3 / 17
1巻
1-3
しおりを挟む
騎士科と普通科、経済科共通の玄関が見える場所で、わたしはカイル様が登校するのを眺めていた。
今日のカイル様は少し髪が跳ねている。
登校時間がギリギリなので、寝坊をしたのかもしれない。ネクタイの結び目も乱雑だ。
一緒に登校してきたマリー様も髪が整っていない。手櫛でまとめたような歪な形になっている。
まさか……
いえ、きっと寝坊に違いない……
カイル様にはご友人が多く、沢山の方から声を掛けられていた。楽しそうに話している。
わたしの友達はラフィシアだけ。
それで構わないけれど。
不意にカイル様が目を細め、隣に立つマリー様を愛おしそうに見た。口元が緩んでいる。
何を話しているんだろう?
耳元で何かを囁かれ、マリー様が顔を真っ赤にした。そして、うっとりとした表情をカイル様に向ける。
わたしがいるべき場所に、マリー様がいる。
二人の不貞の証拠を揃えていると、お兄様は言っていた。
もうじき、婚約を解消……いえ、破棄になるだろう。
ケジメをつけなくてはいけない。
なのに、心のどこかに、カイル様を信じたいという気持ちがまだ残っていた。
キリキリと唸る、わたしの胸。
最近は食事が喉を通らなくて、ハルナに怒られている。
ちょっと前のわたしとは大違い。食事の量が減っても大丈夫なんて、びっくりだ。
「――メニル。そろそろ覚悟はできた?」
ついにラフィシアに聞かれる。その眼が怖い。綺麗だからよけいに怖く見える。
でも、いつまでも隠しているわけにはいかない。
「秘密は守ってくれる?」
「勿論。恥ずかしいことでも、いやらしい話でも、秘密にしてあげるわ。約束するわよ」
わたしは覚悟を決めた。ラフィシアには知っていてほしい。
「だったら、次の休み時間付き合って」
わたしたちは次の授業が終わるなり、騎士科の教室に急いだ。
カイル様を呼び出す。
意外にカイル様に告白する女の子は多いと聞く。マリー様がいるので、実ることのない想いなのに。
きっとカイル様のクラスメイトは、わたしをそんな女の子たちの一人だと思っているだろう。
噂の悪役令嬢だとは分かるわけがない。
本当は、「わたしがカイル様の婚約者です」と叫びたい。
婚約者なのに、それを明かすことさえできないなんて、惨めだ。
しばらくして、カイル様が出てきてくれた。少し億劫そうにしている。
そんな顔もするんだ。
わたしはマリー様が来る前に場所を移動する。
木々が生い茂った人目につかない場所。
ラフィシアもいるから、変な噂は立たないはず。
「なんだい? 先約があるから早くしてくれる?」
久しぶりに聞くカイル様の声が、懐かしい。
もう一度、わたしの名前を呼んでくれるだろうか?
「お久しぶりです。カイル様」
声が聞けただけで、嬉しい。もっと聞きたい、その声を。
でも、返ってきたのは、あまりに非情な言葉だった。
「君、誰だっけ? 会ったことある? …………、あっ、あ~っ、君、僕のストーカーちゃんだよね。いつも僕を見てる、気持ち悪い子だ」
笑いながらカイル様はそう言った。
ストーカー……、気持ち悪い子……
そんな認識?
「わたしはカイル様の婚約者、ですよ?」
「婚約者? そう言ってくる子いるんだよね。自分が婚約者だからマリーと別れろって言う子がね。君もそのくち? 悪いけど他を当たってくれる?」
わたしが婚約者。
わたしが。
あなたの婚約者は、わたし……
怒りと哀しみで震える。
「嘘じゃないわ。わたしよ。メニルよ」
「ほら、嘘。僕の婚約者は『メニー』だよ」
「『メニー』は愛称よ?」
「メニーはメニー、君の勘違いだよ。聞いたことあるでしょう? 僕の婚約者が醜悪だって。中身だけでなく、見た目も醜悪なんだ。君みたいに可愛くない」
にこやかに言われ、わたしは絶句した。
醜悪。中身だけでなく、見た目も……
そう思っていたの……? ずっと??
悔しくて、唇を噛む。
「婚約者が嫌い、なんですか?」
声を絞り出すように聞く。
「嫌いではなかったよ、昔はね。メニーはぽっちゃりで、それが可愛いとは思ってたんだ。でもさ、王都に来て女性はメニーだけじゃないって気づいた。ぽっちゃりは大人になってもぽっちゃりのままだろうし。こんな僕の隣に立つなんてメニーも可哀想だろうしさ。それにマリーに出逢って、僕は本当の愛を知ったんだ」
カイル様は酔っているように語る。
「では何故、婚約解消しないのですか?」
ラフィシアが冷めた目で彼を見た。
「えっと、メニーの家は商家でかなりのやり手だから、簡単には解消できなくてね……。メニーが渋るんだ。あいつ、意地も悪いから。きっと、おじさんに無理を言ってるんだと思う」
カイル様はモゴモゴと訳の分からない理由を述べる。
「悪役令嬢の話はどこまで本当ですか?」
「すべてだよ。メニーは本当に醜悪で、性格も悪くて。この前なんか、お皿を投げてきたんだ。お気に入りのお皿だったのに」
ハハハッと白い歯を見せて笑う彼に、わたしはギリギリと歯を食いしばった。
口の中が切れて血の味が広がる。
流れ落ちないように、わたしは口の中の血を幾度も飲み込んだ。
その時、ラフィシアが静かに言った。
「そうですか。分かりました。酷い婚約者ですね」
「だろう? 理解してくれて嬉しいよ」
始終笑顔のカイル様が気持ち悪い。
格好良いと思っていた顔が醜く見える。
「メニル。諦めついたよね。行こう」
ラフィシアが強引にわたしの手を取って歩き出す。
「もう、ストーカーはやめてね。次やったら君の家に抗議するからね」
背後でカイル様が叫んでいるのが聞こえた。ラフィシアが振り返り、にこやかに言い返す。
「その醜悪な婚約者様に、あなたはいつどこでお会いになっているというのかしらね?」
その言葉を聞いたカイル様の反応を、わたしは見なかった。
ラフィシアに連れていかれた場所は保健室だった。
先生はいないようだ。
わたしは簡易ベッドに座らされる。
「メニル、もういいよ」
その言葉を皮切りに涙が溢れた。
できることなら悪態をつきたい。
だが、そんな醜態を人前で晒せるわけがなかった。代わりに手元にあった枕に八つ当たりする。
幾度もそれをベッドに叩きつけた。
枕の中の羽毛が飛び出して真っ白な羽根が宙を舞う。
抑えていたものをすべて吐き出すように、わたしは枕を振り下ろした。
「あっ、ああっ。ひっっ」
口を開く度に、血が流れる。その血が、制服に散った。
わたしのことが分からないなんて、考えもしていなかった。わたしはカイル様をずっと、ずっと、待っていたのに……
いつかわたしに気づいて、こちらを見てくれると思っていたのに!
噂を否定してくれると信じていたのに!
カイル様のために頑張って痩せたのに!
カイル様の隣に立っても恥ずかしくないように、マナーも勉学も頑張った。カイル様、あなたのために。
あなたの姿をずっと追ってきた……
なのにあの男は、わたしのすべてを否定した。
わたしの努力はなんだったの‼
わたしは、わたしは…………
興奮しすぎたのか、息が苦しい。
胸がキリキリと痛む。
「メニル?」
ラフィシアの声が遠くで聞こえた。
◆ ◆ ◆ ラフィシアの話
枕を叩きつけているメニルは、汗だくになっていた。口の端から血がだらだらと流れ出ている。
わたしは何も言えず、ただ彼女の様子を見守ることしかできない。
メニルがこれまで何かをじっと耐えていることは気がついていた。
それがあの男に関わる重大なことだとは思いもしなかったけれど。
メニルがあの男を好きなのは見ていて分かっていたから、どうやって諦めようかと悩んでいるのだと思っていたのだ。
でも、違った。そんな簡単なことではなかった。
まさかメニルがあの男の婚約者だったなんて。
彼女はあの男によって悪役令嬢に仕立て上げられていたのだ。
メニルがわざわざあの男の婚約者を騙る理由はない。つまり、彼女の言葉は真実なのだ。
わたしは悪役令嬢の話を聞いてどう思っていた?
楽しんでいなかっただろうか?
メニルはどう思っていた?
わたしはそれを想像したことすらなかった。
きっと、悪役令嬢の正体が自分だとわたしに知られるのがメニルは怖かったんだと思う。
それなのにわたしに真実を明かしてくれた。
こんなことになるとは、思わずに。
あの場面を目にしても、メニルがあの男の婚約者なのを疑う気持ちもある。
正直、彼女が『悪役令嬢』だとは思えないのだ。
だって、彼女は何も行動していない。
それにしても、何故あの男はメニルを婚約者じゃないと言ったのだろう? メニルが自分の婚約者だと気づいてもいなかった。そんなことってある?
いずれにしても、すべてあの男のせいに違いない。
わたしは何があっても、メニルを信じる。
しばらくして、メニルがフラフラとベッドに倒れ込んだ。
「メニル?」
胸を押さえ、息苦しそうに顔を歪める。
どうしよう。こんな状態になるとは思わなかった。
先生、先生を……
そう思って立ち上がった時、ガラリと扉が開く。数学のブローク先生が血相を変えて入ってきた。
「はぁ、はぁ……。メニル嬢は?」
「先生。ちょうど良かった、メニルが‼」
ブローク先生はメニルの様子を見て青ざめる。
「リリアーヌ先生を呼んでくるから、付き添っててくれ。保護者にも連絡するから、ちょっと時間がかかる。悪い」
そう言って、バタバタと部屋を飛び出す。
程なく、保健医のリリアーヌ先生が来てくれた。
酸欠による呼吸困難。そして、ストレスによる胃炎だろうと、メニルの症状を診断する。
先生はベッドの惨状に引いていた。
血がついた顔に制服。散乱している羽根。……悲惨、としか言いようがない。
でも、何があったか聞いてはこなかった。
正直、助かる。聞かれても、言えるわけがない。
とりあえず、壊れたものは我が家が弁償すると伝える。メニルを止めなかったわたしの責任でもあるから。
先生は特にこの惨状の原因に対して興味がなさそうなので、この話はここで終わった。
四十分ほどして、背の高い男性が部屋に飛び込んできた。
王宮の文官の制服がよく似合っている。
急いで来たのか髪を乱し、突然、叫んだ。
「ブローク! どういうことだ? メニルは大丈夫なのか?」
ブローク先生のお知り合いらしい。
「静かにしろ! 彼女は今は眠っている。あなたは誰だ? 部外者は立ち入り禁止だ。場合によっては追い出すぞ!」
リリアーヌ先生がその男性の前に立ちはだかった。先生は背が高いので堂々としたものだ。
男性はリリアーヌ先生を見てさっと髪をかき上げて服をひとはたきした後、手を胸に当て敬礼をした。
「失礼しました。メニル・アゼランの兄、マトリック・アゼランと申します。五年前までここに在学していたのですが、お忘れですか? リリアーヌ先生?」
「覚えてるよ! 傍迷惑な同級生ヤローだったな!」
リリアーヌ先生が吠えた。
知り合いに誰だと問う先生も先生だが、マトリック様の態度も常識外れだ。わざわざ顔見知りにその敬礼は、嫌味なのでは?
マトリック様はリリアーヌ先生からメニルの容体を聞くと、息をつく。そして、わたしに視線を向けた。
「君がラフィシア嬢だね」
わたしは立ち上がり、一礼する。
「ラフィシア・エプトンです」
「エプトン公爵家のご令嬢ですか??」
マトリック様が驚いたような声を上げた。それを聞いたリリアーヌ先生がニヤリと笑う。
「ラフィシア嬢、ナイス。この男のこんな様子、初めて見たぞ」
先生は面白がっている?
「メニルめ。こんな大事なこと言わずにいやがったな……」
マトリック様がボソリと呟くのが聞こえた。
「メニルとは、互いに家名を名乗っていませんから、知らなかったのでしょう」
「いえ、メニルは知っていたはずです。申し訳ありません。妹は身分に無頓着なんです。貴族の娘というより商人気質が強くて」
マトリック様がぼりぼりと頭を掻く。
商人だからこそ、身分に注意しなくてはならないんじゃないかな……
わたしはメニルに何があったのか説明してほしいと、マトリック様たちの家に誘われる。彼に導かれてアゼラン家の馬車に乗った。
マトリック様はメニルを大事そうに抱えている。
ところで、何故、ブローク先生も一緒なのかしら?
「ブローク、どうしてお前はさっき医務室にいなかった?」
「僕にも仕事があるの。ずっと君の妹のそばにいるわけにはいかないの」
子どもっぽい会話だわ。
お二人はそんな言い合いを、馬車を降りるまで続けていた。
騒ぎながらようやくアゼラン家の王都の屋敷に着くと、入り口で侍女らしき女性がわたしたちをソワソワと待っていた。
その顔を見て、メニルが愛されていることを感じる。
「お坊ちゃま。お嬢様は?」
「寝てる。今はそっとしといてくれ。僕は何があったのかをエプトン公爵令嬢から聞く。彼女の家に知らせは送ってるが、確かにうちにお招きしたともう一度連絡させておいてくれ」
マトリック様はメニルを抱いたまま指示を出す。そして、自らメニルを寝室に寝かせる。
通されたメニルの部屋は飾りけのないものだった。
目につくのは、備え付けの棚に置かれた本の多さだ。経済の本から美術書、エッセイから恋愛小説も。ジャンルも様々なことに驚く。
「すごいですね」
「母の影響だよ。商売のために身になるものはなんでも習えってね」
続いて、応接室に案内される。
わたしはカイル・ローゼンに会って起こったことの一部始終を語った。
マトリック様は怒りで赤くなり、ブローク先生はヒクヒクと口の端を引き攣らせている。
話し終えた後、わたしは念のために確認を取った。
「失礼ながら、メニルがカイル・ローゼンと婚約しているのは事実ですか?」
「事実だよ。メニルはカイルのためだけに頑張っていたんだ」
「悪役令嬢のような行動を本当に彼女がしていたのでしょうか?」
「事実無根」
そうよね? 入学してからずっと一緒にいたのだから、わたしが証人になれる。
「婚約者なのにメニルが分からないなんてあり得るのですか?」
幼馴染だというから、彼女の姿を知っていていいはずなのに?
カイル・ローゼンが最低男だからなの?
すると、マトリック様は上着のポケットから一枚の写真を取り出した。
「まぁ、あながち、分からなくても仕方ない……かぁ?」
歯切れが悪いわね。
パシンッとその写真を奪い取って、何が写っているのか見る。
……えっ?
わたしが黙り込んだのが気になったのか、ブローク先生が写真を覗き込んできた。
先生は口をパクパクさせ、マトリック様と写真を交互に見やる。
「えっ? これ?」
「メニル、だ」
これが、メニル?
そこに写っていたのは、小さな子豚?
いえ、ぷくぷくに太ったまんまるの猫?
いえいえ、ぷっくりおデブちゃんのメニルの姿。
六歳くらいのものかしら?? これはこれで可愛い‼ 愛らしい!
でも、納得した。確かにこの写真の女の子と今のメニルが同一人物と言われても、誰も信じないだろう。
別人にしか見えないのだ。
今のメニルは、猫のような雰囲気で少しツンとした可愛らしいお嬢様。まんまる子豚ではない。
「努力したのね」
「勿論。カイルをずっと追って。カイルのためだけに」
それなのに、あの男は……
よくもメニルを傷つけたわね。
カイル・ローゼン、絶対に許さない。
◇ ◇ ◇
あれから、わたしは学園を休んだまま夏休みを迎えた。
診断はストレス性胃炎で、「これ以上ストレスを溜め込むと、胃に穴が空いて吐血するよ」と、お医者様に脅されたのだ。
お兄様にすごく心配され、しばらくはベッドから出してもらえなかった。
代わりに沢山のお菓子を買ってきたお兄様は、お医者様に怒られたようだ。
カイル様との婚約は無事に破棄された。
わたしが倒れたことで、お父様が血相を変えて、おじさま――カイル様のお父様に訴えたのだ。
おじさまは渋っていたみたいだけど、お父様が頑として譲らず、結局承諾したらしい。
きっとお父様のことだから、脅したのだろう。
慰謝料やカイル様の横領の清算は、これからの話し合いになったのだが、無事に婚約を破棄できたことが、わたしの心を軽くしている。
こんなにスッキリするとは思わなかった。
婚約破棄という醜聞ができたとはいえ、カイル様と婚約していたことを知る者が家族以外ではラフィシアしかいないというのが幸いだ。
そんなふうにしてわたしは十六歳の誕生日を迎える。
今年はいつもの避暑地に行くことができず、計画していたイベントが流れてしまった。
その代わりにラフィシアが屋敷に来てくれる。
「メニル、おめでとう。婚約破棄‼」
わざわざ、そこ?
「ありがとう。ラフィ。無事に婚約破棄できました」
「嘘よ、誕生日おめでとう」
「分かってる」
わたしたちはくすくすと笑い合った。
そしてわたしは、休み前のあの出来事について謝る。
ラフィシアに知ってもらうにはああするしかなかったし、彼女がいればカイル様が逃げないだろうと思ったのに、根本なところから無駄で、迷惑をかけただけだった。
「ラフィ、ごめんね。迷惑をかけたわ」
「どうして謝るのよ。メニルは全然悪くないわ。悪いのはアレでしょう」
「でも、医務室でのことは……」
「別に構わないわよ。メニルのお兄様がリリアーヌ先生に怒られただけだもの」
ラフィシアが医務室の後始末をし、お兄様に事情を説明してくれたおかげで大事に至らなかった。その気遣いが嬉しい。
お礼に、わたしは次に売り出す予定の香水を渡す。ラフィシアは最初、遠慮していたが、最終的には受け取ってくれた。
「すごい資料ね。何を調べているの?」
机の上の大量の紙束を見てラフィシアが言う。
そこにあるのはお店に関するものばかり。
学園を休んでいる間に、無事にわたしのお店が開店したのだ。売り上げは順調に伸びている。
例の雑貨店も、経営は持ち直していた。
まだあの二人が絡んでくるらしいが、グレイダスさんは岩のように二人を無視していると聞く。クビにするぞと脅されても、そんな権限はないと突っぱねたらしい。
彼はセンスが良く、経営の手腕もある。わたしの意見など遠く及ばない優れた案を数多く出した。彼の計画表や資料を読むと、いつも感心してしまう。
今日のカイル様は少し髪が跳ねている。
登校時間がギリギリなので、寝坊をしたのかもしれない。ネクタイの結び目も乱雑だ。
一緒に登校してきたマリー様も髪が整っていない。手櫛でまとめたような歪な形になっている。
まさか……
いえ、きっと寝坊に違いない……
カイル様にはご友人が多く、沢山の方から声を掛けられていた。楽しそうに話している。
わたしの友達はラフィシアだけ。
それで構わないけれど。
不意にカイル様が目を細め、隣に立つマリー様を愛おしそうに見た。口元が緩んでいる。
何を話しているんだろう?
耳元で何かを囁かれ、マリー様が顔を真っ赤にした。そして、うっとりとした表情をカイル様に向ける。
わたしがいるべき場所に、マリー様がいる。
二人の不貞の証拠を揃えていると、お兄様は言っていた。
もうじき、婚約を解消……いえ、破棄になるだろう。
ケジメをつけなくてはいけない。
なのに、心のどこかに、カイル様を信じたいという気持ちがまだ残っていた。
キリキリと唸る、わたしの胸。
最近は食事が喉を通らなくて、ハルナに怒られている。
ちょっと前のわたしとは大違い。食事の量が減っても大丈夫なんて、びっくりだ。
「――メニル。そろそろ覚悟はできた?」
ついにラフィシアに聞かれる。その眼が怖い。綺麗だからよけいに怖く見える。
でも、いつまでも隠しているわけにはいかない。
「秘密は守ってくれる?」
「勿論。恥ずかしいことでも、いやらしい話でも、秘密にしてあげるわ。約束するわよ」
わたしは覚悟を決めた。ラフィシアには知っていてほしい。
「だったら、次の休み時間付き合って」
わたしたちは次の授業が終わるなり、騎士科の教室に急いだ。
カイル様を呼び出す。
意外にカイル様に告白する女の子は多いと聞く。マリー様がいるので、実ることのない想いなのに。
きっとカイル様のクラスメイトは、わたしをそんな女の子たちの一人だと思っているだろう。
噂の悪役令嬢だとは分かるわけがない。
本当は、「わたしがカイル様の婚約者です」と叫びたい。
婚約者なのに、それを明かすことさえできないなんて、惨めだ。
しばらくして、カイル様が出てきてくれた。少し億劫そうにしている。
そんな顔もするんだ。
わたしはマリー様が来る前に場所を移動する。
木々が生い茂った人目につかない場所。
ラフィシアもいるから、変な噂は立たないはず。
「なんだい? 先約があるから早くしてくれる?」
久しぶりに聞くカイル様の声が、懐かしい。
もう一度、わたしの名前を呼んでくれるだろうか?
「お久しぶりです。カイル様」
声が聞けただけで、嬉しい。もっと聞きたい、その声を。
でも、返ってきたのは、あまりに非情な言葉だった。
「君、誰だっけ? 会ったことある? …………、あっ、あ~っ、君、僕のストーカーちゃんだよね。いつも僕を見てる、気持ち悪い子だ」
笑いながらカイル様はそう言った。
ストーカー……、気持ち悪い子……
そんな認識?
「わたしはカイル様の婚約者、ですよ?」
「婚約者? そう言ってくる子いるんだよね。自分が婚約者だからマリーと別れろって言う子がね。君もそのくち? 悪いけど他を当たってくれる?」
わたしが婚約者。
わたしが。
あなたの婚約者は、わたし……
怒りと哀しみで震える。
「嘘じゃないわ。わたしよ。メニルよ」
「ほら、嘘。僕の婚約者は『メニー』だよ」
「『メニー』は愛称よ?」
「メニーはメニー、君の勘違いだよ。聞いたことあるでしょう? 僕の婚約者が醜悪だって。中身だけでなく、見た目も醜悪なんだ。君みたいに可愛くない」
にこやかに言われ、わたしは絶句した。
醜悪。中身だけでなく、見た目も……
そう思っていたの……? ずっと??
悔しくて、唇を噛む。
「婚約者が嫌い、なんですか?」
声を絞り出すように聞く。
「嫌いではなかったよ、昔はね。メニーはぽっちゃりで、それが可愛いとは思ってたんだ。でもさ、王都に来て女性はメニーだけじゃないって気づいた。ぽっちゃりは大人になってもぽっちゃりのままだろうし。こんな僕の隣に立つなんてメニーも可哀想だろうしさ。それにマリーに出逢って、僕は本当の愛を知ったんだ」
カイル様は酔っているように語る。
「では何故、婚約解消しないのですか?」
ラフィシアが冷めた目で彼を見た。
「えっと、メニーの家は商家でかなりのやり手だから、簡単には解消できなくてね……。メニーが渋るんだ。あいつ、意地も悪いから。きっと、おじさんに無理を言ってるんだと思う」
カイル様はモゴモゴと訳の分からない理由を述べる。
「悪役令嬢の話はどこまで本当ですか?」
「すべてだよ。メニーは本当に醜悪で、性格も悪くて。この前なんか、お皿を投げてきたんだ。お気に入りのお皿だったのに」
ハハハッと白い歯を見せて笑う彼に、わたしはギリギリと歯を食いしばった。
口の中が切れて血の味が広がる。
流れ落ちないように、わたしは口の中の血を幾度も飲み込んだ。
その時、ラフィシアが静かに言った。
「そうですか。分かりました。酷い婚約者ですね」
「だろう? 理解してくれて嬉しいよ」
始終笑顔のカイル様が気持ち悪い。
格好良いと思っていた顔が醜く見える。
「メニル。諦めついたよね。行こう」
ラフィシアが強引にわたしの手を取って歩き出す。
「もう、ストーカーはやめてね。次やったら君の家に抗議するからね」
背後でカイル様が叫んでいるのが聞こえた。ラフィシアが振り返り、にこやかに言い返す。
「その醜悪な婚約者様に、あなたはいつどこでお会いになっているというのかしらね?」
その言葉を聞いたカイル様の反応を、わたしは見なかった。
ラフィシアに連れていかれた場所は保健室だった。
先生はいないようだ。
わたしは簡易ベッドに座らされる。
「メニル、もういいよ」
その言葉を皮切りに涙が溢れた。
できることなら悪態をつきたい。
だが、そんな醜態を人前で晒せるわけがなかった。代わりに手元にあった枕に八つ当たりする。
幾度もそれをベッドに叩きつけた。
枕の中の羽毛が飛び出して真っ白な羽根が宙を舞う。
抑えていたものをすべて吐き出すように、わたしは枕を振り下ろした。
「あっ、ああっ。ひっっ」
口を開く度に、血が流れる。その血が、制服に散った。
わたしのことが分からないなんて、考えもしていなかった。わたしはカイル様をずっと、ずっと、待っていたのに……
いつかわたしに気づいて、こちらを見てくれると思っていたのに!
噂を否定してくれると信じていたのに!
カイル様のために頑張って痩せたのに!
カイル様の隣に立っても恥ずかしくないように、マナーも勉学も頑張った。カイル様、あなたのために。
あなたの姿をずっと追ってきた……
なのにあの男は、わたしのすべてを否定した。
わたしの努力はなんだったの‼
わたしは、わたしは…………
興奮しすぎたのか、息が苦しい。
胸がキリキリと痛む。
「メニル?」
ラフィシアの声が遠くで聞こえた。
◆ ◆ ◆ ラフィシアの話
枕を叩きつけているメニルは、汗だくになっていた。口の端から血がだらだらと流れ出ている。
わたしは何も言えず、ただ彼女の様子を見守ることしかできない。
メニルがこれまで何かをじっと耐えていることは気がついていた。
それがあの男に関わる重大なことだとは思いもしなかったけれど。
メニルがあの男を好きなのは見ていて分かっていたから、どうやって諦めようかと悩んでいるのだと思っていたのだ。
でも、違った。そんな簡単なことではなかった。
まさかメニルがあの男の婚約者だったなんて。
彼女はあの男によって悪役令嬢に仕立て上げられていたのだ。
メニルがわざわざあの男の婚約者を騙る理由はない。つまり、彼女の言葉は真実なのだ。
わたしは悪役令嬢の話を聞いてどう思っていた?
楽しんでいなかっただろうか?
メニルはどう思っていた?
わたしはそれを想像したことすらなかった。
きっと、悪役令嬢の正体が自分だとわたしに知られるのがメニルは怖かったんだと思う。
それなのにわたしに真実を明かしてくれた。
こんなことになるとは、思わずに。
あの場面を目にしても、メニルがあの男の婚約者なのを疑う気持ちもある。
正直、彼女が『悪役令嬢』だとは思えないのだ。
だって、彼女は何も行動していない。
それにしても、何故あの男はメニルを婚約者じゃないと言ったのだろう? メニルが自分の婚約者だと気づいてもいなかった。そんなことってある?
