5 / 15
5.
しおりを挟む
「スマへ
少しだけ、愚痴を書かしてもらうね。
君には以前、僕に好きな人がいると書いたから、知って欲しくて・・・。
彼女の婚約者は今、他に好きな人ができていて、彼女を蔑ろにするんだ。僕は悲しむ彼女をみていられない。
彼女の暗い顔をみるのが、つらいんだ」
「ラッキーさん
女性は誰かが側にいてくれるだけでも嬉しいものです。
身分があり、婚約者がいる相手なら距離も必要とは思いますが・・・。
その方のお相手を諌めることはできないのですか?」
「スマ
アドバイスありがとう。
彼女の婚約者には、幾度か注意をしてはいるけど、注意をすればするだけ燃え上がると言うか、夢中になっているようで聞き入れてくれないんだ。周りも困っている」
「ラッキーさん
そうなんですね。力になれなくてごめんなさい」
「クロード、明日の休み少し付き合ってくれない?」
カインゼル殿下の婚約者である、エリアル嬢が言ってきた。
「付き合う?どこにです?」
「親友の誕生のお祝いの品を選びたいの。殿下は・・・その、ねっ・・・」
うつむき悲しみに溢れた表情。
カインゼル殿下は、ソフィア・クローレンス伯爵令嬢と常にいるようになっていた。
なぜ、殿下はこんな素晴らしい方を放っておかれるのだろう・・・。
「殿下に相談したら、貴方なら相談に乗ってくれるだろうからって・・・。ダメかしら」
殿下・・・。
「構いませんよ」
僕はにっこりと笑った。
内心では飛び上がりそうなほど嬉しくて仕方ない。
次の日、学園が終わってから僕らは街に出かけた。
護衛は少し離れたところに幾人かいたが、ほぼ二人きり。近くにエリアル嬢がいると思うとドキドキした。
制服だと言うのに、エリアル嬢が可愛い。
高貴な雰囲気が抑えきれていないものの、素の彼女が隣でいる。
「ご親友はどんな方ですか?」
「私の幼馴染で、大切な子なの。でも、身体が弱くて、いつも屋敷で過ごしてるわ。まっすぐないい子なの。私の大切な親友だわ」
その顔は、慈愛に満ちていた。
本当にその子のことを大切に思っているのだと感じる。
「その方はどんなのが好きなんですか?」
「オレンジよ。大好きな花の色ですって」
僕たちは学園の話をしながら、店を回った。
小さな宝石展に入る。
目移りしそうなほどの装飾。
「エリアル嬢は何色が好きなんですか?」
「私?私は・・・紫かしら」
とくんと胸を打つ。
紫は・・・、殿下の瞳の色。
ーやはり、彼女は殿下が好きなんだな・・・
心臓が痛い。
気のせいだ。気づかれてはならない。
自分の心を隠し、二人で見て行く。
羽根の形を模した銀のペンダントがあった。羽根の根元に小さな宝石がついている。
「これ、はどうですか?」
「綺麗ね・・・。オレンジ宝石もついてる。これにしましょう。・・・紫のもあるのね・・・」
色違いのがあった。
「・・・こちらは、僕があなたに贈ってもいいですか?」
気づけば口走っていた。
慌てて、弁解する。
「いや、深い意味はないですよ。折角なんでお揃いの物を持てば、その方も喜ぶんじゃないかと思いまして。なのに、男の僕が黙ってみてるだけでは、気が引けて・・・。エリアル嬢。男の僕に名誉をいただけないでしょうか?」
改まって申し出てみる。
エリアル嬢は、クスクスと笑った。
「では、クロード。貴方に名誉を授けますわ」
僕は彼女にブローチを贈った。
少しだけ、愚痴を書かしてもらうね。
君には以前、僕に好きな人がいると書いたから、知って欲しくて・・・。
彼女の婚約者は今、他に好きな人ができていて、彼女を蔑ろにするんだ。僕は悲しむ彼女をみていられない。
彼女の暗い顔をみるのが、つらいんだ」
「ラッキーさん
女性は誰かが側にいてくれるだけでも嬉しいものです。
身分があり、婚約者がいる相手なら距離も必要とは思いますが・・・。
その方のお相手を諌めることはできないのですか?」
「スマ
アドバイスありがとう。
彼女の婚約者には、幾度か注意をしてはいるけど、注意をすればするだけ燃え上がると言うか、夢中になっているようで聞き入れてくれないんだ。周りも困っている」
「ラッキーさん
そうなんですね。力になれなくてごめんなさい」
「クロード、明日の休み少し付き合ってくれない?」
カインゼル殿下の婚約者である、エリアル嬢が言ってきた。
「付き合う?どこにです?」
「親友の誕生のお祝いの品を選びたいの。殿下は・・・その、ねっ・・・」
うつむき悲しみに溢れた表情。
カインゼル殿下は、ソフィア・クローレンス伯爵令嬢と常にいるようになっていた。
なぜ、殿下はこんな素晴らしい方を放っておかれるのだろう・・・。
「殿下に相談したら、貴方なら相談に乗ってくれるだろうからって・・・。ダメかしら」
殿下・・・。
「構いませんよ」
僕はにっこりと笑った。
内心では飛び上がりそうなほど嬉しくて仕方ない。
次の日、学園が終わってから僕らは街に出かけた。
護衛は少し離れたところに幾人かいたが、ほぼ二人きり。近くにエリアル嬢がいると思うとドキドキした。
制服だと言うのに、エリアル嬢が可愛い。
高貴な雰囲気が抑えきれていないものの、素の彼女が隣でいる。
「ご親友はどんな方ですか?」
「私の幼馴染で、大切な子なの。でも、身体が弱くて、いつも屋敷で過ごしてるわ。まっすぐないい子なの。私の大切な親友だわ」
その顔は、慈愛に満ちていた。
本当にその子のことを大切に思っているのだと感じる。
「その方はどんなのが好きなんですか?」
「オレンジよ。大好きな花の色ですって」
僕たちは学園の話をしながら、店を回った。
小さな宝石展に入る。
目移りしそうなほどの装飾。
「エリアル嬢は何色が好きなんですか?」
「私?私は・・・紫かしら」
とくんと胸を打つ。
紫は・・・、殿下の瞳の色。
ーやはり、彼女は殿下が好きなんだな・・・
心臓が痛い。
気のせいだ。気づかれてはならない。
自分の心を隠し、二人で見て行く。
羽根の形を模した銀のペンダントがあった。羽根の根元に小さな宝石がついている。
「これ、はどうですか?」
「綺麗ね・・・。オレンジ宝石もついてる。これにしましょう。・・・紫のもあるのね・・・」
色違いのがあった。
「・・・こちらは、僕があなたに贈ってもいいですか?」
気づけば口走っていた。
慌てて、弁解する。
「いや、深い意味はないですよ。折角なんでお揃いの物を持てば、その方も喜ぶんじゃないかと思いまして。なのに、男の僕が黙ってみてるだけでは、気が引けて・・・。エリアル嬢。男の僕に名誉をいただけないでしょうか?」
改まって申し出てみる。
エリアル嬢は、クスクスと笑った。
「では、クロード。貴方に名誉を授けますわ」
僕は彼女にブローチを贈った。
25
お気に入りに追加
353
あなたにおすすめの小説

某国王家の結婚事情
小夏 礼
恋愛
ある国の王家三代の結婚にまつわるお話。
侯爵令嬢のエヴァリーナは幼い頃に王太子の婚約者に決まった。
王太子との仲は悪くなく、何も問題ないと思っていた。
しかし、ある日王太子から信じられない言葉を聞くことになる……。
いっそあなたに憎まれたい
石河 翠
恋愛
主人公が愛した男には、すでに身分違いの平民の恋人がいた。
貴族の娘であり、正妻であるはずの彼女は、誰も来ない離れの窓から幸せそうな彼らを覗き見ることしかできない。
愛されることもなく、夫婦の営みすらない白い結婚。
三年が過ぎ、義両親からは石女(うまずめ)の烙印を押され、とうとう離縁されることになる。
そして彼女は結婚生活最後の日に、ひとりの神父と過ごすことを選ぶ。
誰にも言えなかった胸の内を、ひっそりと「彼」に明かすために。
これは婚約破棄もできず、悪役令嬢にもドアマットヒロインにもなれなかった、ひとりの愚かな女のお話。
この作品は小説家になろうにも投稿しております。
扉絵は、汐の音様に描いていただきました。ありがとうございます。


そのご令嬢、婚約破棄されました。
玉響なつめ
恋愛
学校内で呼び出されたアルシャンティ・バーナード侯爵令嬢は婚約者の姿を見て「きたな」と思った。
婚約者であるレオナルド・ディルファはただ頭を下げ、「すまない」といった。
その傍らには見るも愛らしい男爵令嬢の姿がある。
よくある婚約破棄の、一幕。
※小説家になろう にも掲載しています。

王太子の愚行
よーこ
恋愛
学園に入学してきたばかりの男爵令嬢がいる。
彼女は何人もの高位貴族子息たちを誑かし、手玉にとっているという。
婚約者を男爵令嬢に奪われた伯爵令嬢から相談を受けた公爵令嬢アリアンヌは、このまま放ってはおけないと自分の婚約者である王太子に男爵令嬢のことを相談することにした。
さて、男爵令嬢をどうするか。
王太子の判断は?

あなたへの恋心を消し去りました
鍋
恋愛
私には両親に決められた素敵な婚約者がいる。
私は彼のことが大好き。少し顔を見るだけで幸せな気持ちになる。
だけど、彼には私の気持ちが重いみたい。
今、彼には憧れの人がいる。その人は大人びた雰囲気をもつ二つ上の先輩。
彼は心は自由でいたい言っていた。
その女性と話す時、私には見せない楽しそうな笑顔を向ける貴方を見て、胸が張り裂けそうになる。
友人たちは言う。お互いに干渉しない割り切った夫婦のほうが気が楽だって……。
だから私は彼が自由になれるように、魔女にこの激しい気持ちを封印してもらったの。
※このお話はハッピーエンドではありません。
※短いお話でサクサクと進めたいと思います。

ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる