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13.エイト
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僕は天使に出会った。
別荘のそばを流れる川岸に小さな女の子が倒れていたのを妹のセシルが見つけ、僕が抱いて屋敷まで帰ったのだ。
屋敷に連れ帰ったその子は3日間、眠むり続けた。
質素な服だが、それなりに身分の高い子だろうと、メイド長は言った。
やっと目を覚ました時、僕の心臓は大きな音がした。
金の髪に緑の目。
小さな赤い唇。
天使。
まさに地上に落ちた天使のようだった。
その子は記憶喪失だった。
医者は川に落ちた際、頭を打ってのだろうと言った。まさに頭や身体を打ち付けたような跡がいくつもあった。
「名前わからない?」
妹の問いにその子の口が「ミ」と動いたきがした?
「アミー?」
「ア、ミ?」
「うん、名前がないと不便でしょ?アミーにしよう」
「アミー・・・」
その子・・・アミーは表情を緩めた。
その顔がまた、可愛くて、バクバクと心臓が鳴った。
アミーはしばらくの間、ベッドの住人になった。
年齢はわからなかったが、医者の見込みではセシルと同じくらいか少し下であろうと言った。
ただ、身体的なものや精神的なものを見て、虐待まがいなことがあったのではないかと報告がなされた。
父と母はそんなアミーを気にかけた。
毎日見舞いに行くセシルと、ゆっくりと打ち解けていった。
自然な笑顔が出てくるようになった。
僕ともセシルを通して仲良くなった。
我儘な面があったセシルも、アミーといつもいることで変わってきた。
アミーが元気になると、2人でいつも仲良くいた。
父はアミーをセシルの側につけた。
我が子のように接するようになっていった。
母もアミーをセシル同様に扱い出した。
アミーは我儘を言わない。
嫌なことや、痛いことを言う事がなかったのだ。
じっと我慢するのだ。
それも遠慮ではなく、無意識でしている。
それを見るのが辛くなる事があった。
それを見るのが嫌だったのだ。
両親も同じだった。
アミーはわずかな字しか読めなかった。
セシルは初めは馬鹿にしていたようだが、少したつと、お姉さんぶって教えるようになっていた。
一緒に家庭教師に学ぶようになった。
頑張り屋だった。頑張りすぎで、倒れる事が何度かあった。
それ以来、無茶をしないように見張りをつけられることもあったが、時たま何かを思い出したかのように泣く事があった。
「ごめんなさい。ちゃんとするから」と。
「捨てないで」と。
だから、僕とセシルはアミーを抱きしめた。
いっぱい抱きしめた。
父も母も幾度も『大丈夫』と言って聞かせて、僕らにするように抱きしめた。
アミーはゆっくりと落ち着いていった。
ふわふわと笑みを浮かべるアミーを見るのが好きだった。
ずっとアミーを見ていたい。
気を抜くと、ずっと抱きしめていた。
温かなアミーを感じていた。
それを見かねた父が釘を刺してきた。
それで、僕はアミーに対する気持ちを、自覚した。
僕はアミーが好きだと。
好きで好きでたまらないのだと。
離れたくない。
彼女を愛している、と。
だから、僕ならアミーを抱きしめながら言った。
「アミーと結婚できないなら、平民になってアミーと結婚します。公爵家を廃嫡してください」
アミーは目を丸くし、父は絶叫。母は倒れ、セシルは称賛。たまたまその場にいた、友人であり、セシルの婚約者に決まった皇太子は大笑いした。
それは魔法学園に入る前の14歳の時だった。
別荘のそばを流れる川岸に小さな女の子が倒れていたのを妹のセシルが見つけ、僕が抱いて屋敷まで帰ったのだ。
屋敷に連れ帰ったその子は3日間、眠むり続けた。
質素な服だが、それなりに身分の高い子だろうと、メイド長は言った。
やっと目を覚ました時、僕の心臓は大きな音がした。
金の髪に緑の目。
小さな赤い唇。
天使。
まさに地上に落ちた天使のようだった。
その子は記憶喪失だった。
医者は川に落ちた際、頭を打ってのだろうと言った。まさに頭や身体を打ち付けたような跡がいくつもあった。
「名前わからない?」
妹の問いにその子の口が「ミ」と動いたきがした?
「アミー?」
「ア、ミ?」
「うん、名前がないと不便でしょ?アミーにしよう」
「アミー・・・」
その子・・・アミーは表情を緩めた。
その顔がまた、可愛くて、バクバクと心臓が鳴った。
アミーはしばらくの間、ベッドの住人になった。
年齢はわからなかったが、医者の見込みではセシルと同じくらいか少し下であろうと言った。
ただ、身体的なものや精神的なものを見て、虐待まがいなことがあったのではないかと報告がなされた。
父と母はそんなアミーを気にかけた。
毎日見舞いに行くセシルと、ゆっくりと打ち解けていった。
自然な笑顔が出てくるようになった。
僕ともセシルを通して仲良くなった。
我儘な面があったセシルも、アミーといつもいることで変わってきた。
アミーが元気になると、2人でいつも仲良くいた。
父はアミーをセシルの側につけた。
我が子のように接するようになっていった。
母もアミーをセシル同様に扱い出した。
アミーは我儘を言わない。
嫌なことや、痛いことを言う事がなかったのだ。
じっと我慢するのだ。
それも遠慮ではなく、無意識でしている。
それを見るのが辛くなる事があった。
それを見るのが嫌だったのだ。
両親も同じだった。
アミーはわずかな字しか読めなかった。
セシルは初めは馬鹿にしていたようだが、少したつと、お姉さんぶって教えるようになっていた。
一緒に家庭教師に学ぶようになった。
頑張り屋だった。頑張りすぎで、倒れる事が何度かあった。
それ以来、無茶をしないように見張りをつけられることもあったが、時たま何かを思い出したかのように泣く事があった。
「ごめんなさい。ちゃんとするから」と。
「捨てないで」と。
だから、僕とセシルはアミーを抱きしめた。
いっぱい抱きしめた。
父も母も幾度も『大丈夫』と言って聞かせて、僕らにするように抱きしめた。
アミーはゆっくりと落ち着いていった。
ふわふわと笑みを浮かべるアミーを見るのが好きだった。
ずっとアミーを見ていたい。
気を抜くと、ずっと抱きしめていた。
温かなアミーを感じていた。
それを見かねた父が釘を刺してきた。
それで、僕はアミーに対する気持ちを、自覚した。
僕はアミーが好きだと。
好きで好きでたまらないのだと。
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だから、僕ならアミーを抱きしめながら言った。
「アミーと結婚できないなら、平民になってアミーと結婚します。公爵家を廃嫡してください」
アミーは目を丸くし、父は絶叫。母は倒れ、セシルは称賛。たまたまその場にいた、友人であり、セシルの婚約者に決まった皇太子は大笑いした。
それは魔法学園に入る前の14歳の時だった。
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