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63.元メイドの女視点
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私はアリサという。
数ヶ月前までとある伯爵様の元でメイドをしていた。
その屋敷の奥様はバルト様に奥様認定されていない方だった。
亡くなられたリゼッタ様の妹であるサリーナ様だった。
初めて見たのは屋敷に来た時だった。
地味な服に色褪せたような髪に落ち着いた青い瞳をしていた。リゼッタ様の方はキラキラ輝いているような金の髪に澄んだ蒼い瞳だった。
似ていないはずなのに、見た瞬間リゼッタ様を思い出して、イラっとした。
生前、リゼッタ様は屋敷に来るたび私たちを値踏みするように見てきた。
いかにも『私が主人になるのよ』って言っているかのようだった。
お茶を持っていけば私たちにだけに聞こえるように文句を言ってきた。
ぬるいのだの濃くて渋いだの。使えないメイドだの。
心の中では『マジでしばいてやろうか!』っと思ったりもしたが、バルト様の大事な方だったので何もできなかった。
ふつふつと怒りが込み上げた。嫁いできたならメイド全員で嫌がらせしてやろうかとも話したくらいだ。
でも、リゼッタ様はエフタール風邪で亡くなった。
みんなで喜んだ。
でも、同じくして旦那様が亡くなった。
心労でお倒れになり、エフタール風邪にかかってあっという間に・・・。
浪費癖のある奥様。バルト様も伯爵家の内情も知らずに浪費するので借金まみれだったと思う。
せっかく、リゼッタ様とのご婚姻もなくなったというのに、お金の為にその妹が妻として来るなんて・・・。
見るからに地味女。
バルト様に似合わないようなダサい女。
今までされた姉の代わりに憂さ晴らしするのにちょうどいいと思った。バルト様にも奥様認定されていないのだから、ちょっと行き過ぎたことでも大丈夫だろうってみんなで話した。
どんなことをしてサリーナ様は文句を言わなかった。
初めは私たちに寄り添ってこようとしていた。でも私たちが拒否したので、いつの間にかサリーナ様もそこにいるだけの存在になっていた。
サリーナ様は自分のことは自分でされていたので、どんなことをしようと困っていないようだった。
なんで貴族のお嬢様が文句も言わずに受け入れるのか疑問に思ったりもしたが、楽できるので気にすることをやめた。食事も私たちと同じようなものをだしたが、それも何も言われない。
そんなのだから、時たまどうすればいいのかわからなくなることもあった。
でも今更止めるわけにもいかなくて、ずるずると嫌がらせをしていた。
私たちはサリーナ様の部屋を物色したこともあった。何もない部屋。
贅沢なものがあったとしたら、万年筆だけ。
キラキラした先が綺麗だった。真紅色の持ち手に見惚れてしまった。
わたしは字も書けないのに自然にポケットの中に入れ、それをとっていた。
罪悪感はあれど、やはりリゼッタ様のことが棘のように胸に刺さっていた。亡くなったからと許せるわけがない。
逆恨みなのはわかっている。
でも・・・。
サリーナ様は仕事熱心だった。
そのおかげで伯爵家は潤っていた。
ハンスさんの機転でサリーナ様に割り振られたお金を私たちの特別手当てにしてくれていた。
好きな物が買えた。
食事が豪華になった。
それもこれも、気づかない奥様のおかげだと思っていた。
そんなサリーナ様が王太子妃殿下の怒りを買ったと、王宮を出入りする商業人から聞いたという八百屋の奥さんがわざわざ走ってやってきてまで教えてくれた。
意気消沈しているサリーナ様を見るのは楽しかった。
とうとう、失敗をしたのだ!
これまで文句のつけようもなかったので、それなりの嫌がらせをしてきたが、これを機にもっと進展させてもいいかも・・・そう、みんなと話し合った。
でも、サリーナ様の態度は変わらなかった。
いつも通りすぎて面白くなかった。
そんな日々が続いた時、バルト様が久しぶりに屋敷にお帰りになられて、私たちを集めたかと思うと、サリーナ様との話を暴露されたのだ。聞いて血の気がひいた。
まさか、バルト様がサリーナ様と結婚されていないかったとは思わなかった。
あまりのことに身体が震えた。
どうしよう・・・、と。
万年筆・・・。
まさか小粒のダイヤが買えるくらいの値段なんて・・・払えない・・・。
返す事も考えた。
盗んだのだから、捕まってしまうかも・・・。
そう思うと返せなかった。
私は屋敷をやめた。
幸い、わたしの母は、姉夫婦が見てくれている。
一人ならどうにか生きていけるだろう・・・。
だがそれは甘い考えだった。
紹介状も持たない者に次の仕事場がすぐに見つかるはずもなかった。
それでもどうにかパン屋に勤める事ができた。
でも、すぐにクビになった。
見知った街なので、私を知る者が女将さんに話をしたようだった。
伯爵家の集団で辞職の理由を。
ただ、真実とは違う内容で。
同じ時期にサリーナ様が居なくなったのもあり、サリーナ様の悪評から、私たちもサリーナ様に関連しての何かをしでかしての辞職したのだろう・・・と噂になっていたのだ。
なぜそんなことに・・・。
私たちはサリーナ様が何もしていないのを知っている。あの方がするわけがない。
どうして、そうなった・・・?
行くあてもない私は街を彷徨っていた。
そんな時、ハリエルド商会のポーラ様が私を救ってくれた。
数ヶ月前までとある伯爵様の元でメイドをしていた。
その屋敷の奥様はバルト様に奥様認定されていない方だった。
亡くなられたリゼッタ様の妹であるサリーナ様だった。
初めて見たのは屋敷に来た時だった。
地味な服に色褪せたような髪に落ち着いた青い瞳をしていた。リゼッタ様の方はキラキラ輝いているような金の髪に澄んだ蒼い瞳だった。
似ていないはずなのに、見た瞬間リゼッタ様を思い出して、イラっとした。
生前、リゼッタ様は屋敷に来るたび私たちを値踏みするように見てきた。
いかにも『私が主人になるのよ』って言っているかのようだった。
お茶を持っていけば私たちにだけに聞こえるように文句を言ってきた。
ぬるいのだの濃くて渋いだの。使えないメイドだの。
心の中では『マジでしばいてやろうか!』っと思ったりもしたが、バルト様の大事な方だったので何もできなかった。
ふつふつと怒りが込み上げた。嫁いできたならメイド全員で嫌がらせしてやろうかとも話したくらいだ。
でも、リゼッタ様はエフタール風邪で亡くなった。
みんなで喜んだ。
でも、同じくして旦那様が亡くなった。
心労でお倒れになり、エフタール風邪にかかってあっという間に・・・。
浪費癖のある奥様。バルト様も伯爵家の内情も知らずに浪費するので借金まみれだったと思う。
せっかく、リゼッタ様とのご婚姻もなくなったというのに、お金の為にその妹が妻として来るなんて・・・。
見るからに地味女。
バルト様に似合わないようなダサい女。
今までされた姉の代わりに憂さ晴らしするのにちょうどいいと思った。バルト様にも奥様認定されていないのだから、ちょっと行き過ぎたことでも大丈夫だろうってみんなで話した。
どんなことをしてサリーナ様は文句を言わなかった。
初めは私たちに寄り添ってこようとしていた。でも私たちが拒否したので、いつの間にかサリーナ様もそこにいるだけの存在になっていた。
サリーナ様は自分のことは自分でされていたので、どんなことをしようと困っていないようだった。
なんで貴族のお嬢様が文句も言わずに受け入れるのか疑問に思ったりもしたが、楽できるので気にすることをやめた。食事も私たちと同じようなものをだしたが、それも何も言われない。
そんなのだから、時たまどうすればいいのかわからなくなることもあった。
でも今更止めるわけにもいかなくて、ずるずると嫌がらせをしていた。
私たちはサリーナ様の部屋を物色したこともあった。何もない部屋。
贅沢なものがあったとしたら、万年筆だけ。
キラキラした先が綺麗だった。真紅色の持ち手に見惚れてしまった。
わたしは字も書けないのに自然にポケットの中に入れ、それをとっていた。
罪悪感はあれど、やはりリゼッタ様のことが棘のように胸に刺さっていた。亡くなったからと許せるわけがない。
逆恨みなのはわかっている。
でも・・・。
サリーナ様は仕事熱心だった。
そのおかげで伯爵家は潤っていた。
ハンスさんの機転でサリーナ様に割り振られたお金を私たちの特別手当てにしてくれていた。
好きな物が買えた。
食事が豪華になった。
それもこれも、気づかない奥様のおかげだと思っていた。
そんなサリーナ様が王太子妃殿下の怒りを買ったと、王宮を出入りする商業人から聞いたという八百屋の奥さんがわざわざ走ってやってきてまで教えてくれた。
意気消沈しているサリーナ様を見るのは楽しかった。
とうとう、失敗をしたのだ!
これまで文句のつけようもなかったので、それなりの嫌がらせをしてきたが、これを機にもっと進展させてもいいかも・・・そう、みんなと話し合った。
でも、サリーナ様の態度は変わらなかった。
いつも通りすぎて面白くなかった。
そんな日々が続いた時、バルト様が久しぶりに屋敷にお帰りになられて、私たちを集めたかと思うと、サリーナ様との話を暴露されたのだ。聞いて血の気がひいた。
まさか、バルト様がサリーナ様と結婚されていないかったとは思わなかった。
あまりのことに身体が震えた。
どうしよう・・・、と。
万年筆・・・。
まさか小粒のダイヤが買えるくらいの値段なんて・・・払えない・・・。
返す事も考えた。
盗んだのだから、捕まってしまうかも・・・。
そう思うと返せなかった。
私は屋敷をやめた。
幸い、わたしの母は、姉夫婦が見てくれている。
一人ならどうにか生きていけるだろう・・・。
だがそれは甘い考えだった。
紹介状も持たない者に次の仕事場がすぐに見つかるはずもなかった。
それでもどうにかパン屋に勤める事ができた。
でも、すぐにクビになった。
見知った街なので、私を知る者が女将さんに話をしたようだった。
伯爵家の集団で辞職の理由を。
ただ、真実とは違う内容で。
同じ時期にサリーナ様が居なくなったのもあり、サリーナ様の悪評から、私たちもサリーナ様に関連しての何かをしでかしての辞職したのだろう・・・と噂になっていたのだ。
なぜそんなことに・・・。
私たちはサリーナ様が何もしていないのを知っている。あの方がするわけがない。
どうして、そうなった・・・?
行くあてもない私は街を彷徨っていた。
そんな時、ハリエルド商会のポーラ様が私を救ってくれた。
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