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二章、学園時代
レイ***視点
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僕は試合を終えると王宮にある自分の部屋に帰った。
部屋を開けると、自分と同じ顔をした人物がソファーに座っているのを確認する。
「よくやった。ご苦労だったな。レイザード」
同じ顔をー双子の兄、レイドリックが僕に声をかけてきた。
「アスナルド兄上にはバレたよ」
「別にいい。どのみちお前は僕の影なんだ。兄上にバレようがバレまいが、他者にバレなければいいんだ」
レイドリックはそう言って笑う。
そう、僕はいない存在として扱われていた。
理由はいたって簡単なこと。
僕らが双子だったから。
僕らの母の出身であるバンドリア国では双子は吉凶の存在とされていた。
このサブリナ国では双子はいくらでも存在している。
だが、王女として生まれた王妃にとって、信仰は根深いものであったため、双子を忌避していた。
僕らがお腹にいる時にはわかっていたが、王妃つきの侍女が医師に口止めしていたらしい。もし知っていれば、自分で腹を裂いてでも生まなかったかもしれなかった。
レイドリックが生まれ喜んだのも束の間、再びの陣痛に王妃は発狂寸前だったらしい。
生みたくないと叫び暴れ、そのため難産だった。
王妃は僕を見た瞬間から、いないものとした。
出産を終えた王妃を見舞いにきた国王陛下は、王妃から血走った目をむけられ、尋常じゃないと悟ったのだろう。
いないものとはいえ殺すわけにもいかず、かといって血筋や顔立ちから考え養子に出すこともできなかった。そこで、国王陛下が考えたのはレイドリックの影になることだった。
僕の存在はなかったものにされた。
出産時に立ち会った幾人かは口封じされてもいる。
レイドリックの影、何かあれば彼の盾になり、彼のために尽くす。そう教わりながら育ってきた。そのために僕は生かされている。
僕を知っている者は限られている。
レイドリック直属の側近であるユーノ、バルト、ミックの3人と家庭教師、あと身の回りの世話をする侍女や従者、10人いればいいほどだろう。その中にはアスナルド兄上も含まれている。
兄上が知っているのは、僕の契約精霊の正体を知っているからだ。
あとは、僕の存在すら知らない。
僕はレイドリックの代わりに学園に通い、魔術の授業を受けている。彼は気が向いたら授業を受ける程度だ。
周りに疑われずにやってこれた理由が僕の精霊であった。
僕の精霊はレイドリックより高位の精霊でジニーという。黒い髪と目をした妖艶な女性の姿をしている。
遠い西の国で生まれた精霊らしく『妖霊』の部類に入ると本人は言っていた。
得意な技として、自身の姿を変えるわけではないが、他者が思う姿を見せることができるらしい。
僕がレイドリックとして過ごすとき、彼女はレイフリードの姿を見せてくれていた。魔術も似せてくれている。
『契約ですもの。そのためにはなんだってしてあげるわ』
美しい笑みを向けるジニー。
僕らの契約は『僕が死んだ時、その肉体と魂を喰べる』こと。
その契約があるからこそ彼女は僕に協力してくれていた。
部屋を開けると、自分と同じ顔をした人物がソファーに座っているのを確認する。
「よくやった。ご苦労だったな。レイザード」
同じ顔をー双子の兄、レイドリックが僕に声をかけてきた。
「アスナルド兄上にはバレたよ」
「別にいい。どのみちお前は僕の影なんだ。兄上にバレようがバレまいが、他者にバレなければいいんだ」
レイドリックはそう言って笑う。
そう、僕はいない存在として扱われていた。
理由はいたって簡単なこと。
僕らが双子だったから。
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だが、王女として生まれた王妃にとって、信仰は根深いものであったため、双子を忌避していた。
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生みたくないと叫び暴れ、そのため難産だった。
王妃は僕を見た瞬間から、いないものとした。
出産を終えた王妃を見舞いにきた国王陛下は、王妃から血走った目をむけられ、尋常じゃないと悟ったのだろう。
いないものとはいえ殺すわけにもいかず、かといって血筋や顔立ちから考え養子に出すこともできなかった。そこで、国王陛下が考えたのはレイドリックの影になることだった。
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レイドリック直属の側近であるユーノ、バルト、ミックの3人と家庭教師、あと身の回りの世話をする侍女や従者、10人いればいいほどだろう。その中にはアスナルド兄上も含まれている。
兄上が知っているのは、僕の契約精霊の正体を知っているからだ。
あとは、僕の存在すら知らない。
僕はレイドリックの代わりに学園に通い、魔術の授業を受けている。彼は気が向いたら授業を受ける程度だ。
周りに疑われずにやってこれた理由が僕の精霊であった。
僕の精霊はレイドリックより高位の精霊でジニーという。黒い髪と目をした妖艶な女性の姿をしている。
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『契約ですもの。そのためにはなんだってしてあげるわ』
美しい笑みを向けるジニー。
僕らの契約は『僕が死んだ時、その肉体と魂を喰べる』こと。
その契約があるからこそ彼女は僕に協力してくれていた。
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