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六章~目指す場所~
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「ワタルー? いつまでそうやって頭を抱えているつもり? いいじゃない女好きでも、英雄色を好むと言うし、私は気にしないわよ」
「私は嫌」
「ティナ様はおおらかというか何というか……いいんですか?」
嫌って言われちゃった。あっちの世界でもその言葉あるのかよ……というか俺英雄じゃないし。
「いいわよ? 私も傍に居させてくれるのなら、だからもう悩まなくていいじゃない」
「いや、だって分かんないとなんかモヤ――るぅうううううううう!? ちょ、なんだこれ!? なんでこんなもんがあるんだ?」
ティナに声を掛けられて振り返った時にテーブルの上に乗っている物体が目に入った。テーブルに並べてあるのは蝉と蛙が数匹と鳩一羽、あとは雀と鶯っぽい鳥も数羽。
「それもさからフィオへのお見舞い品よ。昼間はずっとフィオの傍に付いてたんだけど、夜になると抜け出して朝方にそれを銜えて帰ってきてたのよ。ワタルと違って随分熱心にお見舞いしてたわ」
うぐっ…………一度も来なかったのは悪いとは思ったけど、どうしても来る事が出来なかった。
「にしても、凄い量…………傷み始めてるし、なんで片付けなかったんだ? 病院の中にこんなもんがあるのはマズいだろ。病原菌の元になりそうだし、片付けないと怒られ――」
『きゅぃ!』
「痛っ! 何してんだこのやろう――ふぐっ!?」
片付けようと手を伸ばしたらもさがテーブルに飛び乗って手を引っ掻いてきて、止めさせようと摘み上げたらその状態で身体を揺らして思いっきり顔に蹴りを貰った。
「無駄よ、片付けようとすると怒るんだもの。フィオの為に獲ってきた物だから勝手に触るなって事なんじゃないかしら? ……でも今までは威嚇だけだったのに、変ね」
『ぎゅうーっ! ふくーっ!』
睨まれて物凄く威嚇されてる……主への贈り物を取られたくないというのとは別に、俺が原因でフィオが怪我をしたっていうのが分かっているのかもしれない。フィオ程じゃないけど、俺ももさには懐かれていたはずなのにこの怒り様だし。
「悪かったよ。でもここに置いておくのは駄目なんだ……う~ん」
謝りながら手を伸ばしてみたら、今度は引っ掻かれなかったが高速で伸ばした手を叩かれまくってる。爪は出てないし肉球だから痛くはないけど……完全に嫌われたなぁ。
「もさ」
『きゅぅ~』
「ありがとう、でも私はあれは食べない。だからもう殺しちゃダメ」
『きゅぅー?』
フィオに呼ばれるとベッドへ駆けて行って撫でられている。伝わっているのか、いないのか、不思議そうにフィオの顔を見つめながら首を傾げている。
「ワタル、片付けていい」
「いいのか?」
「ん、もさが獲ってきてくれたのは見たから。いいよね?」
『きゅう!』
俺の方をちらりと確認して一鳴きした。手を伸ばしてもこっちには来ないみたいだし、片付けてもいいらしい。怒られる前にさっさと持ち出さないと――。
「失礼します。包帯の交換に…………」
なんでこんなタイミングで入ってくるかなぁ…………生き物の死骸に手を伸ばした俺を見て静止してしまった看護婦。
「えっと、あの、これは――」
「まったく! 何考えてるんですか! ただでさえそのよく分からない動物を病院内に入れる事が問題になっているのに、その上生き物の死骸をこんなに……ちょっとお話があります」
ぷるぷると怒りで震えて般若の様な表情の看護婦に腕を掴まれて引っ張られる。
「ちょ、え? なんで俺!?」
「あなたが二人の保護者でしょう! 少しくらいこの世界の常識を教えたらどうなんですか!」
「俺がこの病室に来たの今回が初め――」
「問答無用です!」
「出入りして状況を知っていた責任者という意味では惧瀞さん!」
