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20.パーティー3

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 まだドキドキしている自分に喝を入れるように自分の頬をたたく。
 急いでセイネ様の元に戻るためいつものメイド服に着替える。
 セイネ様の部屋の前に着くと、自分を落ち着かせるため深呼吸してから部屋に入った。
 
「落ち着かれましたか?」

 身体が温まったことで気分の切り替えができたのか、セイネ様の表情はどこかスッキリして見えた。
 わたしはマリー様にお礼を言ってお世話を変わる。

 マリー様は侍女の鏡ともいえるほど、とても良い方でセイネ様に対して深入りしないでくれる。
 彼女は「何かあれば呼んで」と言って部屋から出ていった。

 私は扉まで見送ったあと、ドアノブに人差し指で古代語を書いた。最後に円を書いて鍵をかける仕草をする。

 それが終わるとセイネ様の元に行くと彼女の首元に手を当てた。

「少しだけ痛いくなります」

 前置きだけして喉仏あたりに指を滑らした。チリリと静電気が走る。
 セイネ様も感じのか僅かに眉を寄せた。

「一時ですが、喋ると言葉として聞こえるようにしましたからどうぞお喋りください。扉にはここでの話を聞こえないようにする呪いまじなをかけています」

 セイネ様は喉に手を当て恐る恐る声が聞こえるのを確認すると、私をまっすぐ見てきた。

「あなたは何者なの?」

 聞こえる声は本来の言葉ではないが、凛としたものだった。
 ただ、わたしには彼女の言っている意味がわからず首を傾げる。

「私は私ですが?」

 セイネ様は首を振った。

「このようなこと泡沫人ができるわけないわ。扉にかけた呪いも私にしたこのことも普通ならありえないことよ」

ーそんなに大層なことなのだろうか・・・。確かに見られたら騒がれるけど、今は必要だし・・・

 人魚には嘘かどうか見抜く力があるともいわれているので、私はセイネ様には正直に話した方が良いと思い口を開く。
 
「古代語の時にも言いましたが、本当に覚えていないんです。幼い頃というか、昔の記憶でさえあやふやな所が多いんですよね。気づいたら読めていたし、自然とやっていた感じなので、いつから行っていたかもわからないんです。
 何者かと聞かれても、人間だとしか言いようがないですね」
「『人間』?」
「はい。この世界・・・地上では『泡沫人』を『人間』と呼びます」

 セイネ様は言葉を反芻していた。

「この話は横に置いて、今はセイネ様のお話を聞いてもよろしいですか?」

 今はこの話はどうでも良いとして話を戻した。
 セイネ様も我に返ったのか、私を改めて見てくる。
 姿勢を正しすっと表情を引き締めた。

「私は次の人魚族の女王候補にあたるセイネシアと言います」

 ゆっくりとした口調は女王候補というだけあってか惹きつけるものがあった。

 一通り話し終えたセイネ様は窓の外に視線をやった。

「では、あの黒髪の方は・・・」
「魔女であるルナ様で間違いと思います。なぜあの方がここへきたかわからない。なぜ私の話を使うのかも・・・」

 すっと涙が頬を伝う。

「セイネ様・・・」

 沈んだ顔のセイネ様を抱きしめた。
 服を掴みくぐもった声が聞こえる。

「私はただ歌を歌っていた方が誰か知りたかた。あの声に恋したの。フィー・・・胸が苦しい」
「セイネ様・・・。人間になったことを後悔していますか?」
「・・・わからない。
 初めてロイド様を見て泡沫・・・人間が美しいと思った。ロイド様に惹かれたわ。もう会いたくて人間になったの。
 でもリュート様の声かもしれないと思う自分もいる。これほど人間の声がよく似てるなんて思わなかった。耳には自信があったのに!
 が現れてルナ様が来て、私はなんのために人間になったのかわからなくなってしまった。この感情はなんなの?
 どう処理すればいいの?行き場のない想いを歌で表すことも発散するできないなんて。歌えないことが、こんなに辛いことだと思わなかった!」

 胸を焦がすような恋を普通の人魚はしない。
 海の王を父とし、特別に選ばれた女王が持つ小さな核をもとにして大きなシャコ貝から人魚は生まれる。だから人魚は女性しかいないのだ。
 そして一生のうち一度は海の上を見ると言っても、ほとんどの人魚は人間に関わることなく海の中で生きることになる。
 だからこそ、こうやって人間に関わるなんてない。
 そんな人魚が恋をして感じたこともない感情に左右されるのだから、戸惑ってもしかたないのだろう。

 震わせ泣いているセイネ様の頭をなぜた。

 私にできることはないかと考える。
 一つだけ思い当たる。

「セイネ様。もし言葉がでるなら、その方に自分の気持ちをつたえますか?言葉が出るようにできるかもしれません」

 セイネ様はばっと顔をあげ私を驚いたように見てきた。
 
 
 
 

 
 
 



 
 
 
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