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四章~新天地へ~
魔物
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まったく、フィオのやつどこ行った? やっぱり甲板に出たのか? 外では怒号と叫び、悲鳴の様なものが聞こえる。これ明らかに戦闘中だよね? 聞こえるのは上からじゃなく少し離れた場所の様に感じるから甲板には上がっても大丈夫か?
船内に残っている者が居ないか警戒しながら甲板に出るとフィオが船首近くに屈んで船の外を窺っていた。
「フィオ、何が起こ――がっ! いってぇー! なにをする…………?」
何が起こっているのか確認しようとフィオに近付いたら、足払いを食らって思いっ切り転けて甲板に顔面を打ち付けた。鉄じゃなくてよかった…………木でも十分痛いが。
「危機感が足りない、立ってたら見つかる」
そりゃ悪かったな…………気を付けよう、自分のミスで仲間に危険が及ぶ様な事になったら絶対に苦しい。
「それで、この騒ぎはやっぱりエルフと戦ってるのか?」
「見れば分かる、あそこで指示を出してるエルフが危ない、たぶん百人近く居た混ざり者の四分の一が一瞬で死んだ」
フィオが指差した方を見ると砂浜に銀髪の褐色肌の耳の尖った女が居た。うぉおおお、本当にエルフって耳長いんだ、肌が褐色って事はダークエルフ? その後ろの林に弓を構えた連中、こいつらも肌が褐色で耳が長い…………その中に獣耳が生えてる奴が居る、獣人ってあれ? ん~、男に獣耳が生えててもなぁ、って暢気だな俺、さっき気を付けようって思ったばかりなのに、にしても砂浜がかなり近い、って事はやっぱり浜にに乗り上げたのか。
「凄い光景だな」
混血者たちは降り注ぐ矢を躱したり、剣で叩き落としてエルフや獣人に向かって行く。かなり速い、あれで使い物にならないという烙印を押されてるのか? 応戦しているエルフと獣人の動きも普通の人間のそれを凌駕している。でも状況は拮抗している様に見える、フィオは四分の一が一瞬で死んだって言ったよな?
「なぁ、あの女エルフは何をしたんだ?」
「コウヅキと同じ」
紅月と同じって…………っ!? 砂浜までの海の浅い所や波打ち際に黒い何かがある、紅月と同じって事は、人を焼いたのか…………百人近く居た人間の四分の一だから二十人近くが一瞬で消し炭になったって事か?
「でも今は能力を使ってないな」
「あんなの混戦だと使えない」
あ~、ゲーム脳駄目だ。ゲームでは魔法や必殺技なんかを使っても仲間には当たらないご都合主義だ、その感覚で見てた。確かに混戦になってる状態で人を一気に焼き殺す火力で攻撃したら仲間も大きな被害を被るだろう。
ん? でも加減すれば使えない事もないんじゃないのか?
「少し減らすのに使ったが! この程度の連中に能力を使うのは情けないぞ! 自分の力で討ち取って見せろ!」
なんで使わないんだと思っていたら、女エルフがそう叫んだ。相手は格下なんだから能力なんか必要ないと……凄い自信だな、自らも混戦の中に斬り込み一瞬で三人の首を飛ばして討ち取った。ヤバい、ギリギリ一応見えたって程度だった。見えたけどあれに反応して躱すとか今の俺には無理だ、絶対に。あんなのと戦闘になったら大事だ…………。
「フィオ、お前はあの動きについていけるか?」
「あれが全力なら全然問題ない」
マジかよ、でもそうか、さっきのが全力とは限らないのか…………益々ヤバい土地に来たという思いが強くなった。これってアドラに居た方がマシだったんじゃないのか? あっちは少なくとも人間相手だったけど、ここは普通の人間がついていけない世界だ。
「チッ」
アドラに居たら敵だった連中であろうと、次々と死んでいく光景を見るというのは、とても気分が悪い。
「助けるなんて言わないでよ、これは手伝い切れない」
「…………わかってるよ、アドラに居たらあいつらだって敵側の人間だったんだ」
分かってるけど、気分が悪い、ムカムカする、イライラする。
「人間…………ワタルはやっぱり変わってる、アドラで私たち混ざり者を人間扱いする人なんて居ない、混ざり者は都合のいい道具、使い勝手が悪ければ処分が普通なのに――」
「うっせぇ、お前は人間だ。それにリオだってお前に普通に接してるだろ? だからそういう事、もう言うな」
「…………ん」
さて、この状況をどうやって抜け出そう? 穏便に話が出来ればいいんだけど、戦闘を終わらせた後に敵が乗ってきた船に残ってる奴の話を聞いてくれるとは思えない。
一旦ここからどうにか逃げ出して、接触の機会を窺う方が安全な気がする。あんな連中相手だと俺も紅月も大した戦力に成れる気がしない、そんな状態だとフィオへの負担がかなりのモノになってしまう。あの人数にフィオ一人、手加減無しの殺しなら数を減らせるからなんとかしそうではあるけど、殺せばこの大陸の住人が全員敵だ。
相手に危害を加える事は出来ない、なら逃げるしか選択肢はない。船底に穴でも開けて海に潜ってここを離れるか? …………リオとフィオは海を見るのが初めてだって言ってたな、泳げるだろうか? フィオは平気か、俺を海から引き上げたんだから、問題はリオ、はフィオに引いてもらえばいいか、他に問題は……はっ! スマホが死んじゃう…………最近のスマホは大抵は防水だけど、真水はよくても海水はダメだったはず、どうしよう? ビニール袋は無いし…………。
「なにをする…………?」
「変な顔してた」
悩んでいたらフィオに頬を摘まれた。変な顔って失礼な! こっちは唯一の文明の利器をどうするか悩んでんのに。
「フィオはここから逃げる何か良い方法――なっ!? あれ、なんだよ」
「あれ?」
フィオに分かるように空を指差した。その先に居るものは人型をした様な鳥が複数居る、頭部から胸部辺りまでは人間の女性のそれに見える、でも腕部は羽が生えていて翼の様になっている、下半身もシルエットだけなら人間っぽく見えない事もないが足は大きく、猛禽類のものの様な形をしていて鉤爪があるように見える。
あれって、ハーピーとかハルピュイアって言われるやつだよな…………。
「フィオ、あれはこの世界に元々居たものか?」
「知らない、あんな生き物見た事ない」
知らないって事は魔物なのか? 姿自体はゲームとかにも出てくるから見慣れてる感もあるけど、やっぱりここって異世界だったんだな…………。
「ワタル?」
「あ、ああ、えっと…………」
ここに来てエルフに獣人、魔物が出て来て、異世界を感じて放心してた。
だって今までは面倒事は全部人間だった。奴隷と蔑んでくる人間、身体能力の高いやつ、超能力が使えるやつ、これに至っては同じ日本人だし、それがいきなりこれだ。
「なっ!? あいつら人間を喰うのか!?」
ハルピュイアの一体が倒れた混血者を足で掴んで飛んでいく、生き物の死体を収集する習性とかがない限り、持っていく理由は喰う為だろう。
さっきの奴に続いて他の奴も倒れている者、焼け死んだ者、倒れているがまだ息があってもがいている者を大きな足で掴んで飛び去って行く。
「なんでだ?」
「なにが?」
「狙われてるのは人間だけだ」
殺せてはいないが負傷した獣人とエルフが数人いるのにそいつらには見向きもせずに混血者を狙って掴みに行ってる。疲れたのか、多少動きが鈍った程度の混血者も狙われて、攫われていく、魔物が人間を好んでいるのか、それとも魔物を使役する方法があるのか?
この状況に混乱して、拮抗していた様に見えた戦況が一気に崩れた。
混血者たちはエルフと獣人、ハルピュイアとの挟撃に遭って逃げ惑い戦うどころではなくなっている、フィオが見たことがなかったんだから彼らもエルフや魔物は初めてだっただろう、未知の存在に囲まれ殺されて逝く事への恐怖で悲鳴を上げる者がいる。
一方的過ぎる、奴隷にする為に攫いに来た奴らが悪い、でもこの状況は…………虐殺じゃないか、殺されて魔物の餌になるなんてまともな死に方じゃない。
「チッ、クソッ!」
我慢出来そうにない、こんなの黙って見てられるか――。
「っ!? ワタル!」
「ぐへぇっ」
剣を抜こうとしたらフィオに頭を押さえつけられて甲板に激突した。それと同時にフィオはバックステップ。
「お前さっきからなに――」
文句を言おうと顔をあげたらハルピュイアが頭のすぐ上に居て、船首部分に鉤爪が刺さっている。あ、頭持っていかれるとこだった…………。
「ワタル、殺すからどいて」
「あ、ああ」
フィオは太もものナイフシースからナイフを抜いて構えていた。俺は慌ててハルピュイアから離れた。近くで見ると頭部は本当に人間みたいだけど喋ることは出来ない様でギャアギャアと喚いている。
俺が離れたのを確認したフィオは一瞬の内にハルピュイアに近付き跳び上がり、ハルピュイアの額にナイフを突き立てていた。こいつはやっぱり凄い、動きが見えない、気付いたらナイフが突き刺さっていたという状態だ。
ハルピュイアは断末魔の叫びを上げて絶命した。ナイフの刃の部分が見えなくなるほどに深く刺さっている、魔物だからどうなってるのかは分からないけど、普通頭蓋骨があるだろ、こんなに深々と刺さるものか?
「ワタル」
「今度はなんだよ? だいたい、さっきバックステップする余裕があるんなら俺も連れて跳んでくれりゃあよかっただろ、なんでわざわざ甲板に押し付けた?」
「そんなことより」
そんな事ってなんだ! 思いっ切りぶつけたから額にたんこぶが出来てる。
「見つかった」
「は?」
フィオが砂浜の方を指差して、それを追って砂浜を見るとエルフと獣人たちがこちらを見ている。あぁ…………さっきの断末魔のせいだ。
「なんで声上げないように喉を斬らなかった!?」
「助けてあげたのに…………あんなにうるさいと思わなかった」
そうだね~、その件についてはどうもありがとうございました! でもこれどうすんだ! 完全に見つかってるぞ。
こんな状況で俺たち逃げ延びられるのか?
船内に残っている者が居ないか警戒しながら甲板に出るとフィオが船首近くに屈んで船の外を窺っていた。
「フィオ、何が起こ――がっ! いってぇー! なにをする…………?」
何が起こっているのか確認しようとフィオに近付いたら、足払いを食らって思いっ切り転けて甲板に顔面を打ち付けた。鉄じゃなくてよかった…………木でも十分痛いが。
「危機感が足りない、立ってたら見つかる」
そりゃ悪かったな…………気を付けよう、自分のミスで仲間に危険が及ぶ様な事になったら絶対に苦しい。
「それで、この騒ぎはやっぱりエルフと戦ってるのか?」
「見れば分かる、あそこで指示を出してるエルフが危ない、たぶん百人近く居た混ざり者の四分の一が一瞬で死んだ」
フィオが指差した方を見ると砂浜に銀髪の褐色肌の耳の尖った女が居た。うぉおおお、本当にエルフって耳長いんだ、肌が褐色って事はダークエルフ? その後ろの林に弓を構えた連中、こいつらも肌が褐色で耳が長い…………その中に獣耳が生えてる奴が居る、獣人ってあれ? ん~、男に獣耳が生えててもなぁ、って暢気だな俺、さっき気を付けようって思ったばかりなのに、にしても砂浜がかなり近い、って事はやっぱり浜にに乗り上げたのか。
「凄い光景だな」
混血者たちは降り注ぐ矢を躱したり、剣で叩き落としてエルフや獣人に向かって行く。かなり速い、あれで使い物にならないという烙印を押されてるのか? 応戦しているエルフと獣人の動きも普通の人間のそれを凌駕している。でも状況は拮抗している様に見える、フィオは四分の一が一瞬で死んだって言ったよな?
「なぁ、あの女エルフは何をしたんだ?」
「コウヅキと同じ」
紅月と同じって…………っ!? 砂浜までの海の浅い所や波打ち際に黒い何かがある、紅月と同じって事は、人を焼いたのか…………百人近く居た人間の四分の一だから二十人近くが一瞬で消し炭になったって事か?
「でも今は能力を使ってないな」
「あんなの混戦だと使えない」
あ~、ゲーム脳駄目だ。ゲームでは魔法や必殺技なんかを使っても仲間には当たらないご都合主義だ、その感覚で見てた。確かに混戦になってる状態で人を一気に焼き殺す火力で攻撃したら仲間も大きな被害を被るだろう。
ん? でも加減すれば使えない事もないんじゃないのか?
「少し減らすのに使ったが! この程度の連中に能力を使うのは情けないぞ! 自分の力で討ち取って見せろ!」
なんで使わないんだと思っていたら、女エルフがそう叫んだ。相手は格下なんだから能力なんか必要ないと……凄い自信だな、自らも混戦の中に斬り込み一瞬で三人の首を飛ばして討ち取った。ヤバい、ギリギリ一応見えたって程度だった。見えたけどあれに反応して躱すとか今の俺には無理だ、絶対に。あんなのと戦闘になったら大事だ…………。
「フィオ、お前はあの動きについていけるか?」
「あれが全力なら全然問題ない」
マジかよ、でもそうか、さっきのが全力とは限らないのか…………益々ヤバい土地に来たという思いが強くなった。これってアドラに居た方がマシだったんじゃないのか? あっちは少なくとも人間相手だったけど、ここは普通の人間がついていけない世界だ。
「チッ」
アドラに居たら敵だった連中であろうと、次々と死んでいく光景を見るというのは、とても気分が悪い。
「助けるなんて言わないでよ、これは手伝い切れない」
「…………わかってるよ、アドラに居たらあいつらだって敵側の人間だったんだ」
分かってるけど、気分が悪い、ムカムカする、イライラする。
「人間…………ワタルはやっぱり変わってる、アドラで私たち混ざり者を人間扱いする人なんて居ない、混ざり者は都合のいい道具、使い勝手が悪ければ処分が普通なのに――」
「うっせぇ、お前は人間だ。それにリオだってお前に普通に接してるだろ? だからそういう事、もう言うな」
「…………ん」
さて、この状況をどうやって抜け出そう? 穏便に話が出来ればいいんだけど、戦闘を終わらせた後に敵が乗ってきた船に残ってる奴の話を聞いてくれるとは思えない。
一旦ここからどうにか逃げ出して、接触の機会を窺う方が安全な気がする。あんな連中相手だと俺も紅月も大した戦力に成れる気がしない、そんな状態だとフィオへの負担がかなりのモノになってしまう。あの人数にフィオ一人、手加減無しの殺しなら数を減らせるからなんとかしそうではあるけど、殺せばこの大陸の住人が全員敵だ。
相手に危害を加える事は出来ない、なら逃げるしか選択肢はない。船底に穴でも開けて海に潜ってここを離れるか? …………リオとフィオは海を見るのが初めてだって言ってたな、泳げるだろうか? フィオは平気か、俺を海から引き上げたんだから、問題はリオ、はフィオに引いてもらえばいいか、他に問題は……はっ! スマホが死んじゃう…………最近のスマホは大抵は防水だけど、真水はよくても海水はダメだったはず、どうしよう? ビニール袋は無いし…………。
「なにをする…………?」
「変な顔してた」
悩んでいたらフィオに頬を摘まれた。変な顔って失礼な! こっちは唯一の文明の利器をどうするか悩んでんのに。
「フィオはここから逃げる何か良い方法――なっ!? あれ、なんだよ」
「あれ?」
フィオに分かるように空を指差した。その先に居るものは人型をした様な鳥が複数居る、頭部から胸部辺りまでは人間の女性のそれに見える、でも腕部は羽が生えていて翼の様になっている、下半身もシルエットだけなら人間っぽく見えない事もないが足は大きく、猛禽類のものの様な形をしていて鉤爪があるように見える。
