4 / 37
1、幼少期
10歳ー2
しおりを挟む
突然青い炎がわたしと司祭を中心に円を描くように燃えあがった。
周囲から悲鳴が上がる。他の大人たちが騒いでいる声が聞こえた。
「大丈夫ですか?」
司祭が慌てたように言ってきたのが、わたしは目の前に現れた青い火の玉に釘付けになっていた。
ゆっくりと手を伸ばす。
普通の炎のような熱さを感じない。
「あなたは誰?」
わたしの声に反応したのか、火の玉はゆっくりと形を変え青い鳥の形へと変化した。
『くくくっ』
青い鳥は軽やかに笑う。
『我が怖くないのか。やはりわたしの見込んだ通りだ』
頭の中に響くような声。
「喋れるの?」
鳥はまた笑った。
『当たり前だろう。我は炎を司る霊鳥、鸞という』
「不死鳥、ですか?」
司祭が呟くと、鸞という鳥は真っ青な目で彼を睨みつけた。
『あんなものと一緒にするな。我は鳳凰種にあたる。神獣である朱雀には及ばんが我は鳳凰種の中の鳳凰や鵷鶵より灼熱の炎を有しておる。確かに不死鳥は不死身であり涙や血にも力を宿しておるが、我は瑞鳥ぞ。同じにするでない』
その鳥は羽を大きくばたつかし自分をアピールした。
「申し訳ございません」
司祭は素直に頭を下げた。
「過去に一度だけ、不死鳥と契約した記録があり勘違いをいたしました。申し訳ありません。
鳳凰といえば東方に住まわれている霊鳥。鳳凰種とあれば高位精霊なはず。
なぜあなた様のような高位精霊が彼女に会いにきたのでしょうか?」
東方と聞いてわたしは驚いて、鳥を見ていた。
鳥は喉をくくくっと鳴らす。
『数年前、その者が力を使ったであろう?』
まさか王宮のことでのことだろうか?
思わず頷いた。
『心地よい力で、気に入ったのだ。だから、我が名乗りをあげた。他の輩に渡したくないからな』
青い炎が一層大きくなる。
『娘よ。我と契約せよ』
「契約?」
わたしは復唱した。
『そうだ。簡単なことだろう』
「お待ちください。まだ、彼女は10歳の少女です。普通は名前契約をして精霊を使役します。あなた様がいう契約は意味が違うはず」
『黙れ。お前には関係ない!!』
青い炎が司祭に向けられ、彼は怯えるように蹲った。
鳥は澄んだ目でわたしを見てきた。
『別に、今すぐというものではない。お前の命が尽きる時、その肉体と魂を我にくれればいい』
「わたしの肉体と魂?」
『ああ。さすれば、我はお前の手足にでもなろう』
「・・・」
『どうだ?』
「・・・死ぬ時・・・、おばあさんで、しわしわのくしゃくしゃになっててもかまわないの?」
わたしは首を傾げて聞いた?
鳥はわたしの問いに目を丸くしたかと思うと笑い出した。炎が笑い声に乗ってゆらゆらと揺れる。
『はははっ。そんなことは気にはしない。我らは不死鳥のように不死ではないが人間からすれば長寿の生き物だ。死ぬまでの楽しいおもちゃになるものは欲しい』
不死・・・、長寿・・・その言葉を聞いてわたしは俯いた。
もし、わたしが死んだら・・・一人になるのか・・・。
そう思うと、その鳥が可哀想になった。
「ひとりぼっちは・・・寂しいよね・・・」
『・・・?』
「うん、いいわよ」
わたしは頷いていた。
「エルファ様?」
「一人になったら寂しいもの。死んでからでいいなら、わたしの全部をあげる」
躊躇うことなどなかった。
「エルファ様!」
祭司が慌てたように叫ぶ。その顔はひどく焦っているように見えた。
なんでそんな顔をするの?
周囲から悲鳴が上がる。他の大人たちが騒いでいる声が聞こえた。
「大丈夫ですか?」
司祭が慌てたように言ってきたのが、わたしは目の前に現れた青い火の玉に釘付けになっていた。
ゆっくりと手を伸ばす。
普通の炎のような熱さを感じない。
「あなたは誰?」
わたしの声に反応したのか、火の玉はゆっくりと形を変え青い鳥の形へと変化した。
『くくくっ』
青い鳥は軽やかに笑う。
『我が怖くないのか。やはりわたしの見込んだ通りだ』
頭の中に響くような声。
「喋れるの?」
鳥はまた笑った。
『当たり前だろう。我は炎を司る霊鳥、鸞という』
「不死鳥、ですか?」
司祭が呟くと、鸞という鳥は真っ青な目で彼を睨みつけた。
『あんなものと一緒にするな。我は鳳凰種にあたる。神獣である朱雀には及ばんが我は鳳凰種の中の鳳凰や鵷鶵より灼熱の炎を有しておる。確かに不死鳥は不死身であり涙や血にも力を宿しておるが、我は瑞鳥ぞ。同じにするでない』
その鳥は羽を大きくばたつかし自分をアピールした。
「申し訳ございません」
司祭は素直に頭を下げた。
「過去に一度だけ、不死鳥と契約した記録があり勘違いをいたしました。申し訳ありません。
鳳凰といえば東方に住まわれている霊鳥。鳳凰種とあれば高位精霊なはず。
なぜあなた様のような高位精霊が彼女に会いにきたのでしょうか?」
東方と聞いてわたしは驚いて、鳥を見ていた。
鳥は喉をくくくっと鳴らす。
『数年前、その者が力を使ったであろう?』
まさか王宮のことでのことだろうか?
思わず頷いた。
『心地よい力で、気に入ったのだ。だから、我が名乗りをあげた。他の輩に渡したくないからな』
青い炎が一層大きくなる。
『娘よ。我と契約せよ』
「契約?」
わたしは復唱した。
『そうだ。簡単なことだろう』
「お待ちください。まだ、彼女は10歳の少女です。普通は名前契約をして精霊を使役します。あなた様がいう契約は意味が違うはず」
『黙れ。お前には関係ない!!』
青い炎が司祭に向けられ、彼は怯えるように蹲った。
鳥は澄んだ目でわたしを見てきた。
『別に、今すぐというものではない。お前の命が尽きる時、その肉体と魂を我にくれればいい』
「わたしの肉体と魂?」
『ああ。さすれば、我はお前の手足にでもなろう』
「・・・」
『どうだ?』
「・・・死ぬ時・・・、おばあさんで、しわしわのくしゃくしゃになっててもかまわないの?」
わたしは首を傾げて聞いた?
鳥はわたしの問いに目を丸くしたかと思うと笑い出した。炎が笑い声に乗ってゆらゆらと揺れる。
『はははっ。そんなことは気にはしない。我らは不死鳥のように不死ではないが人間からすれば長寿の生き物だ。死ぬまでの楽しいおもちゃになるものは欲しい』
不死・・・、長寿・・・その言葉を聞いてわたしは俯いた。
もし、わたしが死んだら・・・一人になるのか・・・。
そう思うと、その鳥が可哀想になった。
「ひとりぼっちは・・・寂しいよね・・・」
『・・・?』
「うん、いいわよ」
わたしは頷いていた。
「エルファ様?」
「一人になったら寂しいもの。死んでからでいいなら、わたしの全部をあげる」
躊躇うことなどなかった。
「エルファ様!」
祭司が慌てたように叫ぶ。その顔はひどく焦っているように見えた。
なんでそんな顔をするの?
6
お気に入りに追加
223
あなたにおすすめの小説

【完結】私はいてもいなくても同じなのですね ~三人姉妹の中でハズレの私~
紺青
恋愛
マルティナはスコールズ伯爵家の三姉妹の中でハズレの存在だ。才媛で美人な姉と愛嬌があり可愛い妹に挟まれた地味で不器用な次女として、家族の世話やフォローに振り回される生活を送っている。そんな自分を諦めて受け入れているマルティナの前に、マルティナの思い込みや常識を覆す存在が現れて―――家族にめぐまれなかったマルティナが、強引だけど優しいブラッドリーと出会って、少しずつ成長し、別離を経て、再生していく物語。
※三章まで上げて落とされる鬱展開続きます。
※因果応報はありますが、痛快爽快なざまぁはありません。
※なろうにも掲載しています。

【完結】100日後に処刑されるイグワーナ(悪役令嬢)は抜け毛スキルで無双する
みねバイヤーン
恋愛
せっかく悪役令嬢に転生したのに、もう断罪イベント終わって、牢屋にぶち込まれてるんですけどー。これは100日後に処刑されるイグワーナが、抜け毛操りスキルを使って無双し、自分を陥れた第一王子と聖女の妹をざまぁする、そんな物語。

【完結】長い眠りのその後で
maruko
恋愛
伯爵令嬢のアディルは王宮魔術師団の副団長サンディル・メイナードと結婚しました。
でも婚約してから婚姻まで一度も会えず、婚姻式でも、新居に向かう馬車の中でも目も合わせない旦那様。
いくら政略結婚でも幸せになりたいって思ってもいいでしょう?
このまま幸せになれるのかしらと思ってたら⋯⋯アレッ?旦那様が2人!!
どうして旦那様はずっと眠ってるの?
唖然としたけど強制的に旦那様の為に動かないと行けないみたい。
しょうがないアディル頑張りまーす!!
複雑な家庭環境で育って、醒めた目で世間を見ているアディルが幸せになるまでの物語です
全50話(2話分は登場人物と時系列の整理含む)
※他サイトでも投稿しております
ご都合主義、誤字脱字、未熟者ですが優しい目線で読んで頂けますと幸いです

公爵夫人アリアの華麗なるダブルワーク〜秘密の隠し部屋からお届けいたします〜
白猫
恋愛
主人公アリアとディカルト公爵家の当主であるルドルフは、政略結婚により結ばれた典型的な貴族の夫婦だった。 がしかし、5年ぶりに戦地から戻ったルドルフは敗戦国である隣国の平民イザベラを連れ帰る。城に戻ったルドルフからは目すら合わせてもらえないまま、本邸と別邸にわかれた別居生活が始まる。愛人なのかすら教えてもらえない女性の存在、そのイザベラから無駄に意識されるうちに、アリアは面倒臭さに頭を抱えるようになる。ある日、侍女から語られたイザベラに関する「推測」をきっかけに物語は大きく動き出す。 暗闇しかないトンネルのような現状から抜け出すには、ルドルフと離婚し公爵令嬢に戻るしかないと思っていたアリアだが、その「推測」にひと握りの可能性を見出したのだ。そして公爵邸にいながら自分を磨き、リスキリングに挑戦する。とにかく今あるものを使って、できるだけ抵抗しよう!そんなアリアを待っていたのは、思わぬ新しい人生と想像を上回る幸福であった。公爵夫人の反撃と挑戦の狼煙、いまここに高く打ち上げます!
➡️登場人物、国、背景など全て架空の100%フィクションです。

【完結】引きこもり令嬢は迷い込んできた猫達を愛でることにしました
かな
恋愛
乙女ゲームのモブですらない公爵令嬢に転生してしまった主人公は訳あって絶賛引きこもり中!
そんな主人公の生活はとある2匹の猫を保護したことによって一変してしまい……?
可愛い猫達を可愛がっていたら、とんでもないことに巻き込まれてしまった主人公の無自覚無双の幕開けです!
そしていつのまにか溺愛ルートにまで突入していて……!?
イケメンからの溺愛なんて、元引きこもりの私には刺激が強すぎます!!
毎日17時と19時に更新します。
全12話完結+番外編
「小説家になろう」でも掲載しています。

蔑ろにされた王妃と見限られた国王
奏千歌
恋愛
※最初に公開したプロット版はカクヨムで公開しています
国王陛下には愛する女性がいた。
彼女は陛下の初恋の相手で、陛下はずっと彼女を想い続けて、そして大切にしていた。
私は、そんな陛下と結婚した。
国と王家のために、私達は結婚しなければならなかったから、結婚すれば陛下も少しは変わるのではと期待していた。
でも結果は……私の理想を打ち砕くものだった。
そしてもう一つ。
私も陛下も知らないことがあった。
彼女のことを。彼女の正体を。
【完結】この胸に抱えたものは
Mimi
恋愛
『この胸が痛むのは』の登場人物達、それぞれの物語。
時系列は前後します
元話の『この胸が痛むのは』を未読の方には、ネタバレになります。
申し訳ありません🙇♀️
どうぞよろしくお願い致します。

結婚30年、契約満了したので離婚しませんか?
おもちのかたまり
恋愛
恋愛・小説 11位になりました!
皆様ありがとうございます。
「私、旦那様とお付き合いも甘いやり取りもしたことが無いから…ごめんなさい、ちょっと他人事なのかも。もちろん、貴方達の事は心から愛しているし、命より大事よ。」
眉根を下げて笑う母様に、一発じゃあ足りないなこれは。と確信した。幸い僕も姉さん達も祝福持ちだ。父様のような力極振りではないけれど、三対一なら勝ち目はある。
「じゃあ母様は、父様が嫌で離婚するわけではないんですか?」
ケーキを幸せそうに頬張っている母様は、僕の言葉にきょとん。と目を見開いて。…もしかすると、母様にとって父様は、関心を向ける程の相手ではないのかもしれない。嫌な予感に、今日一番の寒気がする。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇
20年前に攻略対象だった父親と、悪役令嬢の取り巻きだった母親の現在のお話。
ハッピーエンド・バットエンド・メリーバットエンド・女性軽視・女性蔑視
上記に当てはまりますので、苦手な方、ご不快に感じる方はお気を付けください。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる