(完結)泡沫の恋を人魚は夢見る

彩華(あやはな)

文字の大きさ
上 下
33 / 57

33.楽しい?お茶会1

しおりを挟む
 ロイド様の提案は、数日後に叶うことになった。

 すごいメンバーだと思う。
 
 丸い机を囲むように、王妃様の両脇にリュート殿下にロイド殿下、その隣にソレイユ様、そしてわたし、セイネ様、ルナ様と並んでいる。

ーなぜわたしが、同じ席に混じっているの!しかもソレイユ様の隣ってどうして!!

 殿下たちの後ろに控えているアルフ様を睨らみつけた。
 
 彼はわたしの視線に気づいたのに、すぐに目を逸らした。

ー逃げるんじゃないわよ!!

 そうい叫んでやりたかった。
 しかし、同じ心境はわたしだけではない。アンナ様、マリー様、メリア様、そして、サリナ様も同じような緊張感を漂わせているのがわかる。
 
ー当然よね・・・

 何が起こるのか未知すぎる。今すぐに逃げ出したいのを我慢するしかできず、形だけでも取り繕う。
 
 そんな空気の中、王妃様がにっこりと開会を宣言した。

「今日は気楽におしゃべりしましょうね」
「こうして集まってお茶会は楽しいですね」

 ロイド殿下が続く。

ーこの状況を作り出した張本人は、わかってないの!?

 この空気が読めていないのか。
 天然なのか、鈍いのか。甚だ疑問に感じてしまう。

「フィー・・・だったかしら?」

 王妃様が声をかけてきた。
 あまりのことにびっくりして立ち上がり頭を下げた。

「は、はい。フィーです。このような場所に、わたしのようなものまでお招きいただきありがとうございますっ」
「構わないわ。人魚のことを調べてる変わり者と聞いて、会ってみたかったのよ。それより、その髪、染めていないのよね」

 好奇の眼差しで見られているのを感じる。

 わたしは下を向いたまま垂れ下がっている自分の横髪を見やった。

 今回のお茶会にあたり、マリー様経由で再びアンナ様にドレスを借りたまでは良かったのだが、流石にメイドキャップで髪を隠すわけにはいかなかったのだ。

 マリー様に申し訳なく頼むと「やりがいがあるわ」っと嬉々として髪を結ってくれた。この場に見合うようにしてくれたのは良かったが慣れないためどうすればよいのかわからない。

「はい、染めていません」
「珍しいわよね。家系的なもの?」

 家系なのだろうか?
 行ったことのある国ではわたしと同じ髪色を持つ人を見たことはなかった。

「どうでしょうか?気がついた時には家族もいませんでしたから」
「あら、やだわ」
「あっ、いえ。気にしたことはないので大丈夫です」

 誰もが哀れそうな視線が飛んできたのがわかったので、こんな時に言うことではなかったと反省する。

「わたしの祖先の女性が、銀色の髪に紫の瞳の女性に会ったことがあるそうですわ」

 ソレイユ様がぽつりと呟く。

「カラナイ国でのことなの?」
「そうだと聞いています。400年前、私と同じ白髪赤い目の女性であるレフィシア様を当時の王太子がカラナイ国に連れて帰って数年後の話だそうです。少しの間レフィシア様と交流した後、旅に戻ったとされています」
「じゃあ、きっとフィーのご先祖ね」

 王妃様は無邪気に言ってくる。

「この近くの国では見ないわよね。アルフならわかるかしら?」

 アルフ様に話を振る。
 
「フィー、そのままでは首も疲れるだろう。もう普通にして座ればいい。・・・王妃」

 王妃の質問に答えるより先にわたしに指示した。

 肩を震わせながら、席に着く。

「王妃。私も全ての国を回ったわけではないので、よくはわかりませんよ。ですが、今までの人生の中では二人だけ見たことはありますね」 

 少し怖い感じがした。

「相変わらず秘密主義よね」

 王妃様はクスクスと声を立てて笑った。




しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

勘違い令嬢の心の声

にのまえ
恋愛
僕の婚約者 シンシアの心の声が聞こえた。 シア、それは君の勘違いだ。

届かぬ温もり

HARUKA
恋愛
夫には忘れられない人がいた。それを知りながら、私は彼のそばにいたかった。愛することで自分を捨て、夫の隣にいることを選んだ私。だけど、その恋に答えはなかった。すべてを失いかけた私が選んだのは、彼から離れ、自分自身の人生を取り戻す道だった····· ◆◇◆◇◆◇◆ 読んでくださり感謝いたします。 すべてフィクションです。不快に思われた方は読むのを止めて下さい。 ゆっくり更新していきます。 誤字脱字も見つけ次第直していきます。 よろしくお願いします。

五歳の時から、側にいた

田尾風香
恋愛
五歳。グレースは初めて国王の長男のグリフィンと出会った。 それからというもの、お互いにいがみ合いながらもグレースはグリフィンの側にいた。十六歳に婚約し、十九歳で結婚した。 グリフィンは、初めてグレースと会ってからずっとその姿を追い続けた。十九歳で結婚し、三十二歳で亡くして初めて、グリフィンはグレースへの想いに気付く。 前編グレース視点、後編グリフィン視点です。全二話。後編は来週木曜31日に投稿します。

忘れられた薔薇が咲くとき

ゆる
恋愛
貴族として華やかな未来を約束されていた伯爵令嬢アルタリア。しかし、突然の婚約破棄と追放により、その人生は一変する。全てを失い、辺境の町で庶民として生きることを余儀なくされた彼女は、過去の屈辱と向き合いながらも、懸命に新たな生活を築いていく。 だが、平穏は長く続かない。かつて彼女を追放した第二王子や聖女が町を訪れ、過去の因縁が再び彼女を取り巻く。利用されるだけの存在から、自らの意志で運命を切り開こうとするアルタリア。彼女が選ぶ未来とは――。 これは、追放された元伯爵令嬢が自由と幸せを掴むまでの物語。

結婚30年、契約満了したので離婚しませんか?

おもちのかたまり
恋愛
恋愛・小説 11位になりました! 皆様ありがとうございます。 「私、旦那様とお付き合いも甘いやり取りもしたことが無いから…ごめんなさい、ちょっと他人事なのかも。もちろん、貴方達の事は心から愛しているし、命より大事よ。」 眉根を下げて笑う母様に、一発じゃあ足りないなこれは。と確信した。幸い僕も姉さん達も祝福持ちだ。父様のような力極振りではないけれど、三対一なら勝ち目はある。 「じゃあ母様は、父様が嫌で離婚するわけではないんですか?」 ケーキを幸せそうに頬張っている母様は、僕の言葉にきょとん。と目を見開いて。…もしかすると、母様にとって父様は、関心を向ける程の相手ではないのかもしれない。嫌な予感に、今日一番の寒気がする。 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇ 20年前に攻略対象だった父親と、悪役令嬢の取り巻きだった母親の現在のお話。 ハッピーエンド・バットエンド・メリーバットエンド・女性軽視・女性蔑視 上記に当てはまりますので、苦手な方、ご不快に感じる方はお気を付けください。

【完結】6人目の娘として生まれました。目立たない伯爵令嬢なのに、なぜかイケメン公爵が離れない

朝日みらい
恋愛
エリーナは、伯爵家の6人目の娘として生まれましたが、幸せではありませんでした。彼女は両親からも兄姉からも無視されていました。それに才能も兄姉と比べると特に特別なところがなかったのです。そんな孤独な彼女の前に現れたのが、公爵家のヴィクトールでした。彼女のそばに支えて励ましてくれるのです。エリーナはヴィクトールに何かとほめられながら、自分の力を信じて幸せをつかむ物語です。

私は既にフラれましたので。

椎茸
恋愛
子爵令嬢ルフェルニア・シラーは、国一番の美貌を持つ幼馴染の公爵令息ユリウス・ミネルウァへの想いを断ち切るため、告白をする。ルフェルニアは、予想どおりフラれると、元来の深く悩まない性格ゆえか、気持ちを切り替えて、仕事と婚活に邁進しようとする。一方、仕事一筋で自身の感情にも恋愛事情にも疎かったユリウスは、ずっと一緒に居てくれたルフェルニアに距離を置かれたことで、感情の蓋が外れてルフェルニアの言動に一喜一憂するように…? ※小説家になろう様、カクヨム様にも掲載しております。

【完結】失いかけた君にもう一度

暮田呉子
恋愛
偶然、振り払った手が婚約者の頬に当たってしまった。 叩くつもりはなかった。 しかし、謝ろうとした矢先、彼女は全てを捨てていなくなってしまった──。

処理中です...