24 / 37
二章、学園時代
15歳
しおりを挟む
アスナルド殿下とレイドリック殿下の試合が終わってすぐに、王位継承の儀があり、正式にレイドリック殿下が王太子に任じられた。
春になった今、レイドリック殿下とカリナの婚約式が間近に迫っている。
あれからレイは忙しいのか隠れ場には姿を表さなくなった。
話す相手がいないのは寂しい。
カリナもますます勉学に王太子妃教育に励んでいるのか会える機会が減った。
会えたとしても、わたしを無視する素振りをみせるようになる。
姉離れをしたのだろうか。
妹が遠い存在に思え、嬉しいような悲しいような複雑な感情だった。
時たま、クラルテ様がわたしの魔力を求め報告がてらにふらりとやってくる。
『きちんと話はした方がよくな~い?』
「どういうことです?」
『あの子、ちょっと危なかっしいわよ~。あなたに嫉妬してるみたいね~』
「わたしに?カリナが?」
どうしてわたしに嫉妬をするのだろうか?
カリナはわたしにはないものを持っているというのに・・・。
両親の愛もこれから得る地位も、富も、親友も持っている。わたしにはないものばかりだ。
『身近な幸せは気づかないのかしらね~?』
そう言うと、わたしの魔力を摘んで行った彼女はカリナの元に帰って行った。
レイドリック殿下とカリナの婚約式。
わたしは、魔術科の制服で式に参列していた。本当ならば綺麗なドレスを着て、カリナの姉として両親の隣でいるべきなのだが、その両親はドレスを新調してもくれず学生として参加しろと手紙を送ってきたのだ。
わたしを慮ってか、アウスラー先生やクラスの生徒たちも制服でわたしの傍にいてくれた。
それだけで、嬉しくなってしまう。
カリナのドレス姿は美しかった。流行に疎い私でも分かるくらい、華やかなドレスはカリナだからこそよく似合っている。
少し見ないうちに大人びた容姿に変化していて驚いた。レイドリック殿下と並ぶカリナが眩しく見える。
と同時に2人を見ていると、切なくも思った。わたしの手の届かない場所にいるのだと再確認したから。
胸がちくちくするのは、寂しいからなのだろうか・・・。
カリナの笑顔が綺麗だった。
カリナに向けるレイドリック殿下の表情を羨ましく思った。
幸せといえるこの光景をいつまでも見ていたい・・・。
護りたい。
わたしなら、それができるのかもしれない・・・、そう思った。
「アウスラー先生・・・」
「なんだい?」
「わたしの、この力があればお二人を護ることはできますか?」
「・・・・・・」
「わたしはあの笑顔を護りたい・・・」
もし、カリナが困っているなら助けてあげたい。レイドリック殿下が求めるものがあるならば力になりたい。
「あなたなら、できるでしょう・・・。でも私は薦めたくありません」
「どうしてですか?」
「レイドリック殿下が王太子になった今、この国は力を誇示していくでしょう。あなたはそれにたえられますか?」
「それは・・・」
「ですが、国はあなたの多大な魔力、センスある魔術を放ってはいないでしょう。すでに魔術騎士団も引き入れようとしています。たとえあなたが嫌だと言っても・・・、それでも覚悟はおありですか?・・・今なら逃げることもできます」
真剣な表情のアウスラー先生の顔を見て息を呑んだ。
春になった今、レイドリック殿下とカリナの婚約式が間近に迫っている。
あれからレイは忙しいのか隠れ場には姿を表さなくなった。
話す相手がいないのは寂しい。
カリナもますます勉学に王太子妃教育に励んでいるのか会える機会が減った。
会えたとしても、わたしを無視する素振りをみせるようになる。
姉離れをしたのだろうか。
妹が遠い存在に思え、嬉しいような悲しいような複雑な感情だった。
時たま、クラルテ様がわたしの魔力を求め報告がてらにふらりとやってくる。
『きちんと話はした方がよくな~い?』
「どういうことです?」
『あの子、ちょっと危なかっしいわよ~。あなたに嫉妬してるみたいね~』
「わたしに?カリナが?」
どうしてわたしに嫉妬をするのだろうか?
カリナはわたしにはないものを持っているというのに・・・。
両親の愛もこれから得る地位も、富も、親友も持っている。わたしにはないものばかりだ。
『身近な幸せは気づかないのかしらね~?』
そう言うと、わたしの魔力を摘んで行った彼女はカリナの元に帰って行った。
レイドリック殿下とカリナの婚約式。
わたしは、魔術科の制服で式に参列していた。本当ならば綺麗なドレスを着て、カリナの姉として両親の隣でいるべきなのだが、その両親はドレスを新調してもくれず学生として参加しろと手紙を送ってきたのだ。
わたしを慮ってか、アウスラー先生やクラスの生徒たちも制服でわたしの傍にいてくれた。
それだけで、嬉しくなってしまう。
カリナのドレス姿は美しかった。流行に疎い私でも分かるくらい、華やかなドレスはカリナだからこそよく似合っている。
少し見ないうちに大人びた容姿に変化していて驚いた。レイドリック殿下と並ぶカリナが眩しく見える。
と同時に2人を見ていると、切なくも思った。わたしの手の届かない場所にいるのだと再確認したから。
胸がちくちくするのは、寂しいからなのだろうか・・・。
カリナの笑顔が綺麗だった。
カリナに向けるレイドリック殿下の表情を羨ましく思った。
幸せといえるこの光景をいつまでも見ていたい・・・。
護りたい。
わたしなら、それができるのかもしれない・・・、そう思った。
「アウスラー先生・・・」
「なんだい?」
「わたしの、この力があればお二人を護ることはできますか?」
「・・・・・・」
「わたしはあの笑顔を護りたい・・・」
もし、カリナが困っているなら助けてあげたい。レイドリック殿下が求めるものがあるならば力になりたい。
「あなたなら、できるでしょう・・・。でも私は薦めたくありません」
「どうしてですか?」
「レイドリック殿下が王太子になった今、この国は力を誇示していくでしょう。あなたはそれにたえられますか?」
「それは・・・」
「ですが、国はあなたの多大な魔力、センスある魔術を放ってはいないでしょう。すでに魔術騎士団も引き入れようとしています。たとえあなたが嫌だと言っても・・・、それでも覚悟はおありですか?・・・今なら逃げることもできます」
真剣な表情のアウスラー先生の顔を見て息を呑んだ。
1
お気に入りに追加
223
あなたにおすすめの小説

蔑ろにされた王妃と見限られた国王
奏千歌
恋愛
※最初に公開したプロット版はカクヨムで公開しています
国王陛下には愛する女性がいた。
彼女は陛下の初恋の相手で、陛下はずっと彼女を想い続けて、そして大切にしていた。
私は、そんな陛下と結婚した。
国と王家のために、私達は結婚しなければならなかったから、結婚すれば陛下も少しは変わるのではと期待していた。
でも結果は……私の理想を打ち砕くものだった。
そしてもう一つ。
私も陛下も知らないことがあった。
彼女のことを。彼女の正体を。

【完結】私はいてもいなくても同じなのですね ~三人姉妹の中でハズレの私~
紺青
恋愛
マルティナはスコールズ伯爵家の三姉妹の中でハズレの存在だ。才媛で美人な姉と愛嬌があり可愛い妹に挟まれた地味で不器用な次女として、家族の世話やフォローに振り回される生活を送っている。そんな自分を諦めて受け入れているマルティナの前に、マルティナの思い込みや常識を覆す存在が現れて―――家族にめぐまれなかったマルティナが、強引だけど優しいブラッドリーと出会って、少しずつ成長し、別離を経て、再生していく物語。
※三章まで上げて落とされる鬱展開続きます。
※因果応報はありますが、痛快爽快なざまぁはありません。
※なろうにも掲載しています。

結婚30年、契約満了したので離婚しませんか?
おもちのかたまり
恋愛
恋愛・小説 11位になりました!
皆様ありがとうございます。
「私、旦那様とお付き合いも甘いやり取りもしたことが無いから…ごめんなさい、ちょっと他人事なのかも。もちろん、貴方達の事は心から愛しているし、命より大事よ。」
眉根を下げて笑う母様に、一発じゃあ足りないなこれは。と確信した。幸い僕も姉さん達も祝福持ちだ。父様のような力極振りではないけれど、三対一なら勝ち目はある。
「じゃあ母様は、父様が嫌で離婚するわけではないんですか?」
ケーキを幸せそうに頬張っている母様は、僕の言葉にきょとん。と目を見開いて。…もしかすると、母様にとって父様は、関心を向ける程の相手ではないのかもしれない。嫌な予感に、今日一番の寒気がする。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇
20年前に攻略対象だった父親と、悪役令嬢の取り巻きだった母親の現在のお話。
ハッピーエンド・バットエンド・メリーバットエンド・女性軽視・女性蔑視
上記に当てはまりますので、苦手な方、ご不快に感じる方はお気を付けください。


好きでした、さようなら
豆狸
恋愛
「……すまない」
初夜の床で、彼は言いました。
「君ではない。私が欲しかった辺境伯令嬢のアンリエット殿は君ではなかったんだ」
悲しげに俯く姿を見て、私の心は二度目の死を迎えたのです。
なろう様でも公開中です。

【完結】100日後に処刑されるイグワーナ(悪役令嬢)は抜け毛スキルで無双する
みねバイヤーン
恋愛
せっかく悪役令嬢に転生したのに、もう断罪イベント終わって、牢屋にぶち込まれてるんですけどー。これは100日後に処刑されるイグワーナが、抜け毛操りスキルを使って無双し、自分を陥れた第一王子と聖女の妹をざまぁする、そんな物語。
【コミカライズ2月28日引き下げ予定】実は白い結婚でしたの。元悪役令嬢は未亡人になったので今度こそ推しを見守りたい。
氷雨そら
恋愛
悪役令嬢だと気がついたのは、断罪直後。
私は、五十も年上の辺境伯に嫁いだのだった。
「でも、白い結婚だったのよね……」
奥様を愛していた辺境伯に、孫のように可愛がられた私は、彼の亡き後、王都へと戻ってきていた。
全ては、乙女ゲームの推しを遠くから眺めるため。
一途な年下枠ヒーローに、元悪役令嬢は溺愛される。
断罪に引き続き、私に拒否権はない……たぶん。

【完結】長い眠りのその後で
maruko
恋愛
伯爵令嬢のアディルは王宮魔術師団の副団長サンディル・メイナードと結婚しました。
でも婚約してから婚姻まで一度も会えず、婚姻式でも、新居に向かう馬車の中でも目も合わせない旦那様。
いくら政略結婚でも幸せになりたいって思ってもいいでしょう?
このまま幸せになれるのかしらと思ってたら⋯⋯アレッ?旦那様が2人!!
どうして旦那様はずっと眠ってるの?
唖然としたけど強制的に旦那様の為に動かないと行けないみたい。
しょうがないアディル頑張りまーす!!
複雑な家庭環境で育って、醒めた目で世間を見ているアディルが幸せになるまでの物語です
全50話(2話分は登場人物と時系列の整理含む)
※他サイトでも投稿しております
ご都合主義、誤字脱字、未熟者ですが優しい目線で読んで頂けますと幸いです
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる