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マヤの告白3
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領地に帰りついたミリア様は部屋に閉じこもりました。
ずっとそばでついていたくても、わたしにはミリア様からの調べ物があったので、そちらを優先することにしたのです。
わたしはもともとは孤児でした。ミリア様に出会わなければもしかすればこの身を売って今も生活していたでしょう。
わたしの友人たちや弟も「普通」の生活は送れていなかったかもしれません。
ミリア様の支援があったからこそみんな「普通」の生活をしているのです。
そんなミリア様に感謝しているので、協力を惜しみませんでした。
わたしはミリア様から離れ、王都へ行きいつものように彼らに会いました。行くと、みんな「聖女」の噂を集めて待っていてくれたのです。
誰も調べる理由を聞いてこようとしません。ミリア様を信用しているからです。
「ありがとう」
「何言ってるの。お嬢様の役に立つならなんだってするさ」
「そうだぞ。お嬢様がいなけりゃぁ、俺らは餓死してるか凍死してるわ」
「手に仕事をくれたしねぇ」
笑いながら言ってくれました。
「マヤ。お嬢様によろしくね」
泣きたかったです。
ミリア様のことを話したくなりました。
ですが、これだけはいえません。
領地に帰り、ミリア様にまとめた報告書を渡します。
みんなが集めた情報を読んだミリア様は目を輝かせました。
久々の笑顔に嬉しくなります。
「これだわ」
「ミリア様?」
「彼女に加担して聖女でないことを暴くの」
「はい?どういうことですか?」
意味が全くわかりません。
「おそらく彼女の「聖女」の力は失われつつあるのだわ」
「失われつつ・・・そんなことがあるのですか?」
「もともと「聖女」は信仰心のある女性から生まれるものなの。それは文献にも記載されているほどのことよ。でも今の彼女は金銭に目がくらんでいる・・・」
そういえば、お布施によって態度が変わると、みんな言っていました。
「ですが、文献にも書かれているなら・・・、気づかれるのではないのですか?」
「たしか・・・彼女は田舎出身よね。田舎では教義なんて関係ないわ。生きていく中で当然のように神を崇めるものだもの。純粋に神を思い、祈っていたのでしょう。そんな彼女がいきなり王都にでてきて、贅沢を知れば・・・」
神様なんて関係なくなってしまう・・・。
わたし自身、お金で苦しんだ覚えがあるからわかります。お金があればあるだけ嬉しくなりました。目に見えない神様ではなく目先の利益が全てになるのです。
「戻れないものですか?」
「その人にもよるわ。司祭様に確認しないとなんとも言えないけどで ・・・彼女は無理かも知れないわね・・・」
集めた情報には聖女の家族についても少しありました。
以前までしていた仕送りがすでにされていないと・・・。
大事にしていた家族さえ忘れて、自分の欲を優先しているのでしょう・・・。
「このまま「聖女」として置いておくのは危険だわ。養子縁組をしたエレスト伯爵も王室に取り入ろうと前々から黒い噂がある方だし・・・。阻止すべきね」
嫌な予感しかしません。
「ミリア様。どうなさるおつもりですか?」
ミリア様は腫れた目でにこりと笑われました。
「聖女様にとりいって注目を集める。この私が彼女のそばにいれば嫌でも誰もが注目するでしょう?そうすれば、アルト様が彼女を調べると思うの」
何で楽しそうに語るのですか?
