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セイネ様とリュート様は甲板に出た。
「ここは涼しいですね」
リュート殿下が言う。
夏となり、暑い日が続くようになっていたが、海の上は涼しかった。
少し離れた場所でお二人を見守っていた。
『気持ちいいですね』
セイネ様は手話で答える。
風が強く吹いて月の光で輝きながらたなびく髪を彼女は抑えた。
それにリュート殿下も見惚れながら膝をついた。
「セイネ嬢。あなたを愛しています。私の隣にたってこの国を共に支えてほしい」
セイネ様の手を取りキスをする。
セイネ様の目が潤み、リュート殿下の手を取ろうとした時、甲板に通じる扉が開きロイド殿下とソレイユ様が出てきた。
ーいいところだったのに!!
流石にこれはいただけない。場を読まないロイド殿下に怒りを感じてしまう。
「あ、兄上!す、すいません」
かなり鈍いロイド殿下でも気づいたようだった。
「いや、大丈夫だ」
何事もなかったように立ち上がりながらもリュート殿下はセイネ様の手を握ったまま背後に隠すようにした。
「後で返事はもらう」
セイネ様に向けて言ったのだろう。
「リュート様も一途ですのね」
そんなリュート殿下を見て、ソレイユ様がふふふっと笑いながら、私に振ってきた。
「フィーもそう思わない?」
「そう、ですね」
「アルフ様もフィーに本気のようですし」
「はあ?」
ーまったー!!本気?誰がなにに本気??
思考が追いつかない。
「あら?フィーも気がついているでしょう?アルフ様があなたを見つめる目は優しいわよ」
「そうえばそうだな。あのアルフがあんな目をしているのは初めてだよな」
「確かに?作り笑いしかしないたらし顔で有名だったアルフが普通に笑いかけるのはフィーだけだ」
ー作り笑いしかしないたらし?誰だ?
私が知っているアルフ様はもっと・・・違和感はなかった気がする。時たま過保護に見てくる気はしていたが。
回らない頭を抱えていると、扉の開く音がした。
見ればルナ様が立っていた。
その顔は一瞬でも醜い老婆のように思った。
眉間に皺を寄せこちらを睨みつけている。
「どうして・・・・・・、どうして笑ってるのよ」
ふらりとこちらに近づいてきた。
ルナ様の手には黒い筒のようなものを持っているのがわかった。
その形に私はそれがなんであるのかわかった。
「ルナ様。どうしてそれを?」
「メリアにとって来てもらったの。セイネシアはきっと使わないと思って・・・。あの子は本当に素直だわ」
私はセイネ様から預かって部屋に置いておいた。それを盗んだということだ。
ルナ様はすっとそれを引き抜いた。黒く鋭く尖った刃が月の光で輝く。
「そいつを殺せば、ソレイユは海に帰るしかなくなるはず・・・」
ルナ様の睨んでいる瞳から涙が溢れていた。
「ルナ様おやめください」
ソレイユ様をロイド様が立ち塞がり庇う。
その前に私が立ち壁を作った。
「どいてフィー。私は、ずっと待っていたの。家族に会えるのをずっと・・・。でも私の家族は私を探してくれなかった。なら、私が探すしかないでしょう?やっと・・・やっと見つけた私の妹なの・・・。一緒に帰りたいの」
「ルナ様?ルナ様の妹がソレイユ様と言うのですか?」
唇が笑おとして歪む。
「そうよ。その髪の色も目の色も名前も聞いていたのと同じ。それに私の感覚が半身だと言っているの!間違いないの。会いたかった半身よ」
「ソレイユ様は泡沫人です!」
私は首を振り否定をした。
「そんなはずないわ」
そうルナ様が叫んだ時、後ろからアルフ様がルナ様の手を掴んだ。
「やめろ!!」
「ここは涼しいですね」
リュート殿下が言う。
夏となり、暑い日が続くようになっていたが、海の上は涼しかった。
少し離れた場所でお二人を見守っていた。
『気持ちいいですね』
セイネ様は手話で答える。
風が強く吹いて月の光で輝きながらたなびく髪を彼女は抑えた。
それにリュート殿下も見惚れながら膝をついた。
「セイネ嬢。あなたを愛しています。私の隣にたってこの国を共に支えてほしい」
セイネ様の手を取りキスをする。
セイネ様の目が潤み、リュート殿下の手を取ろうとした時、甲板に通じる扉が開きロイド殿下とソレイユ様が出てきた。
ーいいところだったのに!!
流石にこれはいただけない。場を読まないロイド殿下に怒りを感じてしまう。
「あ、兄上!す、すいません」
かなり鈍いロイド殿下でも気づいたようだった。
「いや、大丈夫だ」
何事もなかったように立ち上がりながらもリュート殿下はセイネ様の手を握ったまま背後に隠すようにした。
「後で返事はもらう」
セイネ様に向けて言ったのだろう。
「リュート様も一途ですのね」
そんなリュート殿下を見て、ソレイユ様がふふふっと笑いながら、私に振ってきた。
「フィーもそう思わない?」
「そう、ですね」
「アルフ様もフィーに本気のようですし」
「はあ?」
ーまったー!!本気?誰がなにに本気??
思考が追いつかない。
「あら?フィーも気がついているでしょう?アルフ様があなたを見つめる目は優しいわよ」
「そうえばそうだな。あのアルフがあんな目をしているのは初めてだよな」
「確かに?作り笑いしかしないたらし顔で有名だったアルフが普通に笑いかけるのはフィーだけだ」
ー作り笑いしかしないたらし?誰だ?
私が知っているアルフ様はもっと・・・違和感はなかった気がする。時たま過保護に見てくる気はしていたが。
回らない頭を抱えていると、扉の開く音がした。
見ればルナ様が立っていた。
その顔は一瞬でも醜い老婆のように思った。
眉間に皺を寄せこちらを睨みつけている。
「どうして・・・・・・、どうして笑ってるのよ」
ふらりとこちらに近づいてきた。
ルナ様の手には黒い筒のようなものを持っているのがわかった。
その形に私はそれがなんであるのかわかった。
「ルナ様。どうしてそれを?」
「メリアにとって来てもらったの。セイネシアはきっと使わないと思って・・・。あの子は本当に素直だわ」
私はセイネ様から預かって部屋に置いておいた。それを盗んだということだ。
ルナ様はすっとそれを引き抜いた。黒く鋭く尖った刃が月の光で輝く。
「そいつを殺せば、ソレイユは海に帰るしかなくなるはず・・・」
ルナ様の睨んでいる瞳から涙が溢れていた。
「ルナ様おやめください」
ソレイユ様をロイド様が立ち塞がり庇う。
その前に私が立ち壁を作った。
「どいてフィー。私は、ずっと待っていたの。家族に会えるのをずっと・・・。でも私の家族は私を探してくれなかった。なら、私が探すしかないでしょう?やっと・・・やっと見つけた私の妹なの・・・。一緒に帰りたいの」
「ルナ様?ルナ様の妹がソレイユ様と言うのですか?」
唇が笑おとして歪む。
「そうよ。その髪の色も目の色も名前も聞いていたのと同じ。それに私の感覚が半身だと言っているの!間違いないの。会いたかった半身よ」
「ソレイユ様は泡沫人です!」
私は首を振り否定をした。
「そんなはずないわ」
そうルナ様が叫んだ時、後ろからアルフ様がルナ様の手を掴んだ。
「やめろ!!」
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