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1巻
1-3
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王太子妃殿下の目は怖い。人の内面まで観察するかのような光を持っていた。
その強い眼差しにわたしは一瞬、怯みそうになる。
「何から見せてくれるのかしら?」
彼女はゆっくりと微笑む。
わたしは可愛い小瓶を一つ取り、蓋を開けてタオルに透明の液を多めに垂らす。そして、そのタオルで自分の顔を拭いた。
「えっ?」
周囲が驚きの声を上げる。
実際に使いながら説明するとは思っていなかったのだろうか?
「これはクレンジングオイルです。肌の弱い方や妊娠されている方でも安心してお使いできます。一拭きでどんな化粧でも落ちますので、肌に負担をかけません。次は化粧水ですが、今回はこちらのパックを――」
「待って!」
突然、止められる。
なんだろうか? みんな、固まっていた。
「あなたの素肌、なんで綺麗なの……?」
「素肌を晒せるの?」
んっ? 肌? 人前で化粧をしていない肌を晒すのはダメだった? もしかしてわたし、やっちゃった?
「ちょっと、待って!! なんで、染みもそばかすもないの?」
「どんな手入れをしてますの?」
「えっと……普通にこちらにも置いています洗顔石鹸と化粧水を使っているだけです」
「成分は何!!」
ご婦人方の勢いが怖い。目がギラギラしている。鼻息も荒い!
王太子妃殿下と違う意味で怖い。
「えっ……と、アルーエとミツロウで作った石鹸です。アルーエは一般的に怪我に効能があると知られています。それにミツロウは乾燥を防ぐ効果があります。化粧水はヘルチから取れたものです。こちらも保湿力が高いとされています」
ふんふんと頷くご婦人方。
「こちらのピンクのものは、アルーエの同種になるハルーイから取れた成分で作ったパックです。こうして……」
マリーンが作ったパックを自分の顔に貼る。ショッキングピンクの色はド派手ではあるが、可愛い。
「目安は色がなくなるまでです。容器ごと少し湯煎して温めると、癒し効果も期待できます」
面白いことに、マリーンが開発したショッキングピンクの液体は乾燥すると色がなくなるのだ。
数分後に白い色になったそれをペリッと剥がすと、下からぷるぷるのお肌が……
「触らせてくださいまし!! ふぉっ!?」
とある公爵夫人の肉のついた指が、わたしの頬を突く。
「わたくしもいいかしら。まああああぁっっ!」
有名公爵夫人も突いてきた。それを皮切りに、ほぼ全員が近寄ってくる。そして頬を突いては、ブツブツと独り言を呟き、席に戻っていった。
王太子妃殿下は触りこそしなかったが、愉快そうにこちらを眺めている。
「妊婦のわたくしにも使えるのかしら?」
「もちろんでございます。誰もが使えるように作っておりますので」
「そう」
その後も、わたしたちは持ってきたものを紹介した。
後は――
「なかなかだったわ。これで終わりかしら?」
「最後に、こちらも紹介してもよろしいでしょうか?」
「あら、隠し玉があったの?」
王太子妃殿下が不思議そうな顔をする。
ここからが本番だ。このために来たのだ。
わたしはエリアナから飾りけのない茶色い小瓶を受け取り、王太子妃殿下の前に出す。
「こちらは、王太子殿下に特別に持ってきたものでございます」
直後、彼女の雰囲気が変わる。目つきも先ほどとは違う尖ったものになった。
きっと媚薬か何かだと疑っているのだろう。
王太子妃殿下は王太子殿下にべた惚れだと有名だから。
周囲からも「命知らず」という囁きが聞こえてきた。これ以上誤解が進まないよう、わたしは説明を始める。
「こちらはエフタール風邪の特効薬になります」
「……なっ!?」
ざわめきがぴたりとやんだ。
「こちらもご検討をお願いしたく存じます」
エリアナが片付けて何もなくなった机の上に小瓶を置く。
「ふふっ」
王太子妃殿下が唇を歪め、笑う。
お綺麗な顔立ちである分、その笑みには怖いものがあった。目にはなぜか憎しみに似た色が宿っている。
「ほんと、聞いていた通り小賢しいのね」
聞いていた通りとはなんだろうか? どうして、そんな目で見られるのか?
「リゼッタが可哀想だわ」
お姉様?
お姉様の名前が王太子妃殿下の口から出るとは思わなかった。息苦しくなる。
「意外かしら? リゼッタとは学園時代の親友なの」
学園時代の親友?
お姉様から聞いたことはなかった。わたしはお姉様の学園生活を知らない。
「サリーナは学園に行かないのだから、知らなくていいのよ」
いつもそう笑いながら、はぐらかされたのだ。
「我儘ばかりという噂は本当みたいね。先ほどのハリエルド商会の品物。あの匂いは堕胎剤の匂いよね。あなたがハリエルド商会を陥れるために頼んだのかしら?」
我儘ばかり? ハリエルド商会を陥れる?
違う。していない。
周囲の人たちがざわざわと話し始めた。
「バルトも可哀想だわ。あなたみたいな女を妻にするしかないなんて。リゼッタも可哀想。どうしてリゼッタが死んであなたが生きているのかしら?」
旦那様が可哀想……?
お姉様が可哀想……?
自分の鼓動がドクドクと大きい音を立てている。
王太子妃殿下が立ち上がり、ゆっくりと近づいてきた。目の前に来て、わたしを睨み付ける。
「リゼッタはよく言ってたわ。サリーナは家族の愛を独占したいからと我儘ばかりを言う。リゼッタや妹たちに意地悪までするって、泣いてもいたの。それでもリゼッタはあなたに優しくしていたはずよ」
家族の愛を独占?
そんな真似、したことがない。
家族のみんながわたしを無視していた。
お姉様だけが優しくしてくれて……、そんなお姉様に意地悪なんてしたことない。
「そんなあなたがバルトに愛されるはずがないでしょう。なのに、アルスターニ伯爵の威を借りてやりたい放題してるみたいね」
「やはり不仲説は正しかったのね」
「例の虐めの噂は本当でしたのね」
「まさか、リゼッタ様の病死は偽り?」
「サリーナ様が?」
ひそひそと交わされる会話。
違う!
そう叫びたかった。
でも、言葉が紡げない。怖くて。
そして理解できなかったから。
お姉様がわたしを悪く言っていたことが――
お姉様が言うわけはない。
いつも、わたしを守ってくれていた。わたしの味方だった。
それなのに、いない所ではわたしを貶していたの?
嘘嘘嘘っ! 嘘よ。
でも、王太子妃殿下が嘘をついていないのは、その目を見ればわかる。
やはりお姉様は、わたしを酷く言っていたの?
ただ、そう考えると腑に落ちることがある。旦那様がわたしを見向きもしない理由だ。
そうか、そうなのか……
「バルトに愛されないから、殿下も狙うわけ? こんなもので殿下をたぶらかそうなんて、最悪だわ。これは何? 媚薬なの? それとも危ない薬かしら?」
「……違い、ます。それは、本当にエフタール風邪の薬です。これで、この薬で、風邪の死者が減らせます。使用の認可が欲しいだけです」
信じてほしい。
ふいにパンッと頬が鳴った。王太子妃殿下に扇子で叩かれたのだ。
「信じられないわ。商品はともかく売主が信用ならない。サリー商会は信用に値しないということよ。少しはましかと思っていたけど残念だわ。信じることさえ無意味ね。さあ、お帰りなさい。帰って、これ以上バルトに恥をかかせないためにも身の振り方を考えることね」
足に力が入らず倒れそうになるわたしを、エリアナが支えてくれた。
「サリーナ、帰りましょう」
頬が痛い。
胸も痛かった。
折角のチャンスに何もできなかった。
わたしはやはり無力な人間なのだ。
わたしには兄と姉、妹と弟がいる。
いた、と言ってもいい。
勉強も剣技もできる優秀な五歳上の兄、ロイド。美しくて、聡明な三歳上の姉、リゼッタ。甘え上手で可愛い一歳年下の妹、エリーゼ。身体が弱くてすぐに熱を出す優しい三歳下の弟、アルク。
ちょうど真ん中にいるわたしは空気のような存在だ。
後継として期待される兄。世間からも注目されていた姉。父に溺愛されている妹。病弱な弟は甲斐甲斐しく母が看ていた。
手のかからない子供。それがわたし。
忘れても大丈夫。いなくても大丈夫。我儘を言っても聞いてもらえない。
逆に怒られるのだ。
「兄と姉の後だと言っているだろう」
「お前は姉なのだから、妹と弟を優先しろ」
わたしは兄と姉の後で。妹と弟はわたしより先に。
それが我が家のルールだ。
いつしか、彼らはわたしを見なくなっていた。
わたしは学園にも行っていないし、社交界にデビューもしていない。
学園に通うのはお金がかかりすぎると言われた。仕方なく、家庭教師をつけてもらい基礎だけを学んだ。それで家庭教師から褒められても、両親は当然のことだと言う。優秀な兄や姉をもっと見習え、と。
デビュタントは妹と一歳差なのだから一緒にすれば良いと言われたが、妹のデビューの時はすでに行ったことにされ、ドレスの用意すらなかった。
悲しい。
それをお姉様だけが慰めてくれたのだ。
兄にも、妹や弟にも見下されている。日頃の鬱憤をぶつける都合の良い存在と思われていた。
何をしてもダメなわたしは出来損ないだから。
ただ怒られないようにじっと息を殺して生きてきた。
いつも自分に自信がなくて、家族を前にすると言葉が出なくなる。
でもお姉様だけは違った。わたしを見てくれた。
わたしはお姉様に慰められながら生きていたのだ。
「サリーナは気が弱いから……でも大丈夫よ。わたしからお父様に言ってみるわね」
「無理をしなくていいのよ。わたしが力になってあげるからね」
「あなたはそのままでいいのよ、サリーナ」
「サリーナのためにわたしがいるのよ、安心して」
お姉様の声が聞こえてくる。
お姉様がいなくなって、どうすればいいかわからなかった。守ってくれていた腕がなくなったのだ。
怖くて、戸惑った。
それでも、お姉様に恥じないように生きようとしていた。お姉様がいたら……、お姉様なら……、そう考えて行動した。
お姉様を理想にして頑張ってきたのだ。
でも、みんなはわたしの後ろにお姉様を見る。死んだお姉様を見るその目が怖くて、わたしは自分の言いたいことが言えない。
努力していれば、いずれわたし自身を見てくれる。
ずっとそう思っていたのに、違った。
みんなが見てくれないのは、わたしのせいではなかったのだ。
お姉様は嘘をついていたのだろうか?
あのお姉様が、嘘を?
誰に? どんなふうに?
ううん、お姉様はそんなことしない。わたしの大事なお姉様はそんなことしない。
わたしを貶めようとしていたのだろうか? どうして?
ううん、するわけがない。
わたしを抱きしめてくれたもの。あの温もりは確かに本物だった。
頭の中がまとまらない。
今わかることは、わたしが失敗したことだけ。
夜会に行かないわたしにとって、このチャンスはかけがえのないものだったのに。
どんな形であれ薬に興味を持ってもらえれば、国王陛下まで声が届くと考えていたけれど、ダメだったのだ。
「――ごめん。エリアナ」
帰りの馬車の中、落胆しているように見えるエリアナに声をかける。
けれど落胆どころか、彼女は鼻息を荒くして怒っていた。小さな声で王太子妃殿下の悪口をぶつぶつ呟く。
わたし以外には誰もいないから、聞いていないふりをする。そのまま窓の外を見た。
喧騒が窓越しに聞こえてくるのに、わたしの心は虚しい。
「お姉様は……、わたしがお嫌いだったのかしら……」
信じていたものが全て崩れ落ちた気がしていた。
〈フレア〉
お茶会はとても気分良く終わった。
言いたいことが言えたのだ。ずっと思っていたことを。
大事な親友であるリゼッタを、わたくしは忘れない。
初めて彼女に会ったのは、学園に入学した日だった。同じクラスで隣に座った彼女。
金の髪が綺麗で印象的だった。窓ガラスから入る日の光が髪に当たりキラキラと輝いていたのだ。
リゼッタは明るく聡明な子だった。笑った顔を見て、花が綻ぶってこういうのを言うのだと感じるくらい。
身分がもっと上なら、彼女こそ王太子妃候補に入っていたはず。
でも、リゼッタはバルトが好きだった。政略的な婚約者同士だとは思えないくらいお互いを思い遣っていて、いつも一緒。羨ましく思ったのは一度や二度ではない。わたくしも王太子殿下――マトリック様とそんな関係を結びたいと思ったもの。
加えて、リゼッタの話は楽しかった。どこから話題を持ってくるのか不思議に思うほど。彼女の語るどんな話にも引き込まれた。
彼女と過ごした毎日は本当に楽しく充実していた。
そんな彼女の顔を時々、曇らせるのが、妹のサリーナについての話題だった。
「すぐ下の妹が暴れたの。あの子は寂しがりだから気を引こうとしてるのよね」
「学園? 行かないって駄々をこねたのよ。両親もお手上げみたい。でも、わたしはあの子と根気良く付き合っていくつもりよ」
「妹がデビューしなかった理由? ドレスが気に入らないんだって。似合ってるってわたしは言ったのよ。気分屋なの。次はもっといいものをすすめるつもりよ」
リゼッタは健気だった。
彼女のお兄様や下の妹、弟には会ったことがあるが、わたくしはサリーナとだけは面識がなかった。
一度、何かの折に遠目から見た時、美しい名馬の中に一頭だけロバがいるような印象を持ったのを覚えている。
わたくしたちは学園を卒業しても仲が良かった。よくお茶会もしていた。お互いになかなか進まない結婚に対して愚痴を言い合ったこともある。
ところが、結婚が一年後に迫った冬、エフタール風邪が流行ったのだ。
お父様が風邪にかかり、わたくしの家はバタバタしていた。
なかなか下がらない熱。どれだけ心配したか……
ようやくお父様の容体が回復した頃、リゼッタの死の報がもたらされる。
嘘だと思った。何かの間違いだと――
でもリゼッタは死んだ。
最後の別れで見たリゼッタは、ただ眠っているだけのようだった。
なのにじっと佇むサリーナの横顔に、無性に腹が立つ。
リゼッタがどうして死ななければならなかったの? 誰かが死ななければならないなら、サリーナでも良かったのでは?
リゼッタは今ここで死ぬべき人物ではなかったはず。
世の中の理とはなんなのか?
わたくしはサリーナを憎むことでしか、リゼッタの死が受け入れられなかった。
確かにサリーナの出した商品はどれも素晴らしいと感じた。でも所詮、取り繕ったものばかりの気がする。
それに、彼女はハリエルド商会の足を引っ張ろうとしていた。
匂いでわかったわ。あれがなんなのか。
わたくしの子供に害をなすなんてもってのほかよ。
不敬罪として牢に入れても良かったものの、流石にアルスターニ伯爵の名前に傷をつけるわけにはいかない。
でもあれなら、バルトも離婚を切り出しやすくなるわよね。
リゼッタ。わたくしはあなたのバルトを守ったわよ。
「――殿下、こちらはいかがいたしましょうか?」
侍女が茶色い小瓶を見せた。
なんでまだ持っているのかしら?
「エフタール風邪の特効薬と聞きました。これがあれば……」
「そんな嘘を信じるの?」
「ですが……」
侍女は口をつぐみ、項垂れる。
そういえば、彼女の夫はあの風邪で亡くなったのだったかしら? あれは特に庶民の間で蔓延したものね。
お父様もかかったけど、ちゃんと薬を飲んだから治ったわよ。苦いらしいけど。薬が買えないのがいけなかっただけじゃない。
リゼッタもきちんと飲めれば良かったのに……
買えなかった? ううん、そんなことないわ。貴族だもの。
じゃあ、何かの事情で飲めなくて……
そうよ、改善すべきはそこなのよ。
味を甘くするとか、飲みやすくするとか、そういったことだわ。
すでに薬があるのだから、わざわざ新しいものを作らなくていいじゃない。
王太子殿下に気に入られたいからと、サリーナはあんな嘘をついて、許せないわ。絶対に許せない。
「捨てなさい」
「……かしこまりました……」
侍女は一礼して去っていく。
わたくしはマトリック様のもとへ意気揚々と向かった。
「――リゼッタの言う通りの女だったわ」
マトリック様の執務室に入ると、わたくしは開口一番に告げた。
マトリック様もバルトも、何事かとこちらを見る。
わたくしはお茶会であったことを全て説明した。小瓶の中身についてだけは、気分が悪いから伝えない。マトリック様が喰いついて、あの女に興味を抱いてはいけないもの。
「王太子妃殿下。申し訳ありません」
バルトが立ち上がりばっと頭を下げる。
「あなたが謝る必要はないわ。全てあの女がしたことですもの」
手を強く握りしめて怒りを露わにしている彼に優しく言った。
バルトのせいではない。あの女がリゼッタを差し置いて幸せになろうとしているのが悪いのだ。
「フレア。本当に彼女はそんな女性だったのかい?」
マトリック様がわたくしを見つめて静かに聞いた。深くて美しい青い瞳がわたくしを見ている。
どうして、そんなことを言うのよ? わたくしを信じてくださらないの?
「アルスターニ伯爵夫人の兄、ロイドが先日、近衛隊に配置換えになっただろう。それで彼と話をするようになったんだ」
ロイド? あぁ、確かリゼッタのお兄様だったわよね。騎士として働いていたはず。優秀と聞いたことがあるわ。
学園時代、よくリゼッタが自慢の兄だと言っていた。彼は近衛兵になったのね。
「彼から聞いたものと、リゼッタ嬢から聞いたアルスターニ伯爵夫人の人物像とが、かけ離れているんだ」
なに、それ? そんなことが気になるの?
「いつもリゼッタ嬢の後ろに隠れているような物静かな女性だと、ロイドは言っていたが?」
「殿下は知らないから、義兄さんの言葉を鵜呑みにしているだけです」
「そうですわ。彼女、お茶会でもしっかり生意気なことを言ってましたっ!!」
どこが、物静かよ。マトリック様に取り入ろうとする雌豚じゃないの。思い出すだけでも腹が立つ。
その強い眼差しにわたしは一瞬、怯みそうになる。
「何から見せてくれるのかしら?」
彼女はゆっくりと微笑む。
わたしは可愛い小瓶を一つ取り、蓋を開けてタオルに透明の液を多めに垂らす。そして、そのタオルで自分の顔を拭いた。
「えっ?」
周囲が驚きの声を上げる。
実際に使いながら説明するとは思っていなかったのだろうか?
「これはクレンジングオイルです。肌の弱い方や妊娠されている方でも安心してお使いできます。一拭きでどんな化粧でも落ちますので、肌に負担をかけません。次は化粧水ですが、今回はこちらのパックを――」
「待って!」
突然、止められる。
なんだろうか? みんな、固まっていた。
「あなたの素肌、なんで綺麗なの……?」
「素肌を晒せるの?」
んっ? 肌? 人前で化粧をしていない肌を晒すのはダメだった? もしかしてわたし、やっちゃった?
「ちょっと、待って!! なんで、染みもそばかすもないの?」
「どんな手入れをしてますの?」
「えっと……普通にこちらにも置いています洗顔石鹸と化粧水を使っているだけです」
「成分は何!!」
ご婦人方の勢いが怖い。目がギラギラしている。鼻息も荒い!
王太子妃殿下と違う意味で怖い。
「えっ……と、アルーエとミツロウで作った石鹸です。アルーエは一般的に怪我に効能があると知られています。それにミツロウは乾燥を防ぐ効果があります。化粧水はヘルチから取れたものです。こちらも保湿力が高いとされています」
ふんふんと頷くご婦人方。
「こちらのピンクのものは、アルーエの同種になるハルーイから取れた成分で作ったパックです。こうして……」
マリーンが作ったパックを自分の顔に貼る。ショッキングピンクの色はド派手ではあるが、可愛い。
「目安は色がなくなるまでです。容器ごと少し湯煎して温めると、癒し効果も期待できます」
面白いことに、マリーンが開発したショッキングピンクの液体は乾燥すると色がなくなるのだ。
数分後に白い色になったそれをペリッと剥がすと、下からぷるぷるのお肌が……
「触らせてくださいまし!! ふぉっ!?」
とある公爵夫人の肉のついた指が、わたしの頬を突く。
「わたくしもいいかしら。まああああぁっっ!」
有名公爵夫人も突いてきた。それを皮切りに、ほぼ全員が近寄ってくる。そして頬を突いては、ブツブツと独り言を呟き、席に戻っていった。
王太子妃殿下は触りこそしなかったが、愉快そうにこちらを眺めている。
「妊婦のわたくしにも使えるのかしら?」
「もちろんでございます。誰もが使えるように作っておりますので」
「そう」
その後も、わたしたちは持ってきたものを紹介した。
後は――
「なかなかだったわ。これで終わりかしら?」
「最後に、こちらも紹介してもよろしいでしょうか?」
「あら、隠し玉があったの?」
王太子妃殿下が不思議そうな顔をする。
ここからが本番だ。このために来たのだ。
わたしはエリアナから飾りけのない茶色い小瓶を受け取り、王太子妃殿下の前に出す。
「こちらは、王太子殿下に特別に持ってきたものでございます」
直後、彼女の雰囲気が変わる。目つきも先ほどとは違う尖ったものになった。
きっと媚薬か何かだと疑っているのだろう。
王太子妃殿下は王太子殿下にべた惚れだと有名だから。
周囲からも「命知らず」という囁きが聞こえてきた。これ以上誤解が進まないよう、わたしは説明を始める。
「こちらはエフタール風邪の特効薬になります」
「……なっ!?」
ざわめきがぴたりとやんだ。
「こちらもご検討をお願いしたく存じます」
エリアナが片付けて何もなくなった机の上に小瓶を置く。
「ふふっ」
王太子妃殿下が唇を歪め、笑う。
お綺麗な顔立ちである分、その笑みには怖いものがあった。目にはなぜか憎しみに似た色が宿っている。
「ほんと、聞いていた通り小賢しいのね」
聞いていた通りとはなんだろうか? どうして、そんな目で見られるのか?
「リゼッタが可哀想だわ」
お姉様?
お姉様の名前が王太子妃殿下の口から出るとは思わなかった。息苦しくなる。
「意外かしら? リゼッタとは学園時代の親友なの」
学園時代の親友?
お姉様から聞いたことはなかった。わたしはお姉様の学園生活を知らない。
「サリーナは学園に行かないのだから、知らなくていいのよ」
いつもそう笑いながら、はぐらかされたのだ。
「我儘ばかりという噂は本当みたいね。先ほどのハリエルド商会の品物。あの匂いは堕胎剤の匂いよね。あなたがハリエルド商会を陥れるために頼んだのかしら?」
我儘ばかり? ハリエルド商会を陥れる?
違う。していない。
周囲の人たちがざわざわと話し始めた。
「バルトも可哀想だわ。あなたみたいな女を妻にするしかないなんて。リゼッタも可哀想。どうしてリゼッタが死んであなたが生きているのかしら?」
旦那様が可哀想……?
お姉様が可哀想……?
自分の鼓動がドクドクと大きい音を立てている。
王太子妃殿下が立ち上がり、ゆっくりと近づいてきた。目の前に来て、わたしを睨み付ける。
「リゼッタはよく言ってたわ。サリーナは家族の愛を独占したいからと我儘ばかりを言う。リゼッタや妹たちに意地悪までするって、泣いてもいたの。それでもリゼッタはあなたに優しくしていたはずよ」
家族の愛を独占?
そんな真似、したことがない。
家族のみんながわたしを無視していた。
お姉様だけが優しくしてくれて……、そんなお姉様に意地悪なんてしたことない。
「そんなあなたがバルトに愛されるはずがないでしょう。なのに、アルスターニ伯爵の威を借りてやりたい放題してるみたいね」
「やはり不仲説は正しかったのね」
「例の虐めの噂は本当でしたのね」
「まさか、リゼッタ様の病死は偽り?」
「サリーナ様が?」
ひそひそと交わされる会話。
違う!
そう叫びたかった。
でも、言葉が紡げない。怖くて。
そして理解できなかったから。
お姉様がわたしを悪く言っていたことが――
お姉様が言うわけはない。
いつも、わたしを守ってくれていた。わたしの味方だった。
それなのに、いない所ではわたしを貶していたの?
嘘嘘嘘っ! 嘘よ。
でも、王太子妃殿下が嘘をついていないのは、その目を見ればわかる。
やはりお姉様は、わたしを酷く言っていたの?
ただ、そう考えると腑に落ちることがある。旦那様がわたしを見向きもしない理由だ。
そうか、そうなのか……
「バルトに愛されないから、殿下も狙うわけ? こんなもので殿下をたぶらかそうなんて、最悪だわ。これは何? 媚薬なの? それとも危ない薬かしら?」
「……違い、ます。それは、本当にエフタール風邪の薬です。これで、この薬で、風邪の死者が減らせます。使用の認可が欲しいだけです」
信じてほしい。
ふいにパンッと頬が鳴った。王太子妃殿下に扇子で叩かれたのだ。
「信じられないわ。商品はともかく売主が信用ならない。サリー商会は信用に値しないということよ。少しはましかと思っていたけど残念だわ。信じることさえ無意味ね。さあ、お帰りなさい。帰って、これ以上バルトに恥をかかせないためにも身の振り方を考えることね」
足に力が入らず倒れそうになるわたしを、エリアナが支えてくれた。
「サリーナ、帰りましょう」
頬が痛い。
胸も痛かった。
折角のチャンスに何もできなかった。
わたしはやはり無力な人間なのだ。
わたしには兄と姉、妹と弟がいる。
いた、と言ってもいい。
勉強も剣技もできる優秀な五歳上の兄、ロイド。美しくて、聡明な三歳上の姉、リゼッタ。甘え上手で可愛い一歳年下の妹、エリーゼ。身体が弱くてすぐに熱を出す優しい三歳下の弟、アルク。
ちょうど真ん中にいるわたしは空気のような存在だ。
後継として期待される兄。世間からも注目されていた姉。父に溺愛されている妹。病弱な弟は甲斐甲斐しく母が看ていた。
手のかからない子供。それがわたし。
忘れても大丈夫。いなくても大丈夫。我儘を言っても聞いてもらえない。
逆に怒られるのだ。
「兄と姉の後だと言っているだろう」
「お前は姉なのだから、妹と弟を優先しろ」
わたしは兄と姉の後で。妹と弟はわたしより先に。
それが我が家のルールだ。
いつしか、彼らはわたしを見なくなっていた。
わたしは学園にも行っていないし、社交界にデビューもしていない。
学園に通うのはお金がかかりすぎると言われた。仕方なく、家庭教師をつけてもらい基礎だけを学んだ。それで家庭教師から褒められても、両親は当然のことだと言う。優秀な兄や姉をもっと見習え、と。
デビュタントは妹と一歳差なのだから一緒にすれば良いと言われたが、妹のデビューの時はすでに行ったことにされ、ドレスの用意すらなかった。
悲しい。
それをお姉様だけが慰めてくれたのだ。
兄にも、妹や弟にも見下されている。日頃の鬱憤をぶつける都合の良い存在と思われていた。
何をしてもダメなわたしは出来損ないだから。
ただ怒られないようにじっと息を殺して生きてきた。
いつも自分に自信がなくて、家族を前にすると言葉が出なくなる。
でもお姉様だけは違った。わたしを見てくれた。
わたしはお姉様に慰められながら生きていたのだ。
「サリーナは気が弱いから……でも大丈夫よ。わたしからお父様に言ってみるわね」
「無理をしなくていいのよ。わたしが力になってあげるからね」
「あなたはそのままでいいのよ、サリーナ」
「サリーナのためにわたしがいるのよ、安心して」
お姉様の声が聞こえてくる。
お姉様がいなくなって、どうすればいいかわからなかった。守ってくれていた腕がなくなったのだ。
怖くて、戸惑った。
それでも、お姉様に恥じないように生きようとしていた。お姉様がいたら……、お姉様なら……、そう考えて行動した。
お姉様を理想にして頑張ってきたのだ。
でも、みんなはわたしの後ろにお姉様を見る。死んだお姉様を見るその目が怖くて、わたしは自分の言いたいことが言えない。
努力していれば、いずれわたし自身を見てくれる。
ずっとそう思っていたのに、違った。
みんなが見てくれないのは、わたしのせいではなかったのだ。
お姉様は嘘をついていたのだろうか?
あのお姉様が、嘘を?
誰に? どんなふうに?
ううん、お姉様はそんなことしない。わたしの大事なお姉様はそんなことしない。
わたしを貶めようとしていたのだろうか? どうして?
ううん、するわけがない。
わたしを抱きしめてくれたもの。あの温もりは確かに本物だった。
頭の中がまとまらない。
今わかることは、わたしが失敗したことだけ。
夜会に行かないわたしにとって、このチャンスはかけがえのないものだったのに。
どんな形であれ薬に興味を持ってもらえれば、国王陛下まで声が届くと考えていたけれど、ダメだったのだ。
「――ごめん。エリアナ」
帰りの馬車の中、落胆しているように見えるエリアナに声をかける。
けれど落胆どころか、彼女は鼻息を荒くして怒っていた。小さな声で王太子妃殿下の悪口をぶつぶつ呟く。
わたし以外には誰もいないから、聞いていないふりをする。そのまま窓の外を見た。
喧騒が窓越しに聞こえてくるのに、わたしの心は虚しい。
「お姉様は……、わたしがお嫌いだったのかしら……」
信じていたものが全て崩れ落ちた気がしていた。
〈フレア〉
お茶会はとても気分良く終わった。
言いたいことが言えたのだ。ずっと思っていたことを。
大事な親友であるリゼッタを、わたくしは忘れない。
初めて彼女に会ったのは、学園に入学した日だった。同じクラスで隣に座った彼女。
金の髪が綺麗で印象的だった。窓ガラスから入る日の光が髪に当たりキラキラと輝いていたのだ。
リゼッタは明るく聡明な子だった。笑った顔を見て、花が綻ぶってこういうのを言うのだと感じるくらい。
身分がもっと上なら、彼女こそ王太子妃候補に入っていたはず。
でも、リゼッタはバルトが好きだった。政略的な婚約者同士だとは思えないくらいお互いを思い遣っていて、いつも一緒。羨ましく思ったのは一度や二度ではない。わたくしも王太子殿下――マトリック様とそんな関係を結びたいと思ったもの。
加えて、リゼッタの話は楽しかった。どこから話題を持ってくるのか不思議に思うほど。彼女の語るどんな話にも引き込まれた。
彼女と過ごした毎日は本当に楽しく充実していた。
そんな彼女の顔を時々、曇らせるのが、妹のサリーナについての話題だった。
「すぐ下の妹が暴れたの。あの子は寂しがりだから気を引こうとしてるのよね」
「学園? 行かないって駄々をこねたのよ。両親もお手上げみたい。でも、わたしはあの子と根気良く付き合っていくつもりよ」
「妹がデビューしなかった理由? ドレスが気に入らないんだって。似合ってるってわたしは言ったのよ。気分屋なの。次はもっといいものをすすめるつもりよ」
リゼッタは健気だった。
彼女のお兄様や下の妹、弟には会ったことがあるが、わたくしはサリーナとだけは面識がなかった。
一度、何かの折に遠目から見た時、美しい名馬の中に一頭だけロバがいるような印象を持ったのを覚えている。
わたくしたちは学園を卒業しても仲が良かった。よくお茶会もしていた。お互いになかなか進まない結婚に対して愚痴を言い合ったこともある。
ところが、結婚が一年後に迫った冬、エフタール風邪が流行ったのだ。
お父様が風邪にかかり、わたくしの家はバタバタしていた。
なかなか下がらない熱。どれだけ心配したか……
ようやくお父様の容体が回復した頃、リゼッタの死の報がもたらされる。
嘘だと思った。何かの間違いだと――
でもリゼッタは死んだ。
最後の別れで見たリゼッタは、ただ眠っているだけのようだった。
なのにじっと佇むサリーナの横顔に、無性に腹が立つ。
リゼッタがどうして死ななければならなかったの? 誰かが死ななければならないなら、サリーナでも良かったのでは?
リゼッタは今ここで死ぬべき人物ではなかったはず。
世の中の理とはなんなのか?
わたくしはサリーナを憎むことでしか、リゼッタの死が受け入れられなかった。
確かにサリーナの出した商品はどれも素晴らしいと感じた。でも所詮、取り繕ったものばかりの気がする。
それに、彼女はハリエルド商会の足を引っ張ろうとしていた。
匂いでわかったわ。あれがなんなのか。
わたくしの子供に害をなすなんてもってのほかよ。
不敬罪として牢に入れても良かったものの、流石にアルスターニ伯爵の名前に傷をつけるわけにはいかない。
でもあれなら、バルトも離婚を切り出しやすくなるわよね。
リゼッタ。わたくしはあなたのバルトを守ったわよ。
「――殿下、こちらはいかがいたしましょうか?」
侍女が茶色い小瓶を見せた。
なんでまだ持っているのかしら?
「エフタール風邪の特効薬と聞きました。これがあれば……」
「そんな嘘を信じるの?」
「ですが……」
侍女は口をつぐみ、項垂れる。
そういえば、彼女の夫はあの風邪で亡くなったのだったかしら? あれは特に庶民の間で蔓延したものね。
お父様もかかったけど、ちゃんと薬を飲んだから治ったわよ。苦いらしいけど。薬が買えないのがいけなかっただけじゃない。
リゼッタもきちんと飲めれば良かったのに……
買えなかった? ううん、そんなことないわ。貴族だもの。
じゃあ、何かの事情で飲めなくて……
そうよ、改善すべきはそこなのよ。
味を甘くするとか、飲みやすくするとか、そういったことだわ。
すでに薬があるのだから、わざわざ新しいものを作らなくていいじゃない。
王太子殿下に気に入られたいからと、サリーナはあんな嘘をついて、許せないわ。絶対に許せない。
「捨てなさい」
「……かしこまりました……」
侍女は一礼して去っていく。
わたくしはマトリック様のもとへ意気揚々と向かった。
「――リゼッタの言う通りの女だったわ」
マトリック様の執務室に入ると、わたくしは開口一番に告げた。
マトリック様もバルトも、何事かとこちらを見る。
わたくしはお茶会であったことを全て説明した。小瓶の中身についてだけは、気分が悪いから伝えない。マトリック様が喰いついて、あの女に興味を抱いてはいけないもの。
「王太子妃殿下。申し訳ありません」
バルトが立ち上がりばっと頭を下げる。
「あなたが謝る必要はないわ。全てあの女がしたことですもの」
手を強く握りしめて怒りを露わにしている彼に優しく言った。
バルトのせいではない。あの女がリゼッタを差し置いて幸せになろうとしているのが悪いのだ。
「フレア。本当に彼女はそんな女性だったのかい?」
マトリック様がわたくしを見つめて静かに聞いた。深くて美しい青い瞳がわたくしを見ている。
どうして、そんなことを言うのよ? わたくしを信じてくださらないの?
「アルスターニ伯爵夫人の兄、ロイドが先日、近衛隊に配置換えになっただろう。それで彼と話をするようになったんだ」
ロイド? あぁ、確かリゼッタのお兄様だったわよね。騎士として働いていたはず。優秀と聞いたことがあるわ。
学園時代、よくリゼッタが自慢の兄だと言っていた。彼は近衛兵になったのね。
「彼から聞いたものと、リゼッタ嬢から聞いたアルスターニ伯爵夫人の人物像とが、かけ離れているんだ」
なに、それ? そんなことが気になるの?
「いつもリゼッタ嬢の後ろに隠れているような物静かな女性だと、ロイドは言っていたが?」
「殿下は知らないから、義兄さんの言葉を鵜呑みにしているだけです」
「そうですわ。彼女、お茶会でもしっかり生意気なことを言ってましたっ!!」
どこが、物静かよ。マトリック様に取り入ろうとする雌豚じゃないの。思い出すだけでも腹が立つ。
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