燐火の魔女〜あなたのために生きたわたし〜

彩華(あやはな)

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二章、学園時代

13歳ー2

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 入学して1ヶ月が過ぎる頃にはそれぞれグループができていた。上級生のことも把握していく。

 二学年上には第二王子のガナッシュ殿下と第三王子のレイドリック殿下がいる。
 そして、高等科最高学年に第一王子であるアスナルド殿下が在籍していた。

 中等科内ではガナッシュ派とレイドリック派、そして中立派と分かれているらしい。
 高等科ではアスナルド派を多数とされているようだが、実力主義であるレイドリック派もいるようだった。

 そんな彼らはカリナを引き入れようとしている。

 カリナ自身のんびりしているのか、ただ単に気づいていないのか、誰が何派なのか気にも止めず平等に接していた。

 カリナを前にガナッシュ殿下もレイドリック殿下も主だって争うことはなかった。
 
 それはカリナの前だけであり、わたしには邪険にしたそうにしていた。だがされていない。

 なぜならー

「お姉様~。ここわかりませんっ」
「お姉様。教室に一緒にいきましょう」
「お姉様。どうすれば、上手く魔術がつかえますの?」

 と、犬のようにわたしについて回わってくるのだ。

 一度、どうして友達でなくてわたしに聞いて来るのかと尋ねてみると「お姉様のほうが凄いですもの!」と言われた。そこまで言われると突き放すわけにもいかず、周りの鋭い視線を感じつつカリナに教えてしまう。

 カリナの友達や派閥の方々が猛勉強、訓練をしてカリナを振り向かせようと必死になっているのがわかっている。

 風当たりが強くなってきたので、数時間わたしはカリナの前からいなくなるようにした。



「あぁ、静か・・・」

 中等科の教室から離れた庭にわたしはいた。アウスラー先生に相談してみると、この場所を教えてくれた。
 先生とっておきの秘密場所らしく、人は滅多には来ないらしい。なぜならここは学園外部の森に接するため学園を護る結界線位置し、結界の張り替え前などに効果が緩んでほんの時たま魔獣が入り込む危険がある場所なのだそう。

 それでも、静かなのはありがたい。わたしは騒がしさから離れ、ゆっくりと読書をしていると名前を呼ばれた。

「エルファ?」

 知っている声にわたしは顔を上げる。
 
「レイ・・・ドリック殿下?」

 そこにはレイドリック殿下がいた。

 レイドリック殿下は左右、後ろを素早く確認すると、表情をやわらげた。

「誰もいない。レイでいいよ」

 カリナの傍で見ているきつめの表情ではない。物腰の柔らかな微笑みだった。

「・・・うん。レイ。いつもカリナの傍でいるのを見てるけど、こうやって話すのは初めてね」
「・・・そう、だね。・・・どうしても、周りがいるからね」

 少し歯切れが悪そうな答えだった。

「王子様も大変ね」
「大変だよ。なんで君はここにいるの?」
「なんでって・・・、アウスラー先生に教えて貰ったの。レイは?こんな所にいて大丈夫なの?」
「それは・・・、一人になりたい時もあって」
「じゃあ、同じね。久々におしゃべりする?」

 わたしは笑いながら問いかけると、レイは嬉しそうに目を細め、隣に座った。

『ふぁ~。我は寝てる』

 肩に乗っていたセイカは近くの小枝に飛び移ると丸くなって眠ってしまう。
 日があたり気持ち良いのだろう。すぐに寝息が聞こえた。

 わたしたちは久々の会話を楽しんだ。
 以前のレイより、もっと知識が広がっていた。わたしの知らないことを教えてくれる。

 ずっと話をしていて退屈などしなかった。

 
『おい、小僧。お前を探している奴がいる』

 不意にセイカの声がする。見るとふるりと身を震わせるとセイカが羽根の毛繕いをしていた。

「ありがとうございます」

 レイは素早く立ちあがる。

「エルファ。ありがとう。よかったら、またここで会える?」 
「うん。ここなら・・・大丈夫?」
「大丈夫だよ。じゃあ、またね」

 レイは走ってもと来た道を行った。



 それ以降レイとは時たま隠れ場で会うようになった。
 屈託なく笑うレイの顔がわたしは好きだった。

 それ以外の時は、冷淡な態度でわたしを見ている。いや、それ以上に嫌悪感を出している気がした。

 彼の二面性に驚きつつ、王子という世間体や矜持、そして重圧といったものを考えさせられる。
 わたしは隠れ場で会う時以外は気をつけるようにした。

 
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