看護婦に引っ張られながら惧瀞さんの手を掴んだ。
「ふぇ!? だってもさちゃん必死だったので取り上げるなんて無理でしたよぉ。それに私が責任者ってわけじゃ――」
「知ってて片付けないなんて、あなたも何考えてるんですか! お二人には常識が欠けているんじゃないですか?」
「えぇー、俺知らなかったし、話しなら惧瀞さんだけで――」
「ず、ズルいです如月さん!? こうなったら一緒に叱られましょう?」
「い、いや、俺煩いおじさんおばさんって苦――ひぃ!?」
余計な事を言ったせいで顔の怖さと腕を掴む力が増した。
「さぁ、行きましょうか?」
『はい』
「まったく! ただでさえ特殊な患者で気を遣う事が多いっていうのに、変な動物の持ち込みを許可しろだの、自衛官を常駐させろだの注文ばかりしてきて、その上こんな……大体あんなに生き物を殺してそれを持ち込むなんて……やっぱり報道の通り残酷な化け物なんじゃないのかしら? なんでこんな人がうちの病院に――」
長い……とにかく長い、ナースステーションへ連れてこられて惧瀞さんと二人正座をさせられて説教を受けている。もうかれこれ一時間くらいだろうか? 結構年配なせいなのか、それとも相当に怒っているせいか、結構なペースで話がループしている。そろそろ勘弁してほしい――ん? ちょっ!? さっきから言われてる事全てにコクコクと頷いてるんだと思ったら、惧瀞さん寝てるんですけど!? なんでこの煩い説教の中眠れるんだよ。
「ちょっと! 聞いているの? まったく、人の話もまともに聞けないのかしら? こんな――」
「田中さん、幸田先生がお呼びでしたよ」
「あら…………仕方ないわね。今後は気を付けてくださいよ!」
最後に語気を強めてそれだけ言って去っていった。
「すいません。田中さんいつもああなんです。後輩へのお説教も長くて、患者さんやお見舞いに来たご家族なんかにも厳しくて――」
長々と続く説教を見かねて止めに入ってくれた看護婦が申し訳なさそうにしていた。
「あぁ、いえ…………原因はこっちなので、お騒がせしました。惧瀞さん、起きてください」
「んぅ? ……終わりましたかぁ? ふぁ~、凄い剣幕でしたね」
その凄い剣幕の相手を前にして寝れるあなたの方が凄いです…………。
「あの状況でよく寝れましたね」
「最初の辺りのお説教は聞いてたんですよ? でも途中からただの罵詈雑言になっちゃってたじゃないですか。あれを聞き続けるのは気分が悪かったので、如月さんは全部聞いてたんですか?」
「いや……聞き流してはいましたけど、寝る程の度胸は無いです」
「中身の無いお話はんかは寝ているのが楽ですよ?」
この人結構度胸あるわ…………人は見かけによらない。
「随分長かったわね、惧瀞はどうしたの?」
「なんか呼び出されたっぽい。長かった…………片付けたんだな」
「ええ、廊下に立ってる人達に言ったら片付けてくれたわ」
ん? なんか……フィオがこっちを見て顔を赤くしてるんだけど、なんだ? 自分の身体をぺたぺた触ってるし、なんなんだ? 俺が何かしたか?
「ワタルの血?」
自分の手を眺めながらそう聞いてきた。
「んぁ? あぁ、フィオの血が足りなくなってて、輸血が出来る可能性がある血液が俺の血だけだったんだ。それにしてもよく生きててくれたな……あの時はもう死んだと思ったぞ」
「……ワタルを突き飛ばした後致命傷になりそうなものは弾いた。それでも多すぎて全部は弾けなかった、傷も多かったし出血も酷かったから私も死んだと思った」
あの状況で致命傷を避けていた? ……こいつは本当に……無茶苦茶だな、そのおかげで生きていてくれてるんだけど。
「ワタルが私の中にいるの、変な感じ…………身体、熱い」
その言い方はなんか、複雑だからやめてくれ。
「まだ熱が下がってないもの、それにしても今の言い方は少しいやらしいわね……ワタル、私にも血をちょうだい」
何言いだしてんだこの姫様は!? 今の話の流れでなんでそうなった?
