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22.真珠2 (アルフ視点)
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「フィー」
思いの外、低い声が出ていた。
「あれ?知りません、でした?」
フィーは乾いた笑みを浮かべている。
アンナはいつの間にか後ろを向き耳を押さえていた。聞いていないフリをしているのだろう。
「詳しく教えてもらおうか」
ゆっくりフィーに近づくと、肩をがっちり捕まえて無理やりソファーに座らせた。
「あれぇ~。気のせいだったかも・・・」
「逃がさないよ。きちんと話してくれないと、それこそどんな目にあうかわからないよ?」
「アンナ様!!助けてください!襲われます!」
フィーはアンナに助けを求めたが、優秀な侍女頭は後ろ向を向いたまま言葉を発する。
「私は何も聞いていません。何も見ていません。何も知りません。ですからフィー、あなたもサッサっと用事を済ませなさい!」
「そんなぁ・・・」
涙目のフィーを笑いながら私は見た。
彼女は泣きながら、知っていることを快~く教えてくれた。
次の日、私はフィーと共に例の村に行くことにした。
内密にというのもあり、二人だけででかけることにした。
フィーはメイド服ではなく、よそ行きのワンピースにツバのある帽子をかぶっていた。飾り気のない服しかないというのでアンナが貸してくれたのだ。
乗馬経験もないというので、私の前にフィーを座らせる。
「あのっ!怖いです」
横乗りをしているため、ぎゅっと胸元を掴んでくるのが可愛く思える。
色々思うことはあるが、今は目先のことを考え馬を走らせた。
「は、速い!風!風が顔に!なんで風が痛いの??」
フィーは叫んだ。
本当に馬に乗ること自体が初めてなのか、興奮している。
「落とさないから目を開けて見てみろ!」
「うあぁっ!景色が流れて・・・すごい!すごいわ!!」
悲鳴から歓喜に変わった。相変わらず私の服を握りしめてはいるので、多少は怖いのだは思う。でも彼女の声は楽しそうだった。
しかし村の入り口についたころには、フィーは真っ青な顔になっていた。
「気分が悪い・・・」
「すまない。飛ばしすぎた」
馬酔いをさせたようだった。口元を抑えうずくまる彼女の背中をなぜながら治るのを待つ。
しばらくして落ち着いたのかフィーは顔をあげた。
「大丈夫か?」
「はい、もう大丈夫です。行きましょう」
顔色が良くなったのを確認して、村へ行く小道に入って行く。
城から見える岬の向こうに入江があるの知っていたが、そこに村があることは知らなかった。村へ行く小道まで馬でかけても1時間ほどかかり、尚且つ村までは歩いて行かないと行けない。
こんな場所を知らなかったのも当たり前かもしれない。
長年住んでいて知らなかったことに罪悪感さえ感じた。
「着きましたね」
目の前に広がったのは本当に小さな村だった。
ボロボロの小屋とも言える家が数十軒立ち並んでいるだけの静かな所に驚く。
本当に人が住んでいるのかも怪しく写る。
見知らぬ人を警戒してか、小屋から視線だけを感じた。
「どなたかな?」
目の前に一人の老人が進み出た。後ろには日に焼けた屈強な男たちが鍬や斧を持って待ち構えている。
私はフィーを庇うように前に出ると、老人に話しかけた。
「私の名前はアルフ。この村の名産品のことで交渉に来た」
老人の眼差しが揺らぎ、後ろの男たちも警戒心を強める。
どう言葉を続けようか考えていると、横からひょこりとフィーが顔を出して言った。
「真珠をくれませんか?」
「フィー!」
慌てた。
まだ警戒をしていて交渉する状態でもないのに確信をつくとはありえない。
だが、老人たちは一層警戒を強める。
「あの~?きゃっ!帽子!!」
強い海風が吹いてきてフィーのかぶっていた帽子のツバを押し上げたため可愛い素顔が現れ、銀色の髪が風に弄ばれてた。
慌てるフィーをよそに、それを見た村人すべてがひれ伏す。
「人魚様だ・・・」
「えっ?」
「銀の髪、紫の瞳。間違いなく人魚様です」
拝み出している者さえいるこの光景に、何が起こっているのか理解できなかった。
「わたし、人間ですけど?」
帽子を抑えながらおずおずと言うフィー自身、理解できていないようだった。
思いの外、低い声が出ていた。
「あれ?知りません、でした?」
フィーは乾いた笑みを浮かべている。
アンナはいつの間にか後ろを向き耳を押さえていた。聞いていないフリをしているのだろう。
「詳しく教えてもらおうか」
ゆっくりフィーに近づくと、肩をがっちり捕まえて無理やりソファーに座らせた。
「あれぇ~。気のせいだったかも・・・」
「逃がさないよ。きちんと話してくれないと、それこそどんな目にあうかわからないよ?」
「アンナ様!!助けてください!襲われます!」
フィーはアンナに助けを求めたが、優秀な侍女頭は後ろ向を向いたまま言葉を発する。
「私は何も聞いていません。何も見ていません。何も知りません。ですからフィー、あなたもサッサっと用事を済ませなさい!」
「そんなぁ・・・」
涙目のフィーを笑いながら私は見た。
彼女は泣きながら、知っていることを快~く教えてくれた。
次の日、私はフィーと共に例の村に行くことにした。
内密にというのもあり、二人だけででかけることにした。
フィーはメイド服ではなく、よそ行きのワンピースにツバのある帽子をかぶっていた。飾り気のない服しかないというのでアンナが貸してくれたのだ。
乗馬経験もないというので、私の前にフィーを座らせる。
「あのっ!怖いです」
横乗りをしているため、ぎゅっと胸元を掴んでくるのが可愛く思える。
色々思うことはあるが、今は目先のことを考え馬を走らせた。
「は、速い!風!風が顔に!なんで風が痛いの??」
フィーは叫んだ。
本当に馬に乗ること自体が初めてなのか、興奮している。
「落とさないから目を開けて見てみろ!」
「うあぁっ!景色が流れて・・・すごい!すごいわ!!」
悲鳴から歓喜に変わった。相変わらず私の服を握りしめてはいるので、多少は怖いのだは思う。でも彼女の声は楽しそうだった。
しかし村の入り口についたころには、フィーは真っ青な顔になっていた。
「気分が悪い・・・」
「すまない。飛ばしすぎた」
馬酔いをさせたようだった。口元を抑えうずくまる彼女の背中をなぜながら治るのを待つ。
しばらくして落ち着いたのかフィーは顔をあげた。
「大丈夫か?」
「はい、もう大丈夫です。行きましょう」
顔色が良くなったのを確認して、村へ行く小道に入って行く。
城から見える岬の向こうに入江があるの知っていたが、そこに村があることは知らなかった。村へ行く小道まで馬でかけても1時間ほどかかり、尚且つ村までは歩いて行かないと行けない。
こんな場所を知らなかったのも当たり前かもしれない。
長年住んでいて知らなかったことに罪悪感さえ感じた。
「着きましたね」
目の前に広がったのは本当に小さな村だった。
ボロボロの小屋とも言える家が数十軒立ち並んでいるだけの静かな所に驚く。
本当に人が住んでいるのかも怪しく写る。
見知らぬ人を警戒してか、小屋から視線だけを感じた。
「どなたかな?」
目の前に一人の老人が進み出た。後ろには日に焼けた屈強な男たちが鍬や斧を持って待ち構えている。
私はフィーを庇うように前に出ると、老人に話しかけた。
「私の名前はアルフ。この村の名産品のことで交渉に来た」
老人の眼差しが揺らぎ、後ろの男たちも警戒心を強める。
どう言葉を続けようか考えていると、横からひょこりとフィーが顔を出して言った。
「真珠をくれませんか?」
「フィー!」
慌てた。
まだ警戒をしていて交渉する状態でもないのに確信をつくとはありえない。
だが、老人たちは一層警戒を強める。
「あの~?きゃっ!帽子!!」
強い海風が吹いてきてフィーのかぶっていた帽子のツバを押し上げたため可愛い素顔が現れ、銀色の髪が風に弄ばれてた。
慌てるフィーをよそに、それを見た村人すべてがひれ伏す。
「人魚様だ・・・」
「えっ?」
「銀の髪、紫の瞳。間違いなく人魚様です」
拝み出している者さえいるこの光景に、何が起こっているのか理解できなかった。
「わたし、人間ですけど?」
帽子を抑えながらおずおずと言うフィー自身、理解できていないようだった。
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