燐火の魔女〜あなたのために生きたわたし〜

彩華(あやはな)

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1、幼少期

12歳ー2

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 カリナに連れられ、詳しいことを聞くために両親のもとに行った。

 久しぶりに会う両親はわたしを見て眉を一瞬顰めかけたが、カリナが一緒にいるのに気づき平常を保ったようだった。

「失礼します。カリナから聞きましたが、わたしも学園に行くと聞きましたが、本当でしょうか?」
「あぁ、そうだ。カリナと同じ一年生として一緒に行ってもらう。といってもお前は寮暮らしをしてもらうがな」

 寮暮らしと聞いてわたしよりカリナが驚いた声を出した。

「なんでなの?」

 意外にその声は大きく、両親は驚いた表情を見せる。

「そのっ、あのね・・・」

    母が慌てた。その横で父が咳払いをする。

「うほん。カリナは入学と共に王太子妃教育になる。まだ王太子は決まってはいないが、光魔法を持つカリナは未来の王妃であることは確実だ。そんな姉が得体の知れない精霊を使役していては他に示しがつかん。一人でなんでもできるように、我侯爵家の恥にならないように生きてもらうためにも、寮生活をさせようというのだ」

 もっともらしい言い訳をしているようだが、体良く追い出したいようだ。
 カリナにお金を惜しみなく使いたいのだろう。わたしが家にいれば、それこそ「わたしのぶん」として体裁を整えなければならないから。
 寮生活をすれば、最低出費でいいと思っているに違いない。

『・・・』
『はぁ~?得体の知れない精霊?』

 2体の精霊がピリピリしているのには才能のない両親には感じることもできていなかった。

「そんな。折角、お姉様と二人で学園に行けると思っていたのに・・・」

 両親がわたしを疎んでいることにも疑っていないカリナはシュンとして俯いた。

 こんな時ばかり、母はわたしにカリナに何か言って取り繕えと目で合図を送ってくるので、従ってみる。

「カリナ。学園に行けばいつでも会えるわよ
。わたしもいつまでも甘えてはいられないもの。カリナが王妃様になった時にあなたを護れるように頑張るために寮に入るのよ」 

 安心させるように笑顔で言った。
 
「わたしのため?」
「そう。わたしはカリナが大切だから」
「うん」 

 カリナはぎゅっと抱きついてきた。家族の中で唯一わたしを慕う妹が可愛い。

 こうやって、カリナがわたしに好意を寄せてくるのも両親にとって不服なのだろう。

 わたしより一歳だけ下とはいえ両親に甘やかされていて、まだ精神的にも幼い妹。姉心では心配だが、両親も未来の王妃に対してきちんとした教育をすると思いたい。

『クラルテ様』
『なに~?』

 わたしはカリナには聞こえないように頭の中でクラルテに話しかけた。

『カリナのことよろしくお願いします』
『うん、まぁ~、その時がきたら頑張るわ~』

 相変わらずの軽い声に笑いそうになってしまった。
 
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