上 下
47 / 57

51.

しおりを挟む
 セイネ様とリュート様は甲板に出た。

「ここは涼しいですね」

 リュート殿下が言う。
 夏となり、暑い日が続くようになっていたが、海の上は涼しかった。

 少し離れた場所でお二人を見守っていた。

『気持ちいいですね』

 セイネ様は手話で答える。

 風が強く吹いて月の光で輝きながらたなびく髪を彼女は抑えた。

 それにリュート殿下も見惚れながら膝をついた。

「セイネ嬢。あなたを愛しています。私の隣にたってこの国を共に支えてほしい」

 セイネ様の手を取りキスをする。

 セイネ様の目が潤み、リュート殿下の手を取ろうとした時、甲板に通じる扉が開きロイド殿下とソレイユ様が出てきた。

ーいいところだったのに!!

 流石にこれはいただけない。場を読まないロイド殿下に怒りを感じてしまう。

「あ、兄上!す、すいません」

 かなり鈍いロイド殿下でも気づいたようだった。

「いや、大丈夫だ」

 何事もなかったように立ち上がりながらもリュート殿下はセイネ様の手を握ったまま背後に隠すようにした。

「後で返事はもらう」 

 セイネ様に向けて言ったのだろう。

「リュート様も一途ですのね」

 そんなリュート殿下を見て、ソレイユ様がふふふっと笑いながら、私に振ってきた。

「フィーもそう思わない?」
「そう、ですね」
「アルフ様もフィーに本気のようですし」
「はあ?」

ーまったー!!本気?誰がなにに本気??

 思考が追いつかない。

「あら?フィーも気がついているでしょう?アルフ様があなたを見つめる目は優しいわよ」
「そうえばそうだな。あのアルフがあんな目をしているのは初めてだよな」
「確かに?作り笑いしかしないたらし顔で有名だったアルフが普通に笑いかけるのはフィーだけだ」
 
ー作り笑いしかしないたらし?誰だ?
 私が知っているアルフ様はもっと・・・違和感はなかった気がする。時たま過保護に見てくる気はしていたが。

 回らない頭を抱えていると、扉の開く音がした。

 見ればルナ様が立っていた。
 その顔は一瞬でも醜い老婆のように思った。
 
 眉間に皺を寄せこちらを睨みつけている。


「どうして・・・・・・、どうして笑ってるのよ」

 ふらりとこちらに近づいてきた。
 ルナ様の手には黒い筒のようなものを持っているのがわかった。
 その形に私はそれがなんであるのかわかった。

「ルナ様。どうしてを?」
「メリアにとって来てもらったの。セイネシアはきっと使わないと思って・・・。あの子は本当に素直だわ」

 私はセイネ様から預かって部屋に置いておいた。それを盗んだということだ。
 ルナ様はすっとを引き抜いた。黒く鋭く尖った刃が月の光で輝く。

「そいつを殺せば、ソレイユは海に帰るしかなくなるはず・・・」

 ルナ様の睨んでいる瞳から涙が溢れていた。

「ルナ様おやめください」 

 ソレイユ様をロイド様が立ち塞がり庇う。
 
 その前に私が立ち壁を作った。

「どいてフィー。私は、ずっと待っていたの。家族に会えるのをずっと・・・。でも私の家族は私を探してくれなかった。なら、私が探すしかないでしょう?やっと・・・やっと見つけた私の妹なの・・・。一緒に帰りたいの」
「ルナ様?ルナ様のがソレイユ様と言うのですか?」

 唇が笑おとして歪む。

「そうよ。その髪の色も目の色も名前も聞いていたのと同じ。それに私の感覚が半身だと言っているの!間違いないの。会いたかった半身よ」
「ソレイユ様は泡沫人です!」

 私は首を振り否定をした。

「そんなはずないわ」

 そうルナ様が叫んだ時、後ろからアルフ様がルナ様の手を掴んだ。

「やめろ!!」
 
 
 

 

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

平凡令嬢の婚活事情〜あの人だけは、絶対ナイから!〜

本見りん
恋愛
「……だから、ミランダは無理だって!!」  王立学園に通う、ミランダ シュミット伯爵令嬢17歳。  偶然通りかかった学園の裏庭でミランダ本人がここにいるとも知らず噂しているのはこの学園の貴族令息たち。  ……彼らは、決して『高嶺の花ミランダ』として噂している訳ではない。  それは、ミランダが『平凡令嬢』だから。  いつからか『平凡令嬢』と噂されるようになっていたミランダ。『絶賛婚約者募集中』の彼女にはかなり不利な状況。  チラリと向こうを見てみれば、1人の女子生徒に3人の男子学生が。あちらも良くない噂の方々。  ……ミランダは、『あの人達だけはナイ!』と思っていだのだが……。 3万字少しの短編です。『完結保証』『ハッピーエンド』です!

夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました

氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。 ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。 小説家になろう様にも掲載中です

シテくれない私の彼氏

KUMANOMORI(くまのもり)
恋愛
 高校生の村瀬りかは、大学生の彼氏・岸井信(きしい まこと)と何もないことが気になっている。  触れたいし、恋人っぽいことをしてほしいけれど、シテくれないからだ。  りかは年下の高校生・若槻一馬(わかつき かずま)からのアプローチを受けていることを岸井に告げるけれど、反応が薄い。  若槻のアプローチで奪われてしまう前に、岸井と経験したいりかは、作戦を考える。  岸井にはいくつかの秘密があり、彼と経験とするにはいろいろ面倒な手順があるようで……。    岸井を手放すつもりのないりかは、やや強引な手を取るのだけれど……。  岸井がシテくれる日はくるのか?    一皮剝いだらモンスターの二人の、恋愛凸凹バトル。

伯爵は年下の妻に振り回される 記憶喪失の奥様は今日も元気に旦那様の心を抉る

新高
恋愛
※第15回恋愛小説大賞で奨励賞をいただきました!ありがとうございます! ※※2023/10/16書籍化しますーー!!!!!応援してくださったみなさま、ありがとうございます!! 契約結婚三年目の若き伯爵夫人であるフェリシアはある日記憶喪失となってしまう。失った記憶はちょうどこの三年分。記憶は失ったものの、性格は逆に明るく快活ーーぶっちゃけ大雑把になり、軽率に契約結婚相手の伯爵の心を抉りつつ、流石に申し訳ないとお詫びの品を探し出せばそれがとんだ騒ぎとなり、結果的に契約が取れて仲睦まじい夫婦となるまでの、そんな二人のドタバタ劇。 ※本編完結しました。コネタを随時更新していきます。 ※R要素の話には「※」マークを付けています。 ※勢いとテンション高めのコメディーなのでふわっとした感じで読んでいただけたら嬉しいです。 ※他サイト様でも公開しています

【完結】婚約者が好きなのです

maruko
恋愛
リリーベルの婚約者は誰にでも優しいオーラン・ドートル侯爵令息様。 でもそんな優しい婚約者がたった一人に対してだけ何故か冷たい。 冷たくされてるのはアリー・メーキリー侯爵令嬢。 彼の幼馴染だ。 そんなある日。偶然アリー様がこらえきれない涙を流すのを見てしまった。見つめる先には婚約者の姿。 私はどうすればいいのだろうか。 全34話(番外編含む) ※他サイトにも投稿しております ※1話〜4話までは文字数多めです 注)感想欄は全話読んでから閲覧ください(汗)

【完結】私はいてもいなくても同じなのですね ~三人姉妹の中でハズレの私~

紺青
恋愛
マルティナはスコールズ伯爵家の三姉妹の中でハズレの存在だ。才媛で美人な姉と愛嬌があり可愛い妹に挟まれた地味で不器用な次女として、家族の世話やフォローに振り回される生活を送っている。そんな自分を諦めて受け入れているマルティナの前に、マルティナの思い込みや常識を覆す存在が現れて―――家族にめぐまれなかったマルティナが、強引だけど優しいブラッドリーと出会って、少しずつ成長し、別離を経て、再生していく物語。 ※三章まで上げて落とされる鬱展開続きます。 ※因果応報はありますが、痛快爽快なざまぁはありません。 ※なろうにも掲載しています。

どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします

文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。 夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。 エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。 「ゲルハルトさま、愛しています」 ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。 「エレーヌ、俺はあなたが憎い」 エレーヌは凍り付いた。

王妃の仕事なんて知りません、今から逃げます!

gacchi
恋愛
側妃を迎えるって、え?聞いてないよ? 王妃の仕事が大変でも頑張ってたのは、レオルドが好きだから。 国への責任感?そんなの無いよ。もういい。私、逃げるから! 12/16加筆修正したものをカクヨムに投稿しました。

処理中です...