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二章、学園時代
14歳ー1
しおりを挟む春を再び迎え、わたしとカリナは一つ学年が上がった。
「お姉様~」
わたしが図書館を出て歩いていると前方からぽわぽわとカリナが近づいてきて、抱きしめてきた。
もう少しで13歳になるカリナ誰もが振り返えりたくなるほどますます綺麗になった。
魔術の勉強や一般教養も真面目に励んでいるらしい。また、王太子妃教育も順調に進んでいるらしいと小耳に挟んでいた。
「なかなか会えなくて寂しいですっ」
可愛いカリナをわたしは抱きしめ返した。
温かな日向の匂いにわたしは癒される。
「お姉様に会ってやる気が復活しましたわ」
しばらく抱きしめているとカリナがわたしの肩に顔を擦り付けてから離れた。気合を入れ直したようだ。
「頑張ってね」
「はーい」
元気に返事をして教室に帰るカリナの姿を見送ってから、わたしも教室に向う。
今のわたしは学園の中等科と高等科を飛ばし、専門的なことを習う魔術科に通っていた。そのため教室が別になりカリナともなかなか会えないでいる。
アウスラー先生は本当にすごい人だったようで、一般教養もしっかり教えてくれていたのだ。
学園に入るまで、自分の知識が普通のことだと思っていのが、実際に授業が始まってからあまりの教養の簡単さに驚いて、アウスラー先生を問い正してしまった。
するとアウスラー先生は「いや~、教えたら教えた分吸収するから面白くて、高等科以上の教養を教えちゃってたや」といたずらっ子のように笑っていた。
そして魔術にしても、魔力の強いわたしには初歩的魔術では力の制御がしづらいということになったため、あれよあれよと話が進み一年生の半ばには魔術科行きが決まった。
入学当初に決めた普通のー、目立たない生活は一年と持たなかった。
魔術科に編入して気づいたのは自然体でいられること。
セイカと普通に話していても何も言われない。
他の生徒とも話も合うので気を遣わないし、楽だった。
アウスラー先生から今までのように学ぶこともでき、やりがいがある。
そして、第一王子であるアスナルド殿下とも親しくなれた。
1ヶ月の半分近くは病欠するのだが、魔術研究には真剣な方だった。
病気がちのため王太子候補としてはレイドリック殿下よりは弱いものの人格的な面では支持者が少なからずいた。
「ここの生活には慣れたかい?」
柔らかな物腰でわたしを気遣ってくれる。
「ありがとうございます。楽しく学ばせて頂いています」
「なら、よかった。でも、アウスラー先生にかなり絞られてない?」
「それは・・・、もともと家庭教師をして頂いていましたので、容赦がないといいますか・・・」
わたしの限界値を知っているアウスラー先生はよく難題を押し付けてくる。
「無理はしないようにね」
『我がいるんだ。させるわけないだろう』
『セイカ!』
肩にいるセイカがフルリと身体を揺さぶった。
「ふふっ。君の精霊は過保護みたいだね。コホッ・・・」
「殿下?」
突如、殿下は咳こんだ。一度でた咳はなかなか治らず、うずくまってしまう。わたしは不敬とは思いつつ、背中をさすった。
「だ、大丈夫ですか?」
「あぁ、大丈夫。いつものことだから・・・」
やっと落ち着いた殿下は顔を上げ諦めた表情で笑った。
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