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あなたが12歳になって、婚約者が決まった。

3大公爵家の一人である御令嬢。
美しい金の髪に青い目の方。
初めて物陰から見て、同じ性別なのにドキドキしてしまった。

あなたと隣に立つ姿が綺麗。

将来、わたしは母と同じ乳母となり、お仕えする。
嬉しかった。

あなたはこの頃から泣くことはなくなった。

公爵令嬢のために強く有ろうとした。

わたしに聞く。

何を送ろうか、と。
何の花が好きかな、と。
何の会話をしようか、と。

公爵令嬢の気を引きたくてどうしようもないみたいだった。

あまりにうるさくて、怒ると、珍しく泣く。

そうなると、アドバイスした。

お二人の邪魔をしないようにした。
 
なのに、わたしを交えようとするので怒ってやった。

馬鹿か!
女性の気持ち考えろ!
わたしがいたらお邪魔虫でしょうが!!
で仲良くしなさい。
わたしを巻き込むな!   と。


公爵令嬢は大爆笑した。
もちろん、あなたはウルウル。

知らない。

わたしは公爵令嬢に託して帰った。

それから、公爵令嬢とは話をする様になった。

あなたそっちのけで、会話する。
買い物にいく。
もちろん、荷物持ちはあなただった。


でも、忘れてはならない。
わたしはただの乳母の娘。

わたしも教育があった。

つぎの乳母になるための知識を培わなければならない。
知らない、わからないではいけない。

次代を守るために育てるために学ぶべきことはあった。
 
あなたには帝王学。
公爵令嬢は妃教育。
それと同じように。

わたしは閨ごとも、先に習った。
妊娠のこと、出産のこと。

何度か知恵熱を出したこともある。
学ばなければならないにしても、刺激が強い。
顔に出さないようにする訓練もあった。

わたしにも婚約者ができた。
彼はあなたの側近候補の一人だった。
真面目な人だった。

やはり彼なのか、と思った。
もともと、知っていたから。

でも、わたしはあなたとの関わりが深いため、どう接すればよいかわからなかった。

それでもいい。
ただ、なんとなく、なるようになるとしか思わなかった。
彼も、それでいいと言ってくれた。
ゆっくり、お互いを知ろうと、言ってくれた。

きっと、わたしは目の前のことに必死だったのを知ってくれていたのだと思う。

彼の優しさが嬉しかった。
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