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番外編.レフリー両親
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三男は私たちを捨てた。
そうさせたのは紛れもなく私たちである。
だがあの時は自分たちの精神も弱っていた。
長男のタナルーシアが亡くなり、ヤトリの婚約者も亡くなり、全てにおいて茫然自失状態。
「どうして!どうして助けてくれなかったのよ。どうして今なのよ!彼は言ってたわ!!優秀な弟なんだって!!なんで、彼が死ななきゃならなかったのよ!彼を生き返らせなさいよ!!」
タナルーシアの婚約者だったフラナがレイフリードに叫ぶ声が忘れたくとも忘れさせてくれなかった。
レイフリード・・・。
もっと早く・・・。
思ってはダメだと思っても思ってしまった。
怒涛の毎日だった。
生きるのに必死だった。
ただただ前を歩かなければ・・・、そんな思いで生きていた。
そんな中でマデリーンの妊娠がわかった。
相手は婚約者であるレイフリードではなくヤトリ。
驚いた。
そんなことがあっていいのだろうか・・・。
でも、あの時はどうかしていたのだろう。
世間体があるにせよ、喜びが優って、レイフリードの気持ちも置き去りにして、ヤトリとマデリーンの結婚を認めてしまった。
少し落ち着いたころ、レイフリードはいなくなっていた。
いなくなってからやっと冷静に考えることができた。
なんて事をしたのだろうーと。
探した。だが見つからなかった。
幾ら探してもわからなかった。
だが、いつまでも探してはいられなかった。孫が生まれ、騒がしくなったのだ。
でもその頃から、私たちは後ろ指を刺されている事に気づいた。
なんで、もっと早く気づかなかったのか・・・。
三男の婚約者を寝取り妊娠までさせたヤトリ。婚前だというのに自分の婚約者の兄に色仕掛けをして簡単に股を開くマデリーン。そして、レイフリードを屋敷から追い出し、二人の仲を当然のように認めた親。
非難に満ちた視線を感じた。
外に出るのも気遣うようになった。パーティーにも呼ばれることはなくなった。
人々の噂話をする姿を見るたびに疑心暗鬼に陥った。
それでも、鋼の心を持っているらしいマデリーンは厚顔無恥にもで歩いていた。
彼女の両親も兄妹でさえも身を縮め過ごしているというのに・・・。
そんな苦しい思いをしていた3年後、風の噂でレイフリードが帰ってきた事を聞いた。
だから会いに行った。
以前より大人びた姿。
色白さや細身の身体つきはあまり変わっていないように思えたが、眼差しだけは変わっていた。
レイフリードは一人の女性を愛おしそうに見ていた。
あぁ、大事な人ができたのか・・・。
素直に喜んだ。
これで、何もかも元通りになるかもしれない。
そんな思いも束の間、レイフリードはアズセル伯爵から除籍して欲しいと言ってきた。
そんな・・・。
どんなに説得しようと、レイフリードの意思は固かった。
この女の所為か?
アルザス国からきたこの女がそうさせているのか?
やっと会えたと言うのに・・・。
レイフリードの意思は覆すことはできなかった。
仕方なく除籍にした。
だが、すぐにレイフリードは皇帝陛下から爵位をもらった。
エフタール風邪の薬を作っているとも聞いた。
噂好きの女性はたくさんいる。
そこからたくさんの話を聞いた。
流石、私の息子。
鼻が高くなる。
子供?
新薬の実験?
私の孫を危険に晒すなんて!
あの女に腹がたった。
イライラやもどかしさなどが湧いてきた。
それをマデリーンに呟く。
ヤトリは『関わらないでおいてやれ』とは言う。
でも、ヤトリ。
レイフリードが帰っきたら、いえ、少しでも金銭的援助をしてくれたなら、昔のような栄光だった頃とまではいわないが、惨めな思いはしないはずな・・・。
マデリーンがレイフリードの住む屋敷へと行ってきた。
うまくいったと思った。
私では門前払いされるのがオチだから。マデリーンなら、あの手この手でまかり通るだろうと思ったいたから。こんな時だけは頼りになる。
そう思っていたのだが、それもダメだった。
マデリーンは売り言葉に買い言葉のようにレイフリードに関わらない事を宣言して帰ってきたのだ。
何してるのよ!!
どうするの?
