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二章、学園時代
アウスラー先生視点1
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私はアウスラー・バルゼルドという。バルゼルド伯爵家の次男として生まれた。
私は小さい頃から自分は天才だと思っていた。
何をするのも一発で上手くできた。周りは尊敬の眼差しを向け誉めてくる。同時に低脳な同級生から憎らしいと疎まれた。
だがそんなもの自分には関係なかった。
学園の勉強も簡単で、退屈なものだったのを覚えている。
5年かけて学ぶ魔術科も最短の3年で卒業し、最年少の魔術騎士として入団した。
家は普通に優秀な兄が継ぐので、自分は能力を惜しみなく活用できるだろう騎士団に入ったのだ。
そんな私をやっかむ人は多く、皆敵視してきた。自由にできず騎士団の中で息苦しい思いをする。
そんな中、神殿の方から家庭教師の依頼がきた。
誰もが押し付け合い、最終的に年若いため発言権がない私に回ってくる。
侮られたことが悔しくて、惨めだった。
だが、上司からの命令を無視することもできなくて、言われた屋敷に嫌々ながら赴いた。そこで紹介されたのはつい先日、精霊と契約したばかりだという少女だった。
幼い少女を前に自分がこんなことをしなくてはならないのか愕然とした。
何を教えろというのか分からなかった。
そう思ったのも束の間のことだった。
少女ーエルファ様の契約精霊は東方にいるはずの霊鳥鸞様だったのだ。
私は思わずひれ伏した。
あの伝説の霊鳥だ。
以前読んだ文献に鳳凰の種類であり、変わり者ゆえ滅多なことでは契約しないと書いてあったのを覚えている。そんな幻の霊鳥を従える少女が普通な訳はないだろう。
現にエルファ様は聡明な子だった。
教えれば教えるだけ覚え、興味を抱き憶えていく。
こんなに面白いと思うことは初めてのことだった。
その中で、一つだけ気になったのは、エルファとその家族の関係性。
エルファ様の両親は彼女に無関心だった。
初めに挨拶に行った時に、「勉強の報告もいらない、勝手にしてくれ」と言われたので、進捗状況など報告したこともない。
この家庭教師の件を持ってきたのは神殿からだったと思い出した。
きっとエルファ様の実力を知らないだろうか。まったく気にしていないようなのが不思議だった。
代わりにエルファ様の妹であるカリナ様を甘やかしていた。光の魔力を有しているとは聞いていたが、私にとってエルファの魔力、魔術の方が重要だと思うのだが、彼らは違うらしい。
両親からそんな扱いをされていても、姉妹の二人は仲が良かった。互いに思い合っているのがわかった。
エルファ様から語られるのはカリナ様の自慢する話ばかり。その顔も嬉しそうに輝いていた。
だからなのだろう。
エルファ様が卑屈にならないのは。カリナ様が奢らないのは。
それでも、どこかエルファ様は達観している気がしていた。ご両親に対して冷静である。仕方ないと割り切っているように見えた。
もしかすれば、『怒る』という感情を取りこぼしているのではないだろうか。そう思わずにいられなかった。
唯一、鸞様の傍でいるのが、落ち着けているような気もした。鸞様自身気づいているかもしれない。
私もその一部になりたいものだと思ってしまった。
エルファ様は優秀な方だった。
面白くてかまいたくなる。
家庭教師を始めてから一年で学園の高等科まで習う勉強を教えてしまった。私以上の天才だろう。
だからこそ、自分の持てるすべてを教えたいと思うのはあたりまえのこと。
エルファ様に時間を割きたいと思い、本業の魔術騎士団の仕事を卒なくこなしていく。時間を有効的に使わなくてはならない。
意識も行動もかわった私に周囲は驚いていた。特に驚いていたのは上司であるブライド隊長だ。天狗になって生意気な態度を取っていた若造が急に大人しくなれば戸惑うだろう。
「病気か?」
そんなことまで言われた。なので、正直にエルファ様のことを話した。
「自分を天才だと思って上司の言うことも聞かない奴を改心させる程の天才?そんな奴がいれば、魔術騎士団にほしいな」
冗談だろうとブライド隊長は笑うだけで信じてくれなかった。
ー嘘ではないのに・・・
私は小さい頃から自分は天才だと思っていた。
何をするのも一発で上手くできた。周りは尊敬の眼差しを向け誉めてくる。同時に低脳な同級生から憎らしいと疎まれた。
だがそんなもの自分には関係なかった。
学園の勉強も簡単で、退屈なものだったのを覚えている。
5年かけて学ぶ魔術科も最短の3年で卒業し、最年少の魔術騎士として入団した。
家は普通に優秀な兄が継ぐので、自分は能力を惜しみなく活用できるだろう騎士団に入ったのだ。
そんな私をやっかむ人は多く、皆敵視してきた。自由にできず騎士団の中で息苦しい思いをする。
そんな中、神殿の方から家庭教師の依頼がきた。
誰もが押し付け合い、最終的に年若いため発言権がない私に回ってくる。
侮られたことが悔しくて、惨めだった。
だが、上司からの命令を無視することもできなくて、言われた屋敷に嫌々ながら赴いた。そこで紹介されたのはつい先日、精霊と契約したばかりだという少女だった。
幼い少女を前に自分がこんなことをしなくてはならないのか愕然とした。
何を教えろというのか分からなかった。
そう思ったのも束の間のことだった。
少女ーエルファ様の契約精霊は東方にいるはずの霊鳥鸞様だったのだ。
私は思わずひれ伏した。
あの伝説の霊鳥だ。
以前読んだ文献に鳳凰の種類であり、変わり者ゆえ滅多なことでは契約しないと書いてあったのを覚えている。そんな幻の霊鳥を従える少女が普通な訳はないだろう。
現にエルファ様は聡明な子だった。
教えれば教えるだけ覚え、興味を抱き憶えていく。
こんなに面白いと思うことは初めてのことだった。
その中で、一つだけ気になったのは、エルファとその家族の関係性。
エルファ様の両親は彼女に無関心だった。
初めに挨拶に行った時に、「勉強の報告もいらない、勝手にしてくれ」と言われたので、進捗状況など報告したこともない。
この家庭教師の件を持ってきたのは神殿からだったと思い出した。
きっとエルファ様の実力を知らないだろうか。まったく気にしていないようなのが不思議だった。
代わりにエルファ様の妹であるカリナ様を甘やかしていた。光の魔力を有しているとは聞いていたが、私にとってエルファの魔力、魔術の方が重要だと思うのだが、彼らは違うらしい。
両親からそんな扱いをされていても、姉妹の二人は仲が良かった。互いに思い合っているのがわかった。
エルファ様から語られるのはカリナ様の自慢する話ばかり。その顔も嬉しそうに輝いていた。
だからなのだろう。
エルファ様が卑屈にならないのは。カリナ様が奢らないのは。
それでも、どこかエルファ様は達観している気がしていた。ご両親に対して冷静である。仕方ないと割り切っているように見えた。
もしかすれば、『怒る』という感情を取りこぼしているのではないだろうか。そう思わずにいられなかった。
唯一、鸞様の傍でいるのが、落ち着けているような気もした。鸞様自身気づいているかもしれない。
私もその一部になりたいものだと思ってしまった。
エルファ様は優秀な方だった。
面白くてかまいたくなる。
家庭教師を始めてから一年で学園の高等科まで習う勉強を教えてしまった。私以上の天才だろう。
だからこそ、自分の持てるすべてを教えたいと思うのはあたりまえのこと。
エルファ様に時間を割きたいと思い、本業の魔術騎士団の仕事を卒なくこなしていく。時間を有効的に使わなくてはならない。
意識も行動もかわった私に周囲は驚いていた。特に驚いていたのは上司であるブライド隊長だ。天狗になって生意気な態度を取っていた若造が急に大人しくなれば戸惑うだろう。
「病気か?」
そんなことまで言われた。なので、正直にエルファ様のことを話した。
「自分を天才だと思って上司の言うことも聞かない奴を改心させる程の天才?そんな奴がいれば、魔術騎士団にほしいな」
冗談だろうとブライド隊長は笑うだけで信じてくれなかった。
ー嘘ではないのに・・・
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