4 / 57
4.噂話
しおりを挟む
あの後、無事に城に帰った私は誰にも見つからないように部屋に戻り服を着替えた。目立つ髪を編み込み予備のメイドキャップに押し込んで整えると急いで部屋を出る。
やはり城内は殿下が船から落ちたことで騒ぎなっていた。
船は嵐が収まるのを待って、周辺を探し夜が明けると同時に一度港に帰ってきているらしい。これから殿下の捜索に小型船が出るという。
そんな噂を耳に入れながら、帰ってきている船に素知らぬ顔で乗り込み仲間たちと合流した。みんなは私がいないことに気にしていなかったのか「もうどこに行ってたの!はい、客室に行ってシーツお願いね」と言ってきた。私は急いで仕事に取り掛かった。
山のような汚れた洗濯物を抱えて城に戻った時に、殿下が見つかったという噂が入ってくる。
がやがやとうるさい中、私たちメイドはただ仕事をこなす忙しい1日を過ごした。
噂では殿下は半日後には目を覚ましたらしい。
それでも、静養するべく数日間はベッドの上だったという。
そして、見つけたくれた女性は丘向こうの修道女らしかった。殿下のために使われたハンカチからわかったらしい。
しかしお礼にと使者を送った時には彼女の姿はそこにはいなかった。
なんでも、行儀見習いとして数ヶ月だけ滞在していたらしくすでに生家に帰ったあとだったとか。
それこそ、人魚なのでは?とまで囁かれている。
あれから半月ほどたつがどれもこれもローテーションで休憩をしている際、噂好きのおばさま方が食堂で話してくれた。殿下の誕生日会も終わり忙しさがひと段落したおばさま方の口にも余裕が出てきたらしく軽くなっている。
どこから情報を得てくるのか?
でも、そのおかげで、話のきっかけさえ見つかれば「人魚」の噂なども聞けるようになっていた。
「ほんと、フィーは人魚が好きだねぇ」
度々聞くのでそんな風にまで言われるようになっている。
「面白い話があれば真っ先に教えてあげるよ」
「人魚なら、アルフ様が詳しいらしいよ」
「この城には人魚にまつわる本があるそうよ」
そうなのか・・・。
おばさま方、情報をありがとう。
偉い人に聞くのは無理でも本は読みたいものである。だがメイドが本があるだろう図書館に入るわけにはいかない。どうしたものかと悩んでしまった。
「みなさんは、人魚を直接見たことはないのですか?」
「ないない!」
「あるわけないわよ。海の上にいるんだから」
「陸に上がったら人魚じゃないでしょう」
声を立て笑い合うおばさま方。
「人間を惑わす人魚様だよ。怖いじゃないか」
「フィーだけだね。そんな事を言うのは」
「そうそう、男を海に引き込む魅惑の歌を歌う人魚なんて怖いだけよ」
ちがう!人魚は本当は寂しい生き物なの!
そう否定できなかった。だから、陸に上がった人魚を私は見た・・・とは言えなかった。
推し黙って聞き役にてっする私。
そんな私にお呼びがかかる。
「フィー。フィーはいる?」
若くして侍女頭になったアンナ様だ。
下働きなどもいるごった返しの食堂に来るなんて珍しい。
「はい。ここです」
話を止め立ち上がる。
「そこにいたのね。アルフ様があなたを呼んでるわ。ついてきて」
よくイケメンで殿下たちからも信頼されていると噂にもあがるアルフ様が私を呼んでいるというのか。
自分は何をやらかした?
思い当たるものがあるとすれば一つだが、あれは・・・大丈夫だと思いたい。他には・・・あるようでないような・・・。
首を傾げてしまった。
やはり城内は殿下が船から落ちたことで騒ぎなっていた。
船は嵐が収まるのを待って、周辺を探し夜が明けると同時に一度港に帰ってきているらしい。これから殿下の捜索に小型船が出るという。
そんな噂を耳に入れながら、帰ってきている船に素知らぬ顔で乗り込み仲間たちと合流した。みんなは私がいないことに気にしていなかったのか「もうどこに行ってたの!はい、客室に行ってシーツお願いね」と言ってきた。私は急いで仕事に取り掛かった。
山のような汚れた洗濯物を抱えて城に戻った時に、殿下が見つかったという噂が入ってくる。
がやがやとうるさい中、私たちメイドはただ仕事をこなす忙しい1日を過ごした。
噂では殿下は半日後には目を覚ましたらしい。
それでも、静養するべく数日間はベッドの上だったという。
そして、見つけたくれた女性は丘向こうの修道女らしかった。殿下のために使われたハンカチからわかったらしい。
しかしお礼にと使者を送った時には彼女の姿はそこにはいなかった。
なんでも、行儀見習いとして数ヶ月だけ滞在していたらしくすでに生家に帰ったあとだったとか。
それこそ、人魚なのでは?とまで囁かれている。
あれから半月ほどたつがどれもこれもローテーションで休憩をしている際、噂好きのおばさま方が食堂で話してくれた。殿下の誕生日会も終わり忙しさがひと段落したおばさま方の口にも余裕が出てきたらしく軽くなっている。
どこから情報を得てくるのか?
でも、そのおかげで、話のきっかけさえ見つかれば「人魚」の噂なども聞けるようになっていた。
「ほんと、フィーは人魚が好きだねぇ」
度々聞くのでそんな風にまで言われるようになっている。
「面白い話があれば真っ先に教えてあげるよ」
「人魚なら、アルフ様が詳しいらしいよ」
「この城には人魚にまつわる本があるそうよ」
そうなのか・・・。
おばさま方、情報をありがとう。
偉い人に聞くのは無理でも本は読みたいものである。だがメイドが本があるだろう図書館に入るわけにはいかない。どうしたものかと悩んでしまった。
「みなさんは、人魚を直接見たことはないのですか?」
「ないない!」
「あるわけないわよ。海の上にいるんだから」
「陸に上がったら人魚じゃないでしょう」
声を立て笑い合うおばさま方。
「人間を惑わす人魚様だよ。怖いじゃないか」
「フィーだけだね。そんな事を言うのは」
「そうそう、男を海に引き込む魅惑の歌を歌う人魚なんて怖いだけよ」
ちがう!人魚は本当は寂しい生き物なの!
そう否定できなかった。だから、陸に上がった人魚を私は見た・・・とは言えなかった。
推し黙って聞き役にてっする私。
そんな私にお呼びがかかる。
「フィー。フィーはいる?」
若くして侍女頭になったアンナ様だ。
下働きなどもいるごった返しの食堂に来るなんて珍しい。
「はい。ここです」
話を止め立ち上がる。
「そこにいたのね。アルフ様があなたを呼んでるわ。ついてきて」
よくイケメンで殿下たちからも信頼されていると噂にもあがるアルフ様が私を呼んでいるというのか。
自分は何をやらかした?
思い当たるものがあるとすれば一つだが、あれは・・・大丈夫だと思いたい。他には・・・あるようでないような・・・。
首を傾げてしまった。
7
お気に入りに追加
194
あなたにおすすめの小説
皇太子夫妻の歪んだ結婚
夕鈴
恋愛
皇太子妃リーンは夫の秘密に気付いてしまった。
その秘密はリーンにとって許せないものだった。結婚1日目にして離縁を決意したリーンの夫婦生活の始まりだった。
本編完結してます。
番外編を更新中です。
【完結】嫌われ令嬢、部屋着姿を見せてから、王子に溺愛されてます。
airria
恋愛
グロース王国王太子妃、リリアナ。勝ち気そうなライラックの瞳、濡羽色の豪奢な巻き髪、スレンダーな姿形、知性溢れる社交術。見た目も中身も次期王妃として完璧な令嬢であるが、夫である王太子のセイラムからは忌み嫌われていた。
どうやら、セイラムの美しい乳兄妹、フリージアへのリリアナの態度が気に食わないらしい。
2ヶ月前に婚姻を結びはしたが、初夜もなく冷え切った夫婦関係。結婚も仕事の一環としか思えないリリアナは、セイラムと心が通じ合わなくても仕方ないし、必要ないと思い、王妃の仕事に邁進していた。
ある日、リリアナからのいじめを訴えるフリージアに泣きつかれたセイラムは、リリアナの自室を電撃訪問。
あまりの剣幕に仕方なく、部屋着のままで対応すると、なんだかセイラムの様子がおかしくて…
あの、私、自分の時間は大好きな部屋着姿でだらけて過ごしたいのですが、なぜそんな時に限って頻繁に私の部屋にいらっしゃるの?
