全てを捨てて、わたしらしく生きていきます。

彩華(あやはな)

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番外編.エリーゼ

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 ううっ~っ!

 なんでなんで??

 なんでこうなったのよ~。

 わたしは学園を卒業したのよ!!

 サリーナとはが違うのよ!!

 

 

 お父様は優しかった。

 わたしの欲しいと言うものは大概買ってくれたし、やりたくないことなどは、無理にしなくてもいいと言ってくれた。

 リゼッタお姉様は優秀だったし、お綺麗だったから、そりゃあ、わたしは負けているとは思ったけど、サリーナにはいると思っている。

 だって、お父様にいっぱい愛されているし、可愛いって言ってくれるし、わたしの方が『賢い』って言ってくれたから。

 たかだか、一歳しか変わらないもの、見た目も平凡なサリーナなんて『お姉様』と呼ぶ価値もないと思っていた。

 だから、サリーナができていた事はわたしにもできるって思って、サリーナの商会を奪った。
 でも・・・・・・、できなかった。

 商会の仕事って大変なんだ。

 『帳簿』『出納』『納品』?

 知らない単語がいっぱいあるし、どうすればいいのかわからないことばかりだった。

 エリアナという、つっけんどんした女がいた時は良かったけど、居なくなってからはもうダメだった。

 誰かがしてくれると思っていたけど、誰もしてくれない。
 えっ?どうすればいいの?状態。

 注文?
 いつ、誰が?誰に???

 どうやって?どんなふうに?

 わたしがしなくてもいいじゃない!

 誰かが・・・。知ってる人が、作る人がすればいいんじゃないの?

 それは人を増やしても、設備を整えても変わらなかった。

 変わったのは借金が増えていくことだけ。

 お父様も顔を歪めつつ『大丈夫だ。エリーゼなら』と言うだけ。
 当てにもならない。

 もう!!

 しっかりしてよ!!

 って感じだった。


 それで、潰れた。
 どうにもならなかった。

 借金だけが残った。

 どうしよう・・・。

 どうにかなるよね?
 
 家にはお金あるよね。

 貧乏じゃないもの。

 
 仕事を失敗して、商会にいた人たちから何やかんやと言われたことが1番こたえたので、ゆっくり休むために部屋にこもっていた。

 やっぱり、自分の部屋が安心する。

 そう思っていたら、弟のアルクがとんでもないことを言ってきた。

 わたしの学園時代の成績のことを。
 学園に行ってないくせに!!

 わたしが成績が悪いのはエフタール風邪のせいで授業がまともになかったからなのに!
 
 そう反論しようとする前に、『礼儀作法は匙を投げられた』と。

 えっ?

 先生が『もういいです。時間もとれませんからこの辺にしておきます』って言ってたのは・・・あれ、上級マナーまではできないって事なんじゃあ・・・なかったの。教えても無駄だったからっていう意味だったの?
 
 真実に呆然とする中、トドメの言葉がきた。

 なんと、バルセルト伯爵家に嫁げって。

 20歳も年上のくそ親父じゃない。

 嫌よ!
 
 絶対、いや!!



 でも、どうする事もできなかった。
 逃げられずに引き摺られるようにして・・・。


 ハゲ!
 やっぱりハゲ!

 つるっピカのハゲデブじゃない!

 いくらお金があっても嫌!

 無理やり馬車に押し込めれて、伯爵家の屋敷に向かわされた。着いて引き摺られるように部屋に案内されたから、すぐに籠城してやったわ!椅子やダンスでバリケードを作って!!

 でも、ミスした。

 食べ物も飲み物もない!

 忘れてた!

 どうしよう。
 夜に内緒に部屋を出て・・・と思ったのに、部屋の前に見張りがいるし、2階だから出られないし・・・もうっ!

 どうしよう・・・。

 まだ2日も経ってない・・・。

 でもお腹すいた。紅茶が飲みたい!お菓子が欲しい・・・。


 コンコンと扉がなる。

「おやつなどいかがですか?」

 おやつ!?

 いるいる。でも、そう簡単な女じゃないわよ。学園卒業した、エリーゼ様よ!

「そこにおいて、下がって!!」
「・・・わかりました」
 
 ふふん。

 無理やりはできないみたいね。

 誰もいなくなったかしら?

 バリケードを少しだけ動かし、扉に耳をあてる。
 静かね。

 そっと扉を開いて床に置いてあるおぼんを 引き入れた。

 バリケードを直し、改めておぼんを机に置いた。

 うわぁ、美味しそうなクッキー!!
 
 口に入れるとサクサクした。 
 
 美味しすぎる。
 こんなものが毎日でてくるの?

 裕福な暮らしてるのね。

 紅茶も美味しい。

 はぁ、癒される。

 お腹が満たされたのか眠くなってきた。

 少し・・・寝ま・・・しょ、う。



 
 って、起きたら知らないブヨブヨ男が隣にいるじゃない!
 なになに!

 えっ、服は?
 裸?

 嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘!
 
 やめてやめてやめてやめてやめて!

 ありえないんだけど! 
 
 誰か夢だと言って!

「おぉ、わが花嫁、起きたか?」

 ひっ?

 ガマガエル?


 ヤダヤダ!

「可愛がってやろう」
 
 
 わたしは声にならない悲鳴を上げることになった。




 わたしはすぐに妊娠した。

 女の子を産んだ。

 子育てはメイドたちに任された。

 わたしは抱く事もできなかった。

 悪露が治り、医者から許可が出ると再び、後継者の為と子作りが始まった。

 次も女の子。

 後継の為とまた・・・。

 次は流産・・・。

 次は・・・待望の男の子。

 終わったと思ったものの、以前死んでしまった跡取りのこともあり、もう一人欲しいと・・・。

 女をなんだと思っているのよ!

 どうにかこうにか、最後に男児を出産したあと、わたしは捨てられた。

 その頃には実際の年齢より皺も増え、白髪も目立っていた。

 女としての魅力がないとまで言われた。

 すがりついた。
 このまま放り出されたら生きていけない!

 なんとか伯爵は下働きとして雇ってくれた。

 子供たちには新しい若い女性が母親としてくるから実母と名乗るなといわれた・・・。

 子育てもしていないわたしを母親と認識していない子供。

 母親としての気持ちなど湧いてこないわたし。

 ただ生きていくためならどうでもよかった。

 


 ふと、思い出すことがある。

 サリーナの事を。

 全てを捨ててどこかへ行ったサリーナを。

 今何をしているのだろうと。

 わたしより惨めだといいなって思うのに、心のどこかでは、強く生きているサリーナはきっと幸せにいきているのではないかと思ってしまうことがある。

 なぜなら、最後に会った時サリーナは笑っていたのだから。
 その笑みが印象的で・・・。

 どんなに大変でも笑いながら生きている気がする。

 なぜか羨ましかった。
 でも憎いという気持ちはなかった。

 ただ羨ましかった。

 わたしもあんな風に笑ってみたかった。




 サリーナ・・・、お姉ちゃん・・・。
 
 

 
 
 

 
 
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