴァーンシアにかなり興味を持っていたからその類いでしょ」
詰られるのが分かってるから誘拐された話を意図的に避けてる……別にいいけど。
私達が気にならない範囲で日本の警護が付いてたはずだけど、これだけ周囲に気配があるって事は突破されたのかな……ティナが言う通り殺すのはマズいけど、残りの期間また前みたいにしつこかったら鬱陶しいしワタルだけじゃなくリオ達の表情まで曇るかもしれない。
一呼吸すると全力で殺気を解放する。
視線の先が酷く動揺してるのが分かる、周囲の気配が全部停止した。
怯え、焦り、困惑、不安――私の殺気に飲まれて動けなくなってる。
動けばその瞬間命を失う、そういう感覚を植え付ける。
一歩踏み出す、それだけで周囲に緊張が走る。
「はは……その殺気は収めてもらえませんか?」
耐えきれなくなったのか宿の敷地内に一人の男が姿を現した。
「これが外国人か?」
「いえいえ、私は日本人――」
「じゃないわね、大陸の人かしら?」
図星なのか表情が引き攣って他の気配も集まり始めてる。
「何を言ってるんですか、私は日本人ですよ。少し予定を変えていただきたくて――」
「嘘」
「お嬢さん何を根拠に――」
遮られた上に否定された事で男の顔が不快そうに歪んだ。
「そうだな、こいつは嘘を言っている、ワタルと出会う前に散々見てきた人間と同じ顔だ」
「そうね、大陸の人は嘘つきだとワタルに何度も注意された事だし、お帰りいただけるかしら? それとも荒事がお望み?」
「荒事とは穏やかではないですね、こちらは平和的に――」
「動かないで、そっちに行ったら全員の関節を外す」
「ッ!? 全員とは? ここには私一人ですよ」
嘘ばっかり、危険なのは私達だけだと見当をつけて他が宿の裏手に回ろうとしてる。
自衛隊は電話とは違うむせんっていうので話してる事もあったしこの男も仲間と状況を伝え合う手段を持ってるはず。
なら私の言ってる事は聞こえてる。
聞こえてなくてもこれ以上私の大切なものに近付いたら容赦なくやる。
簡単に治せるように外すけど激痛と恐怖を叩き込む。
「聞こえなかったのか? フィオは動くなと言ったのだ。これ以上一歩でも踏み込んでみろ、お前とお前に与する連中には生き地獄を味わわせてやる」
ここまでのやり取りで人間を敵にしてた頃を思い出したナハトが目の色を変えて掌で炎を踊らせてる。
「何を待っているのかしら?」
「は? ……いえ、私は何も――」
「遠くから私達を監視していた連中なら援護は出来ないはずだ」
ナハトにそう言われて男はしきりに視線を巡らせたり小声で何かを喋ってる――理解出来ない言葉、やっぱり外国人、ワタルの所に何度も話に来てたのより外見は日本人に近いからティナの言う通り大陸の人間……ティナを誘拐した側なら容赦しない。
「ッ!?」
殺気を直接叩き付けると男は驚きで倒れて尻もちをついた。
「これで最後、退かないなら容赦しない」
言葉は短く、視覚的にも恐怖を刷り込む為に石の地面を踏み砕いて見せると男は脂汗を流しながら後退り始めた。
裏手に回ってた気配も遠退きつつある。
「今後も近付かないことね、もし私達の誰かに何かあればワタルはこんな脅しでは済ませてくれないわよ?」
ティナの言葉を背中で受けながら男は消えていった。
ティナだけじゃなくてナハトまで大臣に会ったから他の国もまた動き出したのかな……もう邪魔はこれっきりにしてほしい。
せっかく楽しい気持ちだったのに水を差されて気分が悪い――。
「ところでフィオ、それはマズいのではないか?」
「え……あっ……」
ナハトが指差すのは私が砕いた地面……ワタル怒るかな……。
「まぁそこは警護担当たちに任せましょ、何があったのか知らないけど持ち場を放棄してたみたいだし」
あとでティナに聞いた話だと国同士で何かあったみたいで一時的に警護が外されて私達と接触しやすい環境を作らされたみたい。
日本旅行を駄目にしそうになったのは絶対許さない。
「あらどうしたのミシャ?」
「妾トイレに行ってきたのじゃ」
「それは知っているわよ、それより食事の場でそういう話をするのはマナー違反じゃないかしら――」
「一大事なのじゃ! 妾が座ると便器めが急に水を噴きおったのじゃ!」
「ふむ、便器が拒絶を示すほどの尻だったのか」
「ふにゃ!? ナハト失礼なのじゃ! 妾のお尻は綺麗なのじゃ! 旦那様なんて寝ながら顔を突っ込んで……あぅぅ、思い出したらまた恥ずかしくなってきたのじゃ」
宿への帰り道でナハトがお腹が空いたって言い出して入ったふぁみれすっていう料理店、でも日本の物なんて慣れてないみんなはひとつひとつの事に驚いたり過剰な反応をする。
私もトイレがお湯噴くの嫌い……。
「ミシャさんミシャさん、そんな事よりあちらのどりんくばーという機械で色んな飲み物が飲み放題らしいですよ! 私しゃーべっとという冷たくてシャリシャリした飲み物に感動してしまいました――」
「クロエ様見てください、このレバーを引くとクリームが無限に出てきます!」
「ああ!? ちょっ、シロやりすぎ――ってかなんだこの大作……」
慌ててワタルが止めに入ったけどシロナの手にはうねりのたうつ謎のソフトクリームが完成してた。
「まるでう――」
「駄目ですよフィオちゃん、食事の場でそういう事を口走ってはいけません」
リオの笑顔が……過去最高に怖い……もう雲路の話はしない。
「まるでうんこだな」
「ぶはっ!?」
「きゃー!? ワタル様ー!」
ナハトの一言でシロナが吹き出したものはワタルへとぶっかけられた。
……うんこは汚い、食事中はやめてほしい――普段も嫌だけど食べてる時よりはマシ――あぁ……リオはこっちって思ったんだ……私そんな事言わないのに。
「ナハト汚い」
「お前も同じ事を言おうとしたじゃないか」
「私が思ったのは雲路、高い山の山路を流れる雲がさっきのアイスみたいにうねうねなの見たことがある」
「へぇ~、フィオちゃんは山登りをした事があるんですね」
「ん、混ざり物全部を一から鍛えるのは手間がかかるから適当に人の居ない土地に放り出されて生き残ったのが正式に訓練を受けさせられてた」
「ご、ごめんなさい」
リオは何かを謝るけど私はリオに嫌な事をされたり迷惑をかけられた事はない。
「楽しくなかったけど、ワタルを助けてみんなに会える事に繋がってたから良かった」
「フィオちゃん……」
「フィオは良い子なのじゃ、妾も皆と家族になれて良かったのじゃ」
リオ達の作る料理には比べるべくもないけどみんなと過ごしてみんなが楽しそうにしてるのを見られるのは嬉しい。
みんなにつられてワタルも優しい顔をしてくれるから二倍嬉しい。
「日本はすっごく楽しい場所じゃな」
「本当に、食に関しても沢山の物がありますし勉強になります。リオさんは何か気になるレシピはありましたか?」
「私は一通り知りたいのでワタルに色んな方が発表しているレシピをぱそこんで見られるようにしてもらってこれから一つずつ確認してみるつもりです」
「そういえばお二人共、日本にしかない料理道具とかはどうしますか? いくらかワタル様に買ってもらえるでしょうか?」
「ワタルに金を使わせ過ぎではないか? 日本の通貨はわからないがぱそこんで見た時に表示されていた数字はゼロが多かったぞ? 私達はワタルにとんでもなく金を使わせているのではないか?」
「そそ、それは大変なのじゃ! 妾日本が楽しくてげーせんでもふぁみれすでもおねだりしてしまったのじゃ……服なんかちょっと多めに五着も……はっ! そうじゃ、今からでも返して来るのじゃ!」
日本でのワタルの財布事情を知らないみんなは大慌てしてるけど私とティナは落ち着いたままお湯に浸かってる。
「言わないの?」
「いいんじゃないかしら、ワタルは自分の女の我儘くらい叶えてくれるって思える方が安心できるでしょう?」
前にミスリルを売った時凄い金額って大騒ぎしてたし、前回の帰還時にはワタルが困らないようにってティナが何かを持参してたのを知ってるから金銭面の問題が無いのは私も知ってる。
「ティナに貰ったのだとワタルは気にしそう」
「私があげた物じゃないわ、あれはクロイツを平定した事を讃えて父様が贈った物だもの、ワタルの働きに支払われた報酬と同じよ――みんな! せっかくワタルが私たちを楽しませようとしてくれているのよ? お金の話をするのはどうなのかしら」
「でもティナさん、ワタルはこっちで働いていなかったなら私たちの為にかなりの無理をしているって事になりませんか?」
「まったくもう、私たちの旦那様は誰? 魔物の脅威を払うきっかけを作った功労者でしょう? クロイツではたった一人ででも大陸を平定しようと動いていたのよ? 立場のある者たちが報奨を与えていないはずが無いでしょう? それをこっちで換金してみんなの滞在期間を楽しく過ごすくらいの懐の余裕はあるわよ、もう少しワタルを信じてあげなさいな」
前回も同行してるティナの余裕を見てみんな安心したみたいでお金の話は終わって……。
「ぶくぶくぶく……それにしてもリオ達の乳どうなってるのじゃ? なんで浮いてるのじゃ?」
顔半分までお湯に浸かってたミシャ恨めしそうにリオの浮き袋を見てる。
「え? 胸って浮くものじゃないんですか?」
リオのこの言葉で私とミシャとシロナは妙な連帯感を持ってため息をついた。
「あのねリオ、ちっぱいは浮かないのよ?」
「え、あ……」
リオのこの反応が追い打ちになってミシャが反撃に出た。
「このっ、このっ、このっ! 乳なぞ無くても旦那様は妾に夢中なのじゃ、乳なぞ揉み解して萎めてやるのじゃ!」
「ひゃあ!? ちょ、ミシャやめなさ――ひぅ!?」
ミシャがティナの背後を取ってもみもみしてる……むにむにして形が凄い変わってる……。
「ん? フィオちゃんもですか?」
「べつに、私はリオの大きいの好き」
「今日はいつになく甘えん坊ですね」
潜水して近付いた私に気付いて膝に乗せてくれてそのままリオに抱き付く……クッションふわふわ……。
「ちょ、和んでないで誰か止めなさい――んぁ!? ちょ、ミシャいい加減に――」
「あの、ミシャさん……秀麿さんが仰っていたんですが……揉むと大きくなるそうです」
「な、んじゃと……?」
クロエの発言で私とミシャとシロナに激震が走った。
そして動きを止めたミシャの背後に妖しい笑顔を浮かべたティナが……。
「ひゃぁぁぁっ!? にゃにをしゅるのじゃ!? こりゃやめるのじゃ!」
「んふふ~、サイズを気にしてるミシャの為に私が一肌脱いであげるわ」
裸なのに何を脱ぐの……?
「こ、こりゃ――ちょ、ぁぅ」
「フィオちゃんあがりましょうか」
「ん」
悪ノリしたティナと身悶えるミシャを残して私達はお風呂を出た。
お風呂を出るとワタルがまたぱそこんで何か調べてる――ッ! ……宿の周りに何か居る。
嫌な気配、たぶん日本人じゃない、見張りならこんな気配はさせない……ワタルはまだ気付いてない。
「フィオちゃんどこ行くんですか?」
「……トイレ」
「お部屋にあるのにですか?」
「……もさの」
『きゅ?』
流石もさ、察してくれて私によじ登って催促するように鳴いてくれる。
宿の外に出ると一層気配が強くなる。
外に出た私を警戒してるのか、それともティナを誘拐した時みたいに捕らえるつもりか。
どちらにしても邪魔、せっかくみんなで楽しい時間を過ごしてるのに……邪魔は許さない。
「目を潰す、だったか? なるほどな、かなりの遠距離から見られているな」
「気付いたんだ?」
「ふん、見くびるな、私はお前の何倍も生きて戦いに身を置いてきた。人間の下種な気配や敵意には敏感だ」
ナハトは私が気配を感じてる方へ正確に視線を向けてる。
塔で見た望遠鏡、あんなものが作れる世界なら武器にも転用出来る、もしかしたら私達の表情もしっかり見えてるのかもしれない。
私達二人が視線を向けた事で気配が揺らいだ。
「焼くか――」
「あのねぇ、そんな事したら大事になって日本旅行は即中止になっちゃうわよ」
「なんだ、鈍っていると思ったがティナも気付けたのか」
ティナも出てきた事でより一層遠くの気配と周囲の気配が揺らいで慌ただしくなる。
「当たり前でしょう、私をなんだと思ってるのよ……それより手を出すのは駄目よ? こっちの世界も色々とややこしいんだから、日本で外国の軍人が死んだりしたらワタルの国に迷惑がかかるわよ」
「外国……? 敵は日本人じゃないのか?」
「少なくともヴァーンシアに行ける日本がわざわざ私達に敵意を向ける意味はないわ、それにいくつかの他の国がヴァーンシアにかなり興味を持っていたからその類いでしょ」
詰られるのが分かってるから誘拐された話を意図的に避けてる……別にいいけど。
私達が気にならない範囲で日本の警護が付いてたはずだけど、これだけ周囲に気配があるって事は突破されたのかな……ティナが言う通り殺すのはマズいけど、残りの期間また前みたいにしつこかったら鬱陶しいしワタルだけじゃなくリオ達の表情まで曇るかもしれない。
一呼吸すると全力で殺気を解放する。
視線の先が酷く動揺してるのが分かる、周囲の気配が全部停止した。
怯え、焦り、困惑、不安――私の殺気に飲まれて動けなくなってる。
動けばその瞬間命を失う、そういう感覚を植え付ける。
一歩踏み出す、それだけで周囲に緊張が走る。
「はは……その殺気は収めてもらえませんか?」
耐えきれなくなったのか宿の敷地内に一人の男が姿を現した。
「これが外国人か?」
「いえいえ、私は日本人――」
「じゃないわね、大陸の人かしら?」
図星なのか表情が引き攣って他の気配も集まり始めてる。
「何を言ってるんですか、私は日本人ですよ。少し予定を変えていただきたくて――」
「嘘」
「お嬢さん何を根拠に――」
遮られた上に否定された事で男の顔が不快そうに歪んだ。
「そうだな、こいつは嘘を言っている、ワタルと出会う前に散々見てきた人間と同じ顔だ」
「そうね、大陸の人は嘘つきだとワタルに何度も注意された事だし、お帰りいただけるかしら? それとも荒事がお望み?」
「荒事とは穏やかではないですね、こちらは平和的に――」
「動かないで、そっちに行ったら全員の関節を外す」
「ッ!? 全員とは? ここには私一人ですよ」
嘘ばっかり、危険なのは私達だけだと見当をつけて他が宿の裏手に回ろうとしてる。
自衛隊は電話とは違うむせんっていうので話してる事もあったしこの男も仲間と状況を伝え合う手段を持ってるはず。
なら私の言ってる事は聞こえてる。
聞こえてなくてもこれ以上私の大切なものに近付いたら容赦なくやる。
簡単に治せるように外すけど激痛と恐怖を叩き込む。
「聞こえなかったのか? フィオは動くなと言ったのだ。これ以上一歩でも踏み込んでみろ、お前とお前に与する連中には生き地獄を味わわせてやる」
ここまでのやり取りで人間を敵にしてた頃を思い出したナハトが目の色を変えて掌で炎を踊らせてる。
「何を待っているのかしら?」
「は? ……いえ、私は何も――」
「遠くから私達を監視していた連中なら援護は出来ないはずだ」
ナハトにそう言われて男はしきりに視線を巡らせたり小声で何かを喋ってる――理解出来ない言葉、やっぱり外国人、ワタルの所に何度も話に来てたのより外見は日本人に近いからティナの言う通り大陸の人間……ティナを誘拐した側なら容赦しない。
「ッ!?」
殺気を直接叩き付けると男は驚きで倒れて尻もちをついた。
「これで最後、退かないなら容赦しない」
言葉は短く、視覚的にも恐怖を刷り込む為に石の地面を踏み砕いて見せると男は脂汗を流しながら後退り始めた。
裏手に回ってた気配も遠退きつつある。
「今後も近付かないことね、もし私達の誰かに何かあればワタルはこんな脅しでは済ませてくれないわよ?」
ティナの言葉を背中で受けながら男は消えていった。
ティナだけじゃなくてナハトまで大臣に会ったから他の国もまた動き出したのかな……もう邪魔はこれっきりにしてほしい。
せっかく楽しい気持ちだったのに水を差されて気分が悪い――。
「ところでフィオ、それはマズいのではないか?」
「え……あっ……」
ナハトが指差すのは私が砕いた地面……ワタル怒るかな……。
「まぁそこは警護担当たちに任せましょ、何があったのか知らないけど持ち場を放棄してたみたいだし」
あとでティナに聞いた話だと国同士で何かあったみたいで一時的に警護が外されて私達と接触しやすい環境を作らされたみたい。
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