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71.末っ子アルク視点
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本当にこれが実の姉なのだろうか?
サリーナ姉様とは大違い。
リゼッタ姉さんとも違う。
褒められて認められるならリゼッタ姉さんは自分の為になんでもする人だった。
褒められる度、優越感に満ちた表情をしていた。それがあったから僕は苦手だった。
ちなみにロイド兄さんは家族の異質に背をそむけ自分本位で生きてきた人だ。誰がどうなろうと他人事のように見ていた。
だから、僕もサリーナ姉さんもただの『兄さん』としか見ていないんだろう。
まぁ、いない人はどうでもいい。
「本題ですが、僕に爵位を譲ってもらいます。母さんは精神病院に行ってもらいます。
僕は半年すれば18歳になります。
もう独り立ちできる歳です。
いつまでも『アルクちゃん』と呼ばれて変な薬を飲まされるのもこりごりですから」
「待って!お願い。お願いよ。アルクちゃん」
母さんが縋り付くようにして叫んでくる。
もう声も意見も聞きたくない。
姿さえ見たくもないから、病院に入って出てこないで欲しい。
「父さんは僕に爵位を譲ったあとは伯父さんのところで畑仕事をしてください」
「アルク!お前!わたしには仕事があるんだ!!!」
「なんのです?お金を遣う仕事ですか?
この屋敷の仕事はすでにサリーナ姉様から僕に引き継いでいます。お金が何故使えているのか気づいていなかったのですか?僕が増やしていたからですよ?」
「あぁ?」
「で・す・の・で、あなたはこの屋敷にはもう必要ありません」
「そんな・・・」
愕然としながら頭を抱える父さん。
はぁ・・・。
お金が勝手に増える金の袋でもあると思っていたのか?
まったくお金を遣う事に努力してどうするんだ。
本当にどうしようもない親だ。
「わたしは・・・?」
恐る恐る聞いてくるエリーゼ姉さん。
姉さんにはとっておきを用意している。
「姉さんはバルセルト伯爵家に嫁いでもらいます」
「バルセルト伯爵・・・。いや!嫌よ。だってバルセルト伯爵ってわたしより20歳も上のおじさんじゃない。そんな所に行けと言うの?」
「ええ。3年前奥様と息子さんをエフタール風邪で亡くされました。歴史の古いので直系の後継を求めているらしく若くて元気な女性をご所望らしいです」
「やだやだやだ!!」
五月蝿いなぁ。
少しは黙ってくれないかな?
自分がどんな立場にいるかわかっているのか?
「では、どうやって姉さんは借金を返すのですか?当てはありますか?」
「それは・・・。アルク!お願い!アルクが返して!」
「嫌ですよ。我が家に不良債権はいりません。
今ならバルセルト伯爵がその借金ごと引き受けてくれるそうですから、安心してください」
にっこりと笑って見せると、姉さんは力が抜け、人形のようにソファーにもたれかかった。
まだ五月蝿い母さんと父さんを部屋に押し込めるように従僕に言い、姉さんも侍女に支えられて部屋に帰って行った。
僕はふぅ、吐息をついた。
ネクタイを緩め首元のボタンを一個外す。
「やっと終わりましたね」
セバスが紅茶を淹れてくれた。
香りがいい。
「まだだよ。これからが僕のスタートだ」
「お力になります」
「よろしく。そう言えば近況報告はある?」
セバスはニコニコ笑いながら、懐から手紙を取り出して広げた。
「風邪が治ってからはまた元気に働いているようです。胎動もよくわかるらしく楽しいそうです。薬作りもそろそろ終わりが見えてきているようです」
誰が?とは聞かない。
でも、それを聞いて僕は嬉しくなった。
「よく、そのヘナヘナの文字読めるよね」
手紙の主のヘナヘナの文字を思い出す。
セバスチャンも笑っていた。
「自分でも不思議ですがマリーンの癖を知れば簡単ですよ。お知りになられますか?」
「いや、やめとく。それはセバスに任せるよ。・・・エフタール風邪になったからどうなるかと心配だったけど、元気そうで良かった」
前回の手紙を読まれた時は怖かった・・・。
手紙の途中だというのに走って帝国に行こうかと思ったくらいだ。
でも、完治したことまで書かれていたのでほっとしたのを覚えている。
手紙の主であるマリーンは、セバスの従兄妹だ。サリーナ姉様の家庭教師・・・ライラ先生の子供。彼女とその夫がエフタール風邪で亡くなり、天涯孤独になったマリーンを気にかけサリーナ姉様が研究員として迎え入れたのだ。
もともと研究好きの変わり者だったのも良かったのかもしれない。
サリーナ姉様の近くにはいい人ばかり集まったものだ。
会った事はないがマリーン経由でレフリーさんからも手紙をもらったことがある。彼もいい人のようで安心している。
きっと姉様は大丈夫だろう。
さて、実は僕はグランド商会に投資している。
ハリエルド商会の為に裏で手伝いをしようかな。
サリーナ姉様の為にも頑張りたい。
気が早いがサリーナ姉様のお祝いを何にしよう。
夏前には生まれるか?
マリーンからの報告がきたら、一度帝国に行こう。
それを楽しみにしながら、僕は働くのだ。
サリーナ姉様とは大違い。
リゼッタ姉さんとも違う。
褒められて認められるならリゼッタ姉さんは自分の為になんでもする人だった。
褒められる度、優越感に満ちた表情をしていた。それがあったから僕は苦手だった。
ちなみにロイド兄さんは家族の異質に背をそむけ自分本位で生きてきた人だ。誰がどうなろうと他人事のように見ていた。
だから、僕もサリーナ姉さんもただの『兄さん』としか見ていないんだろう。
まぁ、いない人はどうでもいい。
「本題ですが、僕に爵位を譲ってもらいます。母さんは精神病院に行ってもらいます。
僕は半年すれば18歳になります。
もう独り立ちできる歳です。
いつまでも『アルクちゃん』と呼ばれて変な薬を飲まされるのもこりごりですから」
「待って!お願い。お願いよ。アルクちゃん」
母さんが縋り付くようにして叫んでくる。
もう声も意見も聞きたくない。
姿さえ見たくもないから、病院に入って出てこないで欲しい。
「父さんは僕に爵位を譲ったあとは伯父さんのところで畑仕事をしてください」
「アルク!お前!わたしには仕事があるんだ!!!」
「なんのです?お金を遣う仕事ですか?
この屋敷の仕事はすでにサリーナ姉様から僕に引き継いでいます。お金が何故使えているのか気づいていなかったのですか?僕が増やしていたからですよ?」
「あぁ?」
「で・す・の・で、あなたはこの屋敷にはもう必要ありません」
「そんな・・・」
愕然としながら頭を抱える父さん。
はぁ・・・。
お金が勝手に増える金の袋でもあると思っていたのか?
まったくお金を遣う事に努力してどうするんだ。
本当にどうしようもない親だ。
「わたしは・・・?」
恐る恐る聞いてくるエリーゼ姉さん。
姉さんにはとっておきを用意している。
「姉さんはバルセルト伯爵家に嫁いでもらいます」
「バルセルト伯爵・・・。いや!嫌よ。だってバルセルト伯爵ってわたしより20歳も上のおじさんじゃない。そんな所に行けと言うの?」
「ええ。3年前奥様と息子さんをエフタール風邪で亡くされました。歴史の古いので直系の後継を求めているらしく若くて元気な女性をご所望らしいです」
「やだやだやだ!!」
五月蝿いなぁ。
少しは黙ってくれないかな?
自分がどんな立場にいるかわかっているのか?
「では、どうやって姉さんは借金を返すのですか?当てはありますか?」
「それは・・・。アルク!お願い!アルクが返して!」
「嫌ですよ。我が家に不良債権はいりません。
今ならバルセルト伯爵がその借金ごと引き受けてくれるそうですから、安心してください」
にっこりと笑って見せると、姉さんは力が抜け、人形のようにソファーにもたれかかった。
まだ五月蝿い母さんと父さんを部屋に押し込めるように従僕に言い、姉さんも侍女に支えられて部屋に帰って行った。
僕はふぅ、吐息をついた。
ネクタイを緩め首元のボタンを一個外す。
「やっと終わりましたね」
セバスが紅茶を淹れてくれた。
香りがいい。
「まだだよ。これからが僕のスタートだ」
「お力になります」
「よろしく。そう言えば近況報告はある?」
セバスはニコニコ笑いながら、懐から手紙を取り出して広げた。
「風邪が治ってからはまた元気に働いているようです。胎動もよくわかるらしく楽しいそうです。薬作りもそろそろ終わりが見えてきているようです」
誰が?とは聞かない。
でも、それを聞いて僕は嬉しくなった。
「よく、そのヘナヘナの文字読めるよね」
手紙の主のヘナヘナの文字を思い出す。
セバスチャンも笑っていた。
「自分でも不思議ですがマリーンの癖を知れば簡単ですよ。お知りになられますか?」
「いや、やめとく。それはセバスに任せるよ。・・・エフタール風邪になったからどうなるかと心配だったけど、元気そうで良かった」
前回の手紙を読まれた時は怖かった・・・。
手紙の途中だというのに走って帝国に行こうかと思ったくらいだ。
でも、完治したことまで書かれていたのでほっとしたのを覚えている。
手紙の主であるマリーンは、セバスの従兄妹だ。サリーナ姉様の家庭教師・・・ライラ先生の子供。彼女とその夫がエフタール風邪で亡くなり、天涯孤独になったマリーンを気にかけサリーナ姉様が研究員として迎え入れたのだ。
もともと研究好きの変わり者だったのも良かったのかもしれない。
サリーナ姉様の近くにはいい人ばかり集まったものだ。
会った事はないがマリーン経由でレフリーさんからも手紙をもらったことがある。彼もいい人のようで安心している。
きっと姉様は大丈夫だろう。
さて、実は僕はグランド商会に投資している。
ハリエルド商会の為に裏で手伝いをしようかな。
サリーナ姉様の為にも頑張りたい。
気が早いがサリーナ姉様のお祝いを何にしよう。
夏前には生まれるか?
マリーンからの報告がきたら、一度帝国に行こう。
それを楽しみにしながら、僕は働くのだ。
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