8 / 11
8.ロベルト視点
しおりを挟む
父の生誕祭。
各国からも国賓がくる一大イベント。
この2年間、聖女が現れた事で婚約者であるレティシアをエスコートもせず、ミランダをエスコートしていた。
今年もミランダのエスコートだ。
去年と違うのは、ミランダが婚約者の位置でいること。
ミランダも聖女としての白いドレスを身につけていた。
そして、王族並みの宝飾を身につけていた。
「ロベルト様」
甘い声、甘い香。
僕の腕に擦り寄ってくる。
「婚約発表ですわね。私、もっと頑張るわ。ロベルト様のために」
嬉しそう。
でも、僕の心は晴れない。
本来ならば、ここにいるのはレティシアだったのだ。
ミランダの後ろにレティシアの幻影を見る。
きっと、柔らかく笑っていただろう。
美しい装いをしていただろう。僕はみんなに見せて自慢にしていたに違いない。でも、誰にも見せたくないとも思うのだろう。
「ロベルト様?どうされました?」
現実に戻される。
「いや、なんでもない。行こう」
僕はミランダをエスコートして会場に入って行った。
誰もが晴れやかな笑みを向けてくる。
レティシアの存在などもともとなかったように・・・。
父、国王の挨拶が始まる。
通る声が会場に響く。
「最後に、王太子ロベルトと聖女ミランダの婚約ー「お待ちください」」
礼儀に欠くことはわかっているが、声をかぶせた。
「ロベルト?」
「話の腰を折ってしまい、申し訳ありません。ですが、その言葉が有言実行される前にいいたい事があります」
「・・・なんだ?」
「わたしは聖女ミランダと婚約するつもりはありません」
ザワザワと周りが騒ぎ出す。
「ロベルト様?」
「ほぉ?王命に背くのか?」
「そうなります。わたしはレティシア・ヴィランデー公爵令嬢を愛しております」
「レティシア嬢とは婚約解消した筈だ」
「確かに。わたしの至らなさが原因です」
「ロベルト様。あの女は私を虐めた悪女ですわ!!」
ミランダは胸に手を当てて、堂々と言い切った。
自信に満ちたその顔。
「君はレティシアが虐めたというが、どこに証拠があるんだ?
君とはずっと僕と一緒だった。
朝、学園に来てから、帰るまでずっとだ」
僕は自嘲気味に笑った。
自分の馬鹿な行いが周りに明かされる。
でも、それは僕のせいだ。
レティシアはもっと辛かったはずだ。
「僕は日記を書いている」
「まあ、日記を。素晴らしいわ」
こんな時まで感心できるなど、その心臓は鉄か鋼ででもできているのか?
「素晴らしい?そうだね。他人から言わせれば、そうなるだろうね。でも、改めてそれを読んでバカらしくなったよ。君のことしか書いてなかったんだ」
「私の事を?まぁ、嬉しいですわ」
何が嬉しいのか?
なぜこんな女に入れ込んでいたんだ?
「あぁ、この2年間。レティシアの事が書かれていなかった。名前さえ書いてなかった。大事な婚約者の事を、だ」
「それだけ、あの方を嫌っていたと言う事でしょう」
「考え方、ではね。でも、違う。書かれていなかったと言うことは、レティシアに無関心だったと言う事だ。もし、君が虐められていたなら、どこかにそのことが書いてあるはずだ」
「ロベルト様がいないところで、行われていたのですわ?」
「いつ?」
「いつって・・・」
「学園では、ずっと君の側にいた。だから学園内ではない」
「学園の外ですわ」
「僕はいつも君を馬車まで見送っていたよ」
「私だって、途中寄り道もしますわ」
「レティシアはね、王太子妃教育に行くんだ。行かない日は、屋敷に帰る。絶対に寄り道はしない」
「なぜ、そう言い切れますの?人には絶対なんてありませんわ」
「レティシアはするんだ。特に僕との約束は守る・・・」
「何言ってますの?」
「レティシアとは、二人で街を歩こうと約束したんだ。以前、拐かされた事があったから・・・」
昔、一度街に出かけた際、護衛とはぐれてしまい、人攫いにさらわれかけたのだ。あれ以来、一人で行けないのだ。だから、二人で手を繋いで行こうと約束した。
そんな彼女が、護衛がいようとも一人で街に行く事はない。
「ですが、本当に虐めていたのですわ」
「そうか。そこまでいうなら、検証しよう。ここに、アレックスたち数名に調べまとめて貰った書類がある」
「えっ?」
ミランダは顔色を変えた。
真っ青になったかと思えば、ガクガクとふるえだす。
僕は封を切っていない、五つの封筒を見せた。
アレックスの他に、ミランダに心酔している取り巻きに同じことを頼んだのだ。
理由もそれぞれ違うものにさせた。
レティシアを追い詰める為・・・、ミランダの為・・・と、自分をよく見せる為の理由をつけている。
それも自分の手柄にする為に、他の者に気づかれないようにしている。
聞き取った事柄にも最終確認してもらうようにも言ってある。
まだ、中身の確認はしていなかった。
封を開けていないのは、改ざんしていない証拠としてだ。
僕はレティシアを信じている。
レティシアはいじめていない。
だからきっと、この中身は・・・。
「ロベルト様、待って」
「なぜ?これで、レティシアが君を虐めていた事がはっきりするんだ。自信を持てばいい」
僕は父の前で封蝋されていることを確認してから、封を切った。
中の資料に目を通していく。
僕は笑った。
やはり、思った通りだった。
各国からも国賓がくる一大イベント。
この2年間、聖女が現れた事で婚約者であるレティシアをエスコートもせず、ミランダをエスコートしていた。
今年もミランダのエスコートだ。
去年と違うのは、ミランダが婚約者の位置でいること。
ミランダも聖女としての白いドレスを身につけていた。
そして、王族並みの宝飾を身につけていた。
「ロベルト様」
甘い声、甘い香。
僕の腕に擦り寄ってくる。
「婚約発表ですわね。私、もっと頑張るわ。ロベルト様のために」
嬉しそう。
でも、僕の心は晴れない。
本来ならば、ここにいるのはレティシアだったのだ。
ミランダの後ろにレティシアの幻影を見る。
きっと、柔らかく笑っていただろう。
美しい装いをしていただろう。僕はみんなに見せて自慢にしていたに違いない。でも、誰にも見せたくないとも思うのだろう。
「ロベルト様?どうされました?」
現実に戻される。
「いや、なんでもない。行こう」
僕はミランダをエスコートして会場に入って行った。
誰もが晴れやかな笑みを向けてくる。
レティシアの存在などもともとなかったように・・・。
父、国王の挨拶が始まる。
通る声が会場に響く。
「最後に、王太子ロベルトと聖女ミランダの婚約ー「お待ちください」」
礼儀に欠くことはわかっているが、声をかぶせた。
「ロベルト?」
「話の腰を折ってしまい、申し訳ありません。ですが、その言葉が有言実行される前にいいたい事があります」
「・・・なんだ?」
「わたしは聖女ミランダと婚約するつもりはありません」
ザワザワと周りが騒ぎ出す。
「ロベルト様?」
「ほぉ?王命に背くのか?」
「そうなります。わたしはレティシア・ヴィランデー公爵令嬢を愛しております」
「レティシア嬢とは婚約解消した筈だ」
「確かに。わたしの至らなさが原因です」
「ロベルト様。あの女は私を虐めた悪女ですわ!!」
ミランダは胸に手を当てて、堂々と言い切った。
自信に満ちたその顔。
「君はレティシアが虐めたというが、どこに証拠があるんだ?
君とはずっと僕と一緒だった。
朝、学園に来てから、帰るまでずっとだ」
僕は自嘲気味に笑った。
自分の馬鹿な行いが周りに明かされる。
でも、それは僕のせいだ。
レティシアはもっと辛かったはずだ。
「僕は日記を書いている」
「まあ、日記を。素晴らしいわ」
こんな時まで感心できるなど、その心臓は鉄か鋼ででもできているのか?
「素晴らしい?そうだね。他人から言わせれば、そうなるだろうね。でも、改めてそれを読んでバカらしくなったよ。君のことしか書いてなかったんだ」
「私の事を?まぁ、嬉しいですわ」
何が嬉しいのか?
なぜこんな女に入れ込んでいたんだ?
「あぁ、この2年間。レティシアの事が書かれていなかった。名前さえ書いてなかった。大事な婚約者の事を、だ」
「それだけ、あの方を嫌っていたと言う事でしょう」
「考え方、ではね。でも、違う。書かれていなかったと言うことは、レティシアに無関心だったと言う事だ。もし、君が虐められていたなら、どこかにそのことが書いてあるはずだ」
「ロベルト様がいないところで、行われていたのですわ?」
「いつ?」
「いつって・・・」
「学園では、ずっと君の側にいた。だから学園内ではない」
「学園の外ですわ」
「僕はいつも君を馬車まで見送っていたよ」
「私だって、途中寄り道もしますわ」
「レティシアはね、王太子妃教育に行くんだ。行かない日は、屋敷に帰る。絶対に寄り道はしない」
「なぜ、そう言い切れますの?人には絶対なんてありませんわ」
「レティシアはするんだ。特に僕との約束は守る・・・」
「何言ってますの?」
「レティシアとは、二人で街を歩こうと約束したんだ。以前、拐かされた事があったから・・・」
昔、一度街に出かけた際、護衛とはぐれてしまい、人攫いにさらわれかけたのだ。あれ以来、一人で行けないのだ。だから、二人で手を繋いで行こうと約束した。
そんな彼女が、護衛がいようとも一人で街に行く事はない。
「ですが、本当に虐めていたのですわ」
「そうか。そこまでいうなら、検証しよう。ここに、アレックスたち数名に調べまとめて貰った書類がある」
「えっ?」
ミランダは顔色を変えた。
真っ青になったかと思えば、ガクガクとふるえだす。
僕は封を切っていない、五つの封筒を見せた。
アレックスの他に、ミランダに心酔している取り巻きに同じことを頼んだのだ。
理由もそれぞれ違うものにさせた。
レティシアを追い詰める為・・・、ミランダの為・・・と、自分をよく見せる為の理由をつけている。
それも自分の手柄にする為に、他の者に気づかれないようにしている。
聞き取った事柄にも最終確認してもらうようにも言ってある。
まだ、中身の確認はしていなかった。
封を開けていないのは、改ざんしていない証拠としてだ。
僕はレティシアを信じている。
レティシアはいじめていない。
だからきっと、この中身は・・・。
「ロベルト様、待って」
「なぜ?これで、レティシアが君を虐めていた事がはっきりするんだ。自信を持てばいい」
僕は父の前で封蝋されていることを確認してから、封を切った。
中の資料に目を通していく。
僕は笑った。
やはり、思った通りだった。
487
お気に入りに追加
2,866
あなたにおすすめの小説
【完結】苦しく身を焦がす思いの果て
猫石
恋愛
アルフレッド王太子殿下の正妃として3年。
私達は政略結婚という垣根を越え、仲睦まじく暮らしてきたつもりだった。
しかし彼は王太子であるがため、側妃が迎え入れられることになった。
愛しているのは私だけ。
そう言ってくださる殿下の愛を疑ったことはない。
けれど、私の心は……。
★作者の息抜き作品です。
★ゆる・ふわ設定ですので気楽にお読みください。
☆このお話は完全フィクションです、創作です、妄想の作り話です。現実世界と混同せず、あぁ、ファンタジーだもんな、と、念頭に置いてお読みください。
☆作者の趣味嗜好作品です。イラッとしたり、ムカッとしたりした時には、そっと別の素敵な作家さんの作品を検索してお読みください。(自己防衛大事!)
☆誤字脱字、誤変換が多いのは、作者のせいです。頑張って音読してチェックして!頑張ってますが、ごめんなさい、許してください。
★小説家になろう様にも公開しています。
愛しき我が子に捧ぐ
夜瑠
恋愛
政略結婚だと分かっていた。他に愛する人が居ることも自分が正妻に選ばれたのは家格からだとも。
私だって貴方の愛なんて求めていなかった。
なのにこんな仕打ちないじゃない。
薬を盛って流産させるなんて。
もう二度と子供を望めないなんて。
胸糞注意⚠本編3話+番外編2話の計5話構成
王子妃だった記憶はもう消えました。
cyaru
恋愛
記憶を失った第二王子妃シルヴェーヌ。シルヴェーヌに寄り添う騎士クロヴィス。
元々は王太子であるセレスタンの婚約者だったにも関わらず、嫁いだのは第二王子ディオンの元だった。
実家の公爵家にも疎まれ、夫となった第二王子ディオンには愛する人がいる。
記憶が戻っても自分に居場所はあるのだろうかと悩むシルヴェーヌだった。
記憶を取り戻そうと動き始めたシルヴェーヌを支えるものと、邪魔するものが居る。
記憶が戻った時、それは、それまでの日常が崩れる時だった。
★1話目の文末に時間的流れの追記をしました(7月26日)
●ゆっくりめの更新です(ちょっと本業とダブルヘッダーなので)
●ルビ多め。鬱陶しく感じる方もいるかも知れませんがご了承ください。
敢えて常用漢字などの読み方を変えている部分もあります。
●作中の通貨単位はケラ。1ケラ=1円くらいの感じです。
♡注意事項~この話を読む前に~♡
※異世界の創作話です。時代設定、史実に基づいた話ではありません。リアルな世界の常識と混同されないようお願いします。
※心拍数や血圧の上昇、高血糖、アドレナリンの過剰分泌に責任はおえません。
※外道な作者の妄想で作られたガチなフィクションの上、ご都合主義です。
※架空のお話です。現実世界の話ではありません。登場人物、場所全て架空です。
※価値観や言葉使いなど現実世界とは異なります(似てるモノ、同じものもあります)
※誤字脱字結構多い作者です(ごめんなさい)コメント欄より教えて頂けると非常に助かります。
何を間違った?【完結済】
maruko
恋愛
私は長年の婚約者に婚約破棄を言い渡す。
彼女とは1年前から連絡が途絶えてしまっていた。
今真実を聞いて⋯⋯。
愚かな私の後悔の話
※作者の妄想の産物です
他サイトでも投稿しております
さよなら私の愛しい人
ペン子
恋愛
由緒正しき大店の一人娘ミラは、結婚して3年となる夫エドモンに毛嫌いされている。二人は親によって決められた政略結婚だったが、ミラは彼を愛してしまったのだ。邪険に扱われる事に慣れてしまったある日、エドモンの口にした一言によって、崩壊寸前の心はいとも簡単に砕け散った。「お前のような役立たずは、死んでしまえ」そしてミラは、自らの最期に向けて動き出していく。
※5月30日無事完結しました。応援ありがとうございます!
※小説家になろう様にも別名義で掲載してます。
あなたへの恋心を消し去りました
鍋
恋愛
私には両親に決められた素敵な婚約者がいる。
私は彼のことが大好き。少し顔を見るだけで幸せな気持ちになる。
だけど、彼には私の気持ちが重いみたい。
今、彼には憧れの人がいる。その人は大人びた雰囲気をもつ二つ上の先輩。
彼は心は自由でいたい言っていた。
その女性と話す時、私には見せない楽しそうな笑顔を向ける貴方を見て、胸が張り裂けそうになる。
友人たちは言う。お互いに干渉しない割り切った夫婦のほうが気が楽だって……。
だから私は彼が自由になれるように、魔女にこの激しい気持ちを封印してもらったの。
※このお話はハッピーエンドではありません。
※短いお話でサクサクと進めたいと思います。
愛想を尽かした女と尽かされた男
火野村志紀
恋愛
※全16話となります。
「そうですか。今まであなたに尽くしていた私は側妃扱いで、急に湧いて出てきた彼女が正妃だと? どうぞ、お好きになさって。その代わり私も好きにしますので」
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる