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二章、学園時代
14歳ー3
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話を聞き覚えたレイはわたしに謝ってきた。
「ごめん。僕が先に言うべきだった。確かにアス兄様の言う通りだ。今王宮では、王位継承を巡っての争いが激化している」
「そう、なんだ・・・」
「王位継承やカリナ嬢次第ではエルファは覚悟を決めて貰わないと・・・いけなく、なる・・・」
暗い表情をしていた。
覚悟・・・
わたしはどうしたいのだろう・・・
「もしもの時は逃げて」
意外な言葉にわたしはレイを見た。
レイの深い緑色の瞳がわたしを見ていた。
苦悩、悲しみ、そんな色が混じっているような気がする。
わたし・・・わたしは・・・
「君には幸せになってほしい。この国を飛び出して、世界を見てほしい。自由であってほしい」
憧れのような呟きに、わたしはレイに聞いた。
「レイは見たくないの?」
「僕・・・?」
「もし、もしもよ、失礼だとは思うけど、王太子になれなかったら、自由になってもいいんじゃない?」
怒るかもしれない。でも、そんな絶望のこもった呟きを聞いて言わずにはいられない。
「見てみたいな・・・。自由、があれば・・・」
その返答に何も返す言葉が出てこなかった。
わたしには王子という立場がどのようなものか想像できなかったから。
もしかすると、彼は可哀想な人なのかもしれない。
わたしにはこうやって、話を聞く以外どうすることもできない。
「また、レイのこと教えてくれる?この国の現状も教えて。わたし・・・レイの力になれることがあるならば、頑張るから」
「エルファ・・・」
『あぁ~、お前ら』
軽い声が聞こえ、セイカがわたしの肩に帰ってきた。
「セイカ?どうしたの?」
『小僧、いつもの迎えのようだ。早く行け』
その言葉にレイは耳を澄ましたかと思うとさっと立ち上がった。
「エルファ。ごめん。行くね。また・・・ね」
それだけ言って、レイは言ってしまう。
『エル。我が言うべきではないが、気をつけろ』
「セイカ?どう言うこと?」
『お前は気を遣いすぎる。・・・本当にお前の両親とは似つかんな』
「カリナもよ」
『・・・』
セイカはわたしの肩の上で毛繕いをした。
そろそろ、わたしも教室に戻らなくてはならない。サボり過ぎてはアウスラー先生に怒られてしまう。
わたしも立ち上がり、スカートについた草を叩いて落とした。
わたしは魔術科教室に戻るために歩きだす。
その途中、レイドリック殿下の姿が前方にに見えた。
友人と思われる方々と楽しそうに談笑しながら歩いている。
すれ違ってもわたしがその目に映っていないかのように表情一つ変えないあたりが徹底していると思う。
こうやって、公な場所では無視をされるのは寂しいが、あの隠れ場だけでは私だけが知るレイの姿があると思うと少しだけ優越感を感じてしまった。
次はいつ会えるだろう
そう思わずにはいられなかった。
「ごめん。僕が先に言うべきだった。確かにアス兄様の言う通りだ。今王宮では、王位継承を巡っての争いが激化している」
「そう、なんだ・・・」
「王位継承やカリナ嬢次第ではエルファは覚悟を決めて貰わないと・・・いけなく、なる・・・」
暗い表情をしていた。
覚悟・・・
わたしはどうしたいのだろう・・・
「もしもの時は逃げて」
意外な言葉にわたしはレイを見た。
レイの深い緑色の瞳がわたしを見ていた。
苦悩、悲しみ、そんな色が混じっているような気がする。
わたし・・・わたしは・・・
「君には幸せになってほしい。この国を飛び出して、世界を見てほしい。自由であってほしい」
憧れのような呟きに、わたしはレイに聞いた。
「レイは見たくないの?」
「僕・・・?」
「もし、もしもよ、失礼だとは思うけど、王太子になれなかったら、自由になってもいいんじゃない?」
怒るかもしれない。でも、そんな絶望のこもった呟きを聞いて言わずにはいられない。
「見てみたいな・・・。自由、があれば・・・」
その返答に何も返す言葉が出てこなかった。
わたしには王子という立場がどのようなものか想像できなかったから。
もしかすると、彼は可哀想な人なのかもしれない。
わたしにはこうやって、話を聞く以外どうすることもできない。
「また、レイのこと教えてくれる?この国の現状も教えて。わたし・・・レイの力になれることがあるならば、頑張るから」
「エルファ・・・」
『あぁ~、お前ら』
軽い声が聞こえ、セイカがわたしの肩に帰ってきた。
「セイカ?どうしたの?」
『小僧、いつもの迎えのようだ。早く行け』
その言葉にレイは耳を澄ましたかと思うとさっと立ち上がった。
「エルファ。ごめん。行くね。また・・・ね」
それだけ言って、レイは言ってしまう。
『エル。我が言うべきではないが、気をつけろ』
「セイカ?どう言うこと?」
『お前は気を遣いすぎる。・・・本当にお前の両親とは似つかんな』
「カリナもよ」
『・・・』
セイカはわたしの肩の上で毛繕いをした。
そろそろ、わたしも教室に戻らなくてはならない。サボり過ぎてはアウスラー先生に怒られてしまう。
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すれ違ってもわたしがその目に映っていないかのように表情一つ変えないあたりが徹底していると思う。
こうやって、公な場所では無視をされるのは寂しいが、あの隠れ場だけでは私だけが知るレイの姿があると思うと少しだけ優越感を感じてしまった。
次はいつ会えるだろう
そう思わずにはいられなかった。
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