5 / 14
フェルンダルの思い出
しおりを挟む
フェルンダルの入れた紅茶を飲みながら、彼は昔話を始めたのだった。
フェルンダルとエスタニアの父ブラキア、そしてカジェロは親友だった。ドールについて毎日話をしていた。
約200年前、巨大な魔核が見つかり、世界中を賑わしした。しかし半年後、その魔核は無くなった。盗まれたらしいと言うだけで、国を上げ創作したもの見つけることができなかった。魔核がなくなり50年ほどして生まれたのがドールだった。制作者はリア。街の酒場で歌姫をしていた女だった。彼女がどこで学んだかもわかっていないが、二体のドールを作り三人の弟子にドールの作り方を教えると、姿を消した。
時代が進むにつれ、ドールの性能が増していった。
フェルンダルたち三人もそれに取り憑かれていたと言ってもいい。朝から晩までドールについて話し合い、制作をしあった。
だが、それも戦争が始まるまでだった。
戦争が始まり、バラバラになった。
フェルンダルは魔術技師の道へ、ブラキアは兵士に、カジェロは反戦メンバーとして活動したのだ。親友の誓いを立て別れた。
再び出会ったのは、戦争が終わった数年後。ブラキアの胸元には赤子が抱かれ、カジェロは再び人形師になっていた。
フェルンダルは、そんな彼らを見送った。分かれた道を戻すのは容易いことではなかったから。
唯一、手紙のやりとりをしていた。
ブラキアが病に倒れ、幼いエスタニアとカジェロの旅を知ったのも手紙だった。
そしてエスタニアが人形師になるために魔術学園に入ったのを知ったのも手紙。カジェロが実はドールだったことを知ったのも・・・。
「なんで、あいつは自分がドールだと言わなかったのか、今でも分からん。君はわかるかい?」
「・・・、人・・・、人間として生きたかったからじゃないですか?」
「人間か・・・、君はカジェロには?」
首を振った。
「正常な時には会っことは、ありません。師匠に扱い方を教えてもらって、管理はしていました。でも・・・どんな方でしたか?」
「明るくて、みんなを笑わせるのが好きだったよ。歌が好きで、よく歌ってたな」
懐かしそうに目を細める。昔を思い出しているのだろう。
「魔核がなくても止まらないのは本当かね?」
ふと、聞いてきた。
研究者としては気になるのだろう。
ターニャは隠そうとしなかった。それは、知られても問題ないから・・・。
「はい、そのドールの思いや、性能の違いでそうなるのだと思います。体内の魔核残量の量も影響があるのかもしれません。そこに魔力補充で魔力を流すので緩やかな降下に至るのだと思います」
「そうか・・・。それを使えば、もしかすると・・・」
「師匠?」
「いや、研究に役立つのではとな・・・。同郷の彼はどうするのかね?」
「関わるなと言っていたので、わたしは・・・研究するだけです」
フェルンダルはそうかと頷いただけであった。
冷たくなって紅茶は苦く感じた。
フェルンダルとエスタニアの父ブラキア、そしてカジェロは親友だった。ドールについて毎日話をしていた。
約200年前、巨大な魔核が見つかり、世界中を賑わしした。しかし半年後、その魔核は無くなった。盗まれたらしいと言うだけで、国を上げ創作したもの見つけることができなかった。魔核がなくなり50年ほどして生まれたのがドールだった。制作者はリア。街の酒場で歌姫をしていた女だった。彼女がどこで学んだかもわかっていないが、二体のドールを作り三人の弟子にドールの作り方を教えると、姿を消した。
時代が進むにつれ、ドールの性能が増していった。
フェルンダルたち三人もそれに取り憑かれていたと言ってもいい。朝から晩までドールについて話し合い、制作をしあった。
だが、それも戦争が始まるまでだった。
戦争が始まり、バラバラになった。
フェルンダルは魔術技師の道へ、ブラキアは兵士に、カジェロは反戦メンバーとして活動したのだ。親友の誓いを立て別れた。
再び出会ったのは、戦争が終わった数年後。ブラキアの胸元には赤子が抱かれ、カジェロは再び人形師になっていた。
フェルンダルは、そんな彼らを見送った。分かれた道を戻すのは容易いことではなかったから。
唯一、手紙のやりとりをしていた。
ブラキアが病に倒れ、幼いエスタニアとカジェロの旅を知ったのも手紙だった。
そしてエスタニアが人形師になるために魔術学園に入ったのを知ったのも手紙。カジェロが実はドールだったことを知ったのも・・・。
「なんで、あいつは自分がドールだと言わなかったのか、今でも分からん。君はわかるかい?」
「・・・、人・・・、人間として生きたかったからじゃないですか?」
「人間か・・・、君はカジェロには?」
首を振った。
「正常な時には会っことは、ありません。師匠に扱い方を教えてもらって、管理はしていました。でも・・・どんな方でしたか?」
「明るくて、みんなを笑わせるのが好きだったよ。歌が好きで、よく歌ってたな」
懐かしそうに目を細める。昔を思い出しているのだろう。
「魔核がなくても止まらないのは本当かね?」
ふと、聞いてきた。
研究者としては気になるのだろう。
ターニャは隠そうとしなかった。それは、知られても問題ないから・・・。
「はい、そのドールの思いや、性能の違いでそうなるのだと思います。体内の魔核残量の量も影響があるのかもしれません。そこに魔力補充で魔力を流すので緩やかな降下に至るのだと思います」
「そうか・・・。それを使えば、もしかすると・・・」
「師匠?」
「いや、研究に役立つのではとな・・・。同郷の彼はどうするのかね?」
「関わるなと言っていたので、わたしは・・・研究するだけです」
フェルンダルはそうかと頷いただけであった。
冷たくなって紅茶は苦く感じた。
1
お気に入りに追加
62
あなたにおすすめの小説
わたしは婚約者の不倫の隠れ蓑
岡暁舟
恋愛
第一王子スミスと婚約した公爵令嬢のマリア。ところが、スミスが魅力された女は他にいた。同じく公爵令嬢のエリーゼ。マリアはスミスとエリーゼの密会に気が付いて……。
もう終わりにするしかない。そう確信したマリアだった。
本編終了しました。
この度、皆さんの予想通り婚約者候補から外れることになりました。ですが、すぐに結婚することになりました。
鶯埜 餡
恋愛
ある事件のせいでいろいろ言われながらも国王夫妻の働きかけで王太子の婚約者候補となったシャルロッテ。
しかし当の王太子ルドウィックはアリアナという男爵令嬢にべったり。噂好きな貴族たちはシャルロッテに婚約者候補から外れるのではないかと言っていたが
私を幽閉した王子がこちらを気にしているのはなぜですか?
水谷繭
恋愛
婚約者である王太子リュシアンから日々疎まれながら過ごしてきたジスレーヌ。ある日のお茶会で、リュシアンが何者かに毒を盛られ倒れてしまう。
日ごろからジスレーヌをよく思っていなかった令嬢たちは、揃ってジスレーヌが毒を入れるところを見たと証言。令嬢たちの嘘を信じたリュシアンは、ジスレーヌを「裁きの家」というお屋敷に幽閉するよう指示する。
そこは二十年前に魔女と呼ばれた女が幽閉されて死んだ、いわくつきの屋敷だった。何とか幽閉期間を耐えようと怯えながら過ごすジスレーヌ。
一方、ジスレーヌを閉じ込めた張本人の王子はジスレーヌを気にしているようで……。
◇小説家になろうにも掲載中です!
◆表紙はGilry Drop様からお借りした画像を加工して使用しています
骸骨と呼ばれ、生贄になった王妃のカタの付け方
ウサギテイマーTK
恋愛
骸骨娘と揶揄され、家で酷い扱いを受けていたマリーヌは、国王の正妃として嫁いだ。だが結婚後、国王に愛されることなく、ここでも幽閉に近い扱いを受ける。側妃はマリーヌの義姉で、公式行事も側妃が請け負っている。マリーヌに与えられた最後の役割は、海の神への生贄だった。
注意:地震や津波の描写があります。ご注意を。やや残酷な描写もあります。
断る――――前にもそう言ったはずだ
鈴宮(すずみや)
恋愛
「寝室を分けませんか?」
結婚して三年。王太子エルネストと妃モニカの間にはまだ子供が居ない。
周囲からは『そろそろ側妃を』という声が上がっているものの、彼はモニカと寝室を分けることを拒んでいる。
けれど、エルネストはいつだって、モニカにだけ冷たかった。
他の人々に向けられる優しい言葉、笑顔が彼女に向けられることない。
(わたくし以外の女性が妃ならば、エルネスト様はもっと幸せだろうに……)
そんな時、侍女のコゼットが『エルネストから想いを寄せられている』ことをモニカに打ち明ける。
ようやく側妃を娶る気になったのか――――エルネストがコゼットと過ごせるよう、私室で休むことにしたモニカ。
そんな彼女の元に、護衛騎士であるヴィクトルがやってきて――――?
人生の全てを捨てた王太子妃
八つ刻
恋愛
突然王太子妃になれと告げられてから三年あまりが過ぎた。
傍目からは“幸せな王太子妃”に見える私。
だけど本当は・・・
受け入れているけど、受け入れられない王太子妃と彼女を取り巻く人々の話。
※※※幸せな話とは言い難いです※※※
タグをよく見て読んでください。ハッピーエンドが好みの方(一方通行の愛が駄目な方も)はブラウザバックをお勧めします。
※本編六話+番外編六話の全十二話。
※番外編の王太子視点はヤンデレ注意報が発令されています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる