【完結】わたしの欲しい言葉

彩華(あやはな)

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15.エイト

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あれから、アミーは熱をだした。

幾度もうなされ、涙を流す。
鎮静剤を投与しても、うなされた。

抱きしめてあげると、やっと落ち着くのだ。


熱が下がっても、部屋を出ようとしなかった。
暗い部屋で、毛布を被り震えていた。
泣いていた。
暴れることもあった。

なにが、そこまで、アミーを追い込んでいるのか。

ずっとアミーのそばでいた。
目を離したくなかった。
側でいて、安心させたかった。


次第にポツポツと話してくれた。

記憶が戻っていることがわかった。

幼い頃の話し。
どう生きてきたのかを。
ゆっくり、呟くように話していく。

そして、何よりトラウマになっていたのはー。

はじめての旅行でことが一番傷になっていたのだ。

置いて行かれた悲しみ。
見知らぬ場所で一人でいる孤独。
どうにもならない怒り。
獣に追いかけられる恐怖。
追い詰められた絶望。
崖から落ちる覚悟。


わずかな時間でそれらを体験したアミーにとって、それを再び思い出すことは精神的にも肉体的にも苦しいものだった。


寝るたびに悪夢に苛まされるのだ。
幾度も、幾度も・・・。
夢に出てくると言うのだ。
のことを・・・。



だから、は当然の行為のようなものだった。


上書きすればいいのだとー。

僕の愛でー。
僕の与える快楽でー。

僕はアミーを抱いた。

結婚前の肉体関係はよしとされていない。
だが、そうするとこでアミーが眠れるなら、楽になるのなら何を言われようとかまわなかった。

ターナ様には悪いがメイドから伝えてもらった。

疲れて、ぐっすりと眠ったアミーを見てホッとした。

ターナ様たち家族からは、しっかりこってりお小言と拳をもらってしまったが、後悔はなかった。

それからもアミーを抱き潰した。

アミーの目が大混乱していた。
真っ赤な顔で僕を見るのだから、可愛くて仕方なかった。

悪夢を忘れるほど、愛を囁いた。キスを送った。快感を与えた。恥ずかしがるくらい、いやらしい事をしてあげた。激しく愛した。
かけがえのないくらい愛してることを、証明した。


皇太子殿下には当然怒られて、妹からはからかわれた。

アミーのことを報告するために呼んだカイトには報告する前に聞かれてしまった。

彼は泣きそうな表情で笑っていた。
それに対して何も言わなかった。



カイトは、僕らの結婚式を見ずに祖国へと帰った。
「幸せに」
その言葉を残して。

アミーは泣いた。
「ごめんなさい」
と呟いたのだ。

謝らなくていい。
君は悪くないー。
君が悪いわけがない。

だから、自分を追い詰めないでくれー。




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