【完結】人違いだと言っているのにわかってくれません

彩華(あやはな)

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 わたしは事務員に案内してもらいながら
学園内を歩いていた。

 どこからともなく笑い声が聞こえて来る。
 ちらちらとわたしを物陰から見て来る。
 そして聞こえてくる声。

『図々しい性格ね』
『あんな事があって、学園に来れるなんてどれだけ図太い神経してるの?』
『また、楽しめるのか?』
『カロン様を救わないと・・・』


 蝿の羽音か・・・。
 五月蝿い。
 この学園の価値がしれる。
 噂とは違うものね。
 なにが優秀な者の集まりなのだか。
 
 わたしは気にせず、まっすぐ前を向きあるいた。





 わたしは学園長室に入った。
 学園長が立って出迎えてくれた。白い髭がインパクトあるおじいちゃん。
 大丈夫かしら?介護が必要じゃない?

「ようこそいらしてくださいました。アンジュ・トレイニー公爵令嬢」
「この度は急な申し出に快い返事をいただきありがとうございます」

 わたしは飛び切りの笑顔を向ける。
 トマトみたいに真っ赤になるなんて、色ボケジジイかしら。
 そんな事を思いながら向かい合って座り、感謝を述べた。

「アゼリア王国、随一と言われるこの学園の視察できたこと嬉しく思っております」


 随一と言われて、学園長もまんざらでない様子。
 ニコニコと学園の説明をしてくれる。
 どこが学園の魅力だの、学習の取り組み方はあーだのこーだの、学内の見どころはどこそこだのと。
 よく口の回るおじいちゃんだ。
 口の中が渇いたのが紅茶を一気に飲み干す。
 やっと静かになる。
 次はわたしが言う番ね。

「Iヶ月と短い期間ですが、普通の生徒として接していただけると助かりますわ」
「普通・・・ですか?」
「はい。わたしがエルフィア帝国から来ていると大々的に言ってしまえば、友人もできませんでしょうし、何より先生方も恐縮されてしまうのでは・・・?」
「まあ、そうですが・・・」
「わたしはあるがままの学園をみてみたいのです。それこそ視察の価値というものです。ですので、親善国からと来たのだと説明していただけますか?」
「親善国・・・。まあ、それなら妥当ですね」
 
 学園長は汗を拭きながら頷いてくれた。
 歯向かう気はないわね。
 帝国の公爵を舐めてもらっちゃあ、困るわよ。
 楯突くなら捻り潰してあげる。


 眉一つ、表情で人を動かす。
 感情を悟られるな。
 わたしは公爵家の人間だ。
 気取られるな。


 わたしはこの数年、学校の教育の見直しのために視察を口実に留学をしている。
 大事な人を探す為にー。
 

 あの方にも無理を言って。
 心配をされながら。

 もう時期わたしの旅は終わる。
 時間が限られているから。

 それまでに見つけたい。
 

 
 

 

 

 
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