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三章、サネイラ国
16歳ー4
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わたしの前に1人の赤毛の少年がいた。
彼の顔には殴られたよう青紫の痣がいくつもあったが、その目は怒りに燃えていた。
わたしは、彼を連れてきたユーノ様を見た。
「ユーノ様。なぜあなたがここに?」
ユーノ様に聞く。
「私はレイドリック殿下の手足ですから、あなたを監督する責任があります」
「だからといって、ここはわたしの寝屋ですが?」
「黙れ。魔力があるからといい気になるな」
鼻息荒く怒鳴るユーノ様。
わたしにはわからないが、この戦いが始まってから、周囲の男性たち誰もがどこか興奮しているように見えた。
現に戦った後は目がギラギラしている。おとなしそうに見えた者でさえ語尾を荒くしていた。
戦いは人を変えるのだろうか?
「では、彼は誰ですか?どうしてわたしの前に連れてきたのですか?」
1番の疑問だった。
彼の風貌からして、サネイラ国民だとは思う。だが、どうして彼がわたしの元に連れてこられたのか理解できない。
「ああぁ、それはこの彼があなたの知りたい人物を知っているからですよ」
わたしの知りたい人物・・・まさか?
「レイ?」
「えぇ、そうですよ」
この男・・・。レイドリック殿下とはいかないにしても嫌な感じしかしない。にたりと笑う顔が不気味だ。
「さて、彼のことはあなたに任せました。私も何かと忙しいですから」
そう言うとユーノ様は出て行った。
2人だけになる。
彼はわたしを睨みつけていた。そんな彼に冷静に聞く。
「・・・あなた、レイを知ってるの?」
彼は目を背けた。
痛々しい顔に手を翳そうとすると、跳ね飛ばされた。
「エルに何をする!!」
止まり木にいたセイカが小さい足で彼の額にパシーンと飛び蹴りをかます。
「なっ!」
「セイカ!?」
彼の額にくっきりわかるような足跡がついた。
「えっ、精霊?」
彼は間抜けな顔でセイカを見る。
「ごめん。わたしの精霊がごめんなさい」
わたしはまだ怒って暴れるセイカの胴体を鷲掴みして謝った。
彼は力無くぺたりと座り込んだ。
「どうして、こんなことになったんだよ。お前らのせいでとーちゃんが・・・、国が・・・。俺らが何したっていうんだよ・・・」
きっと、想像していたような精霊ではなく、青い玉のような物体のセイカを見て気が緩んだのだろう。彼は息を吐くように呟いたかと思うと泣き出した。
「なんで、なんで?ザードもお前らの国のやつだったなんて・・・。くそぉ・・・。信じてたのに・・・、俺は・・・騙されてたなんて・・・」
彼は床にうずくまり拳を幾度も打ちつける。敷物を敷いているとはいえ、痛いはずだ。
彼の手を取る。
「何すんだよ・・・」
涙で濡れた眼差しで睨んできた。
でも、それは・・・わたしたちのせいなのだろう。
目を閉じて祈ると青い火が彼を包んだ。
「ひっ!」
「大丈夫。癒すだけ・・・」
わたしには癒しの力もある。
セイカが誰にも知られない方がいいと言ったから誰にも言ったことはなかった。アウスラー先生にも教えていない。
「エル!」
「こんな時じゃないといつ使うの?」
「だがな・・・」
「バレないようにするわよ。痛みをとるだけ・・・」
跡を治せばあとあと面倒になるだろう。だから、見ただけではわからないように痛みをとった。
痛みがなくなったことで、まだ目を白黒させている彼に聞いた。
「あなたを騙したという人はどんな人?その人はどこに行ったの?」
言っている人物が本当にレイならば、彼を1人にするばすがない。きっと何があっても逃しすに決まっている。
レイはそんな人だ。わたしにはわかる。
何かが起こっているから、彼はここにいるのだ。
「おまえ・・・、なんで俺を助けようとするんだ?なんで、ザードと同じ目をしてんだよ・・・」
冷静を取り戻した、彼は眉を寄せて苦しそうに呟いた。
彼の顔には殴られたよう青紫の痣がいくつもあったが、その目は怒りに燃えていた。
わたしは、彼を連れてきたユーノ様を見た。
「ユーノ様。なぜあなたがここに?」
ユーノ様に聞く。
「私はレイドリック殿下の手足ですから、あなたを監督する責任があります」
「だからといって、ここはわたしの寝屋ですが?」
「黙れ。魔力があるからといい気になるな」
鼻息荒く怒鳴るユーノ様。
わたしにはわからないが、この戦いが始まってから、周囲の男性たち誰もがどこか興奮しているように見えた。
現に戦った後は目がギラギラしている。おとなしそうに見えた者でさえ語尾を荒くしていた。
戦いは人を変えるのだろうか?
「では、彼は誰ですか?どうしてわたしの前に連れてきたのですか?」
1番の疑問だった。
彼の風貌からして、サネイラ国民だとは思う。だが、どうして彼がわたしの元に連れてこられたのか理解できない。
「ああぁ、それはこの彼があなたの知りたい人物を知っているからですよ」
わたしの知りたい人物・・・まさか?
「レイ?」
「えぇ、そうですよ」
この男・・・。レイドリック殿下とはいかないにしても嫌な感じしかしない。にたりと笑う顔が不気味だ。
「さて、彼のことはあなたに任せました。私も何かと忙しいですから」
そう言うとユーノ様は出て行った。
2人だけになる。
彼はわたしを睨みつけていた。そんな彼に冷静に聞く。
「・・・あなた、レイを知ってるの?」
彼は目を背けた。
痛々しい顔に手を翳そうとすると、跳ね飛ばされた。
「エルに何をする!!」
止まり木にいたセイカが小さい足で彼の額にパシーンと飛び蹴りをかます。
「なっ!」
「セイカ!?」
彼の額にくっきりわかるような足跡がついた。
「えっ、精霊?」
彼は間抜けな顔でセイカを見る。
「ごめん。わたしの精霊がごめんなさい」
わたしはまだ怒って暴れるセイカの胴体を鷲掴みして謝った。
彼は力無くぺたりと座り込んだ。
「どうして、こんなことになったんだよ。お前らのせいでとーちゃんが・・・、国が・・・。俺らが何したっていうんだよ・・・」
きっと、想像していたような精霊ではなく、青い玉のような物体のセイカを見て気が緩んだのだろう。彼は息を吐くように呟いたかと思うと泣き出した。
「なんで、なんで?ザードもお前らの国のやつだったなんて・・・。くそぉ・・・。信じてたのに・・・、俺は・・・騙されてたなんて・・・」
彼は床にうずくまり拳を幾度も打ちつける。敷物を敷いているとはいえ、痛いはずだ。
彼の手を取る。
「何すんだよ・・・」
涙で濡れた眼差しで睨んできた。
でも、それは・・・わたしたちのせいなのだろう。
目を閉じて祈ると青い火が彼を包んだ。
「ひっ!」
「大丈夫。癒すだけ・・・」
わたしには癒しの力もある。
セイカが誰にも知られない方がいいと言ったから誰にも言ったことはなかった。アウスラー先生にも教えていない。
「エル!」
「こんな時じゃないといつ使うの?」
「だがな・・・」
「バレないようにするわよ。痛みをとるだけ・・・」
跡を治せばあとあと面倒になるだろう。だから、見ただけではわからないように痛みをとった。
痛みがなくなったことで、まだ目を白黒させている彼に聞いた。
「あなたを騙したという人はどんな人?その人はどこに行ったの?」
言っている人物が本当にレイならば、彼を1人にするばすがない。きっと何があっても逃しすに決まっている。
レイはそんな人だ。わたしにはわかる。
何かが起こっているから、彼はここにいるのだ。
「おまえ・・・、なんで俺を助けようとするんだ?なんで、ザードと同じ目をしてんだよ・・・」
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