「聖女様の悪事がバレると同時に私はアルト様に嫌われる!!そして婚約破棄ををされるの。ねっ!いい考えでしょう」
にこやかに笑わないでください。余計に泣いているように見えます。
「何を言っているのですか!正直にお話になればいいじゃありませんか!」
ミリア様は困ったように眉を寄せ首を振ります。
「そうでもしないと、アルト様は納得しないわ。きっとわたしが死ぬまでそばにいてくれるでしょう。弱っていく私を見て欲しくないわ。それに死んでしまった後、彼の方はどうなってしまうの!?抜け殻?後追い?そんなのは嫌なの。私はアルト様には幸せになってほしいの。だから・・・だから私を、・・・っ、嫌ってもらいたいのっ。」
ポタポタと涙が溢れてきていました。
きっとミリア様を大切に想っているアルト様ならありえることに思えてしまいます。
「本当にそれで・・・いいのですか?嫌われる覚悟があるの、ですか?」
わたしもたまらず涙が出てきます。
アルト様がお好きなのに。嫌われるなんてお辛いはずなのに、そこまで決心しているなら、わたしは従うしかないじゃないですか。
「・・・いいの。アルト様に私を嫌いになってもらわないと・・・」
ミリア様は泣きながらまた笑いました。
ずっとそばでついていたくても、わたしにはミリア様からの調べ物があったので、そちらを優先することにしたのです。
わたしはもともとは孤児でした。ミリア様に出会わなければもしかすればこの身を売って今も生活していたでしょう。
わたしの友人たちや弟も「普通」の生活は送れていなかったかもしれません。
ミリア様の支援があったからこそみんな「普通」の生活をしているのです。
そんなミリア様に感謝しているので、協力を惜しみませんでした。
わたしはミリア様から離れ、王都へ行きいつものように彼らに会いました。行くと、みんな「聖女」の噂を集めて待っていてくれたのです。
誰も調べる理由を聞いてこようとしません。ミリア様を信用しているからです。
「ありがとう」
「何言ってるの。お嬢様の役に立つならなんだってするさ」
「そうだぞ。お嬢様がいなけりゃぁ、俺らは餓死してるか凍死してるわ」
「手に仕事をくれたしねぇ」
笑いながら言ってくれました。
「マヤ。お嬢様によろしくね」
泣きたかったです。
ミリア様のことを話したくなりました。
ですが、これだけはいえません。
領地に帰り、ミリア様にまとめた報告書を渡します。
みんなが集めた情報を読んだミリア様は目を輝かせました。
久々の笑顔に嬉しくなります。
「これだわ」
「ミリア様?」
「彼女に加担して聖女でないことを暴くの」
「はい?どういうことですか?」
意味が全くわかりません。
「おそらく彼女の「聖女」の力は失われつつあるのだわ」
「失われつつ・・・そんなことがあるのですか?」
「もともと「聖女」は信仰心のある女性から生まれるものなの。それは文献にも記載されているほどのことよ。でも今の彼女は金銭に目がくらんでいる・・・」
そういえば、お布施によって態度が変わると、みんな言っていました。
「ですが、文献にも書かれているなら・・・、気づかれるのではないのですか?」
「たしか・・・彼女は田舎出身よね。田舎では教義なんて関係ないわ。生きていく中で当然のように神を崇めるものだもの。純粋に神を思い、祈っていたのでしょう。そんな彼女がいきなり王都にでてきて、贅沢を知れば・・・」
神様なんて関係なくなってしまう・・・。
わたし自身、お金で苦しんだ覚えがあるからわかります。お金があればあるだけ嬉しくなりました。目に見えない神様ではなく目先の利益が全てになるのです。
「戻れないものですか?」
「その人にもよるわ。司祭様に確認しないとなんとも言えないけどで ・・・彼女は無理かも知れないわね・・・」
集めた情報には聖女の家族についても少しありました。
以前までしていた仕送りがすでにされていないと・・・。
大事にしていた家族さえ忘れて、自分の欲を優先しているのでしょう・・・。
「このまま「聖女」として置いておくのは危険だわ。養子縁組をしたエレスト伯爵も王室に取り入ろうと前々から黒い噂がある方だし・・・。阻止すべきね」
嫌な予感しかしません。
「ミリア様。どうなさるおつもりですか?」
ミリア様は腫れた目でにこりと笑われました。
「聖女様にとりいって注目を集める。この私が彼女のそばにいれば嫌でも誰もが注目するでしょう?そうすれば、アルト様が彼女を調べると思うの」
何で楽しそうに語るのですか?
「聖女様の悪事がバレると同時に私はアルト様に嫌われる!!そして婚約破棄ををされるの。ねっ!いい考えでしょう」
にこやかに笑わないでください。余計に泣いているように見えます。
「何を言っているのですか!正直にお話になればいいじゃありませんか!」
ミリア様は困ったように眉を寄せ首を振ります。
「そうでもしないと、アルト様は納得しないわ。きっとわたしが死ぬまでそばにいてくれるでしょう。弱っていく私を見て欲しくないわ。それに死んでしまった後、彼の方はどうなってしまうの!?抜け殻?後追い?そんなのは嫌なの。私はアルト様には幸せになってほしいの。だから・・・だから私を、・・・っ、嫌ってもらいたいのっ。」
ポタポタと涙が溢れてきていました。
きっとミリア様を大切に想っているアルト様ならありえることに思えてしまいます。
「本当にそれで・・・いいのですか?嫌われる覚悟があるの、ですか?」
わたしもたまらず涙が出てきます。
アルト様がお好きなのに。嫌われるなんてお辛いはずなのに、そこまで決心しているなら、わたしは従うしかないじゃないですか。
「・・・いいの。アルト様に私を嫌いになってもらわないと・・・」
ミリア様は泣きながらまた笑いました。
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