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六章~目指す場所~
初めての涙
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サイレンが聞こえ始めた。はぁ、また警察に連れて行かれるのか……この場合はどういう扱いになるのやら、一応殺されそうになった被害者たちも居るんだし、正当防衛とかそんな感じでさっさと解放されるといいんだけど、とりあえず風呂には入らせてほしい。
「変な音がする」
「ウーウー言ってるのは警察が来た合図みたいなもんだ」
「ケイサツ……また拘束されるのかしら?」
どうだろうねぇ、能力が戻っていればこの場で穴開けてヴァーンシアに逃げ帰りたいところだけど、未だに能力が戻る気配は無いからヴァーンシアに帰るのはまだ先になりそうだ。
「される、だろうなぁ。これだけの大事になってるし、血塗れの俺たちがやったってのは一目瞭然だし、事情を聴くのと魔物についても質問されるだろうなぁ」
「面倒ねぇ。ねぇ? 私の能力で逃げたらどうかしら?」
「残念だがティナ、この国にはどこにでも警察が居て、逃げ隠れ出来る場所なんてない。そして日本に帰ってきてまで野宿なんかしたくない」
「なら他の国なんてどう?」
俺は英語喋れません! ……ティナたちはどうなんだろう? もしかしたら通じたりするのか?
「他の国にも警察は居るよ。その上言葉が通じなくて更に厄介な事になる」
「この世界は他の国だと言葉が違うの?」
驚いてるって事はヴァーンシアでは言語は共通のモノなのか。便利でいいなぁ、他言語を勉強する手間とかないのは羨ましい。自由に色んな国に行けるのは――引きこもりには関係ないか。
「そ、だから他の国に行ったらめんどくさい」
「と、逃亡しようとしています。如月容疑者たちは逃亡を謀るつもりです! 誰かぁああ! すぐに警察を! 警察に通報してください!」
なんでこんな扱い? この人たちは異世界否定派? だとしても異世界の存在が証明されたとか言ってたじゃん。それに殺されそうになってたところを助けてやったでしょうが。こんなのより異世界肯定派の局が来てくれよぅ! というか本当に肯定派は居るのか?
「君たち! 武器を捨てて投降しなさい。異世界の事は証明されているから大人しく投降してくれればこちらもちゃんとした対応を約束する」
何この扱い、完全に犯罪者…………別に褒めて欲しいとか感謝してくれとは思わない、魔物がこっちに来てるのは俺が招いた事でもあるから、でもこれは……それにフィオとティナは手伝ってくれただけだぞ? そのおかげで死傷者が出てないんだし、二人の扱いだけでも改善してほしい。
っ!? パンッと乾いた音が響いた後に続いて隣でギィンッという音が響いた。
「何をしている! 発砲許可は出していないぞ!」
ビビった。撃ってきやがった。でも、微妙に弾が見えた。
「フィオ、大丈夫か? 怪我とかは――」
「ワタル、許可……あの武器は危ない。ワタルじゃ避けられない」
確かに、見えはしたけど躱せるかまでは分からないな。
「駄目だ。武器壊すだけのつもりだろうけど、それやったら完全に国家権力を敵に回す事になるから駄目だ」
「どうしても? あんなのいっぱいあったら危ない」
「私もそう思うわ。今ここにある分だけでも奪っておいた方がいいんじゃない?」
二人とも過激すぎ、怖いから大人しくしてて!
「ど、う、し、て、も、だ! 面倒だし嫌だろうけど、大人しくしててくれ。抵抗しなけりゃ本当は撃って来ないはずだから」
フィオの頬をむにむにしながらそう言う。あぁ~柔らけぇ~、癒される~。
「わかっひゃ」
「むぅ~、ワタル、私にもしなさい」
いや、意味分からん。
「あっ、こらっ、何を――」
「死ねぇええええっ!」
っ!?
「くぅっ!? いっつぅ……何が?」
もう一度銃声が響いたと思ったら左腕に痛みが走った。撃たれた? 腕を確認すると血が出ている。撃たれたのか、でもこの傷は、貫通したとかじゃないな、皮膚が多少深く斬れた程度らしい。それでも痛いものは痛いが、まぁこの程度なら大事にはならないだ――っ!?
「落ち着け! 落ち着けフィオ、大丈夫だ。掠っただけだって、死んでない、ちゃんと生きてるだろ? だからそんなに怒らなくていい、な?」
こちらを警戒している警官隊に突っ込もうとしていたフィオを、既の所で腕を掴んで捕まえた。危ないと警戒していてくれた武器での訳の解からない攻撃に興奮して、ナハトを斬ろうとしていた時の様な殺気を放っていた。それを落ち着かせるのと突っ込ませない為に抱き寄せて心臓の音を聞かせて頭を撫でる。ヤバかった、もし捕まえられてなかったら銃持ってる人は確実に殺されてたかもしれない。フィオの放っていた殺気はそのくらい酷い圧迫感だった。納得がいかないからだろう、今もまだ腕の中でもがいているが本気で暴れているというわけでもない。本気ならとっくに抜け出してるだろうし……俺が止めたせいで怒りをどこにぶつければいいか分からないって感じだろうか? それでもこいつに人殺しはしてほしくないなぁ。
さっきの声、少女の父親の声に似ていた。撃たれる前に警官が何か言ってたみたいだったし、銃を奪っての発砲ってところか? 恨まれてるなぁ、当然か…………娘を理不尽に奪われたんだ。それに関わったであろう存在はどんな者でも赦せないだろう。
「取り押さえろ! 公務執行妨害と殺人未遂の現行犯だ!」
「放せっ! 放せぇええええええっ!」
やっぱりあの人だ。相当の恨みだって事だよな…………俺は死ぬべきだった? でも、まだやりたい事がある。受けるべき報いだったとしても、まだ死ねない。
「先ほどの発砲は、警官から銃を奪った鈴木真紀さんのお父さんによるものの様です。今は警官隊に取り押さえられて、銃も取り上げられているもようです。ですがあの方の気持ちを考えると、この行動は已むを得ないものの様に思えます」
こんな時なのにようやるなぁ……感心するというか、呆れるというか。
「ワタル、本当に大丈夫なの?」
「大丈夫、大丈夫、掠っただけ、大したことないって、だからティナも剣を下ろして、じゃないとあれを向けられたままになるから」
結構痛いが、表情に出したら駄目だ。
「そんなに言うなら従ってあげるけれど、いざとなったら強行突破するわよ?」
日本の警察はそんな無茶苦茶はしないと信じたいなぁ…………捕まってた間の事もあって俺もあんまり信じれないけど。
「ほん、とう、に? 大丈夫? 死なない? 居なくならない?」
えっ!? ちょ、まっ!? ヤバい……凄まじい殺気を放ってたのと同じやつとは思えないくらい弱弱しく不安そうな表情をして震えている。それに何より、泣いてる!?
『きゅ~、きゅ~、きゅ~』
主が泣いているせいで、もさも不安そうにして足元をうろうろしている。
「だ、大丈夫、大丈夫! 全然大丈夫だって、ほら、掠っただけだから動かしても痛くない。それにほら! フィオを持ち上げられるくらいには平気だから。な? 大丈夫だから、泣くな泣くな。死なないし居なくもならないから、心臓の音だってするだろ? このくらい腕折られた時に比べたら何でもないって」
お姫様抱っこの様に抱え上げて、あやすように軽く揺する。腕は痛いが、そんな事気にしてられない。うぅ、こいつがこんな表情するなんて思いもしなかった。だから内心ビビりまくって頭も混乱してる。懐かれているとは認識してた、してたけど…………ここまでとは思ってなかった。まさか泣かれるなんて…………。
「泣いて、ない…………泣いた事、ない」
いやいや、泣いてるから! 滅茶苦茶涙声だから! じゃないと俺はこんなに動揺してない。というか初泣き!? 余計に動揺するわ! こういう時って、ど、どうすりゃいい?
