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かつての幼馴染

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「ターニャ、君に客人だ」

 フェルンダルに言われ、部屋を出るとファロットが立っていた。気まづい雰囲気。

「ファロット、どうしたの?」
「いや、あの・・・、どうしてここにきたんだ?」
「手紙に書いたよ」
「そうじゃない。君はあの街から出ないんじゃ。あのドールは?」
「それも書いたんだけど・・・。カジェロはもう止まったの。師匠が縛られなくていいからって、ここにきたの?ダメだったの?」
「ダメと言うか、あのドールが止まったなら、魔核は?そのままのか?あれほどのドールの魔核を置いてきたのか?」

 ファロットの言っていることが一瞬わからなかった。
 
「あれほどのドールのものだ。凄いものじゃないのか?あれがあれば、あれが使えれば、俺はもっと、もっと上にいけるんだ。お前はそれを扱えるんだろう!」

 そうか・・・、ストンと理解した。
 自分の価値は人形師としてだったのかと。幼い頃から一緒にいたのに何を見ていたのか、彼に抱いた憧れも、淡い恋心も幻のように消え去る。

「ターニャ?」
「カジェロには魔核はもうないよ」

 うつむき静かに言う。

「ない?馬鹿な!!魔核が無いのに動くわけがないだろう!」
「ドールの魔核は違う。器に入ることで心も身体も成長するの。だから、魔核が無くなっても、すぐに動かなくなるわけではないの。魔力を補充する事で、緩やかに止まっていくの。性能によってかわるけど、ゆっくりと・・・。
 ファロット、貴方・・・変わったね」

 彼は視線をそらした。

「な、ならなんだ?あの街から出られて、この王都の素晴らしさ。全てが違うだろう。あんな何もない街のどこがいい?王都に来て、価値観も変わって何が悪い。お前だってそう思うだろう?」
「思わない。わたしの故郷はあの街だけ。わたしはどんなに学ぼうと人形師でいい。」
「そう言うところだ・・・」
「えっ?」
「そう言うのが気に入らなかったんだ。お前と離れてせいせいしたのに!じゃあな、二度と話しかけてくるな!関わるな!」

 ファロットはそういい捨てて去っていった。
 ターニャは下唇を噛み締めた。
 あの街を、過去の自分を捨てたファロットが許せないとも思った。悔しくて思った。

 泣きたいのをグッと堪えて、部屋に入ると、困り顔のフェルンダルだ立っていた。

「ターニャ。すまんな。聞きていたわけではないんだが、聞こえてしまってね・・・」

 首を静かに振った。

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