【完結】仰る通り、貴方の子ではありません
ユユ
恋愛
辛い悪阻と難産を経て産まれたのは
私に似た待望の男児だった。
なのに認められず、
不貞の濡れ衣を着せられ、
追い出されてしまった。
実家からも勘当され
息子と2人で生きていくことにした。
* 作り話です
* 暇つぶしにどうぞ
* 4万文字未満
* 完結保証付き
* 少し大人表現あり
アルバートの屈辱
プラネットプラント
恋愛
妻の姉に恋をして妻を蔑ろにするアルバートとそんな夫を愛するのを諦めてしまった妻の話。
『詰んでる不憫系悪役令嬢はチャラ男騎士として生活しています』の10年ほど前の話ですが、ほぼ無関係なので単体で読めます。
断る――――前にもそう言ったはずだ
鈴宮(すずみや)
恋愛
「寝室を分けませんか?」
結婚して三年。王太子エルネストと妃モニカの間にはまだ子供が居ない。
周囲からは『そろそろ側妃を』という声が上がっているものの、彼はモニカと寝室を分けることを拒んでいる。
けれど、エルネストはいつだって、モニカにだけ冷たかった。
他の人々に向けられる優しい言葉、笑顔が彼女に向けられることない。
(わたくし以外の女性が妃ならば、エルネスト様はもっと幸せだろうに……)
そんな時、侍女のコゼットが『エルネストから想いを寄せられている』ことをモニカに打ち明ける。
ようやく側妃を娶る気になったのか――――エルネストがコゼットと過ごせるよう、私室で休むことにしたモニカ。
そんな彼女の元に、護衛騎士であるヴィクトルがやってきて――――?
冷血皇帝陛下は廃妃をお望みです
cyaru
恋愛
王妃となるべく育てられたアナスタシア。
厳しい王妃教育が終了し17歳で王太子シリウスに嫁いだ。
嫁ぐ時シリウスは「僕は民と同様に妻も子も慈しむ家庭を築きたいんだ」と告げた。
嫁いで6年目。23歳になっても子が成せずシリウスは側妃を王宮に迎えた。
4カ月後側妃の妊娠が知らされるが、それは流産によって妊娠が判ったのだった。
側妃に毒を盛ったと何故かアナスタシアは無実の罪で裁かれてしまう。
シリウスに離縁され廃妃となった挙句、余罪があると塔に幽閉されてしまった。
静かに過ごすアナスタシアの癒しはたった1つだけある窓にやってくるカラスだった。
※タグがこれ以上入らないですがざまぁのようなものがあるかも知れません。
(作者的にそれをザマぁとは思ってません。外道なので・・<(_ _)>)
※架空のお話です。現実世界の話ではありません。
史実などに基づいたものではない事をご理解ください。
※話の都合上、残酷な描写がありますがそれがざまぁなのかは受け取り方は人それぞれです。
表現的にどうかと思う回は冒頭に注意喚起を書き込むようにしますが有無は作者の判断です。
※作者都合のご都合主義です。作者は外道なので気を付けてください(何に?‥いろいろ)
※リアルで似たようなものが出てくると思いますが気のせいです。
※爵位や言葉使いなど現実世界、他の作者さんの作品とは異なります(似てるモノ、同じものもあります)
※誤字脱字結構多い作者です(ごめんなさい)コメント欄より教えて頂けると非常に助かります。
このたび、あこがれ騎士さまの妻になりました。
若松だんご
恋愛
「リリー。アナタ、結婚なさい」
それは、ある日突然、おつかえする王妃さまからくだされた命令。
まるで、「そこの髪飾りと取って」とか、「窓を開けてちょうだい」みたいなノリで発せられた。
お相手は、王妃さまのかつての乳兄弟で護衛騎士、エディル・ロードリックさま。
わたしのあこがれの騎士さま。
だけど、ちょっと待って!! 結婚だなんて、いくらなんでもそれはイキナリすぎるっ!!
「アナタたちならお似合いだと思うんだけど?」
そう思うのは、王妃さまだけですよ、絶対。
「試しに、二人で暮らしなさい。これは命令です」
なーんて、王妃さまの命令で、エディルさまの妻(仮)になったわたし。
あこがれの騎士さまと一つ屋根の下だなんてっ!!
わたし、どうなっちゃうのっ!? 妻(仮)ライフ、ドキドキしすぎで心臓がもたないっ!!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる