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16.セイネ3
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幾度も海の上に行った。
隠れて行くため、海の上はいつも夜だった。行くごとに月の形が変わってゆくのを見るのが楽しかった。
彼に届くように歌を歌う。
その度に彼は来てくれた。
たくさんの歌を歌った。
彼は歌うこともあれば聞くだけの時もあった。
彼を知りたい気持ちが大きくなっていく。
でも、人魚の掟を考えると直接会うことができなかった。
もどかしい日々を過ごした。
そんなある日、海面に顔を出すと、大きな『船』があった。それを見るのは二度目だった。
初めて海面上がった日、遠くで何かが浮かんでいた。
王宮に帰った時、アルセイラが興奮しながら言っていたのはこれだったのかと、納得した。
もしかすれば、彼がいるかもしれない。
その思いと、なぜこんな時に海に出ているの?と言う思いでいっぱいになる。
海の上に来てわかった。肌にひしひしと感じる嵐の予感がしたからだ。
私は歌った。
ー気づいて!早く陸に戻って!!
歌っていると三人の男性の声が聞こえてきた。そのうちの一人は私がよく知っている声だった。嬉しくなる。
だが、それは虚しく『雲』がたちこめ風が吹き、海が荒れ出したせいで、きちんと会話が聞き取ることができなかった。
高波が押し寄せてくる。
慌てて海の中に潜りこみ流されないように海流に逆らって力強く泳いだ。
ーどうか無事でいて・・・
見守るしかできないもどかしさ。
じっと様子を伺っていると、泡沫人が落ちてきた。
キラキラと『服』の何か光っている。
もしかすると彼かもしれないと、私は急いで泳いで引っ張り上げることにした。
ー早く、早く上に・・・
海の中では泡沫人が死んでしまう!そんな気持ちでいっぱいだった。
浜辺につき、彼を横たえた。
水は飲んではいないようでほっとする。
それを確認するとやっと落ち着いて彼を見た。
ー綺麗な泡沫人・・・
整った顔立ちに金の髪。目の色は何色なのだろうか・・・と想像してドキドキした。太陽が出てきて金の髪がますます輝いてくるので、目を奪われた。
ーこの方だったらいいのに・・・
私の想い人がこの人なら、私を一目見てくれたらな・・・どんな幸せか・・・。
じっと見ていた。
その時、岩陰から微かな音がした。
驚いて見てみると、銀の髪の女性と目が合った。
ー嘘?見られた?いつから?どうしたら・・・
頭が一瞬パニックに陥る。
彼女は私を見ても驚かず視線を岩場の向こうにやった。
ー誰かきている?
これ以上見られてはいけないと海に飛び込む。離れた所からそっと見れば、白髪をした女性が彼に近づいているのがわかった。
ー悔しい。あのまま私が・・・。
苦しい想いを胸に抱いたまま、仕方なく私は王宮に戻ることにした。
ー泡沫人に見られたからにはもういけない。でも、もう一度でいいから彼に会いたい
王宮に戻ってもそんなことばかり考えていた。
「セイネイラ、どうしました?」
女王様から言われた。
「女王教育に身が入っていませんよ」
そう言われても、どうしようもなかった。
この想いが辛くてたまらない。
どうすることもできなくて、私はとうとう女王様に打ち明けた。
隠れて行くため、海の上はいつも夜だった。行くごとに月の形が変わってゆくのを見るのが楽しかった。
彼に届くように歌を歌う。
その度に彼は来てくれた。
たくさんの歌を歌った。
彼は歌うこともあれば聞くだけの時もあった。
彼を知りたい気持ちが大きくなっていく。
でも、人魚の掟を考えると直接会うことができなかった。
もどかしい日々を過ごした。
そんなある日、海面に顔を出すと、大きな『船』があった。それを見るのは二度目だった。
初めて海面上がった日、遠くで何かが浮かんでいた。
王宮に帰った時、アルセイラが興奮しながら言っていたのはこれだったのかと、納得した。
もしかすれば、彼がいるかもしれない。
その思いと、なぜこんな時に海に出ているの?と言う思いでいっぱいになる。
海の上に来てわかった。肌にひしひしと感じる嵐の予感がしたからだ。
私は歌った。
ー気づいて!早く陸に戻って!!
歌っていると三人の男性の声が聞こえてきた。そのうちの一人は私がよく知っている声だった。嬉しくなる。
だが、それは虚しく『雲』がたちこめ風が吹き、海が荒れ出したせいで、きちんと会話が聞き取ることができなかった。
高波が押し寄せてくる。
慌てて海の中に潜りこみ流されないように海流に逆らって力強く泳いだ。
ーどうか無事でいて・・・
見守るしかできないもどかしさ。
じっと様子を伺っていると、泡沫人が落ちてきた。
キラキラと『服』の何か光っている。
もしかすると彼かもしれないと、私は急いで泳いで引っ張り上げることにした。
ー早く、早く上に・・・
海の中では泡沫人が死んでしまう!そんな気持ちでいっぱいだった。
浜辺につき、彼を横たえた。
水は飲んではいないようでほっとする。
それを確認するとやっと落ち着いて彼を見た。
ー綺麗な泡沫人・・・
整った顔立ちに金の髪。目の色は何色なのだろうか・・・と想像してドキドキした。太陽が出てきて金の髪がますます輝いてくるので、目を奪われた。
ーこの方だったらいいのに・・・
私の想い人がこの人なら、私を一目見てくれたらな・・・どんな幸せか・・・。
じっと見ていた。
その時、岩陰から微かな音がした。
驚いて見てみると、銀の髪の女性と目が合った。
ー嘘?見られた?いつから?どうしたら・・・
頭が一瞬パニックに陥る。
彼女は私を見ても驚かず視線を岩場の向こうにやった。
ー誰かきている?
これ以上見られてはいけないと海に飛び込む。離れた所からそっと見れば、白髪をした女性が彼に近づいているのがわかった。
ー悔しい。あのまま私が・・・。
苦しい想いを胸に抱いたまま、仕方なく私は王宮に戻ることにした。
ー泡沫人に見られたからにはもういけない。でも、もう一度でいいから彼に会いたい
王宮に戻ってもそんなことばかり考えていた。
「セイネイラ、どうしました?」
女王様から言われた。
「女王教育に身が入っていませんよ」
そう言われても、どうしようもなかった。
この想いが辛くてたまらない。
どうすることもできなくて、私はとうとう女王様に打ち明けた。
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