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13.歌
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「最近、人魚は歌いませんね」
寄せて返す波の音を聞いていて、ふっと私は気になっていたことを漏らした。
前まで人魚の歌声が聞こえていたのに、聞こえなくなっている。
コトリと音がする方を見ると、セイネ様がコップを置き眉を寄せ私を見ていた。
この感じからすると、もしかするとあの歌を歌っていたのはこの方なのだろうか・・・?
きっとセイネ様は歌を歌うのが好きなのかもしれない。
「そうだ!ダンスのレッスンの気晴らしに浜辺に散歩に行けるか聞いてきましょうか?」
彼女は嬉しそうに頷いた。
私は、許可をもらいセイネ様と浜辺へと散歩に出かけた。
セイネ様が来てから二ヶ月。若葉も増え黄緑色の葉がさわさわと揺れている。お散歩日和だった。
二人っきっりならリラックスして気晴らしになると思っていたのだが、そうはならなかった。
「で、なぜ皆様での散歩ですか?」
リュート殿下とロイド殿下に挟まれたセイネ様を見ながら、私は隣にいるアルフ様を睨みつけた。
「気分転換だよ」
「せめてお供をつけてください」
供さえつけずに歩く殿下たちを見て危機感はないのか!?と叫びたくなる。
「私がいるので大丈夫だ」
そう言って、アルフ様は腰元にある自分の剣に触った。
「自信がおありなんですね」
「それなりには、ね」
ニヤリと笑う。
そうか。それら、もう言うまい。私が口出しすることではない。
気持ちを切り替えて楽しそうなお三方を私は見ていた。
本当にセイネ様の表情は明るくなった。
金色の髪が太陽に照らされキラキラと輝いている。
いつまでも続けばどんなにいいものか?
でも、人魚の伝説はそうでない。悲しき終わりがあった。いずれ同じようになってしまうのだろうか?
「君はなぜ人魚にこだわっているんだ?」
静かな眼差しでアルフ様は私を見ていた。
この方の眼差しに、嘘偽りを言うのを躊躇いを感じ正直に言葉をのせる。
「・・・わかりません。気づいた時には人魚に興味がありました。どうしても調べないといけない、そんな気持ちになるんです」
「そうか・・・」
そう、私は人魚を知りたい。
知らなくてはならないと思うのだ。
そう、その気持ちだけだった。他に深い意味なんてない。
セイネ様たちは海に足を踏み入れ、水をかけ合っている。セイネ様は声がなくてもまるで笑い声が聞こえてくるように感じた。
ーあぁ、こんな雰囲気好きだな・・・。
「何の歌だ?」
アルフ様に言われ、初めは何のことか分からなかった。
「気づいてなかったのか?歌を歌っていたぞ」
歌を・・・。私が?
歌っていた自覚はなかった。
だが、気づけば殿下たちやセイネ様も、こちらを見ている。
聞き苦しいものだったのだろうか、とりあえず謝っておこう。
「それは、失礼しました」
「いや、別にかまわないのだが聞いたことのない歌だったから、つい・・・」
「何の歌でしょうか?無意識だったので、わかりかねます」
「そうか・・・」
アルフ様は難しい顔をされていた。どうしたのか?
「歌を歌うのは好きか?」
「どうでしょう。意識して歌ったことないので、そうではないと思いますが・・・」
「ふ~ん・・・」
この方はなんなんだ。
セイネ様がちらちらとこちらを見ている。
声の出せないセイネ様には悪いことをしたかもしれない。
私は猛烈に反省した。
寄せて返す波の音を聞いていて、ふっと私は気になっていたことを漏らした。
前まで人魚の歌声が聞こえていたのに、聞こえなくなっている。
コトリと音がする方を見ると、セイネ様がコップを置き眉を寄せ私を見ていた。
この感じからすると、もしかするとあの歌を歌っていたのはこの方なのだろうか・・・?
きっとセイネ様は歌を歌うのが好きなのかもしれない。
「そうだ!ダンスのレッスンの気晴らしに浜辺に散歩に行けるか聞いてきましょうか?」
彼女は嬉しそうに頷いた。
私は、許可をもらいセイネ様と浜辺へと散歩に出かけた。
セイネ様が来てから二ヶ月。若葉も増え黄緑色の葉がさわさわと揺れている。お散歩日和だった。
二人っきっりならリラックスして気晴らしになると思っていたのだが、そうはならなかった。
「で、なぜ皆様での散歩ですか?」
リュート殿下とロイド殿下に挟まれたセイネ様を見ながら、私は隣にいるアルフ様を睨みつけた。
「気分転換だよ」
「せめてお供をつけてください」
供さえつけずに歩く殿下たちを見て危機感はないのか!?と叫びたくなる。
「私がいるので大丈夫だ」
そう言って、アルフ様は腰元にある自分の剣に触った。
「自信がおありなんですね」
「それなりには、ね」
ニヤリと笑う。
そうか。それら、もう言うまい。私が口出しすることではない。
気持ちを切り替えて楽しそうなお三方を私は見ていた。
本当にセイネ様の表情は明るくなった。
金色の髪が太陽に照らされキラキラと輝いている。
いつまでも続けばどんなにいいものか?
でも、人魚の伝説はそうでない。悲しき終わりがあった。いずれ同じようになってしまうのだろうか?
「君はなぜ人魚にこだわっているんだ?」
静かな眼差しでアルフ様は私を見ていた。
この方の眼差しに、嘘偽りを言うのを躊躇いを感じ正直に言葉をのせる。
「・・・わかりません。気づいた時には人魚に興味がありました。どうしても調べないといけない、そんな気持ちになるんです」
「そうか・・・」
そう、私は人魚を知りたい。
知らなくてはならないと思うのだ。
そう、その気持ちだけだった。他に深い意味なんてない。
セイネ様たちは海に足を踏み入れ、水をかけ合っている。セイネ様は声がなくてもまるで笑い声が聞こえてくるように感じた。
ーあぁ、こんな雰囲気好きだな・・・。
「何の歌だ?」
アルフ様に言われ、初めは何のことか分からなかった。
「気づいてなかったのか?歌を歌っていたぞ」
歌を・・・。私が?
歌っていた自覚はなかった。
だが、気づけば殿下たちやセイネ様も、こちらを見ている。
聞き苦しいものだったのだろうか、とりあえず謝っておこう。
「それは、失礼しました」
「いや、別にかまわないのだが聞いたことのない歌だったから、つい・・・」
「何の歌でしょうか?無意識だったので、わかりかねます」
「そうか・・・」
アルフ様は難しい顔をされていた。どうしたのか?
「歌を歌うのは好きか?」
「どうでしょう。意識して歌ったことないので、そうではないと思いますが・・・」
「ふ~ん・・・」
この方はなんなんだ。
セイネ様がちらちらとこちらを見ている。
声の出せないセイネ様には悪いことをしたかもしれない。
私は猛烈に反省した。
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