「大丈夫だから、ちゃんと生きてるだろ? 死なない、死なない、俺って結構しぶといし、だから大丈夫! あ、あ~……あっ! 後で美味い物でも食いに行こう、こっちにはフィオの知らない物が色々あるから楽しいぞ」
フィオの小さな身体を抱いてあやす。小さな身体を震わせて泣いている様子は、見た目通りの子供の様で、それが自分のせいで起こっていると思うと罪悪感が凄まじい……なにこのやらかしちゃった感。とりあえずこいつに泣かれてたら調子が狂う、どうにか泣き止んでもらわないと。
「…………ん」
泣き顔を見られたくないのか、顔を伏せて、しがみ付いて離れなくなった。これで落ち着くなら別にいいか。
「ズルいわワタル、私だって凄く心配してるのよ?」
そんな甘えた様な声を出されても……今はフィオだけで手一杯だ。警察もその他の人もこの状況に呆然として固まっている。
「あ、あとで、あとならティナにもするから、とりあえず剣納めて」
って、なに言っとんじゃー!? あとでするってなに!? ヤバい、フィオの泣き顔を見たせいで頭が完全に混乱している。
「絶対よ? 約束よ?」
「わ、分かった…………こっちは武器を下ろしましたよー! そっちも構えを解いてください!」
「ぶ、武器を床に置いてこちらに向かって蹴って、両手を頭の後ろで組んで!」
いや、無理だし! フィオ抱っこしてんの見りゃ分かるだろ、お前らが泣かしたんだぞ? ……いや、やっぱり俺が泣かしたのか? 普段大して表情を変える娘じゃないのに、まだ泣き止まない。こんなん放っておけるか!
「無理! 武器は置きますけど、腕組むのは無理です!」
小さい女の子が泣いている状況は警察も見えてるせいでかなり戸惑ってる。
「ならそのまま動かないで!」
その後捕まって事情聴取……の前に風呂と着替えを許されたんだけど。
「一緒がいい」
そう言ってフィオがなかなか離れなくて困った。結局はティナに頼んでフィオと一緒に入ってもらったけど、着替えた後は引っ付いて俺の服を掴んで離さなくなってしまった。
「小さいってズルいわね。甘え放題なんだもの」
いやいや、普段があんななのにこんな状態になったら誰でも甘くなると思うんだけど? 少なくとも、リオは確実にめちゃ甘になると断言出来る。
「変な音がする」
「ウーウー言ってるのは警察が来た合図みたいなもんだ」
「ケイサツ……また拘束されるのかしら?」
どうだろうねぇ、能力が戻っていればこの場で穴開けてヴァーンシアに逃げ帰りたいところだけど、未だに能力が戻る気配は無いからヴァーンシアに帰るのはまだ先になりそうだ。
「される、だろうなぁ。これだけの大事になってるし、血塗れの俺たちがやったってのは一目瞭然だし、事情を聴くのと魔物についても質問されるだろうなぁ」
「面倒ねぇ。ねぇ? 私の能力で逃げたらどうかしら?」
「残念だがティナ、この国にはどこにでも警察が居て、逃げ隠れ出来る場所なんてない。そして日本に帰ってきてまで野宿なんかしたくない」
「なら他の国なんてどう?」
俺は英語喋れません! ……ティナたちはどうなんだろう? もしかしたら通じたりするのか?
「他の国にも警察は居るよ。その上言葉が通じなくて更に厄介な事になる」
「この世界は他の国だと言葉が違うの?」
驚いてるって事はヴァーンシアでは言語は共通のモノなのか。便利でいいなぁ、他言語を勉強する手間とかないのは羨ましい。自由に色んな国に行けるのは――引きこもりには関係ないか。
「そ、だから他の国に行ったらめんどくさい」
「と、逃亡しようとしています。如月容疑者たちは逃亡を謀るつもりです! 誰かぁああ! すぐに警察を! 警察に通報してください!」
なんでこんな扱い? この人たちは異世界否定派? だとしても異世界の存在が証明されたとか言ってたじゃん。それに殺されそうになってたところを助けてやったでしょうが。こんなのより異世界肯定派の局が来てくれよぅ! というか本当に肯定派は居るのか?
「君たち! 武器を捨てて投降しなさい。異世界の事は証明されているから大人しく投降してくれればこちらもちゃんとした対応を約束する」
何この扱い、完全に犯罪者…………別に褒めて欲しいとか感謝してくれとは思わない、魔物がこっちに来てるのは俺が招いた事でもあるから、でもこれは……それにフィオとティナは手伝ってくれただけだぞ? そのおかげで死傷者が出てないんだし、二人の扱いだけでも改善してほしい。
っ!? パンッと乾いた音が響いた後に続いて隣でギィンッという音が響いた。
「何をしている! 発砲許可は出していないぞ!」
ビビった。撃ってきやがった。でも、微妙に弾が見えた。
「フィオ、大丈夫か? 怪我とかは――」
「ワタル、許可……あの武器は危ない。ワタルじゃ避けられない」
確かに、見えはしたけど躱せるかまでは分からないな。
「駄目だ。武器壊すだけのつもりだろうけど、それやったら完全に国家権力を敵に回す事になるから駄目だ」
「どうしても? あんなのいっぱいあったら危ない」
「私もそう思うわ。今ここにある分だけでも奪っておいた方がいいんじゃない?」
二人とも過激すぎ、怖いから大人しくしてて!
「ど、う、し、て、も、だ! 面倒だし嫌だろうけど、大人しくしててくれ。抵抗しなけりゃ本当は撃って来ないはずだから」
フィオの頬をむにむにしながらそう言う。あぁ~柔らけぇ~、癒される~。
「わかっひゃ」
「むぅ~、ワタル、私にもしなさい」
いや、意味分からん。
「あっ、こらっ、何を――」
「死ねぇええええっ!」
っ!?
「くぅっ!? いっつぅ……何が?」
もう一度銃声が響いたと思ったら左腕に痛みが走った。撃たれた? 腕を確認すると血が出ている。撃たれたのか、でもこの傷は、貫通したとかじゃないな、皮膚が多少深く斬れた程度らしい。それでも痛いものは痛いが、まぁこの程度なら大事にはならないだ――っ!?
「落ち着け! 落ち着けフィオ、大丈夫だ。掠っただけだって、死んでない、ちゃんと生きてるだろ? だからそんなに怒らなくていい、な?」
こちらを警戒している警官隊に突っ込もうとしていたフィオを、既の所で腕を掴んで捕まえた。危ないと警戒していてくれた武器での訳の解からない攻撃に興奮して、ナハトを斬ろうとしていた時の様な殺気を放っていた。それを落ち着かせるのと突っ込ませない為に抱き寄せて心臓の音を聞かせて頭を撫でる。ヤバかった、もし捕まえられてなかったら銃持ってる人は確実に殺されてたかもしれない。フィオの放っていた殺気はそのくらい酷い圧迫感だった。納得がいかないからだろう、今もまだ腕の中でもがいているが本気で暴れているというわけでもない。本気ならとっくに抜け出してるだろうし……俺が止めたせいで怒りをどこにぶつければいいか分からないって感じだろうか? それでもこいつに人殺しはしてほしくないなぁ。
さっきの声、少女の父親の声に似ていた。撃たれる前に警官が何か言ってたみたいだったし、銃を奪っての発砲ってところか? 恨まれてるなぁ、当然か…………娘を理不尽に奪われたんだ。それに関わったであろう存在はどんな者でも赦せないだろう。
「取り押さえろ! 公務執行妨害と殺人未遂の現行犯だ!」
「放せっ! 放せぇええええええっ!」
やっぱりあの人だ。相当の恨みだって事だよな…………俺は死ぬべきだった? でも、まだやりたい事がある。受けるべき報いだったとしても、まだ死ねない。
「先ほどの発砲は、警官から銃を奪った鈴木真紀さんのお父さんによるものの様です。今は警官隊に取り押さえられて、銃も取り上げられているもようです。ですがあの方の気持ちを考えると、この行動は已むを得ないものの様に思えます」
こんな時なのにようやるなぁ……感心するというか、呆れるというか。
「ワタル、本当に大丈夫なの?」
「大丈夫、大丈夫、掠っただけ、大したことないって、だからティナも剣を下ろして、じゃないとあれを向けられたままになるから」
結構痛いが、表情に出したら駄目だ。
「そんなに言うなら従ってあげるけれど、いざとなったら強行突破するわよ?」
日本の警察はそんな無茶苦茶はしないと信じたいなぁ…………捕まってた間の事もあって俺もあんまり信じれないけど。
「ほん、とう、に? 大丈夫? 死なない? 居なくならない?」
えっ!? ちょ、まっ!? ヤバい……凄まじい殺気を放ってたのと同じやつとは思えないくらい弱弱しく不安そうな表情をして震えている。それに何より、泣いてる!?
『きゅ~、きゅ~、きゅ~』
主が泣いているせいで、もさも不安そうにして足元をうろうろしている。
「だ、大丈夫、大丈夫! 全然大丈夫だって、ほら、掠っただけだから動かしても痛くない。それにほら! フィオを持ち上げられるくらいには平気だから。な? 大丈夫だから、泣くな泣くな。死なないし居なくもならないから、心臓の音だってするだろ? このくらい腕折られた時に比べたら何でもないって」
お姫様抱っこの様に抱え上げて、あやすように軽く揺する。腕は痛いが、そんな事気にしてられない。うぅ、こいつがこんな表情するなんて思いもしなかった。だから内心ビビりまくって頭も混乱してる。懐かれているとは認識してた、してたけど…………ここまでとは思ってなかった。まさか泣かれるなんて…………。
「泣いて、ない…………泣いた事、ない」
いやいや、泣いてるから! 滅茶苦茶涙声だから! じゃないと俺はこんなに動揺してない。というか初泣き!? 余計に動揺するわ! こういう時って、ど、どうすりゃいい?
「大丈夫だから、ちゃんと生きてるだろ? 死なない、死なない、俺って結構しぶといし、だから大丈夫! あ、あ~……あっ! 後で美味い物でも食いに行こう、こっちにはフィオの知らない物が色々あるから楽しいぞ」
フィオの小さな身体を抱いてあやす。小さな身体を震わせて泣いている様子は、見た目通りの子供の様で、それが自分のせいで起こっていると思うと罪悪感が凄まじい……なにこのやらかしちゃった感。とりあえずこいつに泣かれてたら調子が狂う、どうにか泣き止んでもらわないと。
「…………ん」
泣き顔を見られたくないのか、顔を伏せて、しがみ付いて離れなくなった。これで落ち着くなら別にいいか。
「ズルいわワタル、私だって凄く心配してるのよ?」
そんな甘えた様な声を出されても……今はフィオだけで手一杯だ。警察もその他の人もこの状況に呆然として固まっている。
「あ、あとで、あとならティナにもするから、とりあえず剣納めて」
って、なに言っとんじゃー!? あとでするってなに!? ヤバい、フィオの泣き顔を見たせいで頭が完全に混乱している。
「絶対よ? 約束よ?」
「わ、分かった…………こっちは武器を下ろしましたよー! そっちも構えを解いてください!」
「ぶ、武器を床に置いてこちらに向かって蹴って、両手を頭の後ろで組んで!」
いや、無理だし! フィオ抱っこしてんの見りゃ分かるだろ、お前らが泣かしたんだぞ? ……いや、やっぱり俺が泣かしたのか? 普段大して表情を変える娘じゃないのに、まだ泣き止まない。こんなん放っておけるか!
「無理! 武器は置きますけど、腕組むのは無理です!」
小さい女の子が泣いている状況は警察も見えてるせいでかなり戸惑ってる。
「ならそのまま動かないで!」
その後捕まって事情聴取……の前に風呂と着替えを許されたんだけど。
「一緒がいい」
そう言ってフィオがなかなか離れなくて困った。結局はティナに頼んでフィオと一緒に入ってもらったけど、着替えた後は引っ付いて俺の服を掴んで離さなくなってしまった。
「小さいってズルいわね。甘え放題なんだもの」
いやいや、普段があんななのにこんな状態になったら誰でも甘くなると思うんだけど? 少なくとも、リオは確実にめちゃ甘になると断言出来る。
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