あれって、ハーピーとかハルピュイアって言われるやつだよな…………。
「フィオ、あれはこの世界に元々居たものか?」
「知らない、あんな生き物見た事ない」
知らないって事は魔物なのか? 姿自体はゲームとかにも出てくるから見慣れてる感もあるけど、やっぱりここって異世界だったんだな…………。
「ワタル?」
「あ、ああ、えっと…………」
ここに来てエルフに獣人、魔物が出て来て、異世界を感じて放心してた。
だって今までは面倒事は全部人間だった。奴隷と蔑んでくる人間、身体能力の高いやつ、超能力が使えるやつ、これに至っては同じ日本人だし、それがいきなりこれだ。
「なっ!? あいつら人間を喰うのか!?」
ハルピュイアの一体が倒れた混血者を足で掴んで飛んでいく、生き物の死体を収集する習性とかがない限り、持っていく理由は喰う為だろう。
さっきの奴に続いて他の奴も倒れている者、焼け死んだ者、倒れているがまだ息があってもがいている者を大きな足で掴んで飛び去って行く。
「なんでだ?」
「なにが?」
「狙われてるのは人間だけだ」
殺せてはいないが負傷した獣人とエルフが数人いるのにそいつらには見向きもせずに混血者を狙って掴みに行ってる。疲れたのか、多少動きが鈍った程度の混血者も狙われて、攫われていく、魔物が人間を好んでいるのか、それとも魔物を使役する方法があるのか?
この状況に混乱して、拮抗していた様に見えた戦況が一気に崩れた。
混血者たちはエルフと獣人、ハルピュイアとの挟撃に遭って逃げ惑い戦うどころではなくなっている、フィオが見たことがなかったんだから彼らもエルフや魔物は初めてだっただろう、未知の存在に囲まれ殺されて逝く事への恐怖で悲鳴を上げる者がいる。
一方的過ぎる、奴隷にする為に攫いに来た奴らが悪い、でもこの状況は…………虐殺じゃないか、殺されて魔物の餌になるなんてまともな死に方じゃない。
「チッ、クソッ!」
我慢出来そうにない、こんなの黙って見てられるか――。
「っ!? ワタル!」
「ぐへぇっ」
剣を抜こうとしたらフィオに頭を押さえつけられて甲板に激突した。それと同時にフィオはバックステップ。
「お前さっきからなに――」
文句を言おうと顔をあげたらハルピュイアが頭のすぐ上に居て、船首部分に鉤爪が刺さっている。あ、頭持っていかれるとこだった…………。
「ワタル、殺すからどいて」
「あ、ああ」
フィオは太もものナイフシースからナイフを抜いて構えていた。俺は慌ててハルピュイアから離れた。近くで見ると頭部は本当に人間みたいだけど喋ることは出来ない様でギャアギャアと喚いている。
俺が離れたのを確認したフィオは一瞬の内にハルピュイアに近付き跳び上がり、ハルピュイアの額にナイフを突き立てていた。こいつはやっぱり凄い、動きが見えない、気付いたらナイフが突き刺さっていたという状態だ。
ハルピュイアは断末魔の叫びを上げて絶命した。ナイフの刃の部分が見えなくなるほどに深く刺さっている、魔物だからどうなってるのかは分からないけど、普通頭蓋骨があるだろ、こんなに深々と刺さるものか?
「ワタル」
「今度はなんだよ? だいたい、さっきバックステップする余裕があるんなら俺も連れて跳んでくれりゃあよかっただろ、なんでわざわざ甲板に押し付けた?」
「そんなことより」
そんな事ってなんだ! 思いっ切りぶつけたから額にたんこぶが出来てる。
「見つかった」
「は?」
フィオが砂浜の方を指差して、それを追って砂浜を見るとエルフと獣人たちがこちらを見ている。あぁ…………さっきの断末魔のせいだ。
「なんで声上げないように喉を斬らなかった!?」
「助けてあげたのに…………あんなにうるさいと思わなかった」
そうだね~、その件についてはどうもありがとうございました! でもこれどうすんだ! 完全に見つかってるぞ。
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