「いや、やっても意味ないだろ、入れたりしたら最悪死ぬぞ?」
「だってフィオだけいつでもワタルと一緒にいられるみたいでズルいじゃない。むぅー、なら――」
「フィオは何かして欲しい事はあるか? 何か食べたかったら売店に行ってくるけど」
面倒な事を言い出す前に話題を変える事にした。
「特に…………ん」
少し悩んで自分の隣をぽんぽんと叩いた。そこに座れって事らしい。ベッドに腰掛けると背中にぴとっと引っ付いてきた。
「えっと、あの?」
「落ち着く、だめ?」
珍しく甘えるような表情をしてやがる……こんなん駄目とか言えるはずもない。
「ズルいわフィオ、なら前は私が貰うわ」
なんでそうなる…………フィオとティナに前後からサンドされている変な状況、見る人が見れば羨ましいものだろうけど、大切だと自覚して心境も変化したんだろう、ものすっごく落ち着かない! というかなんだこれ? 引っ付かれている部分は酷く熱いし、心臓バクバク言ってるし、以前も似たような感じはあったけど、それの比じゃない。
「あー、あ~…………他にして欲しい事は?」
「…………な――ワタル、リオに会いたい」
「そうか……そうだな、俺も会いたい。こっちに居る魔物はたぶん片付いたんだ、フィオの体調が戻ったらヴァーンシアに戻ろう――」
「戻る、やはり異世界への移動手段をお持ちでしたか。その話を詳しく聞かせてもらえますか?」
高そうなスーツを着た身なりの良いおっさんが惧瀞さんと一緒に入ってきた。聞かれた? マズい、日本だって利になるのなら異世界を求めるんじゃないか?
「えっと?」
「こちらは防衛大臣補佐官の――」
「突然すいません。私は防衛大臣補佐官の工藤貴久です、今話していらした異世界に戻るというお話の続きを聞かせていただきたいのですが?」
あぁ…………聞かれていた、やっと終わったと思ったのに、まだこの世界での面倒は続くらしい。
「私は嫌」
「ティナ様はおおらかというか何というか……いいんですか?」
嫌って言われちゃった。あっちの世界でもその言葉あるのかよ……というか俺英雄じゃないし。
「いいわよ? 私も傍に居させてくれるのなら、だからもう悩まなくていいじゃない」
「いや、だって分かんないとなんかモヤ――るぅうううううううう!? ちょ、なんだこれ!? なんでこんなもんがあるんだ?」
ティナに声を掛けられて振り返った時にテーブルの上に乗っている物体が目に入った。テーブルに並べてあるのは蝉と蛙が数匹と鳩一羽、あとは雀と鶯っぽい鳥も数羽。
「それもさからフィオへのお見舞い品よ。昼間はずっとフィオの傍に付いてたんだけど、夜になると抜け出して朝方にそれを銜えて帰ってきてたのよ。ワタルと違って随分熱心にお見舞いしてたわ」
うぐっ…………一度も来なかったのは悪いとは思ったけど、どうしても来る事が出来なかった。
「にしても、凄い量…………傷み始めてるし、なんで片付けなかったんだ? 病院の中にこんなもんがあるのはマズいだろ。病原菌の元になりそうだし、片付けないと怒られ――」
『きゅぃ!』
「痛っ! 何してんだこのやろう――ふぐっ!?」
片付けようと手を伸ばしたらもさがテーブルに飛び乗って手を引っ掻いてきて、止めさせようと摘み上げたらその状態で身体を揺らして思いっきり顔に蹴りを貰った。
「無駄よ、片付けようとすると怒るんだもの。フィオの為に獲ってきた物だから勝手に触るなって事なんじゃないかしら? ……でも今までは威嚇だけだったのに、変ね」
『ぎゅうーっ! ふくーっ!』
睨まれて物凄く威嚇されてる……主への贈り物を取られたくないというのとは別に、俺が原因でフィオが怪我をしたっていうのが分かっているのかもしれない。フィオ程じゃないけど、俺ももさには懐かれていたはずなのにこの怒り様だし。
「悪かったよ。でもここに置いておくのは駄目なんだ……う~ん」
謝りながら手を伸ばしてみたら、今度は引っ掻かれなかったが高速で伸ばした手を叩かれまくってる。爪は出てないし肉球だから痛くはないけど……完全に嫌われたなぁ。
「もさ」
『きゅぅ~』
「ありがとう、でも私はあれは食べない。だからもう殺しちゃダメ」
『きゅぅー?』
フィオに呼ばれるとベッドへ駆けて行って撫でられている。伝わっているのか、いないのか、不思議そうにフィオの顔を見つめながら首を傾げている。
「ワタル、片付けていい」
「いいのか?」
「ん、もさが獲ってきてくれたのは見たから。いいよね?」
『きゅう!』
俺の方をちらりと確認して一鳴きした。手を伸ばしてもこっちには来ないみたいだし、片付けてもいいらしい。怒られる前にさっさと持ち出さないと――。
「失礼します。包帯の交換に…………」
なんでこんなタイミングで入ってくるかなぁ…………生き物の死骸に手を伸ばした俺を見て静止してしまった看護婦。
「えっと、あの、これは――」
「まったく! 何考えてるんですか! ただでさえそのよく分からない動物を病院内に入れる事が問題になっているのに、その上生き物の死骸をこんなに……ちょっとお話があります」
ぷるぷると怒りで震えて般若の様な表情の看護婦に腕を掴まれて引っ張られる。
「ちょ、え? なんで俺!?」
「あなたが二人の保護者でしょう! 少しくらいこの世界の常識を教えたらどうなんですか!」
「俺がこの病室に来たの今回が初め――」
「問答無用です!」
「出入りして状況を知っていた責任者という意味では惧瀞さん!」
看護婦に引っ張られながら惧瀞さんの手を掴んだ。
「ふぇ!? だってもさちゃん必死だったので取り上げるなんて無理でしたよぉ。それに私が責任者ってわけじゃ――」
「知ってて片付けないなんて、あなたも何考えてるんですか! お二人には常識が欠けているんじゃないですか?」
「えぇー、俺知らなかったし、話しなら惧瀞さんだけで――」
「ず、ズルいです如月さん!? こうなったら一緒に叱られましょう?」
「い、いや、俺煩いおじさんおばさんって苦――ひぃ!?」
余計な事を言ったせいで顔の怖さと腕を掴む力が増した。
「さぁ、行きましょうか?」
『はい』
「まったく! ただでさえ特殊な患者で気を遣う事が多いっていうのに、変な動物の持ち込みを許可しろだの、自衛官を常駐させろだの注文ばかりしてきて、その上こんな……大体あんなに生き物を殺してそれを持ち込むなんて……やっぱり報道の通り残酷な化け物なんじゃないのかしら? なんでこんな人がうちの病院に――」
長い……とにかく長い、ナースステーションへ連れてこられて惧瀞さんと二人正座をさせられて説教を受けている。もうかれこれ一時間くらいだろうか? 結構年配なせいなのか、それとも相当に怒っているせいか、結構なペースで話がループしている。そろそろ勘弁してほしい――ん? ちょっ!? さっきから言われてる事全てにコクコクと頷いてるんだと思ったら、惧瀞さん寝てるんですけど!? なんでこの煩い説教の中眠れるんだよ。
「ちょっと! 聞いているの? まったく、人の話もまともに聞けないのかしら? こんな――」
「田中さん、幸田先生がお呼びでしたよ」
「あら…………仕方ないわね。今後は気を付けてくださいよ!」
最後に語気を強めてそれだけ言って去っていった。
「すいません。田中さんいつもああなんです。後輩へのお説教も長くて、患者さんやお見舞いに来たご家族なんかにも厳しくて――」
長々と続く説教を見かねて止めに入ってくれた看護婦が申し訳なさそうにしていた。
「あぁ、いえ…………原因はこっちなので、お騒がせしました。惧瀞さん、起きてください」
「んぅ? ……終わりましたかぁ? ふぁ~、凄い剣幕でしたね」
その凄い剣幕の相手を前にして寝れるあなたの方が凄いです…………。
「あの状況でよく寝れましたね」
「最初の辺りのお説教は聞いてたんですよ? でも途中からただの罵詈雑言になっちゃってたじゃないですか。あれを聞き続けるのは気分が悪かったので、如月さんは全部聞いてたんですか?」
「いや……聞き流してはいましたけど、寝る程の度胸は無いです」
「中身の無いお話はんかは寝ているのが楽ですよ?」
この人結構度胸あるわ…………人は見かけによらない。
「随分長かったわね、惧瀞はどうしたの?」
「なんか呼び出されたっぽい。長かった…………片付けたんだな」
「ええ、廊下に立ってる人達に言ったら片付けてくれたわ」
ん? なんか……フィオがこっちを見て顔を赤くしてるんだけど、なんだ? 自分の身体をぺたぺた触ってるし、なんなんだ? 俺が何かしたか?
「ワタルの血?」
自分の手を眺めながらそう聞いてきた。
「んぁ? あぁ、フィオの血が足りなくなってて、輸血が出来る可能性がある血液が俺の血だけだったんだ。それにしてもよく生きててくれたな……あの時はもう死んだと思ったぞ」
「……ワタルを突き飛ばした後致命傷になりそうなものは弾いた。それでも多すぎて全部は弾けなかった、傷も多かったし出血も酷かったから私も死んだと思った」
あの状況で致命傷を避けていた? ……こいつは本当に……無茶苦茶だな、そのおかげで生きていてくれてるんだけど。
「ワタルが私の中にいるの、変な感じ…………身体、熱い」
その言い方はなんか、複雑だからやめてくれ。
「まだ熱が下がってないもの、それにしても今の言い方は少しいやらしいわね……ワタル、私にも血をちょうだい」
何言いだしてんだこの姫様は!? 今の話の流れでなんでそうなった?
「いや、やっても意味ないだろ、入れたりしたら最悪死ぬぞ?」
「だってフィオだけいつでもワタルと一緒にいられるみたいでズルいじゃない。むぅー、なら――」
「フィオは何かして欲しい事はあるか? 何か食べたかったら売店に行ってくるけど」
面倒な事を言い出す前に話題を変える事にした。
「特に…………ん」
少し悩んで自分の隣をぽんぽんと叩いた。そこに座れって事らしい。ベッドに腰掛けると背中にぴとっと引っ付いてきた。
「えっと、あの?」
「落ち着く、だめ?」
珍しく甘えるような表情をしてやがる……こんなん駄目とか言えるはずもない。
「ズルいわフィオ、なら前は私が貰うわ」
なんでそうなる…………フィオとティナに前後からサンドされている変な状況、見る人が見れば羨ましいものだろうけど、大切だと自覚して心境も変化したんだろう、ものすっごく落ち着かない! というかなんだこれ? 引っ付かれている部分は酷く熱いし、心臓バクバク言ってるし、以前も似たような感じはあったけど、それの比じゃない。
「あー、あ~…………他にして欲しい事は?」
「…………な――ワタル、リオに会いたい」
「そうか……そうだな、俺も会いたい。こっちに居る魔物はたぶん片付いたんだ、フィオの体調が戻ったらヴァーンシアに戻ろう――」
「戻る、やはり異世界への移動手段をお持ちでしたか。その話を詳しく聞かせてもらえますか?」
高そうなスーツを着た身なりの良いおっさんが惧瀞さんと一緒に入ってきた。聞かれた? マズい、日本だって利になるのなら異世界を求めるんじゃないか?
「えっと?」
「こちらは防衛大臣補佐官の――」
「突然すいません。私は防衛大臣補佐官の工藤貴久です、今話していらした異世界に戻るというお話の続きを聞かせていただきたいのですが?」
あぁ…………聞かれていた、やっと終わったと思ったのに、まだこの世界での面倒は続くらしい。
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