燐火の魔女〜あなたのために生きたわたし〜

彩華(あやはな)

文字の大きさ
上 下
29 / 37
三章、サネイラ国

カリナ3

しおりを挟む
 お姉様は最年少で魔術騎士団に入った。
 クラスのみんなは賞賛とともに、魔女ではないかと噂していた。

 嬉しいが、憎くも思った。
 お姉様ばかり認められているように思えた。どんなに必死に頑張っても、伸びない。それが悔しくて、努力する。

 なんで!!勝てないの?

 クラルテクラリは『毎日の積み重ねよ~』というが、今すぐに力がほしいくてたまらない。

 クラスのみんなも、口先だけで応援するだけで、わたくしの必死さを理解してくれないでいた。


 王宮でレイドリック殿下と恒例のお茶会をしていると、殿下がお願いをしてきた。

「カリナ嬢。お願いがあるのだが、聞いてもらえるかい?」

 整った顔でそう言われるとドキドキする。

「君のお姉さん、エルファ嬢のことなんだ」

 その言葉にわたくしはあからさまに嫌な表情をしたのだと思う。殿下は不思議そうに首を傾げて聞いてきた。

「どうかしたかい?仲が良いと聞いていたが、喧嘩でもした?」

 慌てて首を振る。
 でも、今のわたくしには笑うことはできなかった。

「いえ・・・」
。ちゃんと僕の目を見て話してほしい。君のことを知って置きたいんだ」

 澄んだ青い瞳がわたくしだけを見ていた。
 意を決して聞いてみる。

「殿下は・・・姉と知り合いですか?」
「以前、魔術科へ話をしには行ったが?」
「本当ですか?アスナルド殿下との試合の後、姉を見ていませんでしたか?」

 殿下は、初めてきょとんとした表情だったが、少しして笑いだした。

「ふふっ、きっとカリナ嬢が見たのは、僕が試合に勝って嬉しくて空の鳥を見てる時のことかな?鳶が気持ちよさそうに飛んでたんだよ」

 鳶?
 あの時、鳥を見てたの・・・。なんだ・・・。

 ほっとした。

「へぇ~、あの場所に君のお姉さんいたんだ」
「すいません。変なことを言ってしまいましたわ」

 恥ずかしくなり、俯いた。

「聞いてくれて嬉しいよ。でも、まだ他にあるんじゃない?」
「どうして・・・」
「それだけでそんな顔はしないよ。ちゃんと僕に話をして、ね?」

 殿下に促され、わたくしは自分のモヤモヤしていることをすべて吐き出す。殿下はわたくしの顔を見ながら合槌を打ってくれた。

「ありがとう、全部話してくれて」
 
 他人に話ができて、スッキリする。

「身内だからこそ、どうにもできない思いもあるよね」
「殿下もですか?」
「勿論だよ。だからこそ、アス兄上と試合をしたんだ」

 そうか・・・。
 そういうものなのかと納得する。

「それでだ、お願い事の続きなんだが・・・」

 にこやかな表情からすっと目が細められ、わたくしを見てきた。
 真剣な表情に姿勢を伸ばす。

「君からお姉さんに言ってほしいことがあるんだ」 
「言ってほしいこと、ですか?」
「簡単なことだよ。君にしかできないことであり、君の抱く感情も薙ぎ払うものだ」

 わたくしのこの感情を薙ぎ払う?
 そんなことができるの?

「彼女は君を大事に思っている。それを利用するんだ。君は彼女にお願いごとをするんだ。そうすれば彼女は君のために動くだろう」

 お姉様に笑いかけてお願いする?
 それだけでいいの?

「お願いする内容は一つ。『わたしを護って』だ。そうすれば、どんなに力を得ようとも彼女は君を護り続ける。君を傷つけることはない。逆に巨大な力を持つ彼女を従えることができるんだ」

 震えた。
 恐怖ではない、歓喜にだ。

 私がお姉様に近づくのではなく、お姉様をわたくしが従える。

「頂に登った僕と君の足元でひれ伏す彼女を見たくないかい?」

 ぜひにでも見たい。
 そうなれば、どんなに素晴らしいことか。
 
「僕のお願いを聞いてくれるかい?」

 わたくしは笑って頷いた。
 
しおりを挟む
感想 6

あなたにおすすめの小説

蔑ろにされた王妃と見限られた国王

奏千歌
恋愛
※最初に公開したプロット版はカクヨムで公開しています 国王陛下には愛する女性がいた。 彼女は陛下の初恋の相手で、陛下はずっと彼女を想い続けて、そして大切にしていた。 私は、そんな陛下と結婚した。 国と王家のために、私達は結婚しなければならなかったから、結婚すれば陛下も少しは変わるのではと期待していた。 でも結果は……私の理想を打ち砕くものだった。 そしてもう一つ。 私も陛下も知らないことがあった。 彼女のことを。彼女の正体を。

【完結】私はいてもいなくても同じなのですね ~三人姉妹の中でハズレの私~

紺青
恋愛
マルティナはスコールズ伯爵家の三姉妹の中でハズレの存在だ。才媛で美人な姉と愛嬌があり可愛い妹に挟まれた地味で不器用な次女として、家族の世話やフォローに振り回される生活を送っている。そんな自分を諦めて受け入れているマルティナの前に、マルティナの思い込みや常識を覆す存在が現れて―――家族にめぐまれなかったマルティナが、強引だけど優しいブラッドリーと出会って、少しずつ成長し、別離を経て、再生していく物語。 ※三章まで上げて落とされる鬱展開続きます。 ※因果応報はありますが、痛快爽快なざまぁはありません。 ※なろうにも掲載しています。

結婚30年、契約満了したので離婚しませんか?

おもちのかたまり
恋愛
恋愛・小説 11位になりました! 皆様ありがとうございます。 「私、旦那様とお付き合いも甘いやり取りもしたことが無いから…ごめんなさい、ちょっと他人事なのかも。もちろん、貴方達の事は心から愛しているし、命より大事よ。」 眉根を下げて笑う母様に、一発じゃあ足りないなこれは。と確信した。幸い僕も姉さん達も祝福持ちだ。父様のような力極振りではないけれど、三対一なら勝ち目はある。 「じゃあ母様は、父様が嫌で離婚するわけではないんですか?」 ケーキを幸せそうに頬張っている母様は、僕の言葉にきょとん。と目を見開いて。…もしかすると、母様にとって父様は、関心を向ける程の相手ではないのかもしれない。嫌な予感に、今日一番の寒気がする。 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇ 20年前に攻略対象だった父親と、悪役令嬢の取り巻きだった母親の現在のお話。 ハッピーエンド・バットエンド・メリーバットエンド・女性軽視・女性蔑視 上記に当てはまりますので、苦手な方、ご不快に感じる方はお気を付けください。

【完結】失いかけた君にもう一度

暮田呉子
恋愛
偶然、振り払った手が婚約者の頬に当たってしまった。 叩くつもりはなかった。 しかし、謝ろうとした矢先、彼女は全てを捨てていなくなってしまった──。

好きでした、さようなら

豆狸
恋愛
「……すまない」 初夜の床で、彼は言いました。 「君ではない。私が欲しかった辺境伯令嬢のアンリエット殿は君ではなかったんだ」 悲しげに俯く姿を見て、私の心は二度目の死を迎えたのです。 なろう様でも公開中です。

【完結】100日後に処刑されるイグワーナ(悪役令嬢)は抜け毛スキルで無双する

みねバイヤーン
恋愛
せっかく悪役令嬢に転生したのに、もう断罪イベント終わって、牢屋にぶち込まれてるんですけどー。これは100日後に処刑されるイグワーナが、抜け毛操りスキルを使って無双し、自分を陥れた第一王子と聖女の妹をざまぁする、そんな物語。

【コミカライズ2月28日引き下げ予定】実は白い結婚でしたの。元悪役令嬢は未亡人になったので今度こそ推しを見守りたい。

氷雨そら
恋愛
悪役令嬢だと気がついたのは、断罪直後。 私は、五十も年上の辺境伯に嫁いだのだった。 「でも、白い結婚だったのよね……」 奥様を愛していた辺境伯に、孫のように可愛がられた私は、彼の亡き後、王都へと戻ってきていた。 全ては、乙女ゲームの推しを遠くから眺めるため。 一途な年下枠ヒーローに、元悪役令嬢は溺愛される。 断罪に引き続き、私に拒否権はない……たぶん。

【完結】長い眠りのその後で

maruko
恋愛
伯爵令嬢のアディルは王宮魔術師団の副団長サンディル・メイナードと結婚しました。 でも婚約してから婚姻まで一度も会えず、婚姻式でも、新居に向かう馬車の中でも目も合わせない旦那様。 いくら政略結婚でも幸せになりたいって思ってもいいでしょう? このまま幸せになれるのかしらと思ってたら⋯⋯アレッ?旦那様が2人!! どうして旦那様はずっと眠ってるの? 唖然としたけど強制的に旦那様の為に動かないと行けないみたい。 しょうがないアディル頑張りまーす!! 複雑な家庭環境で育って、醒めた目で世間を見ているアディルが幸せになるまでの物語です 全50話(2話分は登場人物と時系列の整理含む) ※他サイトでも投稿しております ご都合主義、誤字脱字、未熟者ですが優しい目線で読んで頂けますと幸いです

処理中です...