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23.真珠3 (アルフ視点)
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あれよあれよと老人・・・村長宅へと案内された。
村長の家も小さくボロボロだった。板と板には大きな裂け目もあり海からの風が入ってくる。夏は良いが冬は寒いだろう。
初めて打って変わっての様子に呆れるところもあったが、村長は白湯を出してくれた。
「ここは人魚様が加護をくれた村になります」
帽子を脱ぎ私の横に座るフィーを見ながら村長は話してくれる。
800年前にこの村の少女が網に絡まって人魚を助けたのがことの始まりだった。
その人魚こそ、銀色の髪と紫の瞳を持っていた。人魚の名前はフィレイネ様。
彼女は恩返しのため少女の村に真珠をあげようと約束してくれた。
それ以来、この村では真珠がたくさん獲れるようになったといった。
「では、なぜこんなに貧しいんだ?」
真珠はなかなか獲れないとされ美しい装飾品は高額で取引されている。現に王宮の宝とされている真珠のネックレスを見たことがあるが、その価格に驚いたことがある。
なのにこんなに貧しいのはおかしい。
「人魚様が、人間はよく深い者だから内密にと申されましたと聞いています。今もその掟に従っております」
・・・・・・人魚。
「それに、表に出すからには完璧なものを作りたいのです」
真面目か!!と言いたくなって頭を抱えた。
職人気質なのはわかったが、このままでは勿体無い。国としてもこれはありえない。
「勿体無い。少しは楽な生活したらいいのに」
フィーが無邪気に言ってきた。
「その人魚は人間のこと知らなすぎたのね。もっとあなたたちの作るものを世の中に出すべきだわ」
フィーに賛同する。
「そうだな。勿体無い。私に協力させてはもらえないか?」
「いやいや、街には我らの商店もあります。国王様にも贔屓にしていただいていますので、これ以上は・・・」
やはり、王宮にあるのはあれらの作り上げたものだろう。
無欲な一団なのか、全員が手と首を振った。
「そうは言わないでほしい。今まで、この村を知ろうとしなかった償いとしてさせてほしいのだ」
「この村は立地が不便で村から出ていく若者は数多いです。正直これ以上は無理なんです。我らはゆっくりとした生活で満足してます。いずれ途絶えたとしても仕方ないと思っております」
彼らは今の現状を受けているのだろう。
ゆったりでいて芯のある言葉に躊躇した。そこまで言われると何も言えなくなる。
しかし、フィーは違った。
「人魚の加護がなくなるのは勿体無いわ。ここの空気はとても良いのよ。その人魚は本当に感謝したからこそ加護がまだつづいている証だわ。ここで作った装飾品は人魚にも返してるのよね?」
「そうですが、よくおわかりで・・・」
「だって、持ってるもの」
「フィー?」
ー持っているとは、誰が?
フィーは自分の発言に気づいていないのか話を続ける。
「みんな、ここの装飾品が送られてくるのを楽しみにしてるの。それは繊細で綺麗だから。一つ一つに心がこもっているから大事にしてるの。そんな技術がなくなるなんて嫌。村がなくなるなんてダメ。だから、だからお願いこの村を護らせて」
「彼女のいう通りだ。無くすのは容易い。でも何もないところから復活させるのは難しい。今ならなんとかなる。私は王からも信頼されている。だからこそ協力させてほしい」
私の思いは届いただろうか。
村長は泣いた。
他の村人たちも覚悟を決めたようだ。
「人魚様の思い確かに受け取りました。よろしくお願いします」
「なので、真珠を百粒ほど買わせてください。支払いはこの方がしてくれます。あとハンドクリーム作って下ろしてください」
「フィー!おまえは!!」
すべてを台無しにするようなことをさらりと言ってきた。
こちらは、これから必要になる手続きや経費、人員などを概算しているというのに。
「クリーム作りに必要なレシピも材料もこの方がなんとかしてくれますから!!大丈夫です」
ーすべて押し付ける気か!!
文句を言おうと睨みつけるだがフィーは素知らぬ顔で立ち上がった。
「アルフ様はまだ話があるんでしょう。外でいま~す」
さっさと部屋を出ていく。
確かに村長とは少し話を詰めなくてはならない。
フィーがいなくなってから、村長に謝った。
「騒がしくて、すまない」
「いや、よい。彼女が人魚でなかろうが彼女のおかげだ」
「そう言ってくれるならありがたい」
そうやって村長とこの後の話をした。
終わって外に出ると、フィーは村の子供と遊んでいた。
裸足で岩場の上に立っている。
「アルフ様~」
彼女は笑いながら手を振ってきた。
「フィー!!この貝みて」
「こんなことできるの!見て見て」
子供たちがフィーとじゃれあっている。
「面白いわね」
子供たちに言うフィーのその言葉に彼女がだぶった。
無性に涙が出てきた。
「アルフ様?」
そんな様子に気づいたのフィーが近寄ってきた。
「なんでもない。子供みたいだな」
フィーは真っ赤な顔で否定してくる。
「アルフ様のだって泣いてたくせに。それともわたしが綺麗で感動したんですか?」
「そうかもしれないな」
「はぁ~!やっぱりたらしじゃないですか!!」
再び真っ赤になって子供たちのもとに帰って行った。
村長の家も小さくボロボロだった。板と板には大きな裂け目もあり海からの風が入ってくる。夏は良いが冬は寒いだろう。
初めて打って変わっての様子に呆れるところもあったが、村長は白湯を出してくれた。
「ここは人魚様が加護をくれた村になります」
帽子を脱ぎ私の横に座るフィーを見ながら村長は話してくれる。
800年前にこの村の少女が網に絡まって人魚を助けたのがことの始まりだった。
その人魚こそ、銀色の髪と紫の瞳を持っていた。人魚の名前はフィレイネ様。
彼女は恩返しのため少女の村に真珠をあげようと約束してくれた。
それ以来、この村では真珠がたくさん獲れるようになったといった。
「では、なぜこんなに貧しいんだ?」
真珠はなかなか獲れないとされ美しい装飾品は高額で取引されている。現に王宮の宝とされている真珠のネックレスを見たことがあるが、その価格に驚いたことがある。
なのにこんなに貧しいのはおかしい。
「人魚様が、人間はよく深い者だから内密にと申されましたと聞いています。今もその掟に従っております」
・・・・・・人魚。
「それに、表に出すからには完璧なものを作りたいのです」
真面目か!!と言いたくなって頭を抱えた。
職人気質なのはわかったが、このままでは勿体無い。国としてもこれはありえない。
「勿体無い。少しは楽な生活したらいいのに」
フィーが無邪気に言ってきた。
「その人魚は人間のこと知らなすぎたのね。もっとあなたたちの作るものを世の中に出すべきだわ」
フィーに賛同する。
「そうだな。勿体無い。私に協力させてはもらえないか?」
「いやいや、街には我らの商店もあります。国王様にも贔屓にしていただいていますので、これ以上は・・・」
やはり、王宮にあるのはあれらの作り上げたものだろう。
無欲な一団なのか、全員が手と首を振った。
「そうは言わないでほしい。今まで、この村を知ろうとしなかった償いとしてさせてほしいのだ」
「この村は立地が不便で村から出ていく若者は数多いです。正直これ以上は無理なんです。我らはゆっくりとした生活で満足してます。いずれ途絶えたとしても仕方ないと思っております」
彼らは今の現状を受けているのだろう。
ゆったりでいて芯のある言葉に躊躇した。そこまで言われると何も言えなくなる。
しかし、フィーは違った。
「人魚の加護がなくなるのは勿体無いわ。ここの空気はとても良いのよ。その人魚は本当に感謝したからこそ加護がまだつづいている証だわ。ここで作った装飾品は人魚にも返してるのよね?」
「そうですが、よくおわかりで・・・」
「だって、持ってるもの」
「フィー?」
ー持っているとは、誰が?
フィーは自分の発言に気づいていないのか話を続ける。
「みんな、ここの装飾品が送られてくるのを楽しみにしてるの。それは繊細で綺麗だから。一つ一つに心がこもっているから大事にしてるの。そんな技術がなくなるなんて嫌。村がなくなるなんてダメ。だから、だからお願いこの村を護らせて」
「彼女のいう通りだ。無くすのは容易い。でも何もないところから復活させるのは難しい。今ならなんとかなる。私は王からも信頼されている。だからこそ協力させてほしい」
私の思いは届いただろうか。
村長は泣いた。
他の村人たちも覚悟を決めたようだ。
「人魚様の思い確かに受け取りました。よろしくお願いします」
「なので、真珠を百粒ほど買わせてください。支払いはこの方がしてくれます。あとハンドクリーム作って下ろしてください」
「フィー!おまえは!!」
すべてを台無しにするようなことをさらりと言ってきた。
こちらは、これから必要になる手続きや経費、人員などを概算しているというのに。
「クリーム作りに必要なレシピも材料もこの方がなんとかしてくれますから!!大丈夫です」
ーすべて押し付ける気か!!
文句を言おうと睨みつけるだがフィーは素知らぬ顔で立ち上がった。
「アルフ様はまだ話があるんでしょう。外でいま~す」
さっさと部屋を出ていく。
確かに村長とは少し話を詰めなくてはならない。
フィーがいなくなってから、村長に謝った。
「騒がしくて、すまない」
「いや、よい。彼女が人魚でなかろうが彼女のおかげだ」
「そう言ってくれるならありがたい」
そうやって村長とこの後の話をした。
終わって外に出ると、フィーは村の子供と遊んでいた。
裸足で岩場の上に立っている。
「アルフ様~」
彼女は笑いながら手を振ってきた。
「フィー!!この貝みて」
「こんなことできるの!見て見て」
子供たちがフィーとじゃれあっている。
「面白いわね」
子供たちに言うフィーのその言葉に彼女がだぶった。
無性に涙が出てきた。
「アルフ様?」
そんな様子に気づいたのフィーが近寄ってきた。
「なんでもない。子供みたいだな」
フィーは真っ赤な顔で否定してくる。
「アルフ様のだって泣いてたくせに。それともわたしが綺麗で感動したんですか?」
「そうかもしれないな」
「はぁ~!やっぱりたらしじゃないですか!!」
再び真っ赤になって子供たちのもとに帰って行った。
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