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二章、学園時代
15歳
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アスナルド殿下とレイドリック殿下の試合が終わってすぐに、王位継承の儀があり、正式にレイドリック殿下が王太子に任じられた。
春になった今、レイドリック殿下とカリナの婚約式が間近に迫っている。
あれからレイは忙しいのか隠れ場には姿を表さなくなった。
話す相手がいないのは寂しい。
カリナもますます勉学に王太子妃教育に励んでいるのか会える機会が減った。
会えたとしても、わたしを無視する素振りをみせるようになる。
姉離れをしたのだろうか。
妹が遠い存在に思え、嬉しいような悲しいような複雑な感情だった。
時たま、クラルテ様がわたしの魔力を求め報告がてらにふらりとやってくる。
『きちんと話はした方がよくな~い?』
「どういうことです?」
『あの子、ちょっと危なかっしいわよ~。あなたに嫉妬してるみたいね~』
「わたしに?カリナが?」
どうしてわたしに嫉妬をするのだろうか?
カリナはわたしにはないものを持っているというのに・・・。
両親の愛もこれから得る地位も、富も、親友も持っている。わたしにはないものばかりだ。
『身近な幸せは気づかないのかしらね~?』
そう言うと、わたしの魔力を摘んで行った彼女はカリナの元に帰って行った。
レイドリック殿下とカリナの婚約式。
わたしは、魔術科の制服で式に参列していた。本当ならば綺麗なドレスを着て、カリナの姉として両親の隣でいるべきなのだが、その両親はドレスを新調してもくれず学生として参加しろと手紙を送ってきたのだ。
わたしを慮ってか、アウスラー先生やクラスの生徒たちも制服でわたしの傍にいてくれた。
それだけで、嬉しくなってしまう。
カリナのドレス姿は美しかった。流行に疎い私でも分かるくらい、華やかなドレスはカリナだからこそよく似合っている。
少し見ないうちに大人びた容姿に変化していて驚いた。レイドリック殿下と並ぶカリナが眩しく見える。
と同時に2人を見ていると、切なくも思った。わたしの手の届かない場所にいるのだと再確認したから。
胸がちくちくするのは、寂しいからなのだろうか・・・。
カリナの笑顔が綺麗だった。
カリナに向けるレイドリック殿下の表情を羨ましく思った。
幸せといえるこの光景をいつまでも見ていたい・・・。
護りたい。
わたしなら、それができるのかもしれない・・・、そう思った。
「アウスラー先生・・・」
「なんだい?」
「わたしの、この力があればお二人を護ることはできますか?」
「・・・・・・」
「わたしはあの笑顔を護りたい・・・」
もし、カリナが困っているなら助けてあげたい。レイドリック殿下が求めるものがあるならば力になりたい。
「あなたなら、できるでしょう・・・。でも私は薦めたくありません」
「どうしてですか?」
「レイドリック殿下が王太子になった今、この国は力を誇示していくでしょう。あなたはそれにたえられますか?」
「それは・・・」
「ですが、国はあなたの多大な魔力、センスある魔術を放ってはいないでしょう。すでに魔術騎士団も引き入れようとしています。たとえあなたが嫌だと言っても・・・、それでも覚悟はおありですか?・・・今なら逃げることもできます」
真剣な表情のアウスラー先生の顔を見て息を呑んだ。
春になった今、レイドリック殿下とカリナの婚約式が間近に迫っている。
あれからレイは忙しいのか隠れ場には姿を表さなくなった。
話す相手がいないのは寂しい。
カリナもますます勉学に王太子妃教育に励んでいるのか会える機会が減った。
会えたとしても、わたしを無視する素振りをみせるようになる。
姉離れをしたのだろうか。
妹が遠い存在に思え、嬉しいような悲しいような複雑な感情だった。
時たま、クラルテ様がわたしの魔力を求め報告がてらにふらりとやってくる。
『きちんと話はした方がよくな~い?』
「どういうことです?」
『あの子、ちょっと危なかっしいわよ~。あなたに嫉妬してるみたいね~』
「わたしに?カリナが?」
どうしてわたしに嫉妬をするのだろうか?
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そう言うと、わたしの魔力を摘んで行った彼女はカリナの元に帰って行った。
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カリナに向けるレイドリック殿下の表情を羨ましく思った。
幸せといえるこの光景をいつまでも見ていたい・・・。
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「アウスラー先生・・・」
「なんだい?」
「わたしの、この力があればお二人を護ることはできますか?」
「・・・・・・」
「わたしはあの笑顔を護りたい・・・」
もし、カリナが困っているなら助けてあげたい。レイドリック殿下が求めるものがあるならば力になりたい。
「あなたなら、できるでしょう・・・。でも私は薦めたくありません」
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「それは・・・」
「ですが、国はあなたの多大な魔力、センスある魔術を放ってはいないでしょう。すでに魔術騎士団も引き入れようとしています。たとえあなたが嫌だと言っても・・・、それでも覚悟はおありですか?・・・今なら逃げることもできます」
真剣な表情のアウスラー先生の顔を見て息を呑んだ。
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