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日に日に暖かくなっている。
太陽の光は冷たいものから優しい光になり、風も花の匂いを送ってくるようになった。
先日は蜂が花の蜜を求めて飛んでいた。
だいぶ膨らんだお腹を撫ぜながら洗濯を取り込んでいた。
薬作りもほぼ終わりを迎得ている為、ゆっくりした時間が過ごせるようになっていた。
エフタール風邪の患者は少しずつ減ってきているとオーランド様が言っていた。
アルスター二伯領で取れる薬草は既になくなった為生産は終わり、新薬作りの方も1日置きと、かなり減っている。
今まで休みなく働いてくれた作業員は気が抜けたのかバタバタと熱を出して倒れたが、みんなエフタール風邪ではなく疲労からのただの風邪であった。
見舞いに赴いたエリアナ曰く、みんな満足そうに睡眠を貪っていたらしい。
やっと春がきた。
そう思わせてくれる。
ポコポコと動くお腹が愛おしい。
「リサさん、気持ちいいですね」
とある作業員の奥さんが言ってきた。
「春ですね」
「春ですね。やっと落ちつきますね」
そんなやりとりすら楽しく感じた。
そんな日の数日後、いつものように洗濯を干していると、レフリーにとある女性の訪問があった。
馬車から降り立ったその人は横柄な立ち振る舞いをした。
「レイフリード様はいるかしら?」
誰だろう?
見た目は可愛らしい方ではあるが態度で損をしているように見えた。
「夫に何か御用でしょうか?」
そう言うと、彼女はわたしを鼻で笑ってきた。
「へぇ~。あなたが子供のことも考えずに新薬を試した最悪女か~。レイフリードが可哀想だわ」
胸がチクリとした。
後先考えない行動はいつまでもついて回るものだと思い知らされる。
でも、過去は変えられないのだから、しっかりと受け入れ向き合わなくてはならない。
わたしは真正面から彼女を見返した。
「どちら様でしょうか?」
ふんっと彼女は鼻を鳴らす。
「マデリーン。レイフリードの元婚約者ですわ」
小ぶりの唇の端がくいっと持ち上がった。
人を馬鹿にするような笑みに見えた。
この人がレフリーの・・・。
そう思ってしまう。
「そうですか。そのマデリーン様がどのような御用でしょうか?レフリーとは関係はもうありませんが?」
冷静を装う。
レフリーは実家である伯爵とは縁を切っているのだから、関係はない。
それなのに、なんの用事なのか?
彼女の笑顔が不安を誘う。
「あなたには関係ないでしょう。レイフリードに用事があるのよ」
きっと睨むように見てきた。
「マデリーン。なぜ君が?」
後ろからレフリーがやってきた。
一緒に洗濯干をしていた誰がレフリーを呼びに行ってくれたのだろう。
マデリーン様はレフリーを見てまるで少女のような笑みを向けた。
既に人妻であるはずなのに、恋人のような顔を向ける神経がわからない。
対象にレフリーは害虫を見るよう眼差しを向けていた。
その顔に気づいていないのが、マデリーン様は猫撫で声をかけてきた。
「レイフリード、久しぶりね。会いたかったわ」
「僕は会いたくなかったよ」
わたしでさえ聞いたことのないような冷静かつ冷たい声。
「えぇ~。そんなこと言わないでよ。婚約者だったでしょう?」
「昔の話だよ。君がヤトリ兄さんの子供を身籠ったから、婚約破棄したろ?」
「そうだけど~」
悪気のない声。
どんな神経をしているのか?
そして、マデリーン様はとんでもない発言をかましてくれたのだった。
「ねぇ、レイフリード。大事なお兄様であるヤトリと私の為に資金援助してくれるわよね?」
首を傾げながら彼女はにこやかに言い退けた。
太陽の光は冷たいものから優しい光になり、風も花の匂いを送ってくるようになった。
先日は蜂が花の蜜を求めて飛んでいた。
だいぶ膨らんだお腹を撫ぜながら洗濯を取り込んでいた。
薬作りもほぼ終わりを迎得ている為、ゆっくりした時間が過ごせるようになっていた。
エフタール風邪の患者は少しずつ減ってきているとオーランド様が言っていた。
アルスター二伯領で取れる薬草は既になくなった為生産は終わり、新薬作りの方も1日置きと、かなり減っている。
今まで休みなく働いてくれた作業員は気が抜けたのかバタバタと熱を出して倒れたが、みんなエフタール風邪ではなく疲労からのただの風邪であった。
見舞いに赴いたエリアナ曰く、みんな満足そうに睡眠を貪っていたらしい。
やっと春がきた。
そう思わせてくれる。
ポコポコと動くお腹が愛おしい。
「リサさん、気持ちいいですね」
とある作業員の奥さんが言ってきた。
「春ですね」
「春ですね。やっと落ちつきますね」
そんなやりとりすら楽しく感じた。
そんな日の数日後、いつものように洗濯を干していると、レフリーにとある女性の訪問があった。
馬車から降り立ったその人は横柄な立ち振る舞いをした。
「レイフリード様はいるかしら?」
誰だろう?
見た目は可愛らしい方ではあるが態度で損をしているように見えた。
「夫に何か御用でしょうか?」
そう言うと、彼女はわたしを鼻で笑ってきた。
「へぇ~。あなたが子供のことも考えずに新薬を試した最悪女か~。レイフリードが可哀想だわ」
胸がチクリとした。
後先考えない行動はいつまでもついて回るものだと思い知らされる。
でも、過去は変えられないのだから、しっかりと受け入れ向き合わなくてはならない。
わたしは真正面から彼女を見返した。
「どちら様でしょうか?」
ふんっと彼女は鼻を鳴らす。
「マデリーン。レイフリードの元婚約者ですわ」
小ぶりの唇の端がくいっと持ち上がった。
人を馬鹿にするような笑みに見えた。
この人がレフリーの・・・。
そう思ってしまう。
「そうですか。そのマデリーン様がどのような御用でしょうか?レフリーとは関係はもうありませんが?」
冷静を装う。
レフリーは実家である伯爵とは縁を切っているのだから、関係はない。
それなのに、なんの用事なのか?
彼女の笑顔が不安を誘う。
「あなたには関係ないでしょう。レイフリードに用事があるのよ」
きっと睨むように見てきた。
「マデリーン。なぜ君が?」
後ろからレフリーがやってきた。
一緒に洗濯干をしていた誰がレフリーを呼びに行ってくれたのだろう。
マデリーン様はレフリーを見てまるで少女のような笑みを向けた。
既に人妻であるはずなのに、恋人のような顔を向ける神経がわからない。
対象にレフリーは害虫を見るよう眼差しを向けていた。
その顔に気づいていないのが、マデリーン様は猫撫で声をかけてきた。
「レイフリード、久しぶりね。会いたかったわ」
「僕は会いたくなかったよ」
わたしでさえ聞いたことのないような冷静かつ冷たい声。
「えぇ~。そんなこと言わないでよ。婚約者だったでしょう?」
「昔の話だよ。君がヤトリ兄さんの子供を身籠ったから、婚約破棄したろ?」
「そうだけど~」
悪気のない声。
どんな神経をしているのか?
そして、マデリーン様はとんでもない発言をかましてくれたのだった。
「ねぇ、レイフリード。大事なお兄様であるヤトリと私の為に資金援助してくれるわよね?」
首を傾げながら彼女はにこやかに言い退けた。
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