燐火の魔女〜あなたのために生きたわたし〜

彩華(あやはな)

文字の大きさ
上 下
20 / 37
二章、学園時代

レイ***視点

しおりを挟む
 僕は試合を終えると王宮にある自分の部屋に帰った。

 部屋を開けると、自分と同じ顔をした人物がソファーに座っているのを確認する。

「よくやった。ご苦労だったな。

 同じ顔をー双子の兄、レイドリックが僕に声をかけてきた。

「アスナルド兄上にはバレたよ」
「別にいい。どのみちお前は僕のなんだ。兄上にバレようがバレまいが、他者にバレなければいいんだ」

 レイドリックはそう言って笑う。

 そう、僕はいない存在として扱われていた。
 理由はいたって簡単なこと。
 僕らが双子だったから。

 僕らの母の出身であるバンドリア国では双子は吉凶の存在とされていた。
 このサブリナ国では双子はいくらでも存在している。
 だが、王女として生まれた王妃にとって、信仰は根深いものであったため、双子を忌避していた。

 僕らがお腹にいる時にはわかっていたが、王妃つきの侍女が医師に口止めしていたらしい。もし知っていれば、自分で腹を裂いてでも生まなかったかもしれなかった。

 レイドリックが生まれ喜んだのも束の間、再びの陣痛に王妃は発狂寸前だったらしい。
 生みたくないと叫び暴れ、そのため難産だった。
 
 王妃は僕を見た瞬間から、いないものとした。
 出産を終えた王妃を見舞いにきた国王陛下は、王妃から血走った目をむけられ、尋常じゃないと悟ったのだろう。

 いないものとはいえ殺すわけにもいかず、かといって血筋や顔立ちから考え養子に出すこともできなかった。そこで、国王陛下が考えたのはレイドリックの影になることだった。

 僕の存在はなかったものにされた。
 出産時に立ち会った幾人かは口封じされてもいる。


 レイドリックの影、何かあれば彼の盾になり、彼のために尽くす。そう教わりながら育ってきた。そのために僕は生かされている。


 僕を知っている者は限られている。
 レイドリック直属の側近であるユーノ、バルト、ミックの3人と家庭教師、あと身の回りの世話をする侍女や従者、10人いればいいほどだろう。その中にはアスナルド兄上も含まれている。


 兄上が知っているのは、僕のの正体を知っているからだ。

 あとは、僕の存在すら知らない。

 僕はレイドリックの代わりに学園に通い、魔術の授業を受けている。彼は気が向いたら授業を受ける程度だ。

 周りに疑われずにやってこれた理由が僕の精霊であった。

 僕の精霊はレイドリックより高位の精霊でジニーという。黒い髪と目をした妖艶な女性の姿をしている。
 遠い西の国で生まれた精霊らしく『妖霊』の部類に入ると本人は言っていた。
 得意な技として、自身の姿を変えるわけではないが、他者が思う姿を見せることができるらしい。
 僕がレイドリックとして過ごすとき、はレイフリードの姿を見せてくれていた。魔術も似せてくれている。

『契約ですもの。そのためにはなんだってしてあげるわ』

 美しい笑みを向けるジニー。
 僕らの契約は『僕が死んだ時、その肉体と魂を喰べる』こと。

 その契約があるからこそ彼女は僕に協力してくれていた。
 
 



しおりを挟む
感想 6

あなたにおすすめの小説

蔑ろにされた王妃と見限られた国王

奏千歌
恋愛
※最初に公開したプロット版はカクヨムで公開しています 国王陛下には愛する女性がいた。 彼女は陛下の初恋の相手で、陛下はずっと彼女を想い続けて、そして大切にしていた。 私は、そんな陛下と結婚した。 国と王家のために、私達は結婚しなければならなかったから、結婚すれば陛下も少しは変わるのではと期待していた。 でも結果は……私の理想を打ち砕くものだった。 そしてもう一つ。 私も陛下も知らないことがあった。 彼女のことを。彼女の正体を。

【完結】私はいてもいなくても同じなのですね ~三人姉妹の中でハズレの私~

紺青
恋愛
マルティナはスコールズ伯爵家の三姉妹の中でハズレの存在だ。才媛で美人な姉と愛嬌があり可愛い妹に挟まれた地味で不器用な次女として、家族の世話やフォローに振り回される生活を送っている。そんな自分を諦めて受け入れているマルティナの前に、マルティナの思い込みや常識を覆す存在が現れて―――家族にめぐまれなかったマルティナが、強引だけど優しいブラッドリーと出会って、少しずつ成長し、別離を経て、再生していく物語。 ※三章まで上げて落とされる鬱展開続きます。 ※因果応報はありますが、痛快爽快なざまぁはありません。 ※なろうにも掲載しています。

結婚30年、契約満了したので離婚しませんか?

おもちのかたまり
恋愛
恋愛・小説 11位になりました! 皆様ありがとうございます。 「私、旦那様とお付き合いも甘いやり取りもしたことが無いから…ごめんなさい、ちょっと他人事なのかも。もちろん、貴方達の事は心から愛しているし、命より大事よ。」 眉根を下げて笑う母様に、一発じゃあ足りないなこれは。と確信した。幸い僕も姉さん達も祝福持ちだ。父様のような力極振りではないけれど、三対一なら勝ち目はある。 「じゃあ母様は、父様が嫌で離婚するわけではないんですか?」 ケーキを幸せそうに頬張っている母様は、僕の言葉にきょとん。と目を見開いて。…もしかすると、母様にとって父様は、関心を向ける程の相手ではないのかもしれない。嫌な予感に、今日一番の寒気がする。 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇ 20年前に攻略対象だった父親と、悪役令嬢の取り巻きだった母親の現在のお話。 ハッピーエンド・バットエンド・メリーバットエンド・女性軽視・女性蔑視 上記に当てはまりますので、苦手な方、ご不快に感じる方はお気を付けください。

【完結】失いかけた君にもう一度

暮田呉子
恋愛
偶然、振り払った手が婚約者の頬に当たってしまった。 叩くつもりはなかった。 しかし、謝ろうとした矢先、彼女は全てを捨てていなくなってしまった──。

好きでした、さようなら

豆狸
恋愛
「……すまない」 初夜の床で、彼は言いました。 「君ではない。私が欲しかった辺境伯令嬢のアンリエット殿は君ではなかったんだ」 悲しげに俯く姿を見て、私の心は二度目の死を迎えたのです。 なろう様でも公開中です。

【完結】100日後に処刑されるイグワーナ(悪役令嬢)は抜け毛スキルで無双する

みねバイヤーン
恋愛
せっかく悪役令嬢に転生したのに、もう断罪イベント終わって、牢屋にぶち込まれてるんですけどー。これは100日後に処刑されるイグワーナが、抜け毛操りスキルを使って無双し、自分を陥れた第一王子と聖女の妹をざまぁする、そんな物語。

【コミカライズ2月28日引き下げ予定】実は白い結婚でしたの。元悪役令嬢は未亡人になったので今度こそ推しを見守りたい。

氷雨そら
恋愛
悪役令嬢だと気がついたのは、断罪直後。 私は、五十も年上の辺境伯に嫁いだのだった。 「でも、白い結婚だったのよね……」 奥様を愛していた辺境伯に、孫のように可愛がられた私は、彼の亡き後、王都へと戻ってきていた。 全ては、乙女ゲームの推しを遠くから眺めるため。 一途な年下枠ヒーローに、元悪役令嬢は溺愛される。 断罪に引き続き、私に拒否権はない……たぶん。

【完結】長い眠りのその後で

maruko
恋愛
伯爵令嬢のアディルは王宮魔術師団の副団長サンディル・メイナードと結婚しました。 でも婚約してから婚姻まで一度も会えず、婚姻式でも、新居に向かう馬車の中でも目も合わせない旦那様。 いくら政略結婚でも幸せになりたいって思ってもいいでしょう? このまま幸せになれるのかしらと思ってたら⋯⋯アレッ?旦那様が2人!! どうして旦那様はずっと眠ってるの? 唖然としたけど強制的に旦那様の為に動かないと行けないみたい。 しょうがないアディル頑張りまーす!! 複雑な家庭環境で育って、醒めた目で世間を見ているアディルが幸せになるまでの物語です 全50話(2話分は登場人物と時系列の整理含む) ※他サイトでも投稿しております ご都合主義、誤字脱字、未熟者ですが優しい目線で読んで頂けますと幸いです

処理中です...