ヤトリの受身的な優しさでではどうにもならなかった。事業もうまくいっていない。
弱気な性分が舐められている。
次第にマデリーンとの喧嘩も激しくなっていった。
『もっと稼いでよ』
『君も協力してくれ』
『嫌よ。どうしてわたしが!!』
『夫婦だろう』
『夫婦でも嫌なものは嫌よ。第一肩身が狭いのよ!』
『僕らの行いに対するつけだろ』
『知らないわよ!!』
私は怯えて泣く子供を抱きしめた。
暫くしてマデリーンは出て行ったまま帰ってこなかった。
二人は離婚した。
『母様たちもこれ以上、レイに関わらないであげてください。僕は大変でも地道にやっていくから。本当・・・、失われた信用を取り戻すのは大変だね』
ヤトリは力なく笑っていた。
ヤトリの顔を見て、あぁ、そうか・・・と、思った。
親子であっても失った関係はなかなか取り戻せないのだと。
だからレイフリードは私たちを捨てたんだと。
そしてこの時、気がついた。
私たちはレイフリードにまだ謝っていなかったのだと。
ずっと自分たちのことばかりで、ヤトリやレイフリードを見ていなかったのだと。
これが親といえようか・・・。
私たちはレイフリードの子供に会えないだろう。
もう一度関係を・・・とは思いもしたがやめた。
関わらないでいることがレイフリードにとっての1番の幸せだと思ったからー。
そうさせたのは紛れもなく私たちである。
だがあの時は自分たちの精神も弱っていた。
長男のタナルーシアが亡くなり、ヤトリの婚約者も亡くなり、全てにおいて茫然自失状態。
「どうして!どうして助けてくれなかったのよ。どうして今なのよ!彼は言ってたわ!!優秀な弟なんだって!!なんで、彼が死ななきゃならなかったのよ!彼を生き返らせなさいよ!!」
タナルーシアの婚約者だったフラナがレイフリードに叫ぶ声が忘れたくとも忘れさせてくれなかった。
レイフリード・・・。
もっと早く・・・。
思ってはダメだと思っても思ってしまった。
怒涛の毎日だった。
生きるのに必死だった。
ただただ前を歩かなければ・・・、そんな思いで生きていた。
そんな中でマデリーンの妊娠がわかった。
相手は婚約者であるレイフリードではなくヤトリ。
驚いた。
そんなことがあっていいのだろうか・・・。
でも、あの時はどうかしていたのだろう。
世間体があるにせよ、喜びが優って、レイフリードの気持ちも置き去りにして、ヤトリとマデリーンの結婚を認めてしまった。
少し落ち着いたころ、レイフリードはいなくなっていた。
いなくなってからやっと冷静に考えることができた。
なんて事をしたのだろうーと。
探した。だが見つからなかった。
幾ら探してもわからなかった。
だが、いつまでも探してはいられなかった。孫が生まれ、騒がしくなったのだ。
でもその頃から、私たちは後ろ指を刺されている事に気づいた。
なんで、もっと早く気づかなかったのか・・・。
三男の婚約者を寝取り妊娠までさせたヤトリ。婚前だというのに自分の婚約者の兄に色仕掛けをして簡単に股を開くマデリーン。そして、レイフリードを屋敷から追い出し、二人の仲を当然のように認めた親。
非難に満ちた視線を感じた。
外に出るのも気遣うようになった。パーティーにも呼ばれることはなくなった。
人々の噂話をする姿を見るたびに疑心暗鬼に陥った。
それでも、鋼の心を持っているらしいマデリーンは厚顔無恥にもで歩いていた。
彼女の両親も兄妹でさえも身を縮め過ごしているというのに・・・。
そんな苦しい思いをしていた3年後、風の噂でレイフリードが帰ってきた事を聞いた。
だから会いに行った。
以前より大人びた姿。
色白さや細身の身体つきはあまり変わっていないように思えたが、眼差しだけは変わっていた。
レイフリードは一人の女性を愛おしそうに見ていた。
あぁ、大事な人ができたのか・・・。
素直に喜んだ。
これで、何もかも元通りになるかもしれない。
そんな思いも束の間、レイフリードはアズセル伯爵から除籍して欲しいと言ってきた。
そんな・・・。
どんなに説得しようと、レイフリードの意思は固かった。
この女の所為か?
アルザス国からきたこの女がそうさせているのか?
やっと会えたと言うのに・・・。
レイフリードの意思は覆すことはできなかった。
仕方なく除籍にした。
だが、すぐにレイフリードは皇帝陛下から爵位をもらった。
エフタール風邪の薬を作っているとも聞いた。
噂好きの女性はたくさんいる。
そこからたくさんの話を聞いた。
流石、私の息子。
鼻が高くなる。
子供?
新薬の実験?
私の孫を危険に晒すなんて!
あの女に腹がたった。
イライラやもどかしさなどが湧いてきた。
それをマデリーンに呟く。
ヤトリは『関わらないでおいてやれ』とは言う。
でも、ヤトリ。
レイフリードが帰っきたら、いえ、少しでも金銭的援助をしてくれたなら、昔のような栄光だった頃とまではいわないが、惨めな思いはしないはずな・・・。
マデリーンがレイフリードの住む屋敷へと行ってきた。
うまくいったと思った。
私では門前払いされるのがオチだから。マデリーンなら、あの手この手でまかり通るだろうと思ったいたから。こんな時だけは頼りになる。
そう思っていたのだが、それもダメだった。
マデリーンは売り言葉に買い言葉のようにレイフリードに関わらない事を宣言して帰ってきたのだ。
何してるのよ!!
どうするの?
ヤトリの受身的な優しさでではどうにもならなかった。事業もうまくいっていない。
弱気な性分が舐められている。
次第にマデリーンとの喧嘩も激しくなっていった。
『もっと稼いでよ』
『君も協力してくれ』
『嫌よ。どうしてわたしが!!』
『夫婦だろう』
『夫婦でも嫌なものは嫌よ。第一肩身が狭いのよ!』
『僕らの行いに対するつけだろ』
『知らないわよ!!』
私は怯えて泣く子供を抱きしめた。
暫くしてマデリーンは出て行ったまま帰ってこなかった。
二人は離婚した。
『母様たちもこれ以上、レイに関わらないであげてください。僕は大変でも地道にやっていくから。本当・・・、失われた信用を取り戻すのは大変だね』
ヤトリは力なく笑っていた。
ヤトリの顔を見て、あぁ、そうか・・・と、思った。
親子であっても失った関係はなかなか取り戻せないのだと。
だからレイフリードは私たちを捨てたんだと。
そしてこの時、気がついた。
私たちはレイフリードにまだ謝っていなかったのだと。
ずっと自分たちのことばかりで、ヤトリやレイフリードを見ていなかったのだと。
これが親といえようか・・・。
私たちはレイフリードの子供に会えないだろう。
もう一度関係を・・・とは思いもしたがやめた。
関わらないでいることがレイフリードにとっての1番の幸せだと思ったからー。
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