いずれにしても、すべてあの男のせいに違いない。
わたしは何があっても、メニルを信じる。
しばらくして、メニルがフラフラとベッドに倒れ込んだ。
「メニル?」
胸を押さえ、息苦しそうに顔を歪める。
どうしよう。こんな状態になるとは思わなかった。
先生、先生を……
そう思って立ち上がった時、ガラリと扉が開く。数学のブローク先生が血相を変えて入ってきた。
「はぁ、はぁ……。メニル嬢は?」
「先生。ちょうど良かった、メニルが‼」
ブローク先生はメニルの様子を見て青ざめる。
「リリアーヌ先生を呼んでくるから、付き添っててくれ。保護者にも連絡するから、ちょっと時間がかかる。悪い」
そう言って、バタバタと部屋を飛び出す。
程なく、保健医のリリアーヌ先生が来てくれた。
酸欠による呼吸困難。そして、ストレスによる胃炎だろうと、メニルの症状を診断する。
先生はベッドの惨状に引いていた。
血がついた顔に制服。散乱している羽根。……悲惨、としか言いようがない。
でも、何があったか聞いてはこなかった。
正直、助かる。聞かれても、言えるわけがない。
とりあえず、壊れたものは我が家が弁償すると伝える。メニルを止めなかったわたしの責任でもあるから。
先生は特にこの惨状の原因に対して興味がなさそうなので、この話はここで終わった。
四十分ほどして、背の高い男性が部屋に飛び込んできた。
王宮の文官の制服がよく似合っている。
急いで来たのか髪を乱し、突然、叫んだ。
「ブローク! どういうことだ? メニルは大丈夫なのか?」
ブローク先生のお知り合いらしい。
「静かにしろ! 彼女は今は眠っている。あなたは誰だ? 部外者は立ち入り禁止だ。場合によっては追い出すぞ!」
リリアーヌ先生がその男性の前に立ちはだかった。先生は背が高いので堂々としたものだ。
男性はリリアーヌ先生を見てさっと髪をかき上げて服をひとはたきした後、手を胸に当て敬礼をした。
「失礼しました。メニル・アゼランの兄、マトリック・アゼランと申します。五年前までここに在学していたのですが、お忘れですか? リリアーヌ先生?」
「覚えてるよ! 傍迷惑な同級生ヤローだったな!」
リリアーヌ先生が吠えた。
知り合いに誰だと問う先生も先生だが、マトリック様の態度も常識外れだ。わざわざ顔見知りにその敬礼は、嫌味なのでは?
マトリック様はリリアーヌ先生からメニルの容体を聞くと、息をつく。そして、わたしに視線を向けた。
「君がラフィシア嬢だね」
わたしは立ち上がり、一礼する。
「ラフィシア・エプトンです」
「エプトン公爵家のご令嬢ですか??」
マトリック様が驚いたような声を上げた。それを聞いたリリアーヌ先生がニヤリと笑う。
「ラフィシア嬢、ナイス。この男のこんな様子、初めて見たぞ」
先生は面白がっている?
「メニルめ。こんな大事なこと言わずにいやがったな……」
マトリック様がボソリと呟くのが聞こえた。
「メニルとは、互いに家名を名乗っていませんから、知らなかったのでしょう」
「いえ、メニルは知っていたはずです。申し訳ありません。妹は身分に無頓着なんです。貴族の娘というより商人気質が強くて」
マトリック様がぼりぼりと頭を掻く。
商人だからこそ、身分に注意しなくてはならないんじゃないかな……
わたしはメニルに何があったのか説明してほしいと、マトリック様たちの家に誘われる。彼に導かれてアゼラン家の馬車に乗った。
マトリック様はメニルを大事そうに抱えている。
ところで、何故、ブローク先生も一緒なのかしら?
「ブローク、どうしてお前はさっき医務室にいなかった?」
「僕にも仕事があるの。ずっと君の妹のそばにいるわけにはいかないの」
子どもっぽい会話だわ。
お二人はそんな言い合いを、馬車を降りるまで続けていた。
騒ぎながらようやくアゼラン家の王都の屋敷に着くと、入り口で侍女らしき女性がわたしたちをソワソワと待っていた。
その顔を見て、メニルが愛されていることを感じる。
「お坊ちゃま。お嬢様は?」
「寝てる。今はそっとしといてくれ。僕は何があったのかをエプトン公爵令嬢から聞く。彼女の家に知らせは送ってるが、確かにうちにお招きしたともう一度連絡させておいてくれ」
マトリック様はメニルを抱いたまま指示を出す。そして、自らメニルを寝室に寝かせる。
通されたメニルの部屋は飾りけのないものだった。
目につくのは、備え付けの棚に置かれた本の多さだ。経済の本から美術書、エッセイから恋愛小説も。ジャンルも様々なことに驚く。
「すごいですね」
「母の影響だよ。商売のために身になるものはなんでも習えってね」
続いて、応接室に案内される。
わたしはカイル・ローゼンに会って起こったことの一部始終を語った。
マトリック様は怒りで赤くなり、ブローク先生はヒクヒクと口の端を引き攣らせている。
話し終えた後、わたしは念のために確認を取った。
「失礼ながら、メニルがカイル・ローゼンと婚約しているのは事実ですか?」
「事実だよ。メニルはカイルのためだけに頑張っていたんだ」
「悪役令嬢のような行動を本当に彼女がしていたのでしょうか?」
「事実無根」
そうよね? 入学してからずっと一緒にいたのだから、わたしが証人になれる。
「婚約者なのにメニルが分からないなんてあり得るのですか?」
幼馴染だというから、彼女の姿を知っていていいはずなのに?
カイル・ローゼンが最低男だからなの?
すると、マトリック様は上着のポケットから一枚の写真を取り出した。
「まぁ、あながち、分からなくても仕方ない……かぁ?」
歯切れが悪いわね。
パシンッとその写真を奪い取って、何が写っているのか見る。
……えっ?
わたしが黙り込んだのが気になったのか、ブローク先生が写真を覗き込んできた。
先生は口をパクパクさせ、マトリック様と写真を交互に見やる。
「えっ? これ?」
「メニル、だ」
これが、メニル?
そこに写っていたのは、小さな子豚?
いえ、ぷくぷくに太ったまんまるの猫?
いえいえ、ぷっくりおデブちゃんのメニルの姿。
六歳くらいのものかしら?? これはこれで可愛い‼ 愛らしい!
でも、納得した。確かにこの写真の女の子と今のメニルが同一人物と言われても、誰も信じないだろう。
別人にしか見えないのだ。
今のメニルは、猫のような雰囲気で少しツンとした可愛らしいお嬢様。まんまる子豚ではない。
「努力したのね」
「勿論。カイルをずっと追って。カイルのためだけに」
それなのに、あの男は……
よくもメニルを傷つけたわね。
カイル・ローゼン、絶対に許さない。
◇ ◇ ◇
あれから、わたしは学園を休んだまま夏休みを迎えた。
診断はストレス性胃炎で、「これ以上ストレスを溜め込むと、胃に穴が空いて吐血するよ」と、お医者様に脅されたのだ。
お兄様にすごく心配され、しばらくはベッドから出してもらえなかった。
代わりに沢山のお菓子を買ってきたお兄様は、お医者様に怒られたようだ。
カイル様との婚約は無事に破棄された。
わたしが倒れたことで、お父様が血相を変えて、おじさま――カイル様のお父様に訴えたのだ。
おじさまは渋っていたみたいだけど、お父様が頑として譲らず、結局承諾したらしい。
きっとお父様のことだから、脅したのだろう。
慰謝料やカイル様の横領の清算は、これからの話し合いになったのだが、無事に婚約を破棄できたことが、わたしの心を軽くしている。
こんなにスッキリするとは思わなかった。
婚約破棄という醜聞ができたとはいえ、カイル様と婚約していたことを知る者が家族以外ではラフィシアしかいないというのが幸いだ。
そんなふうにしてわたしは十六歳の誕生日を迎える。
今年はいつもの避暑地に行くことができず、計画していたイベントが流れてしまった。
その代わりにラフィシアが屋敷に来てくれる。
「メニル、おめでとう。婚約破棄‼」
わざわざ、そこ?
「ありがとう。ラフィ。無事に婚約破棄できました」
「嘘よ、誕生日おめでとう」
「分かってる」
わたしたちはくすくすと笑い合った。
そしてわたしは、休み前のあの出来事について謝る。
ラフィシアに知ってもらうにはああするしかなかったし、彼女がいればカイル様が逃げないだろうと思ったのに、根本なところから無駄で、迷惑をかけただけだった。
「ラフィ、ごめんね。迷惑をかけたわ」
「どうして謝るのよ。メニルは全然悪くないわ。悪いのはアレでしょう」
「でも、医務室でのことは……」
「別に構わないわよ。メニルのお兄様がリリアーヌ先生に怒られただけだもの」
ラフィシアが医務室の後始末をし、お兄様に事情を説明してくれたおかげで大事に至らなかった。その気遣いが嬉しい。
お礼に、わたしは次に売り出す予定の香水を渡す。ラフィシアは最初、遠慮していたが、最終的には受け取ってくれた。
「すごい資料ね。何を調べているの?」
机の上の大量の紙束を見てラフィシアが言う。
そこにあるのはお店に関するものばかり。
学園を休んでいる間に、無事にわたしのお店が開店したのだ。売り上げは順調に伸びている。
例の雑貨店も、経営は持ち直していた。
まだあの二人が絡んでくるらしいが、グレイダスさんは岩のように二人を無視していると聞く。クビにするぞと脅されても、そんな権限はないと突っぱねたらしい。
彼はセンスが良く、経営の手腕もある。わたしの意見など遠く及ばない優れた案を数多く出した。彼の計画表や資料を読むと、いつも感心してしまう。
139
お気に入りに追加
8,181
あなたにおすすめの小説
大好きな騎士団長様が見ているのは、婚約者の私ではなく姉のようです。
あさぎかな@電子書籍二作目発売中
恋愛
18歳の誕生日を迎える数日前に、嫁いでいた異母姉妹の姉クラリッサが自国に出戻った。それを出迎えるのは、オレーリアの婚約者である騎士団長のアシュトンだった。その姿を目撃してしまい、王城に自分の居場所がないと再確認する。
魔法塔に認められた魔法使いのオレーリアは末姫として常に悪役のレッテルを貼られてした。魔法術式による功績を重ねても、全ては自分の手柄にしたと言われ誰も守ってくれなかった。
つねに姉クラリッサに意地悪をするように王妃と宰相に仕組まれ、婚約者の心離れを再確認して国を出る覚悟を決めて、婚約者のアシュトンに別れを告げようとするが──?
※R15は保険です。
※騎士団長ヒーロー企画に参加しています。
あなたなんて大嫌い
みおな
恋愛
私の婚約者の侯爵子息は、義妹のことばかり優先して、私はいつも我慢ばかり強いられていました。
そんなある日、彼が幼馴染だと言い張る伯爵令嬢を抱きしめて愛を囁いているのを聞いてしまいます。
そうですか。
私の婚約者は、私以外の人ばかりが大切なのですね。
私はあなたのお財布ではありません。
あなたなんて大嫌い。
初夜に「俺がお前を抱く事は無い!」と叫んだら長年の婚約者だった新妻に「気持ち悪い」と言われた上に父にも予想外の事を言われた男とその浮気女の話
ラララキヲ
恋愛
長年の婚約者を欺いて平民女と浮気していた侯爵家長男。3年後の白い結婚での離婚を浮気女に約束して、新妻の寝室へと向かう。
初夜に「俺がお前を抱く事は無い!」と愛する夫から宣言された無様な女を嘲笑う為だけに。
しかし寝室に居た妻は……
希望通りの白い結婚と愛人との未来輝く生活の筈が……全てを周りに知られていた上に自分の父親である侯爵家当主から言われた言葉は──
一人の女性を蹴落として掴んだ彼らの未来は……──
<【ざまぁ編】【イリーナ編】【コザック第二の人生編(ザマァ有)】となりました>
◇テンプレ浮気クソ男女。
◇軽い触れ合い表現があるのでR15に
◇ふんわり世界観。ゆるふわ設定。
◇ご都合展開。矛盾は察して下さい…
◇なろうにも上げてます。
※HOTランキング入り(1位)!?[恋愛::3位]ありがとうございます!恐縮です!期待に添えればよいのですがッ!!(;><)
【完結】私は死んだ。だからわたしは笑うことにした。
彩華(あやはな)
恋愛
最後に見たのは恋人の手をとる婚約者の姿。私はそれを見ながら階段から落ちた。
目を覚ましたわたしは変わった。見舞いにも来ない両親にー。婚約者にもー。わたしは私の為に彼らをやり込める。わたしは・・・私の為に、笑う。
別れてくれない夫は、私を愛していない
abang
恋愛
「私と別れて下さい」
「嫌だ、君と別れる気はない」
誕生パーティー、結婚記念日、大切な約束の日まで……
彼の大切な幼馴染の「セレン」はいつも彼を連れ去ってしまう。
「ごめん、セレンが怪我をしたらしい」
「セレンが熱が出たと……」
そんなに大切ならば、彼女を妻にすれば良かったのでは?
ふと過ぎったその考えに私の妻としての限界に気付いた。
その日から始まる、私を愛さない夫と愛してるからこそ限界な妻の離婚攻防戦。
「あなた、お願いだから別れて頂戴」
「絶対に、別れない」
政略より愛を選んだ結婚。~後悔は十年後にやってきた。~
つくも茄子
恋愛
幼い頃からの婚約者であった侯爵令嬢との婚約を解消して、学生時代からの恋人と結婚した王太子殿下。
政略よりも愛を選んだ生活は思っていたのとは違っていた。「お幸せに」と微笑んだ元婚約者。結婚によって去っていた側近達。愛する妻の妃教育がままならない中での出産。世継ぎの王子の誕生を望んだものの産まれたのは王女だった。妻に瓜二つの娘は可愛い。無邪気な娘は欲望のままに動く。断罪の時、全てが明らかになった。王太子の思い描いていた未来は元から無かったものだった。後悔は続く。どこから間違っていたのか。
他サイトにも公開中。
妹と旦那様に子供ができたので、離縁して隣国に嫁ぎます
冬月光輝
恋愛
私がベルモンド公爵家に嫁いで3年の間、夫婦に子供は出来ませんでした。
そんな中、夫のファルマンは裏切り行為を働きます。
しかも相手は妹のレナ。
最初は夫を叱っていた義両親でしたが、レナに子供が出来たと知ると私を責めだしました。
夫も婚約中から私からの愛は感じていないと口にしており、あの頃に婚約破棄していればと謝罪すらしません。
最後には、二人と子供の幸せを害する権利はないと言われて離縁させられてしまいます。
それからまもなくして、隣国の王子であるレオン殿下が我が家に現れました。
「約束どおり、私の妻になってもらうぞ」
確かにそんな約束をした覚えがあるような気がしますが、殿下はまだ5歳だったような……。
言われるがままに、隣国へ向かった私。
その頃になって、子供が出来ない理由は元旦那にあることが発覚して――。
ベルモンド公爵家ではひと悶着起こりそうらしいのですが、もう私には関係ありません。
※ざまぁパートは第16話〜です
側妃、で御座いますか?承知いたしました、ただし条件があります。
とうや
恋愛
「私はシャーロットを妻にしようと思う。君は側妃になってくれ」
成婚の儀を迎える半年前。王太子セオドアは、15年も婚約者だったエマにそう言った。微笑んだままのエマ・シーグローブ公爵令嬢と、驚きの余り硬直する近衛騎士ケイレブ・シェパード。幼馴染だった3人の関係は、シャーロットという少女によって崩れた。
「側妃、で御座いますか?承知いたしました、ただし条件があります」
********************************************
ATTENTION
********************************************
*世界軸は『側近候補を外されて覚醒したら〜』あたりの、なんちゃってヨーロッパ風。魔法はあるけれど魔王もいないし神様も遠い存在。そんなご都合主義で設定うすうすの世界です。
*いつものような残酷な表現はありませんが、倫理観に難ありで軽い胸糞です。タグを良くご覧ください。
*R-15は保険です。
過去1ヶ月以内にレジーナの小説・漫画を1話以上レンタルしている
と、レジーナのすべての番外編を読むことができます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
番外編を閲覧することが出来ません。
過去1ヶ月以内にレジーナの小説・漫画を1話以上レンタルしている
と、レジーナのすべての番外編を